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愛犬の異変を見守った昨夜。

愛犬2匹のうちの、1匹が昨夜突然おかしくなってしまった。最初に気付いた時は、やけにソワソワウロウロしていた。その後、嘔吐、ふらつき、眼振、ヨダレ、頭は垂れたまま傾いている。傾いた方向に勢いでグルンと回ってしまう。夜中までみんなで見守った。

最近、老犬ぶりがよく見られた。散歩の時、少しの斜面でコケてしまったり、日中は日向ぼっこで寝ているが、耳が遠くなり私達が通っても気づくのが遅い。やっと気づいても立ち上がるのに時間がかかるようになった。

長女が小学校5年生の時から飼っている。
その当時でも珍しいが、野良犬だった。うちの庭にヒョコっと現れてはビクビクしながら一定の距離を保ち続ける。
娘がそっと近づくも、触れることすらできず、それでも数日間現れ続けた。
ある日近所のおじさんが、「ここんちのおねえちゃんが探してたから~」とケースに
入れてうちに連れてきた。飼う予定はなかったけど、娘の喜びようと、おじさんの気持ちに後に引けなくなった。飼う予定がないとはいえ、私も「きっとこうなる。」と腹を括っていたんだと思う。

最初は全然なつかなくて、隙間を見つけては隠れ続け、エサも水も手付かずだった。
なんとかならないか…と考える中、思いつきで「警察犬訓練校」を電話帳で見つけ電話してみた。これが大正解で、こういった場合の慣らし方を細かく教えてくれた。顔を見ずにそっと手を出し、エサを差し出す。やたらと元気すぎる声かけをしない。等々。
この時、電話口の方が、
「近頃は飼えないからと保健所に連絡したり、その辺に置いてきたり、そんな話しばかりの中、このような電話を頂けてとても嬉しいです。お話しを聞く限り、生後5ヶ月程だと思います。2ヶ月くらいまでは人にも警戒心を持ちにくいので、すぐに懐きます。今の様子を伺っていると、恐らく、人に嫌なことをされたのだと思います。ビクビクするのはまた嫌なことをされると警戒しているからなんですね。…今度こそ、きっと幸せに過ごせますね。今日は私も幸せな気持ちを頂きました。また何かあればいつでもお電話下さい。」と涙声で話してくれた。
涙もろい私も、もちろん涙涙だった。
「人を好きになってもらいたい!」
使命感でいっぱいになった。

徐々に慣れてきて、お散歩にも挑戦してみた。しかし、リードをつけて歩くことができない。ずっとオシリをつきっぱなし。
そこで、娘はトートバッグを持ってきて、
その中に入れ、肩に背負って
「ほら、見て。あれが畑だよ。あれは電車だよ。音が大きいね。風だよ。葉っぱだよ。」と毎日ご近所を紹介して歩いた。
効果はバツグンで、リードで散歩するようになった頃には、すれ違う知らないおじさんの後を追いかけてしまうほど自由に娘を振り回すようになった。
娘もその自由に便乗していた。
ある日、ふとばあちゃんちの居間を見ると、
リードをつけた愛犬と、それを持つ娘が
ちょこんと座って仲良くテレビを観ていた。
ばあちゃんは泥んこの足跡に
「やだなぁ」と言っていたけど怒ることもなく雑巾がけしていた。
我が家からその様子をみていた私は、ばあちゃんには悪いけど、微笑ましくて愛おしくて大爆笑した。

いくら食べてもスリムな体に心配もするけど、いたって健康。穏やか。

時にはブローチのように胸元にバッタをつけていたり(邪魔にしたり振り払ったりしないの)、いつもカラスが遊びに来て、仲良くエサを食べている。(エサをあげに行くと、上空に向かってワンワンと吠える。どこからともなくお友達カラスが2羽飛んでくる。)
野良猫に小屋を占領されても黙って自分は外にいる。
脱走が成功した時は、満面のイキイキ顔で慌てて捕まえようとする私をおちょくる。
平気で人の足を踏み続け、愛嬌たっぷりの笑顔で、翔べそうなくらい尻尾を振り回す。

好奇心旺盛で、やんちゃで、ツンでデレデレで、散歩中に帰宅拒否して寝そべったきり
ちっとも動かない。人が大好きで、虫も鳥も大好き。
優しい。すごく優しい。


昨夜はもうこの夜が最期かもしれない。と頭をよぎった。家族の誰も口にしなかったけど。口にしたらダメだな。とみんなそう思ったと思う。頭も心も「生きて!」でいっぱいだった。
朝方、ずいぶん穏やかに寝息をたてていた。

夜遅いうちに、明日の朝次女をお願いできるか看護師さんに急遽訪問を依頼した。
「家族の大事な癒しの存在ですから!
なんとか調整しますから!」と朝イチで病院に行けるようにと訪問を受けてくれた。

今朝、看護師さんの声を聞いて、昨夜より
ずいぶんはっきりと尻尾を振った。

病院に抱き抱えて連れていき、先生の診察の結果、「特発性末梢性前庭障害」と言われた。老犬には珍しくない病気で、平衡感覚のバランスの崩れからのものだそうだ。数時間前までなんでもなかったのに突然発症するようで、寒い時期は特に発症が多い。
それぞれではあるけど、数日~数ヶ月でだんだんと正常になっていくと聞いた。
めまいを抑える注射を打って、飲み薬を2日分もらった。
「焦らずのんびりを必要とする病気だからね、気落ちしないで!」と言われ、ようやく安堵した。

とはいえ、これからがずっと続くわけじゃない。と身に染みて感じた。

だからこそ、改めてこれまでのことも、
今のこの子のことも、これからがどんな
状態であっても、目一杯愛して、
一緒にいてくれていることに感謝していきたい。

今、まだ震える目を薄い瞼で閉じて、
深い寝息をたてるハルちゃんを
じっとみている。

「ハルちゃん。何したい?また散歩行こうね。今は少しゆっくり寝てね。」



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