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知られざる天才写真家 横内勝司との出逢い

横内勝司さんと石田さんの関係は?

毎回多くの人から訊かれますが、もちろん血縁関係はなく、勝司さんはボクの母親が生まれる前年に亡くなっており、この世ではまったく接点のない人。長男の横内祐一郎さんのことも10年前に出逢うまでは知りませんでした。簡単に言えば、赤の他人ってやつです。

それが何故、その赤の他人の写真展を全国各地で開催するようになったのか?しかも自費で。個展を開催したことがある方ならわかると思いますが、もちろん毎回大赤字です😅 

ま、それ以上のお金に代えられないものを受け取ってるので、それはどーでもいいことなんですが。


この写真と出逢った経緯を書きます。
10年経ちましたが、あの日の衝撃は今も鮮明に残ってます。まとまりなく長い文章になるけど、記憶のままに忠実に書き残したいと思います。

2014年5月にボクが松本市内の「ギャラリー風雅」で開催した森の写真展を観に来てくれたのが横内勝司さんの長男の横内祐一郎氏。ギャラリーオーナーの井口氏から是非見せたい写真との連絡を受けたそうです。

写真とそれに添えた文章を熱心に読んでくれた後

「そうだよなー ここに書いてる通りだな〜
経済ってやつはいけなかったなぁ〜」 

そしてボクの両手を握り

「石田さんはスゲェなぁ〜 その歳でこのことがわかったんだから…
オレはこの歳になるまでわからなかったよ」としみじみと言った。

個展では写真と共に撮影を通じての「気づき」を「森に学んだ自然観」として文章で綴っている。

祐一郎さんは松本では有名人なんです。父の勝司さんは知られざる写真家だが、長男の祐一郎さんは戦後に松本の伝統工芸でもある家具づくりの技術を楽器作りに活かし、単身アメリカに渡ってギターを売り歩き、苦労の末に現在のフジゲンというギター製造会社を起こし社長、会長を歴任した方で、元気な頃には全国各地を講演で回り、自身の半生を綴った自伝も出版された長野県の経済界では誰もが知る超有名人で、この時87歳でした。

音楽にも経済にも疎いボクはその時知らなくて後で知ったのですが😅

もちろん知った後も変わらず勝司さんの息子の祐一郎少年です。

左から3板目の少年が祐一郎さん、その隣でおんぶされてるのがまさ子さん


「オレの親父も写真が好きだったんだ…観てくれるかい」

と一冊のファイルを渡された。写真展会場ではよくあることで、ボクは軽い気持ちでテーブルに並んでその青いファイルを開いた。

聞けばお父さんの勝司さんは祐一郎さんが8歳の時に33歳の若さで亡くなったと言う。かなり古い写真なのはすぐにわかった。写真ではなく数センチくらいの写真のコピーと昔の新聞記事のコピーだった。

1枚目から素晴らしい写真だった。食い入るように観ながら「いい写真ですねー、いやー凄い凄い!」を連発。そうじゃなくてもそう言うつもりだったが、本当にそうだった。僅か数センチの紙切れからも伝わる子供たちの躍動感がどれも完璧な構図で捉えられていた。

でも、おかしい⁇
これってどう見てもスナップ
⁉️

誰が撮ったんですか?ともう一度念のため訊いた。

「オレのオヤジが…」と祐一郎さんはテーブルに並んでお父さんと写真の話をしてくれた。ボクはその話を耳で聴きながら指でページを捲り、アタマで計算をしてた。87歳のご老人が子供の頃?そのお父さんってことは…

いやいや計算が合わない!

ずいぶん昔の話だし、自分か他の誰かが撮った写真をお父さんが撮ったと勘違いされてると思った。「いつ頃の写真ですか?」

「オレが子供の頃だから…昭和の初め頃だな」と言った後に「これがオレ!」と写真の中の少年を指差した。そのあとハッキリ覚えてるのが、祐一郎さんが続けて言ったことで、「今は天才子役とかっているけど…オレが日本で最初の天才子供モデルだな」と嬉しそうに笑った。もちろん本人はジョークのつもりだったが、ボクはそれを受け取る余裕もないくらい混乱してたと思う。

その写真の少年と隣に座ってる87歳の老人を交互に見ながら
ホンマや〜!確かに同じ顔!
80年後の少年だった。

どうしても計算が合わなかったのは、戦前にこんなスナップはなかったというボクの認識だった。まだ半信半疑だったが、これが事実ならボクの認識の方が間違ってたことになる。

このコピーの元写真はあるんですか?

「家にあるよ!乾板もある!」

えっ! カンパン⁉️

ここでまた驚きの新情報が…そーか、この時代はまだ乾板?それを知って益々混乱した。

やっぱりあり得ない‼️

数日後、横内家を訪ねた。まったく信じられない話だがぜんぶ事実だった。勘違いじゃないとわかると夢かと思った。帰りのことは覚えてないが…

「う〜ん、エライもん見てもーたぞ😅」と心臓がドキドキしてた。

その日から時間を作っては横内家通いが続いた。勝司さんの長女のまさ子さんにもお会いできた。お二人とも驚くほど記憶が鮮明で、撮影時のエピソードを克明に話してくれた。後になって作品集にまとめた話も展示のキャプションも、このお二人に伺った話と、それを基に写真から読み取ったものです。

撮影されてから既に90年が経ち、写真に写ってる人で生存しているのはこの2人と次女の3名のみです。ボクがお二人から聞いた話は写真と共にすべて伝えていかなければ…と思って書いてます。

長々とまとまりない文章にお付き合いいただきありがとうございます。これからも横内勝司さんと時を超えてきた奇跡の写真群について書いていきますが、ボクの話だけでは理解できない方もいると思います。まずは写真を見てください!

7/9~7/21 京都でお待ちしています。
https://www.ishidamichiyuki.com/横内勝司-1

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