能登地震 宗教者たちの緊急支援情報

緊急報告 能登地震:宗教者らによる現地への緊急支援
              ジャーナリスト 北村敏泰
 
 現地の惨状については多くのメディアが伝えているのでそちらを。生き残った多くの被災者が厳寒の中で食糧も水もなく苦しんでいる。行政は、まずは人命救助・遺体捜索をということで、「私人の被災地入りは控えて」と言っているが、東日本大震災などこれまでの災害での豊富な支援経験・スキルのある宗教者たちは、当然のように瞬発力を発揮して、被災者の命を救うために現地へ駆け付けた。目の前の困っている人を助けるために。
 
 宗教者の社会活動を長年取材している延長で、現時点で知り合いの宗教者たちから集めた多くの支援情報のごく一端を再録する。速報だが事態はその後も刻一刻と変化しているし、内容は当事者たちがSNSなどでやり取りしたのをそのまま再録したのもあるが、非常に長いので、流し読みでいいので、どういう動きがあるのかを知ってもらえれば。
 
 
 以下の内容から伺える大事なことを先に挙げる。
 
 まずは彼らは以前から、普段から災害のみならず各地で困窮者に寄り添う活動をしていたこと。だから緊急事態にも迷うことなく即応する。
 そして彼らが宗教者であることの意味は、今回も含めてそのような活動が、「たまたま宗教者もボランティアをしている」ではなく、彼らにとっては人助けこそが宗教の本来の役目であるということが信仰の内実であるのが特徴だ。
 
 だから、それを身をもって実行する。遠く離れた安全な宗教施設で「祈る」だけではなく、ましてや暖房の効いた寺社・教会で「いのちを大事に、人に親切にと、経典に書いてある」とコトバだけで“説教”するのではなく、現に苦しんでいる人たちの現場で、言葉に表すことなく行動するのだ。
 
 宗教、という時、こんなこともある、それは人を抑圧したり権力と結託して害悪を撒き散らすような宗教とは対極にあるということが見えてくれば。
 
 ただ、経験豊富できめ細かいとはいえ、以下の宗教者たちもスーパーマンでなく、弱い一個の人間だ。苦労も失敗もあるし、以下の例のように現地入りを途中で断念して涙することもある。しかし、だからこそ、宗教者ではない人にも参考になると考えるので、ここに紹介する。
 
■真宗大谷派(京都の東本願寺が本山で、全国に寺院が)
有志の活動内容を、彼らの通信から。福島原発事故の被災者でありつつ、地元被災者支援に奔走した僧侶、熊本地震の現地の僧侶たちが連携して、それぞれ遠隔地から能登半島に入った。
 
▼彼らのやり取り(かなり長いですが、概ねそのまま)
 
東本願寺は、能登教務所の建物は大丈夫そうですが、ライフラインがダメみたいです。
それ故、職員を6名金沢教務所に派遣にして、そこから現地に情報把握に入っています。
金沢教務所からは三班に分かれて物資などを運んだようです。
 
役場は戦場のようになっていたそう。電話や電気が通っていないところも多いようです。
輪島や珠洲へ復旧の手が入りはじめていて、途中の地域は遅れているのかもしれない、とのことでした。
 
それとは別に、以前訪問した二本松の佐々木君と娘、いわき市の藤内くんたちが輪島市で炊き出しとドラム缶風呂の用意をして5日に現地に入りしてすでに活動中(そこに七尾市や輪島市や新潟県高田市や小松市からも順次合流)。炊き出し場所
 
5日夜 鳳来保育所 120 けんちんうどん
6日昼 大屋小学校 500 豚汁
6日夜 合同庁舎 250  水餃子春雨スープ
7日昼 ふれあい健康センター 600カレー
7日夜 大屋公民館 150豚丼?
8日昼 子ども食堂(小松チーム)
 
また岐阜県の大谷派住職npoレスキューストックヤード代表の栗田暢之が2~4日まで現地入りしました。珠洲までは片道5時間(通常2時間程度)の大渋滞。いたるところで道路の陥没や土砂崩れが起き、通行可能な道路が極めて限定されているためです。志賀町~中能登町~七尾市~穴水町~能登町~珠洲市と、北へ向かうほど被害が深刻になっています(輪島市は時間切れで今回は入れず)。
 
 特に5月5日に被害を受けたばかりの珠洲市は「6千世帯の内、4~5千世帯が家に居られない状態」で、道路挟んで両向かいの家々が倒壊している状態です。今は人命救助が再優先ですが、水・食糧不足、断水・停電・燃料・通信断絶の中、避難生活支援も同時並行で必要も、行政も社協職員も被災している中、すでに疲労困憊の状態。何とか地域の助け合いの中で、ぎりぎりの状態であることは間違いありません。
 
 馳知事は「ボランティアは控えて欲しい」と言っていますが、それは一般論としてはそうかもしれないですが、僕としては、こうして宗門の皆様が続々と入られることは、被災者にとってはまさに助けに映ると思います。
 
 
 また現地に向かいましたが、渋滞の元凶と判断して引き返した仲間もいます。
時間内に目的地まで到着できないと判断して穴水町に入ったところで引き返してきました。
渋滞の種を作っただけて申し訳ないです。
 
七尾から穴水に向かう国道249号線が渋滞していて(穴水町には入ってからも渋滞)、20㎞程を1時間半ほどかかりました。
[通行可能]になっている国道も迂回路が何ヵ所かありました。
 
携帯の通信が穴水に近付くほど悪くなっていました。通話、メール、Googleマップ等が使えないところがちょくちょくあります。
 
あと、ラジオ情報で、七尾市役所に支援物資が集まっているが、職員の手がまわらず、避難所に運んでくれるボランティアを募集していました。昨日は市長がSNSで呼び掛けたところ、1名が手伝いに来てくれたようです。
 
奥能登までではなく、口能登での活動はできるのかも。口能登の人たちも今は自分たちのことで大変ですからね。
 
帰りに、七尾のお寺さんにガソリンを置いてきましたが、住職さんはヘルメットをかぶって作業に出かけられました。お寺の状況確認などはお連れあいさんと娘さんでしておられました。
 
土曜日から雪になるようなので防寒対策しっかりとして、気をつけて活動してきてくださいm(__)m
 
 
▼紹介された新聞記事
https://www.chunichi.co.jp/article/833685?fbclid=IwAR0gI0K28WG81xf-m_Ioeq6g5LPbYsxB4shR9mD4Lk9kUFGe1y9AhiyE724
 
 
 
■岩村義雄牧師を代表とする神戸国際支縁機構
阪神・淡路大震災以来、東日本大震災も含めて各地で、またスマトラやトルコ地震など、ウクライナや中東など苦しむ人がいる世界の各地へ支援に赴いている。
 
▼今回の現地活動報告リンク(安全です)
https://cdn.fbsbx.com/v/t59.2708-21/417073276_383605244181867_5694050406133334675_n.pdf/20240106-%E8%83%BD%E7%99%BB%E5%8D%8A%E5%B3%B6%E5%9C%B0%E9%9C%87%E3%83%9C%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2%E5%A0%B1%E5%91%8A.pdf?_nc_cat=108&ccb=1-7&_nc_sid=2b0e22&_nc_ohc=eBOZJR6Pu3MAX9cvEVp&_nc_ht=cdn.fbsbx.com&oh=03_AdRPAJHGWoK3RyDLrws5yX-0aJ1Ylv5bLTSRdOD2sM8u1A&oe=659BB2B5&dl=1
 
 
 
■天理教災害救援ひのきしん隊
略称災救隊は、120年の歴史を持ち、全国にも支部があり普段から地域で活発に活動。東日本大震災でもめざましい成果を上げた。重機や給水車など装備、日常的な訓練も自衛隊並みで、パワーは強力だ。
 
▼関係者による情報まとめ(そのまま)
天理教災害救援ひのきしん隊は現在、すでに出動をいたしております。
1月5日から、七尾市で石川教区隊と本部隊が給水車2台を出して活動しています(7日まで)。
また前日より引き続き、志賀町で石川教区隊は給水車1台を出して活動しています。
また石川教区では、救援物資の仕分けや運搬作業に当たっているのですが、
今日6日になってなんと一般教友からの救援物資の受け入れを中止せざるを得ませんでした。行政からの指導により、緊急車両が被災地に入ってまだ人命救助を行っているので、一般車両は被災地に入ってはいけないということになっています。

個人的な感想ですが、行政はなんと馬鹿なことをしていると思いました。
一般車両といっても、個人のレベルの車両と救援団体の車両とは別のはずです。
避難所では食糧も水もその他諸々の生活物資もすべて足りていないというのに、全く残念です。
先日、政府は台湾からの支援を断り(そのくせアメリカの支援は受け入れ)、
義援金だけをありがたくもらっていましたが、国際関係上とても恥ずかしい話で、何とも言えません。

天理教の教会は、私が最新の教会名称録で確認したところでは、
金沢市に29箇所、珠洲市に9箇所、七尾市に7箇所、輪島市に2箇所あります。
珠洲市の教会はいずれも海沿いに位置しており、津波の影響から免れていないと思います。現在、石川教区のほうで教会関係の被災状況を調べていますが、
私がX(旧Twitter)から得た情報では、神殿が全壊した教会もあるようです。

災害救援ひのきしん隊が本格的に出動するのは、これから、また人命救助が一区切りついた時点からになります。
(人命救助活動中は、警察・消防・自衛隊だけで、一般民間支援団体は入れませんので)。
またひのきしん隊が出動するにもマンパワーとともに資金も必要なので、
1月3日から天理教災害対策委員会ではそのための基金の募集を始めています。

それにしても新しい災害が起こるとそこに人々の意識が集中してしまい、
過去の災害が忘れられていくという別な問題も、被災地以外の地域で起こってきますね。
でも、それは我々の自覚次第ではないかとも思います。
 
 
 
■他にも、カトリック教会の「カリタスジャパン」、在日ムスリムの「アハマディアムスリム協会」、浄土真宗本願寺派なども組織的に現地入りしている。
 福島県いわき市で震災と原発事故以来、災害支援活動を続け、地元の各支援団体ネットワークの束ね役もする浄土宗僧侶は、全国のネットワークを生かして情報収集と現地入りの後方支援をしている。
 筆者が東日本大震災で当初、共に支援活動に赴いた京都の日蓮宗住職も、出動準備をしている
 
 
以上、筆者が長い取材でよく知っており、普段から連絡している関係者に限った例から一部を挙げた。当然ながら、どれも被災地で「布教」活動などは全くしない。
なお、この情報発信はジャーナリストの所業としてであって、被災地への支援にはもちろんならない。ならば自分はどうするかを考えたい。
 
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