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ライフリンク・メディア報道・2012年10月・人権擁護大会

2012年10月4日、佐賀市で開かれた日弁連人権擁護大会の分科会「強いられた死のない社会をめざしてー自殺をなくすために私たちができること」の議論を紹介します。パネリストは、清水康之代表、滋賀県野洲市市民部市民生活相談室主査、生水裕美さん精神科医で岩手医科大学講師の大塚耕太郎さんNPO法人多重債務による自死をなくす会コアセンター・コスモス理事長、弘中照美さん。コーディネーターを、佐賀県弁護士会の辻康弘さん東京弁護士会の杉浦ひとみさんが務めました。

清水康之代表の発言です。
推計では、自死遺族は300万人とされ、国民の40人に1人が家族を自殺で亡くしていることになる。自殺対策は個人、地域、社会構造の3階層にわけて考えるべき。特に注目したいのは地域レベルの対策で、調査すると地域によって年代や職業にかなりの違いがある。もう一つは、自殺の背景には、生活苦、過労、うつ病など60を超える要因があり、1人につき平均して四つの要因が絡んでいることが分かってきた。まずは地域の実態を見極め、その上で、どんな問題を抱えているのかを踏まえた関係機関の連携が大切になる。実践している地域では自殺者が減っている
自死遺族は自らの責任を責め続けるが、語り合うことで、亡くした人の楽しい思い出や人生と向き合うことができる。そんな自死遺族が集まって語り合う『分かち合いの会』は増え始めているが、それでも足りないのが現状だ。分かち合いの場は、多くの『体験』が集まる拠点になりうる。ここを通して関係機関が支援をしていくことが大切になる

滋賀県野洲市市民部市民生活相談室主査、生水裕美さんの発言です。
滋賀県野洲市では、不動産業者と協議し、家賃滞納者を発見したら、生活に困っていないか話を聞き、市役所に相談を促すように協定を結んだ。不動産業者と連携すると保証人や緊急連絡先が分かる。鍵を持っているので、すぐに家に入ることができる。これで生活困窮者は命が守られ生活再建ができ、不動産業者は孤立死が防げて資産価値が守れる。市役所は安心・安全のまつづくりにつながり、『三方良し』になる
行政がだめだから民間に任せるというのでは、行政サービスはますます機能しなくなる。民間がよりきめ細かなサービスをするためにも、行政の機能回復は大切。『意外と使えるんです市役所って』がコンセプト。なぜなら、市役所には命をつなぐサービスがそろっているからだ

精神科医で岩手医科大学講師の大塚耕太郎さんの発言です。
医療の立場では、身体的な治療をしながら心理的な処置もしなければならない。非常に大事な視点は、最初にどれだけ温かみをもって対応できるか。初回の雰囲気が治療全般の成功を左右しかねない。最初の入り口として、丁寧に接することが安心感につながり、その後のケアにつながっていくと思う。連携の継続性では、複数でケアしていくので、誰かが船頭にならないと破たんする

NPO法人多重債務による自死をなくす会コアセンター・コスモス理事長、弘中照美さんの発言です。
誰かが相談に乗ってくれる、話を聞いてくれるだけでも少しは気持ちが楽になることがある。きちんと話を聞き、一緒に解決に向かって進んでいくのが寄り添いや連携だと思う

日弁連はこの大会で「自殺防止対策を求める決議」をしました。
◆国は、人を死へと追い込む社会の構造的要因を取り除くことが自殺対策として不可欠であると認識し、労働法制・労働政策の抜本的見直し、充実した社会保障、教育、経済支援策の確立などを実現すべきである。
◆国をおよび自治体は、自殺予防策として、自殺に至る経路や要因について、遺族の心情に配慮しながら徹底的な調査を行い、社会的要因を分析して対策を立てること。法律家、医療者、福祉関係者などとネットワークを構築し、その連携の中核を担うこと。
◆国をおよび自治体は、自死遺族支援策として、差別や偏見を解消するため、自殺の背景や要因の告発に取り組むこと。生活再建を支援する制度・体制を構築し、特に自死遺族が必要な支援を受けられる体制を構築すること。
◆事業者は、労働の過労自殺などに関し、責任が大きいことを自覚し、労働条件や職場環境、健康管理体制や組織改善を徹底すること。
◆報道機関は、自殺に関する報道をする場合、自殺者や遺族に配慮し、連鎖自殺の恐れがあるとされることを踏まえ、適切な報道の在り方を自主的に議論すること。
◆日弁連は、自殺対策で積極的な関与を永続的に行うことを誓い、研修やマニュアル作成など、必要かつ十分な支援に全力を尽くすことを決意する。

写真は、岡本太郎美術館にて。

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