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キャンプ・キンザー(牧港補給地区) ―深刻な土壌汚染

 那覇市から国道58号線を北上していくと、浦添市に入ってすぐに左手に倉庫群が広がっている。極東一の総合補給基地と言われる「キャンプ・キンザー(牧港補給地区)」だ。キンザーという名は、沖縄戦で戦死し名誉勲章受章したエルバート・キンザー伍長にちなんで付けられた。その付け方、どうなんだろう。沖縄の人の神経を逆なでするような。


国道58号線に広がる倉庫群


 1945年、米陸軍が日本軍の南飛行場を接収し、牧港飛行場に。48年にさらに強制接収を行い物資集積所として拡大し、78年に米海兵隊に移管された。南北3㌔、東西1㌔。基地内で暮らす家族を支援するために、小学校や託児所、教会、医療施設、スーパーや飲食店、映画館やボウリング場がある。マンションのような高層住宅群も立ち並ぶ。1部屋あたり124平方㍍とか。これらはすべて、日本側の「思いやり予算」によって建てられている。


奥に見える3棟の建物は米兵の高層住宅


 基地の反対側にあるパルコシティ付近から見た高層住宅群

 キンザーは高層住宅群や、白い外壁の倉庫が多いため、きれいな基地のように見える。休日だと、基地内の車も少なく、閑静。ところが、キャンプ・キンザーで深刻な土壌汚染の問題があることが、沖縄タイムスのジョン・ミッチェル記者の調査報道で明かになった。https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1102017


  

 記事の内容はこうだ。
 米海軍海兵隊公衆衛生センター(NMCPHC)が2019年10月に、キャンプ・キンザー(牧港補給地区)で広範囲にわたる深刻な土壌汚染が存在していると指摘し、キンザー内の子どもや屋外で作業する労働者の健康に危険をもたらすリスクが高いと結論付ける報告書を作成していたことが分かった。
 
 スポーツ競技場や診療所、小学校周辺を調査したところ、米環境保護局が定める基準値よりダイオキシンが520倍、PCBは41倍を超えていたという。センターは調査結果をメディアを通じてキンザーの住民や労働者などに伝えることを勧告していたが、そんな対応をしていなかった。
 
 キンザーの汚染は古い。戦争中のベトナムから運ばれた化学物質が海岸沿いの南側の野外にドラム缶や段ボールで保管され、腐食して漏れ始めた60年代後半から70年代初頭に遡る。74年には魚などの大量死が周辺海域で発生したこともある。米軍は汚染された土壌約730立方㍍をキンザーの北側に移設した。それが再び、問題化したわけだ。正直、移設した後の対応を忘れていたんじゃないかと思うほど、ずさんだ。

 キンザーは2025年以降の全面返還が決まっている。ただ、土壌汚染によって、大幅に遅れも予想される。米軍基地は返還後は国が汚染や廃棄物を取り除いて地権者に引き渡すことになっている。

 ただ、その決まりを本当に守っているのか疑いたくなるほど、返還跡地の環境問題が後を絶たない。その話を書き出すと長くなるので、別
の機会に。(了)

 

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