龍戦記ドラグーンソール

戦乙女編 第四話裏切りのワルキューレカルラ 


カルラは獅子王に受けた傷を癒していた。

 「クッ。あの男にやられた傷がまだ癒えない。このままでは、カオス様の野望が」

 「慌てるな。我が…いや。俺がなんとかする」 

 カオスが憑依した人間。秋沢竜也が傷を見る。

 「内部の攻撃か。厄介だな。だけど、カルラ。お前は、シグルーン。裏切りのワルキューレとして俺達についているが、いいのか?」 

 カルラの正体は、シグルーンというワルキューレだった。シグルーンはワルキューレの中でも有名な戦乙女だ。その一人がカオスの味方となっている。「私は、竜也―あなたに仕えているのです。この世界に来たとき、暴漢に襲われた私を助けたあなたに」

  遠い昔。この世界に来た時に、力を一時的に失い。無力となったシグルーンは、暴漢に襲われた。だが、その声を聴いていた竜也が助けに入ったのだ。だからこそ、「力」で支配し。泣きがない世界をと彼は考えたのだ。 

「昔のことだ。それを恩と思って、俺は助けたわけじゃない。少しは寝ていろ」

 「しかし、アイツらを迎え撃つのは私の役目です」 

「ダメだ。俺の言うことを聞け。今は休むのが命令だ。いいな?」 

語意を強めて、彼女を寝かしつけた。 

「はい。わかりました」

「それでいい。あとは俺に任せておけ」 

キラー衛生攻撃開始まで、あと50分。  

 龍介達は、スグルの道場にいた。 

「彩香さん、体調は?」

 「大丈夫。ただ、戦いとなるとさっきので無茶をしたから、カイザーになるのは厳しいかもね。アクア」                                                            「私も同意見です。戦いも大事ですが。時間があまりありません」               キラー衛星の攻撃開始まであと50分しかない。                              「だけど、どうにかしないと。龍介君、何か案はありますか?」                桂優香が龍介に問いかける。                                                           

「宇宙空間に行くとしても、現時点でそこまでの飛行距離がある人間はいない。だけど、ネット回線を通じて、キラー衛星内部に行くことができれば、可能かもしれない。問題は、神龍帝の力を使えれば、だ」                         神龍帝のカイゼルになれば、ドラグーンオメガになれる。

だが、今現在は、カオスによって、進化できない状態だ。それを解除する為の手段が12の戦乙女を集めることなのだ。

「ドラグーンカイゼルになれば、宇宙にもいけるはず」                         「そうだな。だが、もう一つやる必要がある。それは、OSのアップデートとデータの書き換えだ」                                                                         龍介達の前に、吸血鬼の女王フェリスが姿を現した。

銀色のストレートヘアを靡かせ。微笑む。                                            「久しぶりだな。元気にしていたか?」                                             「フェリスさん!? どうしてここに」                                               「お前たちが戦っている時に、田中朱美から電話があったんだ。だから、お前たちを助けるために来た。龍介を少し借りるぞ? 奥方」                         フェリスは、優香に断りを入れてから龍介を縁側の外に連れていく。

「お、奥さんって・・・・?!」 

 優香はカーッと顔が熱くなり。恥ずかしさと嬉しさがごちゃまぜになった顔を隠すために背中を向ける。「さて、最初にこのカードを渡そう。私の力が入っているサイバーリンク。「ガイア・スプリーム」この力は、大地と海の力を開放し、ソールの状態のままカイゼルと同等の力を出すことができる。某格闘マンガアニメで言えば、べジットブルーみたいな能力をスーパーサイヤ人の状態でやっているようなものだ」                                                          「それ、チートじゃないですか?」                                                   「そうだ。だが、これだけではない。龍介くん。君たちが全員進化するためには、君たちの魂の進化を促さねばならん。何故なら、進化のコードを書き換えることで、再び神龍帝に進化することができる。君だけは他のものと違い少々特殊だからな」                                                                             「特殊?」                                                                                         「そうだ。君の場合は、融合進化だ。ドラグーンノワールの剣を媒体にして、進化する。そのため、ドラグーンノワールの力を引き出す必要がある。君に託されたモノは想いだけでなく彼女の魂もある」                                        破壊龍シュティールンクが、少ない時間の中で「ドラグーンソールの後継者として名乗った。ドラグーンノワール」それは、黒い太陽。                      その思いは、神龍帝の強大な力に龍介の小さな体が耐えられるように、歴史の修正で消えるであろう自分の命を龍介の体に託したのだ。                   「赤と黒の力。その二つを完全に1つにする。そして、カオスが施したウイルスを除去する。ルティアの魂が、混沌に敗けるはずなどないからな。では、始めるぞ?」

「どうやるんですか?」                                                                   「私の目を見ろ」                                                                             フェリスは魔眼を発動させて、龍介の目を見て、視界。脳。大脳・小脳・延髄を通して、術式を施していく。これまで、バラバラになっていた電気信号を統合させた。               

  (なるほど。川で言えば、水の流れを石で、強引に封印していたのか。だとしら、クラッチとエンジンをつなぎ。筋肉と心臓。そして、脳の伝達をうまく電導すれば、ソールのままでも強くなれる。だが、これから先の戦いでは、全ての神龍帝の力が必要になる。先ほどの攻撃で海底に封印されていた結晶体「エルザンライザー」そして、この世界にも伝わる絶対悪のアイツの存在がこの町に飛来した。なら、カオスの12の月が意味するものは、「アンリ・マユ」の復活。かつて、ドラグーンソールとその仲間であるシルフ、ジュピター、アクアの四人が、戦い。カオスとアンリ・マユの融合進化による野望を討ち果たした。)

フェリスは、カオスが遊び半分にキラー衛星を起動させたのではなく。脅しと調査の二つを兼ね揃えた合理的な方法でやっていることを知り。朱美の連絡の前に、ここに訪れていたのだ。                     「これで終わりだ。今までは、クラッチとエンジンがうまくかみ合っっていなかったもの。あとは、お前次第だ。進め! 太陽の龍戦士!」       「ありがとうございます。とりあえず、いってきます!」         龍介は、朱美の処に向かう。                     「さて、あともう一人。彩香の体の調子を戻すには、これがいるか」

フェリスは一枚のカードを取り出した。「月」のカード。        「月は、見えているか? 少女よ」                   フェリスは彩香の処に向かった。

彩香は布団の上に横になっていた。 

襖が開き。フェリスが入ってくる。

「失礼するぞ」                           「フェリスさん」                           彩香は起き上がろうとしたが、フェリスは制止する。           「そのままでいい。お前に聞きたいことがある。また、アイツは1人で乗りこむつもりだ。お前に何も告げずにだ。一緒に、戦いたいか?」       彩香は、布団の下でぎゅっと握りこぶしを作った。           「戦いたい。ただ、泣くだけの子供のままじゃ嫌だから」 

 父と母を失くして、ただ泣いていた子供の時の彼女ではなかった。

未来をかえるためにも。愛する人を護るためにも。戦いたいのだ。

 「わかった。このカードを使え。「月」のカードだ。体力回復を促進させる。 15分。待てるな?」                     「…はい! 好きな人を護れるなら!」 

 子供だった頃の彩香は、もういない。 田中朱美が最終調整を整えていた。相手の居場所に行くための直通ネット。そして、変身した時に生じるエネルギーを物理から素粒子状に変換し。電子データとしてネットの世界に入っていく。

 「良し。準備はいいわね。それにしても、あのカルラって子は、私達と同じ気配を感じるわね。たぶん、あの子でしょうね。今は、キラー衛星をどうにかしないと」 

 襖が開かれて、龍介が入ってくる。                  「朱美さん! 俺を電脳世界に転送してください!」            龍介が進言してきた。 

「困った龍戦士さんね。でも、あなた一人だけを行かせない子が後ろにいるわよ? ね。優香さん」 

優香が腰まである黒髪を揺らしながら、龍介に近づいてきた。

 「私も。戦います。だって、私は龍介君の恋人ですから。女の子も待っているだけじゃないんですよ? 好きな人の為なら、戦います。あなたとなら、どんな災いも痛みも。恐れずに歩いていけるから」               優香は右手を差し出して、握手を求める。 龍介は頷いて、右手をぎゅっと右手で握りしめた。離さないように。 広い。広い。電脳の海で迷わないように。 

「行こう。2人で」 龍介と優香は龍戦士に変身し、そのエネルギーを利用して、再び電脳の海に潜り込む。                   ドラグーンソールとドラグーンノルンが電脳の海を泳ぎ。キラー衛星のコンピュータ内部にたどり着いた。 

 そこに待ち受けていたのは、カオスと視界すべてに広がる大天使の羽を黒く染めた紫と黒の電子生命体の悪魔だった。 

「よくきたな。水野彩香はおねんねか? まぁいい。こいつとーディアゾロスと遊んでもらおうか? こいつのどれか一体に、キラー衛星を止めるキーがある。増殖機能がある。お前たちが先に倒れるか? ディアゾロスが先か。さあ、ゲームだ」 

「アソボ。アソボ。アソボ。アソボ」

  ディアゾロスは、ぎょろりと歪んだ目を輝かせて、生存というゲームという名の遊びを始める。 カオスが指をパチンと鳴らすとディアゾロスの口からエネルギー光弾「ガㇽスト」が四方八方から、2人に襲い掛かる。 

「ソールブレイズ! スピリット―ワ―プ進化!」            ドラグーンソールの右手に、短剣を取り出し。自分の胸に突き刺した。 

ドラグーンソール、ドラグーンソールバーニングバースト。ドラグーンノワール。そして、九つの竜の力を宿した。九頭竜の龍戦士。ドラグーンカイゼルへと瞬間的に進化する。

 「ドラグーンカイゼル! 「九頭竜招来!!」」 

  大剣から、九つの竜を召喚し。エネルギー光弾を討ち払う。 

「ノルン! 大丈夫?」 

「大丈夫です! ですが、敵が多すぎます!」

 2人は背中合わせになって、敵の攻撃を遮っている。しかし、長時間は無理だ。  

 攻撃の豪雨を、2人は避けているが、長くは持たない。被弾している箇所が多くなっている。

カイゼルは、ノルンを護るために、自分自身を盾となる。 

「女神の盾 マーキュリープロティクション あたしも戦う! カイゼル。ノルン」 

 水の神龍帝ドラグーンマーキュリーが、参戦してきた。 

「もう一度。カイザーに! フェリスさんのお陰で、体力は回復したから。大丈夫!」

 「わかった。無茶を通して、アイツをぶっ倒す! 行こう! 三人で!」  カイゼルは、右腕にガントレットを召喚して装備。そして、8センチのCDを挿入して、変身する。 

「トリニティ・エボルド!」 白・赤・青の三色の光となった龍戦士が1つとなり。次元を超えた無冠の英雄―ドラグーンカイザーへと進化する。進化時に無防備となるため、ディアゾロスの光弾が豪雨のように、容赦なくカイザーへと襲い掛かる。 

しかし、今度のカイザーは、少し違った。紅のマントを右手でつかみ。全身を包んでいた。 

 バサッと勢いよくマントを左から右へと薙ぎ払うと。光弾を全てはじき返し、視界に見える180度の範囲にいる敵を消滅させた。 マントに隠されたその姿は、前に変身した時とは違っていた。赤主体の鎧に、白いラインが走り。西洋の騎士王を連想させる姿だ。 

「待たせたな。オレが遊んでやる。いくぞ!」 

 瞬時に、剣を縦横無尽に振り抜き、増殖していたディアゾロスを毎秒1秒ごとに200体を消していた。 ディアゾロスたちは、泡めふためき逃げようとしていた。

だがしかし、増殖していたせいで互いに逃げ場を失わせていた。

 そこに、地獄の中で漆黒に輝く魔神が現れ、戦力差という物理問題を完全に無視した問答無用な存在が自分達を逆に涼しげな顔で倒していく。

その剣舞は、美しく。超越していた。これこそが、真の皇帝。

そう、「カイザー」だ。

 「どうした? 遊ぶんじゃなかったのか? お前達のどれかに本物がいて、爆弾を止める。単純なルールだろう。勝てるはずなのに、オレを見くびったのが運のツキだな。例えば、こういったものもできるだろ?」 

 片手剣をブーメランのように投げて、ディアゾロスを縦一直線に、200人ほど辻切りし、その間に、バスターフォームガンマで、二丁拳銃で掃射。一騎当千の強さを奴らに見せつけた。 

「ア、アア、ア、ア、ア」 

ディアゾロス達は、その残虐な戦いぶりを目の当たりにし。怯えた。こいつには、手を出してはいけない存在だったと。

しかし、そんな小さな後悔すら、カイザーには関係なかった。 

 残り時間が3分を切ったときには、最後の一体がいた。それを倒せば、キラー衛星は止まる。 

「さて、お前ひとりだが、増殖するんじゃなかったのか?」 

 ディアゾロスは、冷や汗を滝のように垂らし。目に見えぬ速度で空間内を逃げ出した。

奴は考えた。 

―時間まで逃げ通せば、遊びに勝てる― 

「考えてはいるな。だが、オレの怒りはこんなものじゃないぞ?」 

 カイザーは両眼を閉じて、ゆっくりと丹田呼吸をする。

そして、脳のアクセルとクラッチをつなぎ、全エネルギーを好循環させる。「第1秘剣 剣速!」

  己の身体能力を爆発的に向上させて、瞬間移動に近い速度で身体を操る。その効果は、相手が視力では負えない速度であっても、自分自身が相手と同じかそれ以上の速度なら追えるのだ。 

傍から見れば、カイザーは消えたように見える。だが、ディアゾロスが瞬きした次の瞬間には、顔面が潰されていた。 

「?!!!!」

 「捕まえた。第二秘剣:螺旋甲(らせんこう)!」 

片手剣をドリルのように螺旋状に突く。

そして、ディアゾロスは最後の抵抗に己の体を爆発させた。電脳空間に眩い閃光が埋め尽くされる。 

  宇宙空間で、カオスが待ち構えていた。 

「来たか」 

何もない空間が引き裂かれ。ドラグーンカイザーが現れる。 

「やはり、ここにいたか。おまえのことだ。アイツが爆発するだろうと思った」

 「答え合わせと行こうか? あの瞬間。貴様は、瞬間移動と次元を超えるためにサイバーリンクを行ったな」

  カイザーはニヤリと笑う。

 「そうだ。吸血鬼のカードをな。オレの力を倍にさせるものだ。つまり、爆発時の一瞬は、オレにとっては「減速された時間」だ。つまり1秒は、10分。それだけあれば、逃げることは造作もない。あとはお前がいるだろうここに狙いを定めればいいだけのことだ」 

 こんな現象はないだろうか?  好きな異性に告白した時に、返事を待つ時間が異様に長く感じることが。 

それと同じような現象をカイザーは意図的に行ったのだ。 

 心臓の鼓動を早くすることで、体感時間は早く流れる。しかし、周囲の時間はゆっくりとなっている。 

そして、その原理をさらに高速化し、応用したのがカイザーの戦い方である。「言っておくが、まだ俺は全ての手札を切ってはいないぞ。カオス。お前の遊びはここまでだ」 

「フン。言っておけ。だが、貴様ら人間は気づいておらん。既に高次元体が、いや、12の月が封印していた。結晶体が目覚めたと」

 「なに?」

 「人の命。地球の命があれば、そ奴は、この世界での肉体を得る。先の攻撃で偶然見つけたが、抜け殻であった。だが、我の目的の1つは完遂した。その存在を見つけ。災禍を起こすのだからな。キラー衛星は、その副産物にすぎん。貴様らを引き込んだのもそのひとつよ。貴様が来ることもな」

  キラー衛星がカオスの目的を達成させるための副産物にすぎず。本命である結晶体に封印されていた存在をみつけることだった。

 「そうか。電子生命体―近い未来に、人間の体及び生命が電子化されると。妖怪などの現象がエラーだとしたら、異分子として排除される。しかし、そのログを貴様が管理するというのか?」 

今の人類が到達していない。1つの未来。人間の思考・感情と言った人格そのものを電気的活動からネットなどの電子化で生存させるというもの。

 これならば、コールドスリープと平行して脳の仕組みをコピーすることで記憶の劣化を遅らせることも可能だということも。現代科学では治せない病気も治せる可能性があるのだ。

 「そうだ。我がーいや、俺が管理するんだ。竜也としてな」

  カオスの仮面が外れ、高校生男子が姿をさらす。 それは、龍介の親友であった。彼だった。 

「・・・!」 

 カイザーの変身が解けて、ドラグーンソール。ノルン。アクアの3人にわかれる。

 「どう、して…! どうして、君が!」 

「龍介、俺はお前の持っているものを全て破壊したかった。俺にはないものばかりだからだ。だが、それと同時に、この腐った世界すら憎くもあった。強き者だけが弱者を消し。そのおかしささえも目をつぶれと言う世界だ。なら、いっそうのこと。世界そのものを壊してしまった方がいい。価値観なども、な」 

「それは、違う。価値観は、自分という核があって、誰かと話して、一人一人が確立していくものよ!」 

 アクアは、自身の体験を元に得た答えを言う。

 「だが、愚かな人間は、安全地帯という同じ価値観を持たないモノを異物とし、排除する。それを異なるものというのは、「悪である」とな」

 カオスの仮面を再び被り、カオスが言う。 

「よくあるだろう?『あなたのためを思って、言っているのよ』というのは、それは、言っている側の信念体系によって作り上げられた価値基準だ。

カテゴリーわけだ。たとえば、こういうのはどうだ?親がいないのはかわいそうだ。ハンデがあるから指導しなきゃいけない。教科書を分け与えてもいいだろう。そういった世間からみた「かわいそう」という愚象崇拝をわかりやすく行動することで信者を増やしていく。それは古典的で、使い古されたものだからこそー現代でも通じるのだ。まぁ、そのカテゴリー信者は、例え。親がいなくても、「生きている」人間であっても、そう見るのが人間さ。そういったのは、人間として向き合っていないんだ」 

日常に潜む。わかりやすい「正しさ」という基準。そして、相手という人間に向き合って言う言葉ではなく。見かけからわかる一面だけ切り取られた情報のみで、選び取る大人という子供の会話をカオスは指摘する。 

「我から見れば、これほど操りやすく。だましやすい手法はないと思うがな。さて、龍介よ。貴様はどうする? かつての親友が悪になり、世界を破壊しようとする過去の思い出にすがるか。ただ子供のように泣きわめくか」 

「俺は―…」 

 ドラグーンソール―龍介は掌を見つめて、思い返す。

その時に思い出すのは、ヴァルハラスタジオで変身した時に恐怖を感じた時に、助けを呼んでいた亜衣の声だった。 

『助けてー! ドラグーンソール!』 

 自分を信じて待っていた。必ず助けてくれると。だから、恐怖を押し殺して、龍介は変身した。その時の想いを掌に握りしめた。

 「俺は、信じるモノを護るために戦う。それが、君が親友だった竜也としても」

 「いいだろう。来るがいい」

  ソールが飛びかかろうと体勢を整えているとカルラが現れた。 

「カオスに手を出させはしません!」

 「シグルーン! 下がれ!」 カオスは、カルラの本名を言った。

 「シグルーン? まさか、あなたは、ワルキューレ!」 

 アクアは、知識の本棚から、ワルキューレの名前を思い出した。

 「それじゃあ、あのワルキューレは?」

 「その通り、真実の属性を持つ。ワルキューレ。シグルーン」 

 3人は、驚いた。カオスを封じた一人が敵側につくとは思わなかった。「この場は、いったん退こう。シグルーン。帰るぞ」 

「御意」 

  龍介達もスグル家に戻り、顛末を話す。美奈子と豪も聞いた。

 「そうか。お前の親友がなぁ。ま、やるしかないだろ? 電気信号で誰かの筋肉を動かすと言った実験も海外では既にできているし。いくらでもやろうと思えば誰でも「記憶の書き換えくらい」はできるしな」

  豪は、海外の事例を簡単に話して、最新のトラウマ治療に置いて、言葉で記憶を書き換えるという手法も存在する。

やり方を理解していれば「子供でも」できる技法であると言える。

 「うん。それでもね。豪、学校はどうだった?」 

「避難誘導されて、一歩もでられなかった。はっきり言えば、アラートも文字化けしたり、その存在を知らない人もいたな。たぶん、これから先の問題になるだろうけど。冷静に慣れる奴が2人以上いないと全員道連れになって死ぬ。何故なら、自分が信じた人が正しいと思い込んで信者になっている場合が多い。自律できる人間は、情報の裏取りどか調べるチカラはあるから大丈夫だろうけど。今の学校と生徒の能力を鑑みて、そこまでの事を考えている奴がいるか?」

 「たぶん、いないでしょ? 考えてもみなって、地震体験で個室に閉じ込められて、自力で脱出した人もいるし。その危険性を瞬時にわかる人は、潜在的に訓練しているか本能でわかるかの二つ。今の日本の教育の大半は「誰かの意思に、盲目的に従うこと」で、自分の頭で考えろというのは、「俺の頭の中を一ミリもずれることなく読み取れ」という無理難題なことだし。はっきり言って、熟練者じゃないと読めないわ。勉強というのは、無駄なことも有意義なことも含めて、考える訓練をすること。そのことを教えない。考えないという年ばかり食った大人が多すぎるわ」 

 美奈子がふぅ、やれやれとあきれ顔で言う。 

「だけど、問題はこれから。カオスの目的は12の月の起動と封印されていた結晶体の中の存在。じゃあ、その中身は何なのかをあたし達が知らないといけないわね。それと、スグルさん。その女の子は??」 

 スグルの背中に隠れていた。ショートヘアの女の子。目が黄色で蛇を連想させる。

 「あの、ぼくは、ヒュドラのヒナと言います。このたびスグルさんの子供になりました。みなさんよろしくお願いします。」

  ヒナはぺこりと頭を下げて挨拶する。「それから、彩香さん。このディスクをあなたにお渡しします。アテナフォームと名前が書いてありますのでお母さんのものかと?」 

「! 母の? でも、なんで」 

「とにかく読み取ってみよう」 

龍介はガントレットを召喚して、ディスクを挿入する。 

そこには、音声データが残っていた。 

『彩香へ。 誕生日おめでとう。 あなたが幸せな日を重ねていくことに そばにいられなくてごめんね。お父さんと一緒にあなたのプレゼントを探していました。お父さんは、慣れない英語であなたの写真を見せて、店員さんに相談しながら、ぬいぐるみを選んでいました。』 

 「おかあさん・・・。」

 『お父さんとお母さんの仕事が急に入って、そばにいられなくてごめんな。彩香。だけど、お父さんたちはできるだけ、早く帰っていくから。そのときは、一緒に祝おう。クマのぬいぐるみだから、きっと彩香も喜んでくれると思う。ただな? お父さん、彩香が初めてプレゼント欲しいと言った時嬉しくて、色々とパンフレットも取り寄せて、にらめっこしたんだが、どれもピンと来なくてな。あははは・・・時間がかかってごめんな』 

 「おとうさん」

 『彩香。お誕生日、おめでとう。幸せな小学生時代を楽しんでください。 あなたが、つらいとき。かなしいときも。私達は傍にいます。だから、しあわせになることをあきらめないでください。それが、私達の願いです』

 『『お誕生日。おめでとう。彩香ちゃん』』

  両親が残した最後のメッセージ。 

 彩香の両眼からは、涙が溢れ、手で涙を拭いても止まることはなかった。 彩香の心の中で、1つの景色が見えていた。 

 もう、声すらもわからなくなっていた親の声。 

遠い、遠い。記憶の隅に失くしていたと思っていた声を父と母の姿を 

 少女の彩香は、泣きじゃくりながら、2人のお腹に顔をこすりつけて、泣いていた。 

 ごめんなさい。ありがとう。と言葉を繰り返し。

父と母は笑顔で、優しく彩香の髪をなでていた。 幸せに満ちた心の世界。

それは、ずっと、ずっと、彼女が探し求めていた「宝物」だった。

 「たぶん。最後まで、幸せを願っていたんじゃないかな? 彩香さんが幸せになることをそして、しあわせになることをあきらめてほしくないことを」 龍介が彩香の頭を優しくなでて声をかけた。 

 時を超えた。両親との再会を彩香は果たされた。  


 同じころ。桂亜衣は、学校の校庭で小さくうごく。黒いウサギの様なモコモコした生物を見つけた。

 「あれ? 大丈夫? 元気ない?」

  亜衣はその生物を抱っこして、頭を撫でる。

 「きゅー」

 「んー? 災害警報の時に迷い込んだのかな? そだ。このままおうちにおいでよ? えーと、名前は。キューちゃん!」 

「きゅぅ」 黒いモコモコした生物。キューちゃんは、嬉しそうに鳴いた。「あー、でも。バスで帰るから、どうしよ?うーん」 

「きゅぅきゅう」 

 キューちゃんは姿を変えて。黒い腕輪に変形して亜衣の右腕に巻き付いた。「おおーーーー! かっこいいー! かわいいー!すごいー! これなら、お母さんにもばれずに済む! かえろー」 

 この時、誰も知らなかった。カオスが探していた結晶体の中の存在は、今。亜衣が拾った生物だということを。その生命体が、人の意思の結晶体に変えてエネルギーとする高次元体であることを。 

  あとがき 

やっと、やっと\(^o^)/オワタ― 無冠の英雄。ドラグーンカイザーの登場です。 ここでネタ晴らし。 本来なら、登場させる予定はありませんでした。をい。 だけども、よし、登場させよう。そして、彩香を悪落ちさせようぜ。と思ったけども。最近のニチアサ対抗のプリキュアで。。。うん、悪落ち系の展開が多いから、やめよう。というよりもどろどろした恋愛関係とか書くの嫌だし。某ナイスな船の番組みたいになったら誰も救えないし。(伏せてない。伏せてない)

そのかわり、スグル師匠の方面で、プチ修羅場になるようにヒナちゃんを仕込みました。うん、スグル師匠の小遣いが減ります。マイナス300円ほど。

スグル「私のお昼代ー?!」

その代わり、朱美さんお手製のお弁当が300円分増加します。

 個人的に、カイザーとオメガの強さは同じなんですが。スーパーサイヤ人4とべジットみたいな関係ですしねぇ。 カイザーはあと五つの技を隠しておりますが。(だから、バランスブレイカーでこいつを出したら、ほぼ勝てる展開で、倒したと思ったら強くなるという仮面ライダーBLACKRXみたいな存在で、カオスいじめになる。ヤメテ! 実際、登場させるたびに強くなる。

最近の先輩ウルトラマンゼロみたい。サラリーマンゼロ! 残業代ゼロ! 交通費ゼロ!のゼロ師匠に(をい)というよりもレミーサンいじめになる。ギリィ)この前後編一回限りの登場予定です。

(えー。だって、こいつ出すと戦える相手がカオスくらいしかいないんだよ? それかスグル師匠(紅蓮の獅子王 リミッター解除 素手で、大剣を握りつぶします。人間辞めました。必殺技レオン・ボルテッカー!(うん、マイク破壊の白い悪魔のあれです))


さらにネタ晴らし。ドラグーンソールカイゼルの正統進化形態がカイザーでした。

というのも、初期案ですと。優香さんを救うために、カイザーに進化して。世界を救うという。デジモンで言えばオメガモンとアルファもんを足してさらに、天地創造。宇宙の創世と破壊を司るという龍戦士の中で神さま的なモノでした。(その名残が、次元を超えたり。一秒の時間さえあれば、戦えるという。何このチート(;´・ω・)暴走した時に、対抗できるのがドラグーンノワール(デジモンで言えばブラックウォーグレイモン)たぶん、尊敬するバディファイトの作者様なら私の想像を超えたヒーローを生み出してくれると思います。(をい。) ・・・あ。そか。ディアボロの逆襲みたく。アンチカイザーを出せば・・・。

 …30秒だけ構想しましたが。どうあがいてもカイザーが勝つ展開しかできません(;´・ω・)

をい!をい!作者―この強敵どうやって用意するんだー?!というよりも、初期のドラソ、龍くんが、タイプチェンジ! シルフ! タイプチェンジ!アクア。となる予定だったのが、どうしてこうなった(´・ω・`)

(それは、一年前、東日本大震災で挫折したドラソ5話までの内容をSNSで供養の意味であげたのが。ニチアサ対抗シリーズと名付けられ、昭和ライダー&昭和ウルトラマンみたいなノリと勢いと設定の拙さがファンによって、豪くん⇒友ために変身する。美奈子⇒守られてばかりじゃ、女が廃るでしょ!優香=愛する人を護り抜く為 彩香=自分にとって大切なモノを護るためということになりました。_("_´ω`)_ペショ 電子書籍にしてみたくもなる。

そして、改行がしづらくなったのですが。Wordで作成した文章をそのまま貼り付けられないという苦行 ぐおおお💦

投げ銭していただけると、喜びます(´っ・ω・)っ「創作関係に投資」(´っ・ω・)っ今さら編集できることを知る人・・・(天然すぎぃ)