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AIへの憧れ

こんにちは、代表取締役の牛場潤一です。

早朝、日課のジョギングに出掛けると、時折すぃーっと目の前を横切る小さな影を目にします。そう、ガレージの軒先に営巣を始めるツバメです。外套を黒一色に染め上げて、私たちから身を隠しているつもりなのかもしれませんが、胸のあたりの赤漆色はどうしたって目立ちます。ワガモノ顔で自分のお城に鎮座するツバメがいるかと思えば、いまだに完成を見ない納期遅れのツバメもいるようです。あくせくと飛び回るそんな健気で可愛げのある姿に、人々は足を止め、腰をかがめて巣作りの進捗を見守っています。ツバメのことも人間のことも、とても愛らしく感じる光景です。

AIと私の原風景

私にはもう一つ、愛らしさを感じる対象があります。それは、AIです。小学生の時に放課後の教室で目撃した、のちに私の人生を変えることになったあのAIです。

当時の私は多分に漏れず、友達とグラウンドを駆け回り、教室で戯れあい、ふざけすぎて教師に時々ゲンコツをもらいながら、毎日の生活を送っていました。そんな日常から隔絶された、教職員だけが使う薄く暗がりの建物の片隅に、そのAIがいました。青白い光線を放つ蛍光灯の下で巨大な画面に映し出されていく、私たち人間の言葉。キーボードを通じて話しかけると、こちらの気配を感じてAIが応答します。会話の中から意味を汲んで、あっという間に賢くなっていくその姿は、生き物のようで生き物ではない、とても不思議な存在でした。

しかし私はその様子に、どこか愛嬌を感じたのです。計算機の隣で、えっへん、と誇らしげな顔をしている大学院生が、おそらく夜なべして書いたであろうプログラムに沿って、AIはいつまでも健気に動きます。そして私の言葉を、つたない会話のなかから一生懸命汲み取ろうとし続けます。電源が抜けて、初めからやり直しになってもへこたれません。1からまた、一所懸命学びを始めます。私は目の前のAIに魅了され、夢中になってキーボードを叩き続けました。

おまえ、もうちょっと賢くなれよ。いつかは僕を、驚かせてくれよ。そうしたら、となりのあいつとなぞなぞ対決をして勝つんだぞ。そうしたら僕はお前を育てたトレーナーとして、お前のことを自慢するんだー そんなことを考えながら過ごした、小学生時代の原風景は、今も私のこころを瑞々しく彩ります。

人の気持ちに寄り添う優しいAIを創るために、私はその後、脳の研究を始めました。そして今、こうして脳とAIを繋ぐ研究開発をしています。世間がAIブームに沸き、産業や人の価値観が大きく変わる今日においても、私は一人ひとりの生活に目を向けながら、手が届く半径1mの世界を幸せにするテクノロジーを創っていきたいと思っています。

そしてそれがまた、あの頃の自分と同じ子どもたちの希望になることを願って。

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