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スター・ウォーズ新作アニメ『バッド・バッチ』にまつわる雑感(ネタバレなし)

 前身にあたる『クローン・ウォーズ』(全133話!)はまさかのエピソード3との同時並行展開でオーダー66発令を描き切る形でフィナーレを迎えたし、直近の関連作である『オビ=ワン・ケノービ』第1話冒頭ではジェダイ聖堂を襲撃するクローン兵が初めてがっつり描写されたりもして、最近のスターウォーズはとにかく「オーダー66」がアツい。そのオーダー66の影響を逃れたクローン・トルーパーたちを主人公に、クローン兵にとっての"戦後"を描くというのが本作『バッド・バッチ』のコンセプト。

 一応クローンについてのおさらいと本作のあらすじを書いておくと、クローン・トルーパーは賞金稼ぎジャンゴ・フェットの遺伝子をもとに共和国軍の兵士として設計された存在(寿命も短い)なんだけど、実はその製造にはシスが関与してて、ひとたびオーダー66が発令されれば脳内のチップが作用してジェダイ殺戮マシンと化すというもの。特殊な遺伝子操作によって生まれた突然変異の寄せ集め部隊であるクローン・フォース99、通称"バッド・バッチ"は、「欠陥品」であるがゆえにオーダー66の影響から逃れることに成功。共和国の崩壊や正義の変容を目の当たりにしながら帝国を相手に逃走&反乱を繰り返していくみたいな話で、早い話が『ランボー』×『エクスペンダブルズ』みたいな様相を呈してる作品。

 クローン・トルーパーの創造主はオリジナルであるジャンゴ・フェットや彼らを実際に設計・プログラムしたカミーノ人であると同時に、戦いの中で彼らに個性を獲得を促し、独立した存在であることを奨励したジェダイでもある。本作はまさにその創造主たち亡き後の彼らが選択をめぐる問いに直面していく姿を描いてて、これは『クローン・ウォーズ』の頃から何人かのトルーパーを通して繰り返し語られてきたテーマだったりもする。

「俺は言われたことに従うのが良い兵士の条件だと信じていた。俺たちはそのために生み出されたのだと。だが俺たちはプログラムされたドロイドじゃない。自分自身で決めることを学ばなくてはならない」ーCT-7567

 もちろんこれはスターウォーズという巨大コンテンツのエンタメ作品なんだから主人公たちは戦いに身を投じることを選ぶわけだけど、ここから先の戦う理由はもう彼ら自身で見つけなければ意味がないんですよ。戦争を目的として作られた彼らは「戦いが終わったあと自分たちは何になるのか」という疑問をずっと抱えてきたはずで、戦う理由を与えてくれた共和国やジェダイがもういない以上、「神なき世界でどう生きていくのか」みたいな実存主義的命題に直面せざるをえない。初めて意味を持たない存在として世界に投げ込まれた彼らがプログラムに回収されない生き方を獲得していくという、プリクエル世代(というかクローン・ウォーズ世代)には涙なしに語れないプロットなんですね。
 本編では「その他大勢」に過ぎなかったクローン兵一人一人にフォーカスしたのが『クローン・ウォーズ』だったとするならば、『バッド・バッチ』には欠陥品として蔑まれてきた彼らがクローン・トルーパーの再定義を行う作品であってほしいと思う。第2シーズンは今秋配信予定。

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