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マテ茶にハマる

ついに出会ってしまった。マテ茶である。

持病の関係で酒をほとんど飲まなくなって以来、飲料の嗜好品はコーヒーだけとなった。もともとコーヒーは好きだったが、さらに飲む量が増えていった。5杯以上も飲むことはないから、増えたと言ってもそこまで問題はないのだけれど、酒の代わりにコーヒーを飲んでいるようなところもあるので、酒を飲んでいた深夜の時間帯にも飲むことがある。そうなると、当然睡眠に影響が出てくる。

もともと持病は睡眠に大きく影響しているので、寝る前に神経を刺激するような飲み物を控えるべきであることは分かっている。だが、酒を飲まなくなった上にコーヒーまで飲めないとなると、ストレスが溜まる。ストレスも睡眠には良くない。ストレスとカフェインによる刺激を比較して、カフェインの方がまだマシだと感じ、深夜でもコーヒーを飲んできた。

それでもやはりカフェインを抑えることができるのであれば、そうしたい。夜に飲む用として、コーヒーに代わるものがないかとこれまでずっと探してきた。


- たんぽぽ茶

味がコーヒーに近いと言われている。期待して飲んで最初はそうかもと思ったが、やはりコーヒーではなかった。コーヒーっぽくもなかった。マズいとは思わなかったが、美味いとも思わず飲むのを止めた。


- ほうじ茶

美味いが、飲むとホッとしすぎる。味に飽きてしまう。


- 緑茶

美味しいし渋みもあっていいが、これもホッとしすぎる。コーヒーほどのパンチがない。


- デカフェのコーヒー

コーヒーに味が近く、普段のコーヒーと同じ感覚で飲める。申し分ない。だが、なぜか続かない。デカフェの豆を挽くくらいなら、普通の豆を挽こうと思ってしまう。それにデカフェの豆はちと高い。

そんなこんなで色々と試し、最初はいいと思っても、継続して飲めるものがなかった。というわけで、最近は特に悩むこともなくコーヒー豆を挽いていたが、先日スーパーに行ってふとお茶のコーナーを覗くと、マテ茶が置いてあった。マテ茶はこれまで試したことがなかった。というか、スーパーで初めて見た気がする。物は試しで、あまり期待せずにとりあえず買ってみた。


しばらく買ったことすら忘れていた。3日前、棚の上を見ていると雑に置かれているマテ茶が目に入り、その夜はコーヒー豆を挽くのが面倒くさく感じていたこともあって、封を切って、淹れてみた。あまり期待することもなく。

衝撃的な味だった。

まず、最も大事なことだが、とても美味しく感じた。好みの味だった。そして大きなポイントだったのが、臭みである。なんと形容すればいいのかわからないが、ちょっとした獣臭というのか、ワイルドな感じ。この臭みがあることでパンチが出て、飲んでいても飽きることがない。やみつきになる臭みであり、味だった(この臭みが苦手な人も多いようだ)。

飲んだ後、マテ茶について調べてみると、このマテ茶は体に良いらしいということがわかった。マテ茶のパッケージにも飲むサラダと書いてあるのだけれど、実際に健康にいい成分が色々と入っているらしい。一石二鳥ではないか。

マテ茶と出会ってからまだ3日だけれど、毎晩必ず飲んでいる。もうマテ茶を手放すことはできない。

ところで、マテ茶は以前から少し気になっていた。というのも、クストリッツァの「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」の冒頭で、ムヒカ大統領がクストリッツァにマテ茶を振る舞う場面が印象に残っていたのだ。

ムヒカ大統領がマテ茶の容器にお湯を入れて、ストローで口に含み、ペッと吐き出すことを数回繰り返す。味の苦みを確かめているのだろうか。そしてそれをクストリッツァに差し出す。クストリッツァは受け取って同じストローを使ってゆっくりと飲む。ムヒカ大統領がへへへと笑い、クストリッツァも笑う。

よく意味がわからなかったけれど、マテ茶を通した2人のやり取りには、心を奪われる何かがあった。マテ茶には回し飲みの文化があるらしいのだが、マテ茶によってコミュニケーションが発生していたのだろう。それにあの容器、そしてストローのようなものも、不思議な形で強く印象に残った。

いま、僕はあの容器とストロー(容器は「マテ」「グアンパ」、ストローは「ボンビージャ」と呼ぶらしい)でマテ茶を飲みたい気分になっている。Amazonで探してみるとそんなに高いものではない。

だが、とりあえずのところは、今飲んでいるものをしばらくは飲み続けたいと思う。数ヶ月飲んでもマテ茶に対する情熱が続くようであれば、「グアンパ」と「ボンビージャ」について調べて、良さそうなものを買ってみたい。

ちなみに僕が買ったのは、このマテ茶であった。

今はマテ茶の魅力にとりつかれているので、チャトウィンの「パタゴニア」を再読したい気分である。さっき本棚から取り出した。そういえば、ガルシアマルケスの小説にマテ茶は出てきただろうか。ゲバラの日記にはマテ茶が頻繁に出てきていたように記憶している。

マテ茶から、また南米文学や音楽にハマりそうである。勢いで何でもやってしまえ。

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