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きょう心にしみた言葉・2024年8月7日

学校という空間は、閉鎖的な教室内で個人にキャラとしてふるまう空気をつくりだしたうえで、各キャラに対して独特の仕方でヒエラルキー構造を与えていく。そのヒエラルキーからは、学校空間にいつづけるかぎり逃れることはできないようだ。そこでは「強いキャラ」と「弱いキャラ」に強制的に分類され、「キャラ被(かぶ)り」した場合や、ダメキャラを与えられた場合は、「キャラチェン」「キャラ替え」をしなければ、「ちょうどよいぬくいところ」に行くことは難しい。それに失敗したものは「いじられキャラ」に落とし込められてしまう。

「ネットいじめ」(荻上チキ・著 PHP新書)

社会や教育、文化の鋭い分析、批評で知られ、テレビのコメンテーターやラジオのパーソナリティとしても活躍する荻上チキさんの著書「ネットいじめ」から紹介しました。「ネットいじめ」が顕在化してきたのは2007年頃と言われています。荻上チキさんの著書「ネットいじめ」は2008年に出版されました。まだ、ツイッターやフェイブックは広く普及しておらず、LINEやティックトックはその姿すら見せていない時期ですが、ネット社会がもたらした子どもへの悪影響を見事に言い当てており、今読み返しても示唆に富んだ内容です。社会問題化し始めた学校勝手サイト、プロフ、ネットいじめ、ケータイ文化、キャラ問題、ゾーニングといった事案や現象について幅広い視点から分析をしています。
 その上で、ネットをめぐる教育問題について、大人たちが陥りがちな点を挙げて警鐘を鳴らしています。
 ①顕在化している問題を「インターネット」や「若者」、「教育」といった特定の対象だけの問題と考えてしまっている。 
 ②歴史の中で繰り返されてきた新しいメディアへの誤解・流言は今もそのまま起きていることに気づいていない。
 ③ネットいじめが新しく生み出された問題ととらえてしまい、過去の研究や議論の蓄積が参考にされていない。
 ④メディアとコミュニケーションの大きな変化についての認識が十分ではない。

大人たちが気づかない間に、子どもたちの世界の「生きづらさ」はどんどん深刻になっています。いじめは昔からありました。しかし、かつてはまだ逃げ場所があったのではないでしょうか。ネットで常時接続されている今は、その逃げ場所を見つけるのが大変難しくなっています。

荻上チキさんはこうも指摘します。

「インターネット技術によって『キャラ戦争』が文字通り「終わりなき」ものになったことは、学校空間での『弱いキャラ』に対して大きな苦痛になりうるだろう。

大人たちは、子どもの世界の変質を学び、向き合い、その改善に一緒に全力で取り組む必要があります。

小中高生の自殺者数は、自殺者総数が減少傾向にあった中でも増加傾向が続いており、2022年には過去最多の514人、2023年も513人に上り高止まりしています。

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