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舟編みの人~第4話~

朝倉
「梅は咲いたか~桜は~まだかいな~」
伊島
「今日はご機嫌ですね…」
朝倉
「出来れば…
 ご機嫌麗しゅうとか言って欲しかったが…
 近頃は…
 そんな言い回しの方が多いから仕方ないな…」
伊島
「あまりくどいとパワハラとか言われかねませんよ…」
朝倉
「平社員からの戯言だと聞き流してくれ…」
伊島
「どうしよっかなあ…」
朝倉
「頼むから先輩をからかわないでくれよ…」
「場合によっては…
 そっちの方がパワハラだと言われかねないぞ…」
伊島
「冗談ですよ…」
朝倉
「冗談に聞こえないから質が悪いんだよ。」
「本当に…
 冗談はこれくらいにして…」
「さっきの歌は都々逸・端唄として知られているものなんだ…」
「題名もそのまま…
 梅は咲いたか」
「どこで歌われ始めたのかすら分からないくらい古い歌だな…」
「まあ…江戸謡いの類いの様な気がするな…」
「歌詞にも…
 かなりレパートリーがあるようだ…」
「三味線のお師匠さんのノリで節回しなんかも違うらしいし…」
「春先に寄席やお座敷で景気づけで謡われる事が多かったらしいが…」
「その浮気心を恨めしく歌う反面…
 しょうがない事だと諦めてもいる…」
「人気者は何処か浮気性でないとやってられない部分もあるんだろうね…」
伊島
「朝倉さんみたいに…
 あんまり執心でも…
 それはそれでウザい気はしますけどね。」
朝倉
「モテねえのは…自分自身自覚しているよ…」
「それでも…
 曲がりにも最近…
 コラムでもとか言われ出したが…
 こうして話を引き出す相手がいないと中々難しいものだな…」
「そういう意味では泉には感謝しているんだよ…」
伊島
「それじゃちょっとおねだりしましょうかね…」
朝倉
「しょうがないな…
 そろそろ、バレンタインだし…
 日頃のお礼でなんか見繕っておくよ…
 薄給だから大したものは期待するなよ…」
伊島
「はいはい…」

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