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敦賀まで伸びた新幹線で福井へ【旅行記】

 福井がこんなに近いとは、朝一の新幹線に乗ると9時半前に着いてしまう。九頭竜線に乗り換える。ホームの端1両のディーゼル車が停まっている。揺られること20分、一乗谷に着く。

一乗谷駅にて

 田畑の広がる景色の中にひと際目立つ一乗谷朝倉遺跡博物館へ入る。朝倉氏の栄華が偲ばれる出土品の数々と案内を見ていく。その名の通りの谷によって周囲から守られ、一乗谷川が今の福井市街地である北ノ庄、そして三国湊と繋がり発展した。京都に近くその文化も取り入れ、将軍足利義昭も訪れた。各屋敷にトイレと井戸が整備され、進んだ暮らしをしていたというが織田信長の侵攻により灰燼に帰すとそのまま一農村として戦後昭和の時代まで放置されたことでこれだけ大規模に残ったという。

立派な博物館の建物

 博物館を出て、バスで復元街並地区へ向かう。屋敷の復元は多くないが通りの雰囲気が偲ばれる。道の反対側に移り、草に覆われたかつての当主一族の屋敷跡を歩いていく。さぞや豊かな暮らしぶりだったのだろう。博物館まで戻り、中のカフェで昼食。厚揚げを乗せたそばが非常に美味い。汗だくの身体に染みわたる。
 再び列車に乗って奥地へ進む。九頭竜川に沿って山中を進んでいくと、開けた土地に出た。越前大野に着く。バスで大野城の登り口へ。20分程登り復元天守の上から街を見下ろす。山に囲まれたこの感じが丁度良い。九頭竜湖まで行ってさらにその先、岐阜県は長良川鉄道の北濃駅まで行ってみたくなる。
 

大野城を望む
大野城から市街地を望む

城を下りて、少し離れた博物館でこの都市の歴史を学ぶ。大野藩は幕末、藩直営の大野屋という商店を大阪に出店。経営に成功して各地に支店を増やし、藩財政を潤したという。明治になってからもこれらは存続して黒字を出し続けたようである。直営というのがまた面白い。藩校、そして洋学館も設置して実学重視の教育の賜物かもしれない。武士の商法の成功例がここにあった。大野丸という帆船も建造して北前航路で大いに活躍したらしい。街歩きを続ける。至る所に水が流れており、豊富だというのがわかる。これは一乗谷もそうだった。カフェで和菓子を食べながら休憩をして、駅へ戻る。福井駅名物の恐竜たちを見て回り、宿に入り一泊。

 えちぜん鉄道の一日乗車券を買い、永平寺口駅。バスに乗り換えて永平寺へ。寺内に入っていく。清らかな空気に身が引き締まる。斜面に沿って様々な建物がある。一つ一つ見て回る。今でも雲水と呼ばれる修行僧が生活しているからか観光というより施設見学をしている感じである。邪魔にならないよう静かに順路を進む。生活そのものが修行、食事、掃除、入浴その一つ一つに感謝をして丁寧に行う。修行ほど厳しくは無くともそんな生活に憧れを抱きつつ、一回り。
 

永平寺にて

 麓のお土産屋が並ぶ通りで早めの昼食。ごま豆腐が美味しい。バスで永平寺口へ戻る。電車まで時間があるので周りを見る。京福電鉄永平寺線の廃線跡が今も遊歩道として残されている。季節が良ければ今度は歩いてみたい。

廃線跡を少し歩く

 福井口まで戻り今度は三国へ。駅でレンタサイクルを借りて東尋坊へ。今回の旅行で観光客が最も多い場所であった。柱状節理の地形を見てカフェでアイスを食べる。汗が引いたところで三国湊方面へ。旧森田銀行や街並みを見てから三国駅へ戻る。北前船の寄港地としてその繁栄は目覚ましく、日本海側の港にしては珍しく遊郭などもあったらしい。
 まだ時間があるので坂井市龍翔博物館へ。非常に立派で目立つドーム状の建物だ。リニューアルしたばかりらしい。坂井市は県内有数の穀倉地帯らしく、1000年の昔から水路が整備されていて今もパイプラインとして地中に沈めて使用しているらしい。明治になると織物の町としてラベルの生産がブランドとしての地位を築いたという。博物館の上はバルコニーがあり、九頭竜川河口の三国湊、福井市方面に広がる穀倉地帯を眼下に望む。
 駅に戻り、電車に乗る。福井駅へ向けて、一面の田んぼの中を直線で進んでいく。着いたところで、夕食用の弁当とお土産を買う。今日は焼きサバ寿司を選んだ。お土産は羽二重餅と永平寺で買ったごま豆腐、大野で買った水まんじゅうである。
 今回感じたのは今回訪れた地はどこも水が豊富であった。綺麗な水がそこかしこにこんこんと流れている。鮎釣りに興じる人も多く見かけた。白山からの豊富な水が日本海へ注いでいるらしい。福井に対してそうしたイメージが無かったので新鮮だった。また一つ勉強になった。そしてやはり関東に住む人間にはわからないが京都と近いのだと感じられた。文化と商業どちらも強い影響を受けているようであった。琵琶湖の舟運ですぐ、北陸本線もかなり早い段階で建設されている。大陸方面への玄関口の敦賀も近い。そんな面白い場所に簡単にアクセスできるようになった新幹線は偉大だと改めて感じた。

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