なんでもないような

なんでもない人間だなと思う

絵も上手く描けないし
難しい言葉も知らなかった
歌も口ずさむくらいで
風に乗っては走れない

なんでもない人間だなと思う

寝ても失敗は忘れられずに
目を閉じる前にため息をついた
ずいぶんと前に夢は溶かして
思い通りにならないのが現実だと言う

なんでもない人間だな
なんでもない人間だな

愛する人もいないまま
愛し方を知らなかった

なんでもない人間だな
なんでもない人間だな

明日だってまた今日と同じかもしれない

なんでもない人間だなと思う

メモには小さな花を書いた
母からもらった時計を大切にする
話をするときには瞳をのぞいて
丁寧に言葉を拾った

ごめんねといっただれかには
いつも大丈夫だよと返した
別れ際には抱きしめて
だれかの好きを知っていく

なんでもない人間だけど
なんでもない人間だから

心のまま大切にしている
愛し方は知らないまま

2021.03.07

#詩