見出し画像

新年度、雑巾は集めずに・・・。

4月、学校ではよく雑巾の提出を求める。1年間、教室などで使用する雑巾を生徒に持ってこさせるのだが、近年、ホームセンターで販売している極めて薄い雑巾を購入し、子供に持たせる家庭が多い。そもそも、家庭に要求していいものなのか、これのどこに教育的効果があるというのか。

きっかけは、1年生の担任で、4月当初に2時限連続のLT(学級活動)が行われた時のこと。2,3年生は離任式のため、体育館に集められている。賛否両論だが、異動した教員の最後の話を新入生に聞かせても、という発想で1年生は、各教室での活動になったのだ。(ちなみに次年度には生徒全員が離任式に参加するようになった)

担任としては、2時限をどう展開するか、各担任次第だ。で、考えたのは、「みんなで雑巾を縫おう」ということ。自宅から、針と糸と余っているタオル1枚を持参させ、1時間以内に各自が1枚仕上げようということになった。

当時、家庭科の授業で裁縫は習っていたので、手縫いを始めた。もちろんミシン縫いがいいに決まっているが、ミシンのない家庭もあるし、だったらみんなで手縫いの雑巾を作って、1年間教室で使おうということになった。

私といえば、机間巡視をしながら観察していると、いろんな事を把握できた。器用に縫物をする男子がいたり、周囲の者に教えている女子がいたり、何もできず誰にも聞けず、ぼんやりしている生徒がいたりで、とても良い生徒観察の時間になった。早く仕上げて手伝ってあげる生徒、気に入らず何度もやり直している生徒など、さまざまな姿を垣間見ることができ、有効な1時間であった。

完成した雑巾の出来はともかく、みんなで手作りをしたので大切に使うことになり、また、なかなか全員が提出できず、何日もかかって家庭からの雑巾を集めなきゃいけないストレスもない。一発で全員完成させた。私は、ただずっと観察していただけだが、得るものはとても多かった。何気ない時間がクラスの雰囲気を柔らかくし、団結したようであった。

ささいなきっかけでできた企画だが、教育的効果はあったと思っている。雑巾を保護者に提出を求める時代ではない。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?