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人口減少日本でこれから起きること「未来の年表」要約・所感

おはようございます。本日は河合雅司さん著者の「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」を取り上げたいと思います。

現代は先が読めない時代とよく言われます。そんな中でもとりわけ見通しが立ちやすいのが人口動態です。経済や戦争をはじめとする世界情勢の予測は困難を極めますが、こと人口動態に関してはその国に生まれてくる人数と平均寿命から予測が出来て大きく外れることは無いからです。

日本は今や当たり前に少子高齢化、人口減少社会と言われていますが、その恐ろしさを具体的にイメージできている人はどれだけいるでしょうか。

著者の河合さんは人口減少対策総合研究所理事長を務めるこの分野の第一人者であり、本書は人口減少していく日本の動向を年表形式で可視化して示してくれる内容です。読後では漠然とした不安ではなく具体的な課題が理解できます。

本書から学んだことを以下にまとめておきたいと思います。


1.特異な時代で課題を混同する日本社会

人口が減少していく社会。これは世界史においてもこれまで類例がなく、長い人類史で極めて特異な現象です。まれな時代を生きている、私達はまずそのことを自覚しておいた方が良さそうです。

日本の喫緊の課題のを改めて整理すると

①出生数の減少
②高齢者の激増
③勤労世代の激減 
④これらが互いに噛み合って起こる人口減少

になります。

これらの課題が同時かつ深刻に進行する世界稀に見る国が日本といえます。

そんな中では課題の混同と誤解が発生しやすい。本来は少子化と高齢化は別の問題ですが、日本では少子高齢化と一つにされて捉えられがちです。

つまり、高齢化率が上昇するのは子どもが少ないからだと奇妙な理屈で本質的ではない政策が国や各地の自治体で取られてしまっているのです。

少子化対策が功を奏したとして、それが理由に高齢者の実数が減るわけではありません。また、高齢化が進んでいるから子どもが生まれにくくなっているわけではありません。

2.高齢化は地方ほど深刻だという誤解

日本の近代化は地方の若い世代を大都市に集中させることで、効率的で効果的な産業体型を作り上げ、世界的な都市間競争に打ち勝つという集積経済の歴史でした。

東京のような大都市圏は地方から若者が流入し続けている。そして若い人がいなくなる地方ほど高齢化が深刻だ。多くの人がこのような認識でいると思います。しかし、本書ではこれを明確に否定しています。

東京一極集中ということばがあるように確かに東京は現在でも人口が増え続けている地域です。しかし、若い人ばかりが増えているのではありません。2000年を堺に生産人口が減少に転じており、増えているのは高齢者なのです。

東京の高齢者が激増している理由は、高度経済成長期以降に上京したかつての若者が年齢を重ねていること、そして現在の勤労世代が地方から老親を呼び寄せているからと言われています。

これまで企業活動や若者の利便性を優先したまちづくりをしてきた大都市にとって、今更高齢者施設や福祉サービスを整備して高齢者が暮らしやすい街へと作りかえるとなれば膨大なコストがかかります。地価が高騰する東京では尚更困難です。

2025年には介護施設利用者数が2010年の定員数の2.5倍にも跳ね上がると予測されています。そんな状況では住民への負担が増えるのは目に見えており、大都市に見切りを付けて住みやすい地方へ移動を考える人や企業がでてくると予想されます。

これからは豊かな地方が大都市圏から人口を吸い上げる時代が来るかもしれません。

3. 人口が減る国への処方箋

日本は間違いなく人口が減っていく国であり、しかもその状況は長く続きそうである。本書ではそんな日本を小さくても輝く国にするために「戦略的に縮む」という提言をされています。

そのための具体的な処方箋として以下のことを挙げています。

・高齢者の定義を75歳以上に引き上げ
・歩きたくなる都市づくり、コンパクトシティ
・24時間社会からの脱却
・都道府県の飛び地合併

すべてを詳細に述べることはできませんが、社会の支え手となる現役世代の母数を増やすこと。老朽化するインフラを維持するために生活圏と産業圏を分別すること。便利すぎる社会を見直すこと。大都市と地方の強みと弱みを補い合うこと。ごく端的なことばにするとこうなります。

どれもが具体的で明瞭なイメージが出来る内容である一方で、現代を生きる我々一人一人に少なからずの責任と我慢を求めるものであるのも事実です。本書では21世紀型の成功体験との決別とも表現されていました。

本書読後はこれまで自分自身も少子高齢化、人口減少という言葉自体を漠然と捉えていたと自覚させられました。人口減少社会を考えるに当たって、課題を整理して理解するのに非常に学び多い内容でした。

本書は実は全5巻シリーズの第1巻です。他の巻もまた読んで次の機会にこちらにまとめようと思います。

より詳しく知りたいと思った方は、是非とも手にとって読んでみてください。



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