燃焼

さっきまつげを撫ぜた風が春を呼ぶ
鼓膜をくすぐるような優しさに
冬を忘れたような軽い鼓動

自分が掬い上げられる季節なんか
これっぽっちだけど
夢の中で何かを殺していたような私を
君が抱きしめて泣いたのは確か冬だった

何一つ大事にできない私は
また一つ取りこぼしそうだから
永遠なんてものはないと知る

意味深な深呼吸にはふいに冬が戻る気がした
秋のさざ波に失くしたのは愛
蜃気楼に溶けた輪郭は夏を知らせた

初めはなかったはずの温もりが
消えた後の傷痕、不治の香りがする
季節の変わり目には引きつれてまた痛んだ

そして痛みが私に教える

常夏の焦燥に似た愛は冬に死んだのだ

2019.4.6


#詩

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