龍戦記ドラグーンソール 第10話
龍戦記 ドラグーンソール
第10話:時を超えて
虹色のトンネルを抜けると森林が見えた。彼らは森の真上に放り出された。
「優香さん?! 豪!! 優香さんを頼む!」
「わかっている! ジョグレスアウト!」
ドラグーンソールとドラグーンシルフに分離して、ドラグーンシルフは優香の手を握ろうと手を伸ばした。
「桂さん!」
「犬飼君!」
2人は手を握り締めて抱き寄せた。
「ウインディリーフ!」
緑色の翼を展開して滑空する。融合進化の影響で、翼を展開することができるようになった。
「落ちる―!」
「アクアバブル!」
ジュピターとアクアは、水の泡に包まれて衝撃に備える。
ドラグーンソールは、恋人が無事なのを見て、意識が遠のいていった。
「く、そ。コアなしのジョグレスエヴォルドの影響で、力が……」
森に近づくたびに、変身姿が粒子状に分解されていく。
それぞれがバラバラに森林に落ちていく。その様子を空から黒い破壊龍が見下ろしていた。
「ソールバード。お兄ちゃんを護って」
黒い太陽の鳥を実体化させて、ドラグーンソール―――龍介の身を護るように伝えた。
黒い太陽の鳥は変身が解けていくドラグーンソールの背中に憑依した。
これで、彼の命は助かるはずだ。
「ここまでは、予定通り。でも、予定外だったのは「コアを使わずにジョグレスエヴォルド」をしたこととドラグーンジュピターが乱入してまで、戦いに参加したこと。本来の時間軸なら、ジュピターは豪に倒され、変身カードはリーシに譲渡されるはずだった。でも、この間の戦いで、彼女が豪に恋心を意識したことから、時間軸の流れが変わっていった」
彼女は何度かいくつかの未来軸を先読みし、観察した。だが、今回の流れは大きく異なっていた。彼らとの闘いでは、本来ならばソール・シルフ・アクアの合体変身で時空を超える流れになるはずだった。しかし、今回はソールとシルフの合体変身。及び桂優香まで時空を超えるといイレギュラーが起きた。
「しかし、未来軸のドラグーンソール達が過去に飛ばないと「ドラグーンは誕生しない」ならば、彼らと合流するか。まだ肉体を持っていたドラグーン達に会わせるために」
ドラグーンツェアシュテールンクは、ドラグーン達が使える「ドラグナーサイン」をこの時代のドラグーンシルフ、アクア、ジュピター、ソールにメッセージを空に向けて発信した。
黒いポニーテールの少女が森を散策していた。
「はぁ~……いきなり時空嵐が発生したと思ったら、もう一つのドラグーンが来るとは思わなかったな。それにしても、あの黒い鳥はなんであたしにメッセージを送ったんだろう?とにかく、行かなきゃ」
黒いワンピースを揺らして、森を駆けていく。背丈は130センチとやや小柄だが、
龍の力を持っている。彼女は、この時代のドラグーンシュテールンクである。
まだ、ドラグーンの力を完全に覚醒していない幼き破壊龍だ。
「いた! って、にん、げん?」
森林を走った少女は、息を弾ませていた。黒い太陽の鳥が目を少女に向けると頷いて答えた。彼がこの世界に来た理由を少女に伝え。
黒い太陽の鳥が龍介を護るように覆いかぶさっていたが、彼の体の中に消えていった。
「と、とにかく! 急いで家に連れて行かないと!」
わたわたと両手を動かして、少しパニック状態になった少女だが160センチの龍介を軽々と背負った。
「瞬転!」
超能力を使って、少女は自分の家に連れて帰った。
彼をベッドに寝かせて、布団をかけてあげた。
「えーと、何か名前とかわかるものとか」
彼の衣服のポケットから、カードホルダー、学生証、携帯電話と財布を取り出した。
「龍眼発動」
彼女の瞳の色が紫色から紅く染まる。龍眼は、別名:魔眼ともいわれており。魔力のあるものなら、誰でも扱える技法である。だが、使用者の技量が問われる高度なもののため日頃の修練が必要となる。
「巽川龍介 6月27日 生まれ かに座。17歳。修繕高校普通科2年。ドラグーンソールの変身者であり、他のドラグーンシルフ、アクア、ジュピターとは顔見知り。桂優香の転生の理由を知りつつも。コアを受け取らない、か」
椅子に腰を掛け、少女―ルティアは溜息を吐いた。あまりにも珍しい人間としか言いようがない。何故なら、強い敵を倒すために完全体になるのが筋という物だ。だが、彼は違った。
本来の進化とは異なる。ドラグーン同士の融合進化。それは、下手をすればどちらかの自我の崩壊。もしくは植物人間になるという危険性を持ったものだ。だが、彼はその賭けを信念で乗り越えていった。
ルティアは水晶である人物と連絡を取った。
「フェリス、少しいい?」
「あら? あなたから連絡するなんて珍しいわ」
連絡相手は、吸血鬼の女王フェリスだ。
「うん。実は未来の異世界から来た子がいて、その子は私に対するカウンター装置の役目を果たしているの。詳細はこれを見て」
詳細なデータを互いの能力によってリアルタイムに把握する。
「なるほどね。今開発中の「ノヴァシステム」つまり異次元の時空嵐に、耐えられるように防御結界及び異世界での活動もできるようにするためのプログラムが既に出来上がっていたのね。というよりも、ここで私たちが知らないと「ドラグーンシリーズが完成しない」ということになるわね」
「そう。このドラグーンシリーズは、万一私やフェリスが敵に回ったり世界を破壊したりした場合の防御システム。雷の龍。水の龍。風の龍。そして、太陽の龍は、私の細胞の一部を受け取ることにより「太陽の龍」ドラグーンソールとなる。そう、彼らには各龍戦士の試練を超えなくてはならない。この世界では、同一の存在の力は使えない」
ルティアは、ちらりとベッドの方を見て、龍介の寝顔を見て顔を綻ばせる。戦いに次ぐ戦いで体が疲れ切っていたのだろう。深く眠っているのが見てわかる。
龍族の中でルティアは孤独だった。唯一対等に戦える相手は太陽の龍だけであり、唯一の光でもあったからだ。だが、どうしてだろう。この少年に対してはどこか「魂の底から守りたい。護りぬきたい」という破壊とは違う別の衝動が湧き上がってくる。
こちらに来るまでの戦いで、幾多の命のやり取りと転生した自身の魂の持ち主である桂優香と恋仲になったのはわかっている。だけど、恋心なのかそれとも庇護心なのか。今はまだわからないでいた。だが、たった一人の人間をひとめ見ただけで護りぬきたいと思えたのは初めての想いであることには変わりはなかった。
「ルティア?」
「あ、ごめん。ドラグーンソールは、ううん。ドラグーンソールのシステムだけは私に完成したいけど、ダメかな?」
フェリスは、目を丸くして驚いた。いつもは自分で何でもかんでもやりたがるルティアが、ドラグーンソールのシステムだけは自分でやりたいという我儘を申し出たのだ。
「る、るてぃあ? 一体何がどうなって? というよりも自分から言い出すなんて珍しいじゃない? どういう心境があったのよ?」
「長い付き合いのあなたならわかるでしょ? 「未来視とタイムライン」未来軸の私が、私を助ける為に今の事を起こした。そして、未来の異世界から来たドラグーンジュピター、アクア、シルフと女性が今回の鍵となっているの。これから起こる私の悲劇を止めるために」
「帝国側のクラウスの侵攻による「実験」ね」
ルティアは頷いて答えた。こちらの世界での人間が、龍神を殺すために幼龍のルティアを生贄にし、破壊から破滅の龍「ルイン」に昇華させ全ての世界を破壊する兵器とする。
だが、そのための防衛としてシルフ。アクア。ジュピター。ソールが日夜戦い続けた。
しかし、龍の力は強大でありルティアを万が一奪われ、ルインとなったときに唯一の切り札となるのが「ドラグーンソール」の存在だった。
太陽の浄化を最大限に引き出す「ドラグーンソール バーニングブレイブ」これは、ドラグーンソールの本能と力をもう一段引き上げたものだ。だが、その力となる設計図はできている。しかし、壁となるものが多い。
・必殺技の「マトリックスコアドライブ」―――ノヴァシステムの全エネルギーを両腕に集中させ、一気に打ち抜く。一撃必殺の技だ。だが、この必殺技は諸刃の剣である。
この技を使うと、3時間は変身できなくなってしまうという欠点がある。
・エネルギーの暴走を意図的に起こすことで変身できるため、使用者の精神と体力消費が激しく、戦える時間が一分弱。その反面、身体能力は現時点で対等に戦える存在は存在という強さを持つ。
・この力を使えば、ドラグーンソールに再度変身するにも3時間待たないと戦えないという致命的な欠点がある。
この欠点をルティアは、改善しようと試みることはできた。だが、「巽川龍介」の方を見て悩む。
「体が軽くて、指も細くて。これまでの戦いでボロボロになって、平和な世界で生きていたこの子に、私の身勝手な願いを託してまで、戦いに巻き込ませていいの……?」
ルティアは、思わず自分の気持ちを零した。
「ルティア……。わかった。しばらく、その子と一緒に過ごしなさい。他の方面は私の方でやっておくわ。ちょうど、未来から来た子達を拾ったし、ね?」
「フェリス。拾ったって?」
「あなたの方で拾った子と同じ子たちを私の方でまとめて保護してあるから、ある程度落ち着いたら一度顔を見せなさい。いいわね?」
そう言って、フェリスは通信を切った。
「まったく。まぁ、いいか」
フェリスの気づかいに、ルティアは嬉しかった。
「やることはあるわね。よし!」
ルティアはフルートと短剣を合わせた武器「龍奏剣儀」を吹いた。
それは、優しい調べ。
例えるなら、生まれたての泣いている赤子を母が優しくあやすようにゆっくりとそして、「大丈夫、ここにいるから」と語りかけるかのような音楽が流れる。
安心感と守られている安全感が、ルティアから龍介の体に染みわたる。
ルティアはこの音色に己の気を混ぜ。彼の治癒力を高めさせている。
心と体の両面から包み込むように、撫でていく。
破壊の力を癒しの力に。親が子の幸せを願うように。奏でる音に祈りを込める。
音の力は、演奏者の心の在り方により変質していく。感情と心。
それは、一つの魔法の源であり。誰もが持てるものである。
龍介がゆっくりと瞼を開くと、体を起こそうとする。
「ここは……?」
「大丈夫?」
声が聞こえたほうを振り向くと、黒髪のポニーテールをした少女が椅子に座って演奏していたのに気が付いた。
「君の名前は?」
「ルティア。私の名前はルティア・ルンク」
「ルンク……? え?! 君は、ドラグーンなの?」
龍介は驚いて両目を何度も瞬きした。
「嘘だ。こんなに可愛い女の子がドラグーンだなんて」
(見た目が小学生くらいで、破壊龍と同じ名前の一部なんて、絶対詐欺だ。第一、こんなに可愛い女の子が、ああなるはずはないし? うん。俺は夢を見ているんだ。うん)
必死に現実逃避をしている龍介。だがしかし!
「あのー……言いにくいけど、ね? その心の声も全部わかっているから、ね?」
ルティアは申し訳なさそうに目を左右に泳がせながら、答えた。
ボン……! と龍介は瞬間沸騰して顔を赤く染めてパニックになる。例えるなら,エッチィ漫画を親に見つけられて、帰宅した時に机の上には、警察の証拠押収物をきっちりと並べられて、自身の愚行を反省したもの。
「―――!!」
声にならない悲鳴が上がり、涙目になりそうになる。
(うわーん! 心の声まで見透かされたら、どうしようもないじゃないか?!
それよりも怖いのは―――優香さんにこう言った状況を知られることだー!)
そう。数時間前に告白して、恋人になったばかりである。しかも、初々しいデートやイチャイチャ展開もまだしていないのに、修羅場になってしまうのはあまりにあれ過ぎる。
某ナイスボートをお茶の間に放送したくらいの悲劇になる。
優香はああみえて、「居合の特訓をしている」というので、持たせるな「刀ガール」となる。導かれるは、「抜刀切り」という結末。それを想像しただけで、生まれたての子牛のようにプルプルと体を震わせてしまう。
ルティアはその様子を見て、「ぷフ……っ」と小さく笑い出して、龍介に近づいた。
「大丈夫。大丈夫。お兄ちゃんの考えている状況はならないから。よしよし」
小さい手であやすように彼の頭をゆっくりと撫でた。
(かわいい。うん。かわいい)
彼女は見た目こそ、小学生くらいだが、年齢と知識は龍介よりも上だろう。だが、初めての異性に触れて、こんなにも愛おしく思える存在に出会ったのは初めてだった。
「ねぇ、お兄ちゃんの名前は?」
「俺の……いや。僕の名前は巽川龍介。よろしくね。ルティア」
龍介は右手を差し出して、握手を求めた。
「あ……う、うん。お兄ちゃん、よろしく、お願いします」
ルティアは、ビクッと肩を震わせて、物を壊さないようにそーと、そーと恐る恐る龍介の右手をとる。
「あの、ね? 知っていると思うけど。私、龍だよ? お兄ちゃんと比べ物にならないくらい強すぎて、お兄ちゃんの手を壊れないように握るのも怖くて、その」
ルティアは、言葉を選んで説明したくても初めての人間と手を握ることが小恥ずかしくてくすぐったくて、温かくて、何よりも嬉しかった。そうした入り混じった思いを口にすることのもどかしさと難しさを初めて体験する。
「人の手って、こんなにも温かくて握ってもらえるだけで幸せな気持ちになれるんだね」
ルティアは、握った手を愛おしそうに頬に当ててスリスリとこする。
握られた手から、龍介の脳裏に映像として流れ込んできた。
彼女の過去は、力が強すぎた故の悲劇であった。
迫害され、仲間さえもいなかった。孤独の中で泣いた夜も何度もあった。
だけど、それでも「龍としての使命」が彼女を突き動かしていた。
世界の守護者としての本能。「壊すものと守るもの」「光の中に闇があり、闇の中に光がある。ゆえに、どちらか一つの存在だけで世界は成り立つものではない」
それが、この世界における龍戦士と悪意ある存在の果てしなき戦いの歴史でもある。
この記憶は、彼女が意図して流したのかは、わからなかった。だけど、少しでも彼女の心を護りたいと彼は思った。
「ルティア……いい子いい子」
龍介は左手で彼女の頭を撫でて、ルティアを褒めた。
「ふぇ? お、お兄ちゃん? 何して?」
「ルティアがこれまでがんばってきたら、んー? ご褒美かな?」
「ご褒美?! え? え? えええ!?」
ポンと顔を真っ赤にさせて、彼女のポニーテールが猫の尻尾のようにピンと伸びた。
「いや、でも、その。わ、わたしはなにもしてないし。その、ご、ご褒美ならその、ね?」
ルティアは、初めて異性に褒められて、認められたことの嬉しさのあまり暴走してしまいとんでもないことを言い出してしまった。
「………お、お兄ちゃんと添い寝したいけど、ダメ……?」
恥ずかしそうに目を背けつつチラ、チラと視線を泳がせて訴えかける。
この時、世界は凍り付いた。
フェリスは、保護したドラグーンジュピター、ドラグーンアクア。そしてドラグーンシルフと優香を見た。
「さて、君たちは「未来より来た異世界の人間」ということだな?」
「その通りです。フェリスさん、あなたたちに出会うことで「ドラグーンシリーズが完成する」そして、この世界では未来軸である私たちの力を使うには、この世界における私達の存在と対峙し、試練を乗り越えないとならない」
「そーなのか?!」
シルフが驚いて答えた。
「そんなの初めて聞いたわよ?! というよりも試練って? 第一あたしなんて、電気を操るくらいしかできないんだし!? 雷の龍戦士の試練とか相性悪すぎるわよ!」
ジュピターがあたふたと身振り手振りで応える。
「落ち着きなさい。いい? あたしたちにできることなんてそう多くはないし。さっきの通信で、ドラグーンシリーズがアンチウイルスソフトの様なもので、ソールがルティアちゃんを助ける最後の鍵だってわかったんだから」
アクアが冷静に話をまとめる。
「ですが、彩ちゃん。破壊龍さんの幼少期があの姿とわかりましたが、なぜ、私達を助けるように、ここに誘導したのでしょうか?」
優香はこちらに来る時に、それぞれのカードが光を放ち、方位磁石のように進む方角を示しており、フェリスの住む家に辿りついたのだ。そして、破壊龍は、フェリス宛にメッセージカードが添えられており、事の顛末を伝えたのだ。
「優香。今回ので、破壊龍が何故そうしたのかがわかったわ。結論から言えば、この時代のルティアを助ける為。それだけよ。それから、本当の戦いはこれからということなのよね?」
アクアが、フェリスの方を見て聞いた。
「その通りだ。君たちに会って、未来―つまり君たちの時間軸で美奈子を直接スカウトするようにしたのも私だ。記憶の書き換えが行われた場合「そうすることで蘇る」と条件付きでセーフティシステムを確立していたが、ふむ? その様子だとそうなったみたいだな」
フェリスは頷いて答えた。
「さて、君たちにはこのゲートをくぐって各龍戦士―現役時代のドラグーンアクア、ジュピター、シルフと出会い、試練を乗り越えてもらう。
なお、命の保証はするが強くなれるかは君たち次第と言っておこう」
液晶型キーボードを操作して、ゲート設定をする。
「一時的にだが、試練が終わるまで君たちの変身機能は維持しよう。だが、ドラグーンソールとシルフの合体変身は、不可能だ」
「え? 何でですか?」
シルフが聞いてきた。
「エネルギーの消費が早すぎる。その辺の問題はルティアがなんとかしてくれるだろうが本来の力を行使するとなると、ドラグーンソールに対等に戦えるのはルティアだけだ。
アクア、シルフ、ジュピターの三人が束になっても純粋な力の前では、彼に勝つことすら難しい。何故、「炎の龍戦士」がいないのか? 疑問に思わなかったか?」
「確かに? 普通なら風、炎、水、雷よね?」
ジュピターがゲームの知識を用いて答える。
「そうだ。太陽は純粋にして最高のエネルギーだ。だが、それと同時に災厄の火種でもある。
命の審判と私たちは畏怖を込めて呼んでいる。故に、命と審判の戦士。あらゆる存在に対してのキラーカードであり、ルティアが奴らの生体実験に巻き込まれた場合に備えてのカウンター装置でもある。
だから、炎の龍戦士は太陽の龍戦士として存在している。」
「つまり、ドラグーンソールがドラグーンシリーズの中で最も強く。さらには、敵に奪われることもない上に、敵対したらまず勝ち目はないと?」
優香が簡潔にまとめて聞いてきた。
「その通り。ルティアに対しての移住提供も私たちの種族が同時に存在しているのも彼のおかげでもあるのよ。一度、ほんん!の一度だけ戦いを挑んだことあったけど…指先でダウンされました」
フェリスはフッと遠い昔を思い出すように自嘲した。
そして、三人は本気出した太陽の龍戦士の恐ろしさの片鱗を感じ取った。
「ま、そんなわけで、あんたたちはそれぞれの試練を乗り越えて「時間稼ぎの要員」というわけね。それじゃ、頼んだわよ? 未来から来た異世界の龍戦士達」
彼らは、ゲートを潜ると。巨大な三匹の龍が待ち構えていた。右から、青い龍。黄色の龍。緑色の龍だった。
「未来軸の私達ね? 初めまして、この時代のドラグーンアクア」
「同じく、俺はこの時代のドラグーンジュピター」
「そして、最後に俺は、ドラグーンシルフ」
本来の魂と力そして肉体を持っているドラグーンを前に彼らは力の差を感じ取る。
「さて、次世代のドラグーン達よ。あなた達には試練を与えます」
「俺たちの下す試練を乗り越えることで、この時代でも我らの力を使えるだろう」
「だが、知っての通り。龍の力は強大であり、君たちの心身に耐えられるかどうかは正直わからない。しかし、君たちがここまで戦ってきたことの歴史と勇気は、裏切りはしない。
何故なら、ドラグーンに変身できることで最初の試練を通過しているのだから」
「試練は簡単。アクアとジュピターは、私たちと戦うこと」
「そのクリア条件は、「ジョグレスエヴォルド」を戦闘中に行い、戦う。それだけだ」
「うえぇ?! ちょっ?! あたしは何も知らないわよ?! そんなシステム!?」
ジュピターこと美奈子がジタバタして抗議する。
「一応言っておくけど、全ドラグーンは同期しているから理屈上可能よ? それとも自信がない?」
アクアこと彩香が美奈子に挑発するようなことを言う。
「あんですって?」
「やってもいいわよ? 属性無視でも勝って見せるから?」
2人の女の子の背後に龍と虎のスタンドが見えた気がした。2人の間に火花が散る。
「……シルフさん。俺、どうしたらいいんでしょうか?」
豪は、正座してシルフに聴いてきた。
「経験上、ああなったら男の出る幕はないから、しばらくお茶でも飲もうか? ここにいると試練どころじゃなくなるし、それに……君がいると本音も言いにくいだろうしね?」
この時代のドラグーンシルフは人型になって、緑の衣服を着た青年に化けた。
「じゃ、俺は彼と別の空間でお茶を飲んでくるから」
そういって、シルフは瞬間移動して豪を連れて行った。
「はぁ……色々と思春期の女性は大変ね」
「だが、それも青春の醍醐味だろう?」
ドラグーンアクアは、青い髪のポニーテールをした藍色の着物姿の女性に。対するドラグーンジュピターは、手足の装甲だけを付けた金髪の格闘家の男性に化けた。
「おい! おまえら、そんなみみっちい感情で戦えるほど余裕があるようだな? ややっこしいから俺達はそれぞれ、雷龍と水龍と名乗らせてもらうぜ」
そういってから、電光石火のように一瞬で2人に両手の拳を叩きつけた。
「きゃっ?!」
「くっ!」
変身しているとはいえ、一撃で数百メートルもすっ飛ばされた。
「準備している暇はないわよ! いいわね?! いくわよ! レインシャワー!」
水龍が右手を掲げると水の針が雨のように彼女らに襲い掛かる。
「ウォーター・シールド!」
円状の水の盾を展開して防御する。
「なろっ! なめんな! サンダービースト!」
ジュピターは、雷の獣を両手から解き放って、水龍に襲い掛かる。だが、彼女はその攻撃をチラリと流し見て、溜息を吐いた。
「零点ね。そんなもので良く戦えたわね? そんな攻撃は」
左手で小さく水の球を作り上げて、軽く放り投げる。
「好きな人でさえも守れないくらい無力よ? 恋する乙女さん」
軽く手を叩くと水の球は霧散して、雷の獣を一瞬でかき消した。
「そんな! たったそれだけで!?」
真っ向勝負で敗れたのが初めてだった。
「それと、もう一つのおまけだ! ライジング・スマッシャー!」
雷龍は、全身を轟雷で身を包み遠距離から拳を撃ち込んだ。プラズマのエネルギーストームが2人を飲み込み、龍戦士の鎧をボロボロにしていく。
「きゃああああああああああ!」
2人は悲鳴をあげて、その場に倒れこむ。
あまりにも、差がありすぎるのだ。彼らの力はほんの小手調べでしかない。だが、彼女たちにとっては全力の一撃だった。しかし、その差を埋めるだけの技量が足りない。
(どうしたら、戦えるの?)
彩香は、答えのない問題に出くわして迷っていた。ある程度のデータがあれば大よその答えは類推できる。だが、データがあったとしても彼らのように強引な力技の前ではデータは意味をなさない。
(いったいわねぇ……だけど、ここで負けたら、アイツにお礼の言葉さえも言えないじゃない! そんなのは、女が廃るわ!)
美奈子は何とか立ち上がろうと膝を震わせながら無理やり立ち上がろうとしている。だが、ドラグーンジュピターになっているとはいえ、強大な攻撃を受けてうまく立ち上がれないでいた。がくんと膝が崩れる。だけど、美奈子の雷のように煌めく想いが限界を超えようとしている。
自分よりも強い相手とわかっていても戦った人がいた。
自分の事をどこにでもいる女の子としてみてくれた男がいた。
敵であっても、守ろうとしてくれた犬飼豪が好きになった。だから、だからこそ。
「こんな所で負けてたまるもんかー!?」
地面に拳を叩きつけて無理やり立ち上がった。
その光景を見て、彩香は犬飼豪と龍介の二人の姿を重ねてみていた。そうだ。あの二人は
どんな困難にも、「勝てるから勝つ」とわかりきって戦ってきたわけじゃない。
ドラグーンソールの初陣の際に、自身の命と恐怖心そして痛みを超えて親友である優香を助けたのが小さき英雄だった。
「そうよ。戦いなんて、「答えがわかりきっているからやるだけじゃダメなのよ」なら、わからないのなら、私が導けばいい! 勝利を渇望するのなら! その筋道を!」
彩香は、昔空手の大会で豪の活躍を知っていた。だから覚えていた。我武者羅で戦法としては下策だろう。だが、龍介と豪に共通するのは「ただひたすらに、真っすぐであることだった」それが彼らの生き様なのだ。
「美奈子! 準備はいい? ぶっつけ本番になるけど、ついてこられる!?」
美奈子は呆けたように、顔を崩した。だが、すぐにニヤッと笑った。
「言ってくれるじゃない? 才女がそういうなんて……いいわよ! 呉越同舟だけど、詳しいことはまっ―――たく! わかんないけど、やってやろうじゃないの!」
ドラグーンアクアとドラグーンジュピターの気が高まっていく。ふたりは頷いてサインを交わす。
「ドラグーンアクア!」
「ドラグーンジュピター!」
青色と黄色の気が交じりあい、光のリングを作る。
「ジョグレスエヴォルド!」
大人の女性らしい体つきに、右側が青色。左側が黄色のストレートロングの髪。
両目は、黄色く。口元を隠す藍色のマスクに、青を下地にした黄色い稲妻のようなラインが走る。背中には、天使のような翼が生える。
「ドラグーンファイレス!」
両手の中指に金色の指輪が輝く。
「さあ! 反撃の時間よ! ライジング・アロー」
両手で十字に切って、雷の矢を放つ。
雷龍と水龍は初めて回避行動をとった。
「やるな!」
「ええ、ここからが本番ですもの?」
彼の背後にドラグーンファイレスが電光石火で接近し膝蹴りを喰らわした。
「雷龍! アクアソーサー!」
水の盾を円盤状にしてそのまま攻撃のブーメランにする。
「ウォーターランス!」
ドラグーンファイレスは、両手をパンと叩いて水の槍を放り投げてアクアソーサーを打ち消した。
「! ここまで強く!?」
水龍は純粋に驚いた。ジョグレスエヴォルドの効果で2人の龍戦士に迫る勢いで対等に戦えていることができることに正直ここまでとは思いもしなかった。
「雷龍! 私たちの技を合わせます!」
「ああ。行くぜ!」
「水龍の激流!」
「雷龍・荒神拳!」
「水雷の激流拳神!」
水と雷のエネルギー体の二天龍が彼女に襲い掛かる。
「言ったはずよ? 今の私達なら超えられると! 必殺!」
両腕に雷を帯電させ、水の球を天に向かって放り投げる。
「天技・ダイナマイトシュート!」
そのまま水の球に向かって、オーバーヘッドキックして二天龍を破壊する。
凄まじいエネルギーがその空間を覆い尽くす。
エネルギーが消失すると、三人はボロボロになっていた。
「お見事。よくぞ、俺達の最強の技を打ち破った」
「これで、私たちの試練は終わり。予想以上の成果をあなた達は見せてくれたわ」
雷龍と水龍は顔を合わせて頷き、小さなメダルを二枚彼女に渡した。
「これは?」
「この世界でいう所のカードみたいなものね。それがあればこの世界でも変身ができます」
「俺達の戦いで使った技は全て使うことができる。もしも、ジョグレスエヴォルドができなくなった場合の切り札に使ってくれ。先人のお節介だ」
この時代の龍戦士からの餞別に、両手でやさしく包む。
「ありがとうございました!」
頭を下げてお礼の言葉を述べた。
試練が終わったことを感じたシルフ―風龍は、湯飲みを置いた。
「さて、あちらは終わったみたいだな。じゃ、始めるか」
「はい! 何を始めるんですか?!」
気合充分で問いかける。
「なぁに。ちょっとした試合さ。ルティアとね?」
「え……?」
彼らの前に元いた世界に、戦い。そして敗れた相手、破壊龍ドラグーンツェアシュテールンクが姿を現した。
「久しぶりね。そして、あなたに伝えておきたいことがあるの。私の目的。そしてそれが、龍介お兄ちゃんにとって、最も苦しい選択を突き付けられることになる」
ドラグーンツェアシュテールンクが、ゆっくりと歩み寄り。静かに答えた。
「この時代の私を助けたら、私かお兄ちゃんの恋人の桂優香の存在が消えてしまう」
FIN
うん、どうしてこうなった? どうしてこうなった? そして未来のルティアちゃん、爆弾発言。それを知る豪はどう行動するか?
そして、作中で描こうかどうか迷った「添い寝シーンのご様子」読みたい方は返信時に素直に書いてください。多かったら書きますの。
次の話で冒頭にぶちこんで・・・まぁ最近のラノベもえろんですし? 大丈夫なはず?
(注意:2人は年頃の男女。2人は年頃の男女)とテロップも入れますし大丈夫かと?
ぬーべーの郷子と広のよくあるラブコメシーンの再現です。小学生時代のぬーべーの漫画版です。探してみよーw
さて、これでドラグーンシリーズの制作目的が明らかになり、破壊龍ツェアシュテ―ルンクの目的もはっきりしました。
この時代のルティアを助けることによる事象改変。よくありがちなパターンですが、どうなることやら?
予防策は既に打ってあるので、あとは敵の方も動き出す。
投げ銭していただけると、喜びます(´っ・ω・)っ「創作関係に投資」(´っ・ω・)っ今さら編集できることを知る人・・・(天然すぎぃ)