カフェ4分33秒 『毎週ショートショートnote 』
「終焉」
「カフェ4分33秒」というものをご存知あるだろうか。
それは実しやかに囁かれているとあるカフェ、いや、人の噂である。
その「カフェ4分33秒」というのは、不意に死に際の人間の前に現れては、香り高いコーヒーを片手に静かに微笑み、最後の時間を共に過ごしてくれる謎の人物がいるらしい、というものである。
よく意味がわからないが、例えば自分が孤独な老後を送っているとしよう。そんな孤独な最後の時間を目の覚めるようなコーヒーの香りに包まれ、4分33秒の思い出ショートフィルムでも見ながら穏やかに終えられるとしたら、少し羨ましい気もする。
しかし所詮唯の噂話、現実味を帯びておらず、噂の出どころも謎である。死にかけた人が目撃でもして広まったのだろうか。
まあしかし、自分の終わり方は壮絶であってほしく無いものだなあ、思えば昔からついていないことが多かった、、、
お母さん元気かなあ、、、
なんて考えながら私は折れ曲がった鼻で微かに苦い香りを感じ、血の海の中、自由の効かない体で騒々しい人々の声をBGMに終焉を迎えた。
まさか車に撥ねられるとは。
最後の光景は、まさに微笑みながら私の魂を狙って突っ立っている死神であった。死神ってコーヒーの香りがするんだね。
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