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事業再生のこと−21

何もやらないで何かが起きることはない。
だったら何でも良いから何かをすれば良いのか?
前者は正しい。
後者は正しいとも間違っているとも言えない。
ただ「何かをする」ことは「何を生み出すかはわからない」とは言える。
その「生み出すもの」がより良いものを生み出すように行動するしかない。

●人の夢を食い物にする何者かは存在する

例えばマーケットへの出店に誘われたとしよう。
年々、そのマーケットは大きくなって、最初は駅前広場のごく一部を使っていたに過ぎなかったけれど、今では駅前広場全てを埋め尽くすような規模にまで拡大している。
「一度下見に来てくださいよ」と誘われて、以前のマーケットの様子とか写真で見せられながら案内される。
そういえば有名店や知り合いの店も出店していたよな、と思い出す。
仮設テントや平台は貸し出してもらえるらしい。
出店料金が少し高いのが気になったし、資材をどうやって運ぼうかと考えたけれど、何とかなるだろうと出店を決めた。

日曜日の朝に設営に行って、隣が知り合いの店だとわかった。
挨拶をして、何だか気分は盛り上がってきた。
設営が終わって、開店時間を迎えたけれど人はまばら。
「ここはね、夕方から人が増えるんですよ」
隣の店の人が言っていたな。
空いた時間をアルバイトに任せてブラブラと周囲の店を見て回る。
所々に聞き覚えのある店も出ていて、そこにはチラホラとお客様が来ていた。
ついでに飲食の出店で昼食を買って店に戻る。
昼から友達が何人か買いに来てくれた。
話が盛り上がって、気がつくと夕方。ようやく人の流れが増えてきた。
少しだけど買ってくれるお客様が出てきた。
前から気になっていたと声をかけてくれたり、友達から聞いて来ました、とか
なんだかお話ししていると楽しい。
あっという間に閉店時間が来て、撤収が始まった。名残惜しいな。
数件の仲良くなった店主さんで集まって「また出そうね」と次の再会を約束した。

●誰が稼いで、誰が損をしたのか?

状況だけ見ていると、なんだか楽しそうでマーケットって良いよね、なんて感じていませんか?
問題は利益が出たのか、損をしたのか?ということ。
フリーマーケットなんかで利益を出すのはとても難しい。
まず、商品価格の決め方が曖昧で「原価率」もあまり考えていないし、「原価率」の出し方そのものが単に「材料費」だと考えていることが多い。
フリーマーケットに出すことでメリットがあるのは
「知り合いが増える」「出していて楽しい」「少し知名度が上がる」
経費は?高い出店料。高くないと思っている人は「出店料」が「売上」の何%程度なのか考えてみれば良い。百貨店でも催事出店の料金は売上の30%以下。
マーケットで3万円売り上げて、出店料金が1,2000円として40%。平台やテントがレンタルだとすると半分以上が出店料金となってしまう。
だから、屋外マーケットで利益を出したかったら6万円以上の売り上げを目指さなくてはならい。
よっぽどの人気店か有名店でなくては難しいし、物販ではさらに難しい。
マーケットで利益を出せないのは経費計算が甘くなるから、というのが原因だろう。

では誰が利益を得ているのか?
それは主催者側に他ならない。
どんな催事場においても「場所代」として貸し出す場合に、店舗数がある一定数を超えれば必ず利益が出る。
店舗数×出店料金+レンタル料金>催事場レンタル費
となれば利益が出るのだから。
だから主催者は出店スペースを出来るだけ多くコマ割りをして店舗数を稼ぎたいと思う。通路を狭くとって少しでも店舗数を増やす努力をする。
こんな経験はないだろうか?
あちこちで開催しているマーケットの主催者が実は同じ会社だったということ。

マーケット主催者(社)って何だかボランティアのようで出店者に尽くしているように見えるけれども、だってそれが仕事として成立させる条件なのだから当たり前のことなのである。

そう、最初は「社会奉仕」のつもりで始めた主催者側も、自分が出店する側であるより、主催者側にいる方がメリットが大きいことに気づいてしまうと
それを本業にしてしまう人が多い。

●内容をよく吟味して自分自身が稼ぐことの出来る条件を導き出す

どんなマーケットであっても利益を出せないわけではない。
要は自分たちの販売する商品が、そのマーケットで出せる売上と、
必要経費のバランスをよく考えること。
どんぶり勘定でマーケットには出さないこと。
大抵のマーケットで商品価格が500円程度で製造時の光熱費、材料仕入れ、人件費などを加えて原価率が30%程度だとすると
損益分岐点は4万円〜5万円になる。
例えば搬入の時に自家用車で搬入して、そのまま搬出まで駐車場に預けておくと
当然駐車料金が経費に上乗せになる。
一旦車で自宅に戻って電車か自転車で来る方が経費は節減できる。
隣のお店で商品を買って昼食で食べるとそれも経費になるし、
お弁当を作って持って来る方が経費は減る。
車で自宅から平台を持ってきた方がレンタルするより安いし
とのかく無駄な経費は全て削減して販売に集中した方が良い。

でも、何よりも最初に主催者側が出してくる条件で採算が合うのかどうかをきちんと計算するというのが鉄則。

●同じ感覚で開業は出来ない

マーケットでそこそこの成績を収めて、売上で利益を出している錯覚に陥ったり
原価率がいい加減で誤った損益分岐点を出しているようでは
実業としての開業は出来ない。
たとえ損益分岐点が高くてもそれ以上の売り上げを確保できれば利益は出る。
そのためには、その売上が確保できる生産力が必要になる。
そして、単独で開業するときのハードルはもう一つある。
「集客力」である。
マーケットには多くの店舗が出店し、各店舗についたお客様が来てくれるという相乗効果がある。
単独出店開業で同じような集客力を発揮できるのだろうか?

例えば駅ナカの催事出店の場合、1日の売り上げが(場所にもよるが)8万円〜15万円、多ければ20万円出せるとしても、
同じ駅ナカに常設店舗を出した場合1日の売り上げは半分になる。
「催事」という少ない機会に集中するお客様が
「常設」になると分散してしまい1日の売り上げは半減するものだ。
ここからは真剣な広報宣伝活動と手法、努力が必要になる。
人口が多い市街地であっても、店舗の認知度を上げるためには最低3店舗の出店が必要になる。
開業するには、
「不定休にしない」
「常設店舗をあくまでもメインで考える」
「営業方針はお客様の都合に合わせる」
「資金繰りを常に考えながら経営する」
「状況によって原価率を計算し直す」
それらが出来ないのなら開業は見合わせた方が良い。

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