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脳の不思議が好き

医療事業部・作業療法士 小倉美帆

大学の作業療法学専攻を卒業し資格を取得した後、脳外科病院で作業療法士として7年間働いていました。当時から、脳を損傷したときに起こる様々な障がいの多様性、とそれらを治すことの難しさに直面しつつも、患者さんやご家族がそれらを乗り越えていけるようにサポートすることをやりがいに感じてきました。今振り返っても一貫してずっと脳の不思議さと難しさに興味を持ってきたと思います。

2012年頃、当時所属していた病院に新たな治療機器を導入するにあたり、リーダー的な役割を担うことになりました。新しいことに取り組む際は、臨床現場で培ってきた知識だけでは足りず、神経科学や電気生理学など、新しい分野の勉強が必要でした。論文や書籍を読み漁り、学会や研修会などを半ば闇雲に聴講したりして知識をつけてきましたが、神経科学や電気生理学についてさらに専門性を高めていきたいと思った時に、牛場と知り合い、2015年から慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室に研究員として入職することになりました。当時私は大阪で仕事をしていて、30歳前後で突如東京に行くという選択をしたのですが、私にとってはとても大きな決断だったと思いますし、それを支えてくれた周囲の人に感謝をしています。

2009年 初めての学会発表

慶應大学のリハ科では、当時、日本医療研究開発機構(AMED)の研究プロジェクトの有期研究員としてご一緒させて頂いていました。当時の医学部教授里宇先生と、牛場のBMIを使ったプロジェクトが医学部・理工学部共同プロジェクトとして採択されていました。臨床の現場で患者さんにBMIを用いた訓練を導入し、研究を積み重ねること。そして、神経生理学をはじめとする知識を深めることに集中をした4年間で、臨床と研究の2軸からとても充実した時間を過ごさせていただきました。そして、この時の経験を通じて、療法士として臨床の現場におけるBMIを一番知っているのは、私だという自信と、この経験を社会、患者さんに還元していく使命のようなものを感じるようになっていました。


2016年 石原大臣(当時)の慶応義塾大学医学部視察

LIFESCAPESへの入社

ちょうど契約期間が終わる頃、LIFESCAPES社への入社のお誘いをいただきました。

今後のプライベートなライフプランと仕事の両立に悩む一方で、慶応の医学教室で積み重ねたこと、そこから見えたBMIの可能性が研究止まりになってしまうのはもったいないと思っていました。国が大きな金額を投じて、研究をサポートしていることを目の当たりにしたときに、これを社会・患者さんの手に届け、普及させることが次のステップとして大事だとも感じていました。さらには、臨床・研究の理解を深めていく中で、リハ業界をもっと良くするための要素も見えてきていたのですよね。例えば、先進技術はもっと現場で活用されるような形に落とし込んでいくべきでは、と感じていましたし、リハ医療の質の均一性をより高めていくためには、リハ業界もテクノロジーを積極的に受け入れ、汎用させていく必要があるとも思っていました。

結婚を機に大阪を拠点にリモートワークをすることなど、仕事をする環境については色々とご配慮をいただき、家庭とのバランスをとりながら仕事をできていることはとてもありがたいと思っています。

脳の不思議には今でも興味があります。現場では、麻痺治療の中で手に関する治療は優先度が低くなってしまう現実があります。運動麻痺の中でも手を治すのが難しいからということと、限られた入院期間の中で、自宅退院を目指すには、歩行能力や日常生活動作の獲得が優先されるといった現実があるのですが、でもやはり患者さんと触れ合う中で、手が使えないことのもどかしさをたくさん目の当たりにしてきました。

LIFESCAPES社宛に頂いたお手紙の中に、お子さん用のお弁当をまた作れるようになりたいというお母様の思いが書かれているものがありました。やはり手は生活の上で欠かせないものですし、作業療法士という立場からも、手を少しでも回復させることはこれからも向き合っていきたいと思っています。

療法士が企業で働くことの意味

私がここで働くことの使命のひとつは、リハ業界の課題を、一緒に仕事をしている、技術の人、営業の人に理解をしてもらうことだと思っています。臨床の現場を知っているからこそ、のコメントは求められる場面が多々ありますし、その点にやりがいを感じます。

そして専門外の様々な領域の人たちと一緒に仕事をすることを通じて、新鮮な指摘を受けて、ハッとする場面もたくさんあります。例えば、開発や販売の視点から、より多くの患者さんに製品を使ってもらうためにはどういう機能を追加したらいいのか、と質問されて一緒に考えたりすることも多くあります。今は社内の仲間に刺激を受けて、固定概念にとらわれない柔軟な視点が求められるので、この経験がまた色々な場面で活かせるといいなと感じています。

今でも臨床で患者さんと関わることが好きですし、現場で療法士さんの責任の大きさ、大変さを知っているからこそ、尊敬の念は絶えません。一方で、今の仕事は臨床の現場だけでは得難い経験をさせて頂いていると思いますし、少しずつではありますが既存の医療にとらわれず、患者さんの回復に貢献していくために新しい成長をしているのではないかなと感じています。そして私の経験が、後進の療法士さんの職域を病院・クリニック以外に広げていくきっかけになれば、とも思っています。

会社としては、まだまだこれからです。まずは機器を現場にお届けして、そこから得られる反応を、社内や業界(医療機器メーカーや、サプライチェーンに携わってくださっている皆様)に療法士の視点を交えながらフィードバック・通訳していく必要があると思っています。そうすることできっと、新しい開発の可能性や、技術応用の視点が生まれると思います。

このような動きを通じて、リハ業界をぜひ良い方向に変えていきたい。そう願っています。

趣味・特技

お酒を飲みながらおつまみを作ること
読書
旅行
今は子育て中、コロナもあってあんまりどれもできてないです・・・

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