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きょう心にしみた言葉・2023年8月28日

ヒューマン・サービス職の場合、身体的負担だけで、その労働負担の大きさを評価することはできません。
人との関係、とりわけ問題を抱えた人との関係を職務とすることは、緊張の持続が必要とされる、情緒的な負担の高い仕事です。身体的負担感であれば、十分な休息をとれば解消することも可能でしょう。
しかし、情緒的負担感の場合、たとえ、仕事を離れて帰宅したとしても、よほど上手に気分を切り替えることができなければ、容易に解消するものではありません。

「バーンアウトの心理学 燃え尽き症候群とは」(久保真人・著 サイエンス社)

バーンアウト(燃え尽き症候群)という現象が表面化したのは、1970年代中期以降のことで、70年代以前はほとんど問題になることはなかったといいます。それはなぜか。バーンアウトは、ヒューマン・サービス、つまり顧客にサービスを提供する仕事の需要の急増が原因と考えられています。まるで全人格を投げ込んでその成果を競うようなヒューマン・サービスは、働く人を激しく疲弊させ、働く人の心をどこまでも消耗させます。「仕事を離れて帰宅したとしても、よほど上手に気分を切り替えることができなければ」、その疲れをとることはできず、心の消耗も終わりません。

家の崩壊や地域社会の空洞化が進む現代社会では、それまでは家族やコミュニティの中で完結していた生活の諸問題の対応までも、外部のサービスに頼らざるを得なくなりました。介護や教育をはじめ様々に開発された消費形態によってヒューマン・サービスの需要が加速度的に高まり、多くの人がヒューマン・サービスの仕事に就き、そして、年々急増していく仕事量に押しつぶされそうになっています。ヒューマン・サービスによる疲労は、農林水産業や製造業が中心だった時代の疲労とは質的にまったく違うものです。
なぜ、私たちは、こんなにも生きづらいのか。同志社大学教授、久保真人さんの著書「バーンアウトの心理学 燃え尽き症候群とは」を読むと、その理由の一端がよくわかります。理由を把握することは、解決に向けての大きな手掛かりでもあります。


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