18 得失を帳簿記入するとき冷静になる~「熊撃ちの女」

 「熊撃ちの女」安藤薮太(著)を読むと狩猟は本来ギャンブル性の強い営みであり、獲物を獲得する確率を上げるのが猟師の知恵であり技術なのだと理解できる。つまりギャンブルとは食欲などの根源的な欲求というより食料調達の確実性・効率性を問う思索領域の活性化ではないだろうか。
 つまり株にのめり込む、投機性の強い事業漬けの生活を送る、スマホガチャにハマるなどの症例も報酬を過剰に求めるという点で中毒性がある。いずれにせよ相手が猛獣か否かという差異はあっても呼吸を荒げ冷静さを欠けば取り返しのつかない怪我を負う。そう考えると、ギャンブルの潜在的重要事項とはメンタルの安定であろう。
 
 さてメジャーリーガー大谷選手の通訳水原氏のギャンブルにまつわる窃盗の疑惑で世間が揺れている。大谷選手の隣に常にあって十分な報酬を得ていながらも、劣等感を増幅させてしまったのであろう水原氏は影のごときイメージに耐えられなくなったのかもしれない。しかし、日本で英語の教科書に載る予定だったなど光の世界にいたはずである。違法賭博業者はその辺の劣等感を巧妙に刺激したのだろう。
 賭け金で何を得失したのかを帳簿記入するとき人は冷静になれる。
(500文字)

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