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怪説~モノノケガタリ~第9話

沙彦
「古典的な手法ではあるが…
  惚れた弱みに付け込んでと言う奴だろうな…」
千里
「大体…
  惚れると言うこと自体が…
   ちょっとした自発的催眠状態ではありますよね…」
沙彦
「そこまで分かっていて引っかかるとはな…
  余程の凄腕か…
   凄い別嬪さんなんだろうな…
    惹かれるその相手を益々知りたくなってきたな…」
千里
「煩悩即菩提と言うではありませんか…
  日々の悩みや欲求欲望の中にこそ…
   日々を生きていく為の心身の糧があるのだと思いますよ…」
沙彦
「自分から進んでやりたい事がないのを偽って…
  私は悟った振りをしているだけなんだろうな…」
千里
「私は…
  きっと…
   惟嶺さんの様な…
    ひた向きさに惹かれたのでしょうね…」
沙彦
「若しやすると…
  そなたの愛しき人の転生が惟嶺とは考えられぬか…」
千里
「流石に違いますね…
  分身だったり…
   私の子孫である可能性は否定できないですけど…」
沙彦
「思念以外でも…
  共鳴する可能性があるとするなら…
   遺伝子的なものもあるのだろうな…」
千里
「互いに乗っ取った感覚ではなく…
  意識を共有した感覚になったのは不思議なのですよね…」
沙彦
「遺伝子としても…
  思念としても…
   綺麗に共鳴したとなれば…
    千里の名をすんなりと受け入れた理由として…
     他に綺麗な説明もしようがないな…」
千里
「今一度…
  惟嶺のところへ連れていってくださいませ。」
沙彦
「そなたと2人だけのうちに聞いておくが…
  響子の方だな…
   そなたの思い人の転生体は…」
千里
「私自身…
  確証・確信があるわけではないのですが…
   それ以外に納得出来る説明や考えが思いつきません…」
沙彦
「済まぬ…
  今日ここまで…
   結構…
    受け答えちぐはぐだったろ…」
千里
「私の方も…
  自分自身で形容出来ないものは…
   受け流しているので…
    構いませんよ…」
沙彦
「前回も今回も…
  そなたの存在がこの一連の怪異の鍵らしいな…」
千里
「それだけ縁と言うものが我々にはあるのでしょう…
  嘗ては…
   どの様な縁であったにしても…
    今生に於いては…
     良き縁を結べれば幸いでございます。」
沙彦
「取り敢えず…
  聞きたい事が増えてきたが…
   ある程度…
    この一連の騒動が落ち着いてからにしよう…
     今回の件に絡む事でもない限りは…
      根掘り葉掘り聞かれるのも嫌であろ…」
千里
「あなた様から興味をそそられるものを…
  感じ取れますが…
   互いに一気に知ってしまっても興が削がれると思いますよ…
    これからも永き縁にしたい故…
     のんびりと行きませんか?」
沙彦
「その名…
  時疾く駆ける距離と言うよりも…
   これまで生きてきた時の長さか…」
千里
「言解きをしたくなるのは…
  もはや職業病ですね…
   良いのですか…
    私を…
     この場で解いても…
      きっと黒幕は分からずじまいなんて事にも…
       なりかねませんよ…」
沙彦
「怪異が分からぬのはともかく…
  神社に閑古鳥が鳴くのは…
   ちいとばかし勘弁してくれ…」

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