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船が沈む頃に願うこと

おい船長何してる?
いま、祈祷中です。
何っ!?

冬の日本海に大型客船が座礁した雪の視界不良による運転ミスだ。
乗客2百人のアンドン船は、釜山を出発し二週間を経た処航路の3分の2を終え、まもなく帰港の準備に入るところであった。乗客の大半は韓国人で休暇のため多くは、一般人であった。

乗客の一人エドアンは、エンジニアとして釜山を本拠地とする会社で働く。乗客の中の様子は混乱し、怒号が飛び交っていたと言う。

逃がせ、逃がさないと!

レストランの厨房から一人が声をあげたのも束の間、船体は大きく傾く。ホールに鳴り響くジャズサウンドも、照明も、全て落ち、混乱は度を増した。

落ち着いて、船内はトラブルのために航行を中断しております。情報が入るまで今一度お待ちください。

ホールに案内が入る。
船の外は視界も悪く、
乗客は今何処に居るかも分からない。

トーリハンの焦げた匂い。
ペットの鳴き声。
子供の動揺。
全て不安と闇に包まれた船内の空気だった。

三時間後。
陸に上がるまでは分からないと人が叫ぶ。
船員とエンジニアは、そんな乗客達を、
鼓舞した。

そんなときだ!
ゴォー!!
水の浸水だ。
近くでないが、遠くから音が聞こえる。
キャー、出ろ!

アンドン船の船体はさらに傾き、
窓から見える風景は山か谷か分からぬ。
レストランから出よう。
山までならボートで行ける!
一人の案に皆が乗っかる。
そうだ、そうしよう!

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かなりの人がオナクナリニナリマシタ。
テレビの速報は、そう伝えた。
オカシクハナイ
あんな真冬に強風の吹くなか、ボートで出るなんて。大半が海に投げ出され、船内に残った人は海に沈んだから。肝心の船長は、祈祷した後、一人非常用部屋に篭っていたんだ。

緊急時の判断は難しい。
電源が落ち、一般人のための設備が機能しない。
照明も暖房もつかずに。
加えて船員自体それに慣れて居なかった。
只、絶対的な過ちは肝心の船長が祈祷していた事だろう。

船が沈む頃僕が願うこと。

画像)Stable Diffusion 1 Demoより作成

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