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きょう心にしみた言葉・2024年8月1日

病者や老人の治療において私たちが犯す最も過酷な過ちとは、単なる安全や寿命以上に大切なことが人にはあることを無視してしまうことであるーー人が自分のストーリーを紡ぐ機会は意味ある人生のために不可欠であるーー誰であっても人生の最終章を書き換えるチャンスに恵まれるように、今の施設や文化、会話を再構築できる可能性が今の私たちにはある。

「死すべき定め 死にゆく人に何ができるか」(アトゥール・ガワンデ・著 原井宏明・訳
 みすず書房)

外科医にして「ニューヨーカー」誌のライターであるアトゥール・ガワンデさんの著書「死すべき定め 死にゆく人に何ができるか」から紹介しました。人生の終盤をよりよく生きようとまさに精魂を尽くした人々のエピソードが、医師、ジャーナリスト、息子、そして人間自身の視点から綴られています。終末期の患者たちが問いかけるものは、私たちの人生そのものへの問いかけです。「豊かに死ぬ」ことは、今ある生を豊かにすることにつながっています。

日経新聞の書評です。
「今日の介護施設で老いていく高齢者とその家族に焦点を当てて、その残酷なまでのプロセスを描き切っている。本書には、老いて死んでいく人間の生々しいまでの真実が描かれており、読者は畏れにも似た感銘を受けることであろう」

朝日新聞の書評です。
「死は当人だけでなく家族の問題でもある。アメリカで生まれ育ったガワンデだが父母はインド人移民で、ホスピスで逝った父の遺体は遺言でガンジス川に散骨される。人生は物語としてとらえられて初めて意味あるものに感じられるのだとガワンデは考える。終末医療はまさに文学的な試みなのだ」

作家の酒井順子さんは、こう指摘しています(週刊文春「文春図書館」2016年7月)。
「この本を読んで強く感じたのは、遠くない時期に死を控えた人にとって、話すことがどれほど重要な役割を果たすか、だった」

本の中には、深い問いかけが連なるように綴られています。
「弱り果て、衰え果て、自分でやっていくことができなくなった時に、どうすれば生きる意義が見出せるかについてである」
「今を犠牲にして未来の時間を稼ぐのではなく、今日を最善にすることを目指して生きること」

 今日を最善にしたいと心から思える一冊です。

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