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事業再生のこと−31

コロナ禍の中で助成金、補助金、低利融資などを受けた
事業者の方は多いと思う。
しかし、それらの融資を受けて業績は回復しただろうか?
「事業を維持する」ためだけにそれらの資金を使ってしまった方が多いのではないだろうか?
ようやくインバウンドが戻ってきて、
インバウンド向けに新商品やサービスを開発しようとしても
以前苦労して申請した資金は底をついている、
ということになっていないだろうか?

●手に入れた資産をどうすれば有効に使えるか?

私たちの場合は最初「小規模事業者持続化補助金」を申請し、採択を受けることができた。3年前の時点では「一般型」での補助額は50万円までであり、補助率は2/3であるために、補助を受ける前に75万円の自己資金を用意する必要があった。

ただでさえ困窮しているから補助を望んでいるのに、まずは補助金額よりも30%も多い自己資金を準備しなさいということに無理があるし、たとえ融資で賄うにせよ、短期間には利息が発生してしまう。
そして銀行からの融資を補助金で埋め合わせすることはできない。
補助金は補助を受けた内容に沿って使わなくてはならないからだ。
また、例えば店舗での売り上げが落ち込んでいて、ネット販売進出するにせよ持続化補助金はweb関連の事業(ネットショップ開設には使えます)にはほとんど使えないし、IT補助金であっても高額な管理用のパソコンに対する補助の最大の金額であってもわずか10万円しか使えない。
中小企業庁の方達の使っているパソコンはみんな10万円以下なのだろうか?
システム開発費には数千万の補助枠があるが、それだけ高額のシステムを組むのはそれなりに大きな企業であって、零細の個人事業主には無縁な話になってしまう。
政府の考え方と小規模事業者との考え方には大きな乖離があるということだろう。
大企業内での社員の再教育(リスキリング)に関しては進んでいるようだが、中小企業での社員の再教育の環境はほとんど整っていない。
例えば、現在多く新設している大学院大学は費用が高額で、中小事業者は入学が困難で、実際入学している生徒はほとんどが大企業から学費を出してもらっている社員であることが多い。
私たち中小事業者は自らの努力で自らを再教育し、新しい事業形態を作り出していかなくてはならない。

●「小規模事業者持続化補助金」の用途

さて、金融機関からの融資や補助金で得た資金をいかに有効に使うか?が自社の再生や発展に大きく関係する。
「小規模事業者持続化補助金」の多くは「広報宣伝費」として使われることが多いが、それで良いのだろうか?
自社の広報宣伝に対する体制がどの程度整っているか?にもよるが、「広報宣伝費」は主に「広告製作」「チラシ・パンフレット」「営業用ツール」「web関連製作」あるいは「パッケージ製作」「商談会への参加」などに使われ、また一部は「設備投資」などに使われることもある。

●「広告製作」や「広告掲載」は媒体にもよるが非常に高額なことが多い。
「小規模事業者持続化補助金」では実行することは難しいし、実行できる媒体があったとしても効果は乏しい。
●「チラシ・パンフレット」などの製作に関しては、どのように使うか?が問題で
単に店頭に置くだけではほとんど効果がない。顧客リストがあれば配送をしたり、展示商談会などで配布するのならある程度は効果があるだろう。
●「営業用ツール」の中には上記のパンフレット類も入るが、具体的に得意先と商談する際に卸値や販売価格、自社の生産能力、商品の特徴、ターゲットとする顧客、取引に関する自社規定などを明記したものを作り商談で活用する資料で重要なツールだと言える。
●web関連費用は現在の持続化補助金では制限が強くなっているが、まずホームページをターゲットユーザーにマッチしたものとして製作したりリニューアルすることは大切で、コンテンツとの連携や拡大も大切であると言える。SNSだけに頼るのはリスクがあることも考慮した方が良いだろう。
●パッケージに関しても他のツールと同じくユーザーの嗜好性を考慮したものに仕上げる必要がある。ただし、パッケージは持続化補助金の補助対象にはならない場合も多い。
●商談会や販売会などへの参加のために首都圏や情報の拡散が期待されるイベントへの参加などに関しては持続化補助金の補助対象となることが多い。
●設備投資に関しては、設備投資しなくてはならない明確な理由が必要で、すでに商談が成立している得意先が要求している生産量の確保などに必要な設備などを増設する場合には有効だと言える。

補助金の使用で最も良くないのは、現状の苦しさを一時的に緩和するだけで、その先の事業展開や改善が望めない使い方であり、それでは補助金を使い切っても業績は改善しない。
将来的に補助金を有効利用することで事業が改善し、拡大できる布石とできる使い方でなくてはならない。補助金を使ったその時ではなく、その後で効果が得られる使い道を考え、補助額の内訳に入れるようにしなくてはならない。
これは融資に関しても同じで、融資を受ける前に2〜3年の事業計画書を書き、将来の効果や事業拡大を実現できるような使い方を提示しなければならない。


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