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近未来の話をしよう-23

人は部屋の中にこもりっきりでは満足できない。
「引きこもり」という言葉を新型コロナ感染症の蔓延以前には良く耳にした。
感染症の蔓延は望むと望まないに限らず人を部屋に引きこもらせることになった。

ロシアのウクライナ侵攻の報道の中でとても印象に残ったシーンがある。遠くで爆撃音が響く中で人々が公園に花を植えるシーン。
破壊されてゆく街の中で緑を再生し、花を愛でようとするシーンを見た時、これが生活者の本質だと思った。

人はコミュニケーションを取る生き物だ。元々社会性を持ち組織で行動することによって繁栄を続けてきた。人間が社会性を持たなくなるとしたらそれは「種」としての衰退を意味しているのかもしれない。

リモートでのコミュニケーションやバーチャル空間でのコミュニケーションは、本質としての生物としてのコミュニケーションではなくコミュニケーションの擬似体験でしかない。社会が安定し、感染症をある程度抑え込めたなら人は再びコミュニケーションを図ろうとするに違いない。

ただし、コミュニケーションの安全性や正確な意思の疎通のために言語の壁を越える必要がある。そのためのテクノロジーによる補足と、まさしく日本的なコミュニケーションのモラルが見直されるに違いない。日本が世界で唯一感染症の大規模な拡大を防ぐことが出来たのは、コミュニケーションの方法論の中に「清潔感」という価値観が含まれていたからに違いない。

「清潔に保つ」価値観は日本人にとっては体系付けられていて生活習慣に組み込まれたものだろう。例えば毎日入浴し体を洗う、毎日歯磨きをする、手を洗う、髪を洗う。これらは日本人にとっては当たり前のことだが、諸外国では必ずしも当たり前ではない。

でも、どの国にとっても「当たり前のモラル」として定着すれば感染症などの拡大防止には極めて有効になる。そしてその「モラル」が前提となったコミュニケーションはこれからの社会生活やビジネスの上で必要なものになるに違いない。これから社会を復興し経済活動を再開するにはこの「コミュニケーション・モラル」がキーワードになる。

いわゆるテック産業やIT系企業はしばらく苦境に立たされるかもしれない。

ここまで社会構造が破壊されると、復興させるのに必要なのはソフト産業よりも現実的なハード産業や食品、エネルギー、建造構築、加工を手がける産業になる。もちろんそれをスピード感を持って成し遂げるにはデジタルの力が必要になるし、産業を再構築する際に以前よりも社会構造に適した新しい技術を適用した産業構築を行うことで環境に対する影響や安全性を確保できるシステムに変換するチャンスでもある。

エコシステムといった小さな環境に対するシステムを超えて、アーステックのような大きなシステムの構築に目が向けられるに違いない。

コミュニケーションについては巣ごもりやリモートワークとは違う新しい暮らし方やワークスタイルが模索されるだろう。健康や環境に対する安全性を担保しながら以前のワークスタイルに近いスタイルとそれを構築するのに必要なアイテムや様式が導入されるに違いない。

一極集中を避けて分散型の環境を重視したワークスペース形態が生まれ始める。場所とインフラさえあればどこがワーキングの拠点となっても不思議ではない。

都心にコワーキングのスペースを確保する需要は減少し、逆に小さなミーティングのためのスペースがインフラの交差する地域に乱立して、どこでもミーティングができ、自分自身のワークスペースに素早く戻れる場所が必要になるだろう。

ミーティングとは言ったが何かテーマを決めたミーティングではなく、結論を求める以前に数多くのアイデアを創出するためのコミュニケーションの場というのが正しいのかもしれない。その「場」は提供するべきものであって、そこから収益を得ようとする企業には成長は期待できない。むしろ資本を投下して、そこから生まれるアイデアに対して投資するべきなのだろう。

これまで市街地で働き郊外で暮らす形態ではなく、郊外と市街地の中間地点に短時間に人が安全に集まり、市街地では必要なものを手に入れ、郊外の自宅近くに小さなビジネス拠点を持って働く。そんな形態になるのかもしれない。

そしてその短い距離を繋ぐインフラとして最も重要なものがデジタルの力となる。

大きな「州」や「県」などの括りの自治体よりも「町」や「村」といった小さな括りの中で地域の特性を見出し、それぞれの「町」や「村」をネットワークで繋ぐことで周辺全体の経済力を上げることが必要になる。

これからの10年。大きな変化が全世界で起こる。


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