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お気に入りの屋上で… 第2話

私たちは、
お互いに黙々とお弁当を食べていた。
風が心地よく吹き抜け、
太陽の光が柔らかく降り注いでいる。
屋上からは、
都会の喧騒が遠くに聞こえるだけで、
静寂な時間が流れている。

「ねえ…
 昨日の夢、
 教えてもらってもいい?」
香織が突然話しかけてきた。

そう言えば、
彼女の声を聞くのも久しぶりだ。
どうやら、
私とのやり取りが知られてからと言うもの、
うちの部署で、
浮いた存在になってるらしいのだ。
それでも、
彼女が暗くなった感じはしない。
寧ろ、
落ち着き払っている気がする。
「夢か…
 この頃、
 寝ている時のは覚えてはいないし、
 今、
 自分で掲げてる目標すらないぞ。」

香織は、
つまらないなと…
はっきり分かる表情で、
「自堕落な生活しているんだね。」
と言った。
「そんな張りの無い生活してたら、
 この職場苦労するよ…」
「窓際族なのも分かる気がする…」

「済まないな…
 想定通りの…
   つまらない男で…」
そう言えば、
屋上で食べる人…
増えて来てる気がする。
「この頃、
 屋上…
 賑やかになってきたよな…」
「野次馬根性の奴もチラホラ…」

「みんな、
 屋上の魅力に気付いただけだと思うよ…」
「私達の事を聞きつけて、
 この後の展開を楽しみにしてる人達もいるみたいだけどさ…」
香織は…
冗談なのか、
鎌をかけているのか…
悪戯っぽい口調で言う。

さては、
この間の…
ちょっとした仕返しなのだろう…
こちらの反応と言うか、
表情の変化を楽しんでいる気がする。
雰囲気からすると仲の良い親戚に対する反応と言うか、
遊び相手を見つけたかのようだ。
「多分、
 一部の野次馬の方が、
 がっかりする様な展開になる気はするが…」
「それならそれで、
 野次馬がこれから増えそうだな…」
「あいつら、
 酒の肴になるネタなら…
 なんでも良いんだろうよ。」

「それならそれで…
 仲の良さを見せつけてやりましょうよ…」

こりゃあ、
完全に弄ばされているな…

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