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ライフリンク・メディア報道・新聞の社説から②

地方紙は、地域に暮らす人たちの顔が見える距離から、地域に密着した報道を続けています。それぞれの地域から「いのち」をめぐる多くの提言をしています。

2010年2月12日東奥日報の社説「自殺対策緊急プラン 『生きる力』支える社会に」は、清水康之代表の指摘に言及しています。

ライフリンク代表の清水康之さんは、自殺問題を読み解く上で鍵となる三つの数字があると述べている。
 一つは「98・3」だ。日本の年間自殺者が初めて3万人を超したのは1998年。自殺者を月別にみると例年、決算期に当たる年度末の3月が最も多い。清水さんは、この年の3月が転機になったと言う。
 前の年に山一証券の破たんなど金融危機が深刻化した。前年より自殺者が一気に8千人以上も増えた背景に、社会経済的な要因が深く関係していた。
 二つ目は「4・0」。失業、生活苦、多重債務、うつ病という四つの段階を経て死に至るなど、一人の自殺の背景にいくつ要因があるのか示す数字だ。
 最後は「72」。自殺者の72%が死ぬ前に相談機関を訪れていたという。最後の最後まで生きる手段を求めて、相談窓口にたどりついていた人々を救えなかった重い現実を、われわれは直視しなければならない。

2010年2月25日京都新聞の社説「自殺なくそう 命を守ろう」は、ライフリンクの調査と分析を引用しています。

ライフリンクなどの分析はもっと詳細だ。
 自殺者の遺族からの聞き取り調査を実施。「配置転換の後、過労と職場の人間関係の悩みが重なり、うつ病を発症」のように、平均して四つの要因が複合していることが分かったという。
 自殺1カ月以内に相談機関を訪れていた人が6割以上と、サインを発しているにもかかわらず自殺を防止できていない現状が明らかになった。
 精神科医だけ、あるいは多重債務など法律関係の相談だけでは対処できない。つまり行政の縦割りが壁になり、連携できていないというわけだ。

2010年9月8日下野新聞の社説「とちぎ発 自死遺族の会 孤立防ぐ支援づくりを」でも、ライフリンクの「自殺実態白書2008」が引用されています。

 自殺を防ぐことは最も大切だが、遺族へのケアも重要だ。ライフリンクがまとめた『自殺実態白書2008』によると、全国の自死遺族は約300万人と推計されるという。これだけの遺族が、それぞれの悲しみや苦悩を抱えている。
 家族の自殺をとめられなかった自責の念、勝手に死ぬのは無責任だという怒り。遺書がない場合は理由もわからないための戸惑い、自殺への社会の偏見ーー 同白書では自死遺族の4人に1人が「自分も死にたい」と答えたとある。

9月10日の世界自殺予防デーを前に、2010年9月9日の山形新聞、京都新聞が社説を掲載しました。ここでもライフリンクの調査・分析が引用されました。

 県内でも去年だけで350人が自殺した。自殺を防ぐため、周囲でできることはないか。社会全体で問題を共有し、支え合うことで、悩み、苦しむ人たちの孤立を防ぎたい。あす10日はWHO(世界保健機関)が定めた「世界自殺予防デー」。
 自殺は死因の6番目に位置する。男性の20~44歳、女性の15~34歳では死因の第1位にランクされる。自殺率は米国の2倍、英国の3倍を超す。
 2006年に自殺対策基本法が施行され、16年までに自殺死亡率を2割減らすことを目標とする自殺総合対策大綱が07年に閣議決定された。
 本県でも04年に「自殺予防対策推進会議」を設置、自殺予防に向けた普及啓発活動や相談体制の充実に努めている。

2010年9月9日山形新聞社説「年間自殺者3万人 希望つなぐ社会の支え」

 メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業者の割合は、2007年調査で34%にすぎない。「専門スタッフがいない」「取り組み方が分からない」といった理由からだ。
 対策の必要性が叫ばれ続けているが、一向に前に進まないのが現状だ。景気低迷で手が付けられていない事業者も少なくないかもしれない。
 自殺は本人だけでなく家族、社会にとって「最大不幸」だ。時を待たずに、「戦略」を実行に移すべきだ。

2010年9月9日京都新聞社説「メンタル健診 安心して受ける環境を」


写真は、岩手県立美術館


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