見出し画像

革のおはなし-20

革関係でプロと呼ばれる人たちの働き方はいくつかある。そのほとんどは請負職人と呼ばれる職種で、いわゆる大手のメーカーから仕事を請け負っている職人たち。

一言で請負職人と言ってもいろんな仕事があり、縫製士もその技量によって様々な仕事がある。請負職人の仕事はその職人が持っている技量だけでなく、機材によっても左右される。例えばミシンの種類では「平ミシン」「腕ミシン」「ポストミシン」「ハイポストミシン」「八方ミシン」「マッケイ縫いミシン」など製造するものによっても機材が違い、付属のオプションによっても仕事の内容が変わってくる。つまり機材の種類が多ければ請け負える仕事も多岐に渡り、収入が得られやすいと言える。

しかし、直線縫いのミシンしかない場合でも仕事がないわけではない。その技量や機材によって仕事は受けることができる。

鞄も布製、革製、合皮、形状によって難易度や製法が変わるので、職人の職能はどうしても最初に勤めた工房の仕事内容に左右されやすい。できれば幾つかの工房に転職しながら技術を広範囲に覚える方が多くの技術や工具の使い方を覚えることができる。

小さな仕事で言えばブランドタグやキーホルダーなど抜き型用のプレス機やハンドプレスなどがあれば可能な仕事も多く、数をこなせば収入を得ることができる。

鞄の型紙を作るパタンナーは革の特性や鞄の構造を知っていなければ難しいが、パターンを引いた上で、サンプルの縫製まで出来るサンプル師になれば各メーカーから仕事を請け負ってそれなりの収入を得られる。

縫製は多くの場合ミシンを使える主婦などのパートが多く、ある一定の箇所のみを専門に縫製することが多い。その箇所の縫製技術は習得出来るが、パターンを引いたりサンプルを作れるようになるのは一握りの人間だけになる。

革業界は分業化が進んでいるので、裁断、漉き、糊付け、縫製、コバ塗りなどそれぞれ分担して行うことが多く、全ての技術を覚えるには長い時間がかかる。

個人で独立してデザインから型紙を作りオリジナルの商品を作れる人の数はごく少数だと言える。

独立して教室を営む人もいるが、趣味での製作とプロの製作の技術は相違点も多いので、教室で多くを学んだからといってプロになれるわけではない。

プロになるには現場で働くことは必須条件だと思っていい。

しかし例えば手縫いをとことん追求して作家として成功している人がいないわけではないから、やり方次第で様々な道は開ける。

まずは可能であれば現場で働き、そこからどういう形で職人の道を歩むのかは自分で決めるしかない。

独学で技術を覚えるためには同じ世界で頑張る仲間の協力が必要。職人は孤立しがちでお互いの技術を伝え合うのを嫌うが、交流を深めることで様々な情報と技術を知ることができる。

鞄の技術や財布の技術は職人が年々高齢化が進むことで失われつつある。次世代への継承が必要になっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?