いろんな形の日記

・昼にいつものカフェに入ると、見た目は高校生くらいに若く見えるがおそらく高校を卒業してすぐくらいの男の子が、軽く笑みを浮かべながら焙煎機のあるカウンター奥の方を眺めていた。

その後、その子はマスターと珈琲について語り合っていて(語りあうと言っても、男の子はシャイらしくほとんどマスターが一方的に話していた)、どうやらその子は将来的に珈琲の仕事をしたいらしく、僕が来る前からマスターへ相談していたのだろう、マスターは今まで色んな子が珈琲の仕事をしたいと言って訪ねてきたこと、その中には珈琲の仕事に就いた子も多いことなどを話していた。

僕が帰る間際くらいに、マスターがその子に「よければもう一杯珈琲飲む?カフェインレスの珈琲なんだけど。飲めるだけで飲んで残してもいいし」と言ってサービスしていて、マスターは相談を受けたことがすごく嬉しそうで、またその子の珈琲熱にどうにか応えようとしていて、そして一方で男の子は本当に珈琲が好きなんだということが窺い知れて、なんというか、希望を持った若者とその希望を受け止め背中を押してやろうという大人のそのやりとりがとても良かった。マスターに声をかけるのは少なからず勇気が必要だっただろう。好きだというその気持ちで行動したんだろうなぁ、などと少し想像してみた。

・小説は川上未映子の『夏物語』一冊だけを読んでいるが、小説以外は数冊同時に読み進めている。その1冊が石川直樹の『完全版 この地球を受け継ぐ者へ 地球横断プロジェクト「Pole to Pole」全記録』で、この本がどえらく面白い。

タイトルのとおり、石川直樹が若い頃に参加した地球横断プロジェクトの本なのだが、ほとんどの内容は参加していた間の日々の日記である。

地球横断プロジェクトという壮大な内容ではあるが、日記であるために、日常とまでは言えないにしても僕の生活から全くかけ離れたものではなくて、半ばそのプロジェクトを石川直樹のすぐ側でついて回っているような感覚で読むことができている。参加している石川直樹とそれ以外の若者の人間模様もとても面白い。

まだ3分の1を読んだ程度だが、今年中には読み終えそうな感じである。

・日記の本としては植本一子の『かなわない』も、毎日ではないが、この数ヶ月すこしずつ読み進めていて、これは『Pole to Pole』とは別の感じで面白い。

夫であるECDさんの行動に「殺意が湧いた」という記述が結構頻繁にあってときに声を出しながら笑ってしまうのだが、ECDさんの行動に僕自身の日々の行動に思い当たる節があって、笑いながらも複雑な気持ちではある。殺意といった過激なものではなくても、妻に殴りたいくらいは思われているのだろうな、と。

日々の生活に大変な感じが伝わってきて、これこそ僕ら生活とも変わりない日常の生活の日記ではあるが、それこそ日々の生活というか瞬間に伴って感情は揺れ動いて、それを植本さんはありのままに日記として記している。ありのままに記すことができるというのは、すごいことだと思う。僕にはしたくてもできないことだ。

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