龍戦記ドラグーンソール 十二の月編

ドラグーンソール 十二の月 戦乙女

第二話:風と雷。合体変身!双頭の蛇竜! ドラグーンセルペンテ!

 多次元世界は、12階層あるといわれている。
 例えば、「12」という数字は、有名なので言えば「ヘラクレスの12の試練」や「オリンポス12神」や「黄金12星座」と言ったモノがあげられる。なぜならば、神聖性を象徴する同時に。
それが一番わかりやすいというのもある。

 スグル師匠は、持てる知識をわかりやすく説明した。
「12の月と戦乙女―それを話すには、さっき言った。「12」を話さないとならない。
豪、知っている限り「12」をあげてみてくれ」
「はい。12個だから1ダースです。12神将 干支。12天将。蟹座が悲惨な黄金戦士の奴に。カレンダーですか?」
「その通りだ。さて、歴史では、エジプト文明の天文学の分野やキリストの使徒もあげられるな。
そして、オリンポス12神もそうだな。では、科学が発達していなかった時代にとって、「12」は神仏の領域と考えられていたのではないか? と俺は思っている。なぜなら、人間の知覚に合わせられる概念だからじゃないか・・・?とな。その根拠となるのが「月」だ」

「月?」と一同は考えるが、一番に答えたのが水野彩香だった。

「月の満ち欠けですね。満月の満ち欠けが12回。それで、月を観察していた古代人は「12」方位に分けて、暦をつくり。そして、共通の言語として「12」を多用することなった」
「その通り。さすが、彩香さんだ。さらに付け加えるなら、数学の12進の考え方が世界に共通しているのも。わかりやすく整理しやすかったと俺は考えている。そして、13階段や13が死神と死を暗示させるのは、そうした理由もあるからではないかと思う」
「師匠ー、俺の頭がオーバーヒートするんで、本編行きましょうよ? 主に中の人が大変で」
「豪! あんたって人は」
 リーシが呆れ果てる。
「アハハ…愉快ねぇ。そうね。私達戦乙女が12人いるのもそこにあります。
 おおざっぱに「勇気・友情・愛情・知識・誠実・純真・慈愛・信念・希望・光・闇・真実」
 朱美がカードを時計順に並べて、説明する。
「それぞれの役割と属性を持っているので、善悪のバランスを取っている。光があれば、闇があり。闇があれば光がある。そして、光の中に闇があり、闇の中に光がある。そして、私達がこの世界に来たのは、今から7年前―。カオスとの戦いで、「ボーダーブレイク」が起きた。その衝撃で、この世界に異能者と言われる特殊能力を持った人間が生まれることになった」
 美奈子はギュと唇をかんだ。
「主に、10歳前後の思春期に入りかけた子たち。それは、彼らと戦う進化を促すためのモノ。
―進化遺伝子の覚醒。そして、すべては、カオスとの戦いに備える為だったのです」
 朱美が静かに7年前に起きた。「能力者が現れた事件」の原因を話した。
「ふざけないで!」
 美奈子が目を見開いて、怒りを露わにした。
「じゃあ、あなたのせいで。あなたのせいで、欲しくない力を与えられて、周囲の人間から奇異の目で見られて、迫害されて、一人ぼっちになった子がどれだけいると思っているのよ!?
それは、ゆるされー」
 彩香が美奈子の右手首を左手で掴んで制止した。
「美奈子。落ち着きなさい」
 美奈子は、はっとして、周囲を見回した。
 心配そうに見ている龍介と優香。
 事情を察して、落ち着くように視線で語りかけるセリアとリーシ。
「美奈子。あのな」
 豪が美奈子に近づいて言葉をかけようとしたとき。
 美奈子は、その言葉を聞くのが、彼から言われるのだけは、嫌だったから。
「ごめん、大人げなかったわ。帰る、わ」
 美奈子は、彩香の手を優しく解いて、前髪を垂らした。そのまま、外に向かって走って行った。 
「美奈子!」 
 豪は、彼女を呼び留めようとした。だが、その声は、彼女には届かなかった。
「すまねぇ! 師匠! 俺、アイツの事放っておけねぇから、追いかけてくる!」
「豪。追いかけるのはいいが、どうするんだ?」
 スグルは、豪に質問した。豪は、向き合って、答えた。
「わかりません。けど、俺達が守りたいのは、助けあえる道を探せる未来だ。だから、追いかける!
師匠に対して、礼儀もなっていないけど。すみません! あとでいくらでも説教は聞きますんで!」
 豪は、全力疾走で美奈子の後を追いかけた。龍介は、豪なら大丈夫だと信じていた。だから、声をかけなかった。

 道場を出た後に、美奈子がどっちに行ったのかはわからない。だけど、それでも、追いかけていきたいと豪は思った。
「泣いてるんだ。ずっと独りで泣いているんだ。なら、誰かが、その涙を止めなくちゃいけないだろうが。それが、心ある人間ってもんだろうが」
 携帯電話を使えば、すぐに電話がつながって、どこにいるかもわかる。しかし、それでは、ダメだと豪は想う。
なぜなら、大事な事は、電話でも伝わらないから、走ってでも伝えに行かないとアイツには届かないと思っているからだ。
「絶対に、探し出してやるからな。待ってろよ! 必ず追い付いてやるから!」
 一直線な思いを胸に抱いて、少年は走っていく。

 美奈子は、全力で走って、やりきれない思いを昇華しようとしていた。
 泣きながら、走って。過去を振り切ろうとした。
 そして、思い出す。なぜ、電気を操る力を得たのかを。

 遠い昔。夏の河原で水遊びしていた時のことだった。
 好きだった友達が急に心肺が停止してしまった。
 周囲の人が慌てふためく中。テレビで、AEDを使えば助かるかもしれないということを知っていた  美奈子は、それと同じように自分の手から電気が流れれば助かるかもしれないと
そう思った。 

 だから、その友達を助けたいために願った。

―お願い、神様。この子を助ける力をください!

 願いが通じたのか。両手にパチッとした電気の感覚が走り。
 イメージした電気量で、友達を助けることができた。

 しかし、周囲の友達や大人は、こういった。

『美奈子は、普通の人間じゃない』

 その言葉が、どう表現していいのかもわからないくらいに。小学生だった彼女の心を白から黒へと塗りつぶした。

 だから、この力を得たことを憎かった。彼らが望んだ人間に、化け物になってやろうとさえ思った。
 
 だけど、年月を超えて、出会ってしまったのだ。

 犬飼豪という同世代の人間に。

 電気を操る能力があっても、「女の子」として観ていた。自分と同じ「普通の人間」と接していた。
 強大な敵と対峙したときに、「力があるなしに関わらず。戦う勇気を魅せた」
 それが、とても衝撃的だった。
 黒から、灰色に、灰色から虹色へと世界が変わっていった。

 信じられない人間の負の面を目の当たりにした美奈子にとって、それは光だった。

 だから、だからこそ。

「許せないのよ。あたしを奇異の目で見てきたアイツらと同じようなこと言ってしまった。あたし自身が。豪に「あたしが悪くない」って言われたら、それじゃ、惚れられる女にすら、なれないじゃない」
 橋がある河原まで、走ってきて。美奈子は大きく肩を上下させた。
 女としての意地がある。彼女にとっての恋は、まだスタートラインにすら立っていない。
 なによりも、こう思うのだ。
「ライバルがいたとしても、蹴落としたいんじゃない。選ばれたいのよ。あたしが、本気でアイツの隣にずっと立っていられる。魅力的なあたしでありたいから」
 太陽の光が、川に反射する。
「今の私は……嫌い」

 対岸に、黒いマントを靡かせたカオスが舞い降りた。
 
 カオスが美奈子の前に、現れた数時間前。

 豪は、美奈子が行きそうな場所を直感任せで探したが、へとへとだった。
「くそー。やっぱ、直感じゃむりか」
「いやー、普通に考えても。無理ありすぎると思うよ?」
 ショートポニーテールの緑色の髪を揺らして、豪に声をかけてきた。
「あなたは?いや、俺の名前は犬飼豪です。」
 豪は、自分の名前を名乗るが先だと思い。一礼する。
「良い子みたいだねぇ。ボクは、フィリア。まぁ、ちょっとお節介な好きな女だよ。
 名前の意味はー…そのうち分かるよ」
「某ゲームのぐらんぶるーの?」
「うん。それとは全然、違うからね? 荒川美奈子を探しているんでしょ? なら、
ボクについてきて。少し会話しようよ?」
 フィリアは、先に歩いて、豪を誘導する。
「ああ。だけど、おれは、一度も。探している人の名前を言ってないぞ?」
「あっはっは。そか―この世界の人間はこれはまだごく一部の人しか持っていないかー」
 カラカラとフィリアは笑う。
「まっ。不思議体験している君たちは、ボク達の間では話のタネだからね。
 龍戦記ドラグーンソールの事について、調べているファンだから。知っているんだよ」
 フィリアは、途中自動販売機で、豪の分のジュースと自分のコーヒーを買って、呑みながら
話つづけた。
「んで、その子に声をかけようとして、振られた友情ボーイくんは、どうしたいのかね? 明智くん」
 悪戯に、目を細めて、豪に問いかける。
「俺は、この間、カラオケ行った時に。「能力がある人間でも友達になれる」と思っていた。わかっていていたと思い込んでいたんだ」
 豪は、水分を口に少し流し込んでから、目を伏せる。
 激情に呑まれて、感情をどう言い表したらいいのかわからなくなった美奈子を思い出す。
「思い上がりで、なっさけねぇ。7年以上も。ひとりだったんだぜ? 一緒に遊んで、笑ったり、恋したり、初恋を体験したりして、思い出を作るはずの子供時代の辛さを。勝手に俺がわかっていたつもりだった。それが、情けなくて。言葉にして、伝えられなくて」
 ジュースの缶をミシっと握りしめる。
「だから、俺が示したいんだ。―信じてもいいと思える人間がここにいる―って」
 豪の目には、優しさと強さを持った輝きがあった。
人間に失望した時期があったからこそ。彼は、信じられる人間がいることを体を張って、美奈子に伝えたいのだ。
「俺自身。過去にケンカで荒れていたから、放っておけないんだよ」
「なるほろ。なるほろ。実に、友情に厚い」
 フィリアは、コーヒーを飲んで。目を優しく細める。
「これは、合格っかね」と小さく呟いた。
「豪くんは、自分の事をみつつ。相手のことを思いやることができるね。
なら、おねーさんからプレゼントだ」
 胸のポケットからごそごそとスティックタイプの「Y」型の棒を取り出した。
「なんですか?これ」
「Vレンス。暴風の力を制御する為のモノ。さらに先には…朱美に聴けばわかるよん。
 それと、スグルさんからの伝言。「共感と同調は違う。同情が欲しいのではない。ともに歩める
人間が彼女は必要としている」――それを君がつかめるといいね。豪くん」
「わかるように努めます」
 フィリアは、空を見上げて、目を鋭くさせる。
「どうやら、少し急いだほうがよさそうだね。混沌の匂いが、風に乗せてシグナルを発している」
 フィリアと豪は、缶をぐしゃりと潰してから、ゴミ箱に捨てて、走り出した。
「急げ! カオスが美奈子に迫っている!」

 美奈子は、キッと睨み付けるようにカオスを見た。
「あんた! 何しに来たのよ!」
「君を誘惑しに、かな? 理不尽な理由で力を与えられ。迫害された。なら、暴れたらいいじゃないか? 目には目を。歯には歯を。彼らがそれを理由とするなら、それでわからせるのが、善意ではないか?」
 カオスは、川の上をゆっくりと歩いて近づいてくる。
「人間というモノは、自分が体験したことしかわからない。そして、自分自身にしか関心がない。
誰かが死のうと。苦しもうと。快楽を与えてくれる存在以外は、どうでもいいものさ。覚えがあるはずだ。君の過去に出会った人間たちを。大人を。黒く、闇よりも黒い笑みを浮かべた奴らを」
 シャラン。と金色の腕輪が鳴り響く。
「そうね。確かに、憎いわ。だけど、あんたの言葉には乗らないわ。何故だか。わかる?」
 スゥと息を吸って、ダンっと力強く大地を踏みしめた。
「好きな男に、誇れるあたしでありたいから! 憎しみも。悲しみも。それを超えていくと今決めた!
女ってのはねぇ! 守られてばかりじゃないのよ! 守りたい人や思いがあれば、強く。美しく!
テレビに出ている。アイドルよりもすっごく。世界一のハートを持つことができるんだからね!」
 恋に燃える美奈子は、己の感情の高ぶりを電撃に乗せて、指先から銃で撃つしぐさで、カオスを攻撃する。見えない障壁により、カオスは電撃を防いだ。
「なるほど。なら、足掻くがいい。来い。暴風神『ルドラ』!ドラグーンジュピターを抹殺しろ!」
 河の中心から渦ができ。暴風神ルドラが現れた。
 巨人に四つの腕。赤茶色の肌。その巨体は、災害のようにも思えた。
「いくわよ! ドラグーンジュピター!」 
 カードを出して、変身しようとするが。変身できなかった。
「変身!ドラグーンジュピター! 変身、できない!?」
「そうだ。おまえたちドラグナーは、カードを媒体にして変身する。だが、カオスの存在によって、変身することはできない。そのまま。想いを告げられないまま死ぬがいい」
 ルドラは、ヴァジュラを構えて、雷撃を繰り出した。
「サンダービースト!」
 雷獣を繰り出して、攻撃を相殺させる。だが、残りの手から暴風が吹き荒れ、美奈子は投げ飛ばされる。
「きゃああっ」
 背中を強く打って、のたうち回る。
「これで最後だ。人間」
「最後じゃねぇさ! この俺がいる限りな!」
 一陣の風が吹き抜け。ルドラの胸部を蹴った。
「シルフ!」
 美奈子は、顔をあげて、豪を見た。
「悪い! 遅くなった! スマホに頼らねぇで、お前を探すのは、無謀だったな。おまえに会うためには、機械に頼りたくなかったんだ」
 美奈子は、驚いた。なんで、そんな遠回りなことをしたのかと。そして、自分に会うために、ちゃんと話し合うために。豪は、機械に自分の想いを譲りたくないということがわかった。
「バカ……遅いわよ」
 涙声で彼を叱った。
「フィリア。美奈子を頼む。こいつは、こいつだけは、俺の手でぶっ倒す!」
 ギリッと拳を強く握りしめて。シルフは静かに怒りを燃やす。
「ああ。Vレンスを使え。今のおまえなら、神龍帝に変身できる! 友情を司る戦乙女であるフィリアが認めたのだからな。ボクの力を君に託す!」
 フィリアは右手を自分の胸にあてて、光の球を作り出した。その光の球をVレンスに投げ渡した。
「いけ! 風の神龍帝! ドラグーンディオ・テンペスタ!」
 緑の光がシルフを包み込む。
「スピリット!エヴォルド!」
 右手でVレンスを高く掲げて、シルフは咆哮する。
 縦横無尽に緑の帯の風が吹き荒れ。最終形態にワープ変身する。
「オオオオおおおおおおおっ」
 先代のドラグーンシルフの魂と犬飼豪の魂が共鳴し。1つとなる!
「神風の神龍帝ドラグーンディオ・テンペスタ!」

 カオスは、顔をわずかに歪ませる。
「なにっ! 変身した、だと?!」
「カオス!ルドラ! 美奈子を泣かせた奴は、この俺が許さねぇ!行くぞ!」
 ディオ・テンペスタは、真っ向からルドラに立ち向かう。
 ルドラは槍を構えて、突ついた。
 だが、ディオ・テンペスタの姿は霧のように消えて行った。
「おい。風の神様が、風の神龍帝をなめるとは、二万年早いぜ?」
 ディオ・テンペスタは一瞬のうちに、ルドラの頭上に移動していた。
 ルドラが頭上に、ヴァジュラを構えるが。それよりも早く。滑空して、踵落としを眉間に浴びせた。
「ヴオオオオオオオおお」
 ルドラは咆哮し。雷を乱れうつ。
「甘い。ツインブラスタ!」
 ディオ・テンペスタは、二丁拳銃を抜き出して、雷を全て打ち倒す。
「俺がいる以上。ここから先は、おまえの攻撃を一歩も通さない」
「だが。その強がりは、強化された。ルドラの前でも言えるのか?」
 カオスは、両掌から紫色の雷を放って、ルドラに直撃させる。
「そうだな。パワーアップ形態は「カース・ルドラ」とでもしておこうか。我の力を浴びたモノは、すべて強化される。そう。神であっても、な」
 ルドラは、咆哮し。もう二つの腕を生やして、目の色を赤紫に染め上げる。
「まずいな……。ディオ・テンペスタは、短時間だが復活した変身だ。長期戦となったら、アイツとやりあうのは、まずい」
 フィリアは、苦虫をかむようにつぶやいた。
「何とか、できないの? ……いや。ある。ジョグレスエヴォルド。確か、彩香が言っていたけど。「すべてのドラグナーと理論的には合体変身が可能」って――」
 美奈子は、握りこぶしを作って。フィリアに問う。
「教えて、どうしたら、もう一度私は、変身できるの?」
「もう一人。おまえに合う。戦乙女を見つければ、ジュピターに変身できる。だが、ボク達戦乙女は、人間と不用意に関わらないように決めている。だけど、朱美から、話を聞いて豪に興味を持った。だから、僕の力を彼に託した。今は、君が他の戦乙女の信用に足るかどうかはわからない」
「今は、ダメってことね。なら、質問を変える。ドラグーンジュピターのスピリットをアイツに渡せたら、どれくらい引き延ばせそう?」
「美奈子。それは、下手したら、二度とドラグーンジュピターに変身できなくなるかもしれないんだ。それでも、いいの?」
 2人の間に沈黙が漂う。
「それでも、……いい」
 美奈子は、笑って答えた。
「好きな人がいない世界と比べたら、私一人が変身できなくなったとしても。この力で全力で、戦って見せる。今この力を使えるのは、私だけ。神も悪魔も超えることができるかは、私自身。
だから、変身できなくなったとしても、後悔はしない。好きな人を護れたら、幸せじゃない?」
 フィリアは、右耳に右手を当てて、呆れたように溜息を吐いた。
「だ。そうみたいだけど? 純真の戦乙女。プルース。ボクの頼み聞いてくれる?」
『又聞きさせる戦乙女って、世界中探してもあんただけだと思いたいわ……。わかった。あとで、落合うわよ。いい?』
「OK.ボクができる範囲で埋め合わせをする。だから、美奈子に力を貸してほしい」
『合点承知の助。だけど、ジュピターなら、長くは戦えるけど。アイツには勝てない。神龍帝になれたら、いい勝負だけど変身時間は2分半。それが今の時点での限界だから、あとはジョグレスエヴォルドかサイバーリンクスでカバーしなさい』
 フィリアは美奈子の脳に、プルースの声を届ける。
「わかりました。それで、充分……! 女の意地、みせてやろうじゃない!」
 バチッと左手に花のつぼみのような「純真の紋章」が浮かびあがる。
「変身! ドラグーンジュピター!」
 雷が、美奈子の全身を包み。雷の龍戦士ドラグーンジュピターへと変身する。
「テンペスタ! ジョグレスエヴォルドで、決めるわよ!」
「はあ!? おまっ。何言ってんだ?! 理屈じゃあできるけどよ!」
「1人でダメなら、2人でよ! それに、あんたと一緒なら、倒せそうな気がするから」
 ジュピターは、目を細めて、全信頼をディオ・テンペスタに向けた。
 ディオ・テンペスタは頭を左右に振ってから、ドラグーンシルフに戻った。
 ジュピターの隣に立って、腹を決める。
「わかった。だけど、一回だけだからな! お、狼になるかもしれないぞ」
「あら? 声が震えている狼さんは、可愛いと思うけど? ま、冗談は良いとして、いくわよ!」
「だー! やっけくそだー! 男は度胸! でも、女の子の涙に弱い!」
 シルフが、自暴自棄に叫ぶ。
「ドラグーンジュピター!」
 ドラグーンジュピターが黄色に輝き。
「ドラグーンシルフー!」
 ドラグーンシルフが緑に輝き。
 天空に黄色と緑の環が形成される。
「ジョグレスエヴォルド!」
 雷と風が吹き荒れ。両腕には、ペンデュラムが巻き付かれて。しなやかな女性のフォルムを思わせる隆線のある肢体。銀色の鎧に身を包んだ。桃色の羽衣をまとい。ヒールを履いた龍戦士が誕生する。

「双頭の蛇竜! ドラグーンセルペンテ! 純情の雷風が、お前を射抜く!」
 ゆっくりと、右親指で唇を口紅を塗るような仕草で挑発する。
「なんだと!? 合体変身しただと!? 合体変身は、ソールだけじゃなかったのか!」
 カオスが驚愕する。 
「甘いわね! 双頭の蛇を軽く見ると。おまえの魂まで、牙が突き抜けていくわよ? さて、そこの出化物さん」一方的な狩になってしまうけど。ごめんね♪」
 カッとヒールで、地面を蹴って飛翔する。
「サーペント・ペンデュラムフィンガー!」 
 両手の指先から十本のペンデュラムが蛇のように素早くカース・ルドラの動きを封じる。
「雷車(いかずちくるま)!」
 くいっと指を軽く曲げて、ペンデュラムから雷を放って、そのまま投げる。
「ああああああ!」
 受け身なしで、川に叩きつけられ。激痛がカース・ルドラを襲う。それに加えて、水に濡れたため。雷の力が巨体の隅々まで猛毒のように伝わっていく。
「えぐい・・・・・」
 フィリアは、そうつぶやいた。
「これで決めるわ!サイバーリンクス!雷鳥! 雷よ! 風よ! 我が使いとなりて、双頭の蛇となれ!」
 両腕に雷と風の力が集約され。鳥の弓。蛇の矢となる。
 矢の先が、双頭の蛇のようにわかれている。
 セルペンテは、ふーと息聴で、心音と呼吸を同調させて。全エネルギーを矢に注ぎ込む。
「これが、私達の一撃必中! 「蛇龍の螺旋丸!」 全部持ってけー!」
 ヒュン!と矢が放たれると。雷と風の蛇が螺旋を描きながら一直線に進み。
 カース・ルドラの全身を喰らい尽くすように、光に呑まれた。
「命よ! 天に昇華せよ!」
 弓をゆっくりと構え下ろした。
「今回は、良きデータが入ったな。さらば」
 カオスはマントを翻して、撤退し。夕焼け空に消えて行った。
「ジョグレスアウト」
 セルペンテの変身を解除して、美奈子と豪は、土手に倒れた。
「つかれたー・・・というよりも、なるほどな。記憶まで共有するのか。アレは、当たり前じゃないのか」
「豪、それ。普通に言っているけど。当たり前じゃないから。それと」
 美奈子はフィリアを見て、微笑んだ。
「ありがとうございます。私に力を貸してくれて」
「ああ。いいよ。ボクの方で、あとで何とかするさ。定期預金解約しておかないといけないかも」
 フィリアはプルースへの借りをどう返済するかを悩ませていた。
「いやいや。そこまで深刻にならなくても? フィリア」
 桃色の髪。肩まで伸びているセミロングヘアに。白い帽子をかぶった女性が土手の上で。サングラスを右手で遊びながら、ゆっくりと近づいてきた。
「フィリアの生活苦までになったら、原始のワルキューレに怒られるしね」
 プルースは両肩を抱いて、ブルッと震えた。
「ウン、ソウデスネ。アノ人、怒らせてはダメ」
 フィリアは怪しい日本語を話す外国人のようにカタカタと棒読みになる。
 2人の想像の中で、漆黒の中で輝く。田中朱美の姿が、笑みを浮かべている。
「それと、美奈子。あなたは、私からの力とサイバーリンクス「雷鳥」も扱えるなんて、筋がいいわね。
正直、驚いたわ」
 プルースは、美奈子の方を見て率直な感想を言った。
「だから、私の力をそのままあなたに渡す。あと二つ。力を得なさい」
「? あと二つって、どういうこと?」
「あれ? まだ説明受けていない? あなた達ドラグーンが完全復活するには、私達ワルキューレ12人の力を得ることが必要なのよ。今わかっているのは、原始のワルキューレ:ティース。フルギャは、すでに出会っている。ここにいるフィリアと私を含めれば四人。あと8人いるのよ。
そして、カオスが狙うのは、12月の復活。「12の月」によって、地球の生態系のバランスを崩すことにより、エネルギーバランスを崩壊させる。だから、12の守護を持つ私達の力で補助している」
「ふーん。となると、私達が完全に神龍帝になるには、12人と出会う必要があるわけね。ん?もしかして、私が変身できなくなったのは、過去の事象を変えてしまったから?」
「それも一理あるね。僕たちは、そうなることも踏まえて7年前に、この世界に来たんだ。だから、それぞれの変身アイテムを使うことによって、君たちのエネルギーを増幅させて、世界を超えた力を作り出すというわけさ」
 美奈子の疑問にフィリアが答える。
「おっ? 龍介からの連絡だ。俺達の処に向かっているって、さ。さて、師匠達に謝りに行くわ」
「待ちなさい。私も行く。大人げない事をしたけど。これは私の責任。それにー、豪の気持ちは合体した時にわかったから、私にも謝らせて。それが私のやり方だから」
 豪だけに、自分の不始末を背負わせたくないと美奈子は言う。そう、ずっと誇れる自分でありたいから、彼の隣に立っていられる荒川美奈子にあるために、彼女は立ち上がる。
座っている豪に、手を差し出した。
「さ、行こう? 私達の居場所に」
「ああ。そうだな。行こうか」
 豪は美奈子の手を握り、立ち上がる。
 それは、人間と超能力を持った人間が、共存できる未来を示している。
 この二人なら、超えられるかもしれないと。ワルキューレのフィリアとプリースは想う。


                                           第二話 終わり

「おまけ」

「フィリア、これで充分よ。良いものが見れたから、今度、喫茶店行ってみない? カフェ月光花というお店を見つけたから」
「お? いいねぇ。んじゃ行こう」

今度こそ、終わり。


あとがき。

 アグレッシブにうつっていこー! のレミーです。

 ようやく。第二話、完成。美奈子と豪の合体変身の難産でした。

 フォロワーさんの会話をみて、「あ、これでいいか。一応蛇も龍だし」
という固定観念の破壊で、完成しました。

さて、12の月の設定も作中で語られましたが、スグル師匠がどうやって、朱美さんを奥さんにしたのかは、最大の謎です。( ˘•ω•˘ ) どうやって、原始のワルキューレを嫁にしたんだ。
(モデルにした人ならそれくらいできそうだと、私は思います)

見直しましたが、主人公である龍介君と優香さんがしゃべっていないという事態…(;'∀')あ、今気づいた。まぁ次回絡むからうん。

それと、12人のワルキューレの名前は既に知っていると思いますが、外国の言葉を使っています。
なので、「あ。このワルキューレはこんな名前がいいんじゃない?」というのもあれば、教えてもらえると「作者権限でぶっこみます!」

そして、豪のように玩具にしましょう。(読者と作者の玩具。そして、豪が人気でるとは思わなかったんだ…(´っ・ω・)っ レミーさんの作品だとサブキャラがファンを作るという法則。

次回は、彩香を軸に充てる予定です。(´・ω・`) セーラームーンのマーキュリー枠?

最後まで、読んでいただきまして、ありがとうございます。<(_ _)>

皆様も、熱中症にはお気をつけてください。

レミーより

投げ銭していただけると、喜びます(´っ・ω・)っ「創作関係に投資」(´っ・ω・)っ今さら編集できることを知る人・・・(天然すぎぃ)