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たった今、報われた栗

ピンポーン♪
と、家の前に知らないおばあちゃんが
立っている。

日曜日の朝8時少し前。
旦那は早朝からサッカー
息子は部活
長女は彼の家にお泊まり
次女と2人ダラダラとしていた。
洗濯はまだ回ってる。
そしてパジャマ姿。

…いいや、このまま出よう

インターホンのモニターを見て、
「はーい」と言っても返事はなく、
ただ、おばあちゃんは立っているから
パジャマのまま玄関ドアを開けた。

おばあちゃんは
「私、前に犬の散歩をしてたら
川の側の畑に栗の木を見つけて、
3個ほど拾ったんですよ~
でも、人様の家のを勝手に持って行っちゃ
ダメだわ。と思って…」

近くで畑仕事をしてる方に栗の木の持ち主を聞いたら、うちの方を指したそうで、
持ち主求めて、我が家が3件目だそう。

そして、うちの栗の木でもない。
畑、持ってないし。
嫁に来て23年、畑があることなんて聞いたことないから、たぶんそう。

「じゃあ、もういいわ。帰ります。」
と若干しょんぼりしていた。
聞けば、お住まいは、おばあちゃんにしては
ちょっとした道のりなのでは?という距離だった。

その時、
「あっ!」と思い出した!

「栗、好きなんですか?」と聞くと
「大好き」とおばあちゃんは言った。

ある!ある!うちに栗ある!
先日、娘が職場で栗を頂いてきた。

私は、栗とか、筍とか、その他色々、
一手間かけてあげないと食べられないものに
挑戦する意気込みがない。
いつも、実母や義母に
「おかーさーん」と仕込み部分は丸投げしてきた。

しかし、今は実母は施設で暮らしているし、
義母はまだ入院中。
誰も栗をアレしたり、コレしたりしてくれない。
してもらったところで、特別好きなわけでもない。

私は、のんびりダラリと過ごしていた
貴重な日曜の朝に突然現れた見知らぬ
おばあちゃんの訪問にやっと
「ありがたい!」と思えた。

「頂き物だけど、栗持っていって下さい。
好きな方に上手に食べてもらえた方が
栗も喜ぶから!」と忘れられかけた
栗を差し出した。

栗が好きなのに「人様の栗だから。」と
諦めたおばあちゃん。何軒も持ち主を求めて
朝からご苦労様でございました。
胸を張って、この栗を持ち帰ってくださいな。

「あらー!ありがとう!
かえって申し訳ないわぁ」

みたいなこともなく、
ごくごく普通に受け取っていったけれども。

まあ、何はともあれ、
栗もホッとしたでしょう。
大事に食べてもらってね!

せっかくの秋の味覚。
我が家では披露できなかったけれど
名も知らぬ、あのおばあちゃんが
おいしくしてくれることを願ってる!

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