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舟編みの人~第1話~

今日は…
誤字脱字の類いが凄く気になる。

朝倉漱石(以降表記 朝倉)
「例えば…
 ○○意外…
 正しくは…
 以外って書くんや…」
伊島泉(以降表記 伊島)
「以外と悪くない…」
朝倉
「その場合は…意外の方や…」
伊島
「やぶさかである…」
朝倉
「文面的には意味は通っているけど…普通は…この表現遣わないんや…」
「てか…さっきから…わざとらしく書いたりしているだろ…」
「喋り言葉だと気付かへん事も書き起こしてみると…
 どんだけ言葉を…
 ぞんざい…
 粗雑に扱こうとるか分かるやろ…」
伊島
「ばれました?」
朝倉
「俺が上梓前の最終的な校正・校閲作業を専門にしている担当だからって…
 わざわざ俺の仕事増やすような事してくれるなよ…」
伊島
「普段はこんな事しませんよ…」
「でも…朝倉さん暇そうじゃないですか…」
朝倉
「AIの自動チェックで…
 あからさまな誤字脱字は減ったから仕事量は減ったけどな…」
「AIでも平気でスルーしてくれる誤字脱字は
 まだまだ無くならないんだよ…」
「悲しい事に俺にはモノを書く文才の代わりに
 誤字脱字ばかりに気付く様な
 つぶしの利かない才能が発揮されているんだよ…」
「おかげで窓際部署さ…」
伊島
「でも…意外とクビにならないのは何故なのでしょうね…」
朝倉
「この会社でも天然記念物扱いだよ…」
「偶に休んで…
 校正・校閲作業しなかった時に限って…
 うちの会社の出版物の内容で…
 そこそこ炎上しているらしい…」
「ちょっとした消火担当…消火設備扱いだな…的確に言うなら…」
伊島
「一部署に一人…
 こういう風変わりな人がいた方がいいのかもしれませんね」
朝倉
「辞書改訂時の編纂に呼ばれた頃に比べりゃ暇なものさ…」
「それに他人様の間違いには良く気付く癖に…
 手前は文例思いつかないのかとヤジられたもんだ。」
「どこぞの有名な出版社の辞書には…
 面白いショートストーリーが多分に散りばめられてるらしいが…」
「別にそんな面白くなくても良いんだよ…
 でも面白きゃ…
 それはそれで良いんだけどさ…」

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