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夜空の光る月が今日は何故か泣いて見える。


路上に散乱するゴミを拾い、餌にする人達
炊き出しには近くのボランティアがやって、人だかりになってる

電車からサラリーマンと思わしき人達は、
新聞やスマホ片手に、斜に見てひけらかす。

凄いねあれ、どうして、生きる資格あるの?
見苦しいな。クラウドファウンディングで生活支援してやれよ。

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どーして、今日来れないの?
明日じゃ無理だよ、部活あるから。

中学生の洋子は、友人にドタキャンされ、
たったまま携帯をいじり回してる。

おい、邪魔。そこはゴミ捨て場だから、
違うとこ行きな。

通りすがりの現場作業車に、
クラクションを鳴らされる洋子。

ごとん、ごとん。

電車が通り過ぎる音が煩く響く。

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時間は、いつも通りの日常に、
時計台の針は、九時を刺している。

魚片手に持って歩く婆さんも、
下駄履いて飲み歩く男達も、
制服に制帽かぶり本読む学生も。

全て時計台の針は見てきた。

皆好き勝手に生きる、スマホの中に答えがあるかのようで、この時計台の針も月も、それ自体に答えがあると皆思わなくなった。


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中学生の洋子は、遠くに見えたあの景色を今思い出した。それは、父さんと母さんが手に繋いで、夕陽を浴びながら私を連れて仲良く歩く光景。もう居なくなってしまった父さんとの唯一の思い出。この月夜に誰もが同じ心象を抱くはずもなく、孤独になる洋子。それが正義だと闊歩して歩く大人達。これから学校に行く気にはなれず、今は只、遠くて低い明るい月を見るだけである。

画像)Stable Diffusion 1 Demoより作成

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