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事業再生のこと−30

事業再生について書いていたはずが、
ほとんどがリスクヘッジの内容になりつつある。
これだけ急激な不況が続いて、
まだこれからも大きな不況が待ち構えている時に
どうやってリスクから回避するかは中小事業者にとっては死活問題だからだ。
不況になった時、中小事業者がまず手がけるのは「仕事を確保する」こと。
確かにそれは必要なことだが、
もっと大事なことは「利益を確保する」ことだろう。
仕事が増えても利益を確保することができなければ
債務が積み上がり経営は困難になる。

●原価率を洗い直し損益分岐点を確認する

不況になる要素は様々だが現在のように原材料が高騰すれば、
当然商品原価は上がる。
商品価格を据え置けば利益は薄くなり、
損益分岐点も上がりこれまで以上の売上が必要になる。
逆に商品価格を引き上げれば損益分岐点は下がったとしても売り上げは減少し、
やはり利益を出すことは困難になる。
ほとんどの事業者は売上を重視して、どうやって売り上げを上げるかだけに注力する。しかしもし、生産原価が上がっていたなら売り上げを上げるたびに赤字が積み上がってゆくことだって考えられる。
利益率を上げる方法は二つしかない。
原価率を下げるために材料を変えて原価を引き下げて利益幅を増やす。
もう一つは原価率が上がった分価格を引き上げて利益幅を増やす。
不況の時代は大抵の場合は商品が売れなくなる。
どの方法を取るかはその事業者が持っているマーケットの特質によるところが大きい。まずは自社のマーケットがどこにあるかを再確認する必要がある。

●社会情勢からマーケットの変化を読み取る

日本を含め世界的な不況が始まってる。
このような時代で起こる社会現象を考慮しながら自社のサービスや経営のことを考えなくてはならない。
今回の不況の特徴は世界的に連動した経済が大きな要因であること。
侵略戦争に関してはいずれ終わるだろうということ。
コロナ禍に関してはすでに終わろうとしていること。

まず侵略戦争はどのような終結の仕方をしたとしても世界の勢力図を書き換える可能性があるということ。
欧米列強の時代は終わり、アジアの国々が台頭してくるのは明らかであり、
特にその中でも侵略戦争の影響を受けにくかったUAE、シンガポール、インド、スイス、南アフリカなどは経済成長を飛躍的に伸ばす可能性がある。
これらの国はすでに侵略戦争後の発展の仕方について考えているだろう。

逆に当事国であるロシアに関しては国力を失い、経済を中国に頼るしかなくなる。
中国は自国に収益をもたらす「化石資源」をこれまで以上に獲得することが出来る。これまでは世界の工場としての地位を確立してきたが、それらの拠点は他のアジアの国々に移る可能性が高い。
EU諸国も中国も少子高齢化が加速し、急速に生産性の高い世代を失ってゆく。
少ない若年層で高い収益をもたらすデジタル産業は今後も伸びてゆくだろう。
そのためにロシアはウクライナを中国は台湾を併合しなくてはならなかったとも言える。
アメリカのハーバード大学やスタンフォード大学のように世界から若い頭脳が集結する教育機関や企業を持つことで今後のデジタル経済圏を形成するのに有利に働くに違いない。

●世界は自分たちの足元と繋がっている

世界規模の話をすると自分たちとは縁遠い話のように感じるかもしれないが、世界の経済と私たちの経済は繋がっているのだから、まずは世界情勢を理解しておいた方が良い。

例えば日本の町工場で作られた家電商品を諸外国で販売する場合はどうだろう?
中国は確かに市場規模は大きいが少子高齢化が進み核家族化が進んでいる。
成功して自分で企業経営をしている事業者であっても、これまでのマーケットでは販売が難しくなってくるだろう。
UAE、シンガポール、インド、スイス、南アフリカは今後も経済成長が望める。
どの国も今後も世界から人が集中し人口が増える傾向にある。
ドバイなど小さな地域に人が集中すれば、そこには小規模ながら優良な経済圏が生まれる。
もちろん人が住むということはそこには家電が必要であり「優秀である」と世界からお墨付きがある日本の家電はそういった人口集中の新しい経済圏では必要不可欠なものになる。

まさしく「機能性」「品質」の高い日本の製品のほとんどは世界的に評価が高く、現在のように円安が進んでいるのであれば国内生産をして、それらの「新経済圏」の人々に売ることが可能になる。
後は「貿易」に関する知識、諸外国でのリスクの把握、販売のルートの確立などが必要になる。

●身近な改革からはじめる

世界に進出する前にまずこの不況下で業績をどうやって維持し続けるかが中小事業者の命題になる。まずは今自分たちがいるマーケットやターゲット層を再確認する必要がある。
●固定店舗の場合、周囲のマーケットの少子高齢化が進んでいないか?
●自分たちのターゲット層にきちんと訴求出来ていて認知が広がっているか?
●どの客層にも同様に自分たちのブランドイメージが定着しているか?
●新しいマーケットがどこに存在していて、そこに訴求する努力をしているか?
●自分たちの商品が、変化したマーケットのユーザー層のニーズに合っているか?

基本的にはこれまでのマーケットが激しく変化している中で、自分たちが提供してきた商品やサービスと現在のマーケットの間でズレが生じているかもしれないことを確認し、もしもズレが生じていたなら商品やサービスを現在のマーケットに合うように変えてゆく。
あるいは現在の自分たちの商品やサービスにマッチしたマーケットを探し出して、そこに集中的に商品とサービスを集中させることが必要だということだ。

要約すると、
●利益を出せるように原価率に対しての
 適正な商品価格で商品やサービスを提供すること。
●提供している商品やサービスと現在のマーケットのズレを修正し、
 時代や状況に合った商品を提供する。
●自分たちの商品やサービスに適合した新しいマーケットを探し出し、
 そこに商品を集中させる。

これらの改革をした上で「海外マーケット」を視野に入れたマーケットの拡大を試みる、ということが大切になる。
何にせよそれほど時間は残されていない。
すぐに行動を起こさなくてはならない。

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