龍戦記ドラグーンソール 第13話 終幕

戦記ドラグーンソール 

第13話 君の果てしない情熱と夢に賭けよう

 クラウスは、牢屋に入れた巽川龍介の処に来た。

彼は気になったのだ。倒すだけなら、あの場でできる少年が何故、理解しようとする気概を持って言葉を投げかけてきたのか。そして、迷う。

――自分自身のエゴだけで、世界を壊してもいいものか

「私としても、どうかしている。異世界の人間と出会い。しかも年端もいかぬ少年が、戦いとは無縁の世界で、あのように戦っていたと」

 取り上げた携帯電話の映像で、ドラグーンソールに変身してから戦っている彼の歴史を知る。戦いに喜びを感じているのではなく。「泣きながら戦っている」とクラウスは感じたのだ。

 龍戦士達の多くは、自分の戦いに誇りを持っている。だが、彼はあまりに優しすぎるのだ。

 戦うたびに、涙という血を流し。1人1人の未来を思いながら、自分の正体を隠して戦っているのだ。

「これを返しに来たぞ」

 クラウスは直接携帯電話を返した。

「ありがとうございます。クラウスさん」

「礼はいらん。私はお前たちの敵だ。だが、ウルトラマンXの曲とはなんだ?」

「ちょっ!? 中の曲まで聞いたんですか?!」

「当たり前だ。敵の事を知るためだ。初めて聞いたが、いい曲だな。特に、絆で一つになる未来ともしもこの世界がなくなったとしたらという部分がな」

 龍介はこの部分を聞いた時に。特撮作品の事を話せば平和になるんじゃないかと思った。

「そうですね。これは、おれ。こほん。わたしの」

「まて、普段通りの話し方でいい。異世界に侵略する目的はあるが、私もお前の話を聞きたいから、な。今は監視の兵もいない」

「あ、はい。では、お言葉に甘えて。俺の考えですけど。ウルトラマンXは、色々と俺の世界での社会問題も絡めています。主題歌は、自分の守りたい世界がなくなるかもしれない時に、最後の一瞬まで、好きな人を守れる勇気を持てるか?にあると思います。実際、痛ましい事件や地震や津波といった自然災害といったどうにもならない出来事がたくさんあります。でも、それらから目を背けずに「一緒に戦える人と気持ちをつなげて、自分の夢を叶える」というのが伝えたかったんじゃないか?と思っています」

「ふむ。確かに、種族が違っても小さな争いはある。そして、家庭でもな。具体的な社会問題はなんだ?」

 王としての心が他の世界での社会問題に目が行く。

 龍介は丁寧に質問に答える。

「家族がいても孤立。社会に出ても孤立と孤独ですね。今は家族がいても一緒に食事をとることもなく。バラバラに食べている所もあります。そして、会話したくても。仕事の忙しさで、親子一緒に遊ぶこともなくなっているんです

 これは、現代社会では珍しくない光景だ。地方でも家族で一緒に食べることなく。小学生の頃から、バラバラに食べることはよくある問題だ。当然。病気の予兆や何に困っているのか?というモノが親世代。祖父母世代も気づかないで、事が起こってからようやく対処するといった出来事が多いのだ。

「そんなに? いくら忙しくても、私は兵士達の憩いの時間を考えて。いや、今は違うか。

私の我儘で言っているようなものだ」

「クラウスさんって、民思いですね」

「? 当たり前だ。私が行こうとしている理由は、身分制度もぶっ壊し。龍戦士達の力を借りることなく生きるために。異世界にも行こうと考えていた。だが、それだけではないのだ。

お前の話を聞いて思う。真の君主は何、か?と」

 腕を組んで考える。

「続けてくれないか? イーディーの事も教えてくれるとうれしいが」

「わかりました。エンディングですね。EDは、これまでのウルトラ作品と違い。ただ倒すだけじゃなく。共存できる道を探すということ。そして、「解決できる方法があるなら、相手が、何故攻撃してきたのか? それを理解しなくていいのか?」と。ウルトラマンシリーズのウルトラマンというヒーローは地球上では3分しか戦えません。でも、強大な力があります。その気になったら、地球を壊すことは簡単にできると思います。ですが、それをしないのは「人の未来を信じている」んじゃないかって。俺は思っています。

もちろん、作り話のモノです。」

 ウルトラマン作品は、時代によって作品テーマが異なった。有名なのがウルトラセブンだろう。

放送当時の時代背景はベトナム戦争時だったこともあり、「正義とは何か?」と戦いの意味を考えたこともある。

 さらに言えば、ウルトラマンレオの初期主題歌は「終末思想」が広がり。

日本が沈没するのではないか? 世界が終わるのではないかと思われていた。

 そういった作風は、平成三部作の三作目。「ウルトラマンガイア」でも問われたのだ。

1999年。この時も、ノストラダムスの予言が当たるかもしれないとマスコミが騒ぎ立てていた。

多くの創作に影響も与えたが、「未来に希望を持てる」アニメ作品も数多く発表された。

「そうか。そういった文明があるのだな。ひとつ聞いておきたい。君の夢は、なにか?」

「俺の、夢?」

 龍介に問われるのは、彼の夢だ。そう、戦うだけの世界から離れた時に、追い続ける永遠の光と影。それが、どんなに苦しくても。その思いを超越したところに行きたいと思う光だ。

 遥か昔に、壊された夢。

そう、電脳空間を舞台にした変身ヒーローの冒険譚。

あの時に書いた小説。「電脳戦記ウェブファイター」というオリジナルだ。

龍介は、人の心の進化をテーマにした作品を作りたいと願った。

だが、幼い子の児戯として、周囲の大人や同級生が、破り捨てた。

 小学生の頃に抱いた龍介の夢なのだ。

「俺の夢は―好きな人と過ごし。そして、創作を通して「生きる勇気を持ち続けられる」ことを伝えたい。傲慢かもしれない。嘲笑うかもしれない。それでも、俺は、そうした作品を作りたいんだ!」

 それは、中学時代に壊された夢。CDディスクに入れたデータ。そのディスクを、三階の教室の窓から放り投げられ、壊されてしまう。嫌な思い出がある場所でもあった。

 その言葉を聞いて、クラウスは思う。彼は、戦う力の源は、「誰かのために」というやさしさからあるのだと。

「そうか。リュウスケよ。君は、誰かの為に戦うことで力を発揮する人なのだな。ならば、このデータを渡しても問題はないだろう」

 小さいカードを彼は龍介に渡した。

「このカードにはこの戦艦内の地図が記載されている。このままでは俺達の道が、邪悪な意志によって破壊されると分かった場合。君たちの手でこの戦艦を破壊してもかまわない」

 クラウスはこれは、独り言だがと。檻を閉める際に背中を向いて話しかけた。

「邪竜の封印が、誰かの手で破壊されていた跡があった。その時は、頼んだぞ。

俺の異世界の友よ」

 クラウスはゆっくりと通路を歩いていく。

「なぜ襲ってくるのか? その気持ちを理解しないでいいのか……?」

 

 

 豪達は、作戦を練っていた。

「彩香。相手が、アウトロングレンチの場合。どうやって近づく? その場合に、俺達ができることは何だ? 今回は俺のチェンジアップも使う」

 犬飼豪は、親友である龍介が、自分たちの命を守るために、捕虜になったことを知り。

傷の手当てを軽く済ませて、緊急会議を行う。

「そうね。アウトロングレンチの戦略の場合。物凄い遠距離から徹底的に攻撃するのが鉄則よ」

「となると、ライジング化して私と豪が先行して風穴ぶち空ければいいわけね?」

 彩香が冷静に状況を話して、脳筋の美奈子が単純明快に考える。

 その中で3人、沈黙していた。桂優香とシュティールンク。そして、ルティアだ。

「おかしい、ですよね? るーちゃん」

「うん。明らかにおかしい。狙いが私達なら、彼らの目的は既に達成しているはず。破滅の竜を作るなら、私か優香おねーちゃんだけでいい。なのに、何故?太陽龍のお兄ちゃんを連れ去る必要があるの?」

 そう。破滅の竜ルインを生み出すための儀式として必要なのは「桂優香」か「ルティア」だ。

桂優香が転生する前の存在が、ルティアだ。未覚醒の破壊の龍。太陽の龍戦士ドラグーンソールが保護し。そして、仲間のドラグーンジュピター、ドラグーンアクア、ドラグーンシルフが世界の安定と秩序を守っていた。

 この時、彼らが知っている歴史の流れとは大幅に違い。助けに来た龍介達が来ても、桂優香を連れ去るだけで、クラウス達の目的は、達成したも当然だった。だが、目的を達成できるはずなのに、龍介を連れ去ったのがわからなかった。

「シュティー……いえ。ドラグーンノワール。聞きたいことがあります。この世界でも、太陽が一番強い力を持っていますか?」

 優香は、自分がわかる範囲での質問を投げかけた。

「ああ。この世界でも太陽が一番強い力を持っている。

力の順番に優劣はつけられないが、炎、風、水、雷の四つが廻ると世界は安定すると考えられている」

「ありがとうございます。今ので確信しました。るーちゃん」

「うん。今のでわかった。というよりも、私たち自身が考え方を間違っていた。破壊龍の力よりも強い。

災厄にも慈悲にもなれる力ー太陽の存在。そこに彼らは気づいた。だから、私達を人質として、断り切れないカードを用意して選択を求めた。私達の命をとるか世界をとるか、と」

「だけど、龍介君は私達の命を最優先にした。バーニングバーストのシステムを持ってすれば瞬時に殲滅することは可能だった」

 優香は手を強く握りしめて、悔しいと小さくこぼした。愛する人を守るために、小さな手で何度も戦ってきた彼を守りたいと誓った月夜。

そんな優しい願いさえも届かないことに、怒りが湧く。

「だが、反撃のチャンスはある」

 シュティールンクが全員に対していった。

「あいつらは、君たち全員が進化していることを知らない。聞けば、変身して戦ったが逃げてきた難民を人質に取られ、シロとクロにやられたということじゃないか? 大丈夫。私達ならできる。

意志・信念・慈悲・慈愛ー「心」がどれもつく。心という無限のエネルギーを私達は引き出すことができる。それに蓋をしてはいけない。「わからない」「無理だ」「あきらめよう」と言った時は、キャンセルと言ってしまえばいい。ちょっとストーップ!と心の中でな」

 シュティールンクが茶目っ気を見せて片目をつぶる。

「そうだな。俺の先生もそういっていたよ。人が空を飛べる機械を作ったのは「心の力を誰よりも信じていた」そして、辛い時も投げ出したいときも哀しい時も、寄り添ってくれている誰かがいるからできたんだってな」

 豪が武道の先生である。鋼の謎の仮面を被ったスグルと名乗るマスターに師事を仰いでいた。

彼は、こうも伝えていた。

「心に優しさや愛がなければ、スーパーヒーローになれない。ドジで、バカで、まぬけであろうとその心を忘れて、力を振るえば暴力にしかならない」

 それが、豪が受け取った言葉と心だ。

リーシがルティアの家に戻ってきた。

「はぁー・・・連れてきたわよー。「あっちの私」を」

 リーシが連れてきたのは、未来軸から来たリーシとセリアだった。

「はあ!?」と全員が驚く。

 遡ること一時間前。リーシは瞬間移動で、シュティールンクから邪竜の封印が解けているかを調査してほしいと頼まれたのだ。

そして、彼女の懸念通り。「封印が解かれていた」そして、この背後に彼の竜の存在が動いていると確信した。その時に、時空の歪みが生じ。

ルーガル―のセリアの背中に乗った銀の腕輪をしたリーシが現れたのだ。

邂逅しての一言。

「豪はどこ!? 知っているのなら、すぐに連れていって!」

 と恋人が愛する人の安否を聞くような切迫感があった。

「あ、はい。知っていますので、落ち着いてください」

 仰天した心は何処かに行き。今に至る。

「というわけで、現在の私が過去に飛んできたというわけよ。時空間の往復する方法をVR空間で意図的に空間を捻じ曲げて、トンネルを作ってやってきた。わかった?」

「いや、トンデモナイことをしたというのだけはわかった。才女の彩香さん、モー少し具体的に頼むわ……俺にはついていけん」

「OK! 空間を歪曲して、トンネルを作った。物理世界の道具で言えば、壁にドリルで穴をあけて、こちらをあちらをつなげたということになるわね。リーシさんの力がインパクトドライバーだと想像するとわかりやすいと思うわよ」

「なるほど。ディバンディングドライバーのドリル版か。となると、あれ? これってかなりすごい事なのでは?」

「ええ、そうよ。かなり乱暴な説明だけど。「これが一番わかりやすい」のよ。さらに言えば、マイクロブラックホールを作り出すことも可能だし。ある意味においては、私達の世界でのどから手が出るほど欲しい力ってなるわね」

「彩香、彩香。あんたさ。キューティーハニーとかセーラームーンから、そうしたのを得た口でしょ?ジョグレスエヴォルドしたから、あんたの記憶もわかるから」

 彩香は、赤面して無言で美奈子の腕を関節技で極める。ギリギリ、ミシミシと握力と筋肉を伸ばし過ぎて、体が悲鳴をあげる。美奈子は左肩をパンパンと叩いて降参する。

「ぎぶ、ぎぶっ あんたがやるとシャレにならないから! それに」

 格闘技取得の理由が、彼女の記憶の底にあった。そう、二年前の水野彩香がVR空間に迷い込み。ドラグーンシルフがチェンジアップした戦闘に遭遇した。その場にいたリーシが彼女の精神負担を考えて封印したのだ。その時の記憶が蘇り、恐怖心で日常生活が送れなくなる事態を防ぐために。

(ほんと、どこかしらでつながっているのがすごいわね)

 美奈子は苦笑して、自分から芸人枠を受けるとは思わなかった。

 「反撃のチャンスを組みましょう。陽動役と追撃役の二つを組みます。前者はアクア・ジュピター。シルフとリーシ。セリアさんは、シュティールンクと一緒に追撃に」

彩香の説明に、優香が挙手して「待ってください」と割り込んだ。

「優香?」

「私が、私が助けに行きます! 助けられてばかりの女の子でいたくないから!」

 優香は、勇気を出して戦う意志を示した。守られてばかりじゃ、女が廃る。そう、彼女の魂が叫ぶのだ。愛する人を護れる優しさと強さを持ちたいと。

彩香は思う。あの引っ込み思案で、戦うことを嫌っていた子が守るために立ち上がることに、どれだけの決意と覚悟がいるのだろうと。

「わかった。変身妨害されていたから、優香が要よ。いい? 太陽をよみがえらせて」

「はい」

 過去にウルトラ作品で何度も力を奪われ、立ち上がれない戦士達がいた。だがそれでも、応援してくれる人間がいる。支えてくれる人間がいることで、彼らは何度も立ち上がり、未来という光を灯し続けた。

作戦は、こうだ。ドラグーンアクア。ジュピター。セリアの三人が陽動役を担い。

ドラグーンシルフとリーシが第二の陽動兼救出役。そして、決め手が優香とシュティールンクが戦うというものだ。

(待っていてください。龍介くん! 私達が必ず助けます! 世界でたった一人のあなたを必ず。

護りきって見せます!)

強く。強く。優香は想う。愛する人を助けずに、「何が龍戦士になった恋人か?」彼女にとって一番怖いのは、愛する人がいなくなることだった。だから、今度こそ。泣いているだけじゃダメなんだと。

「優香お姉ちゃん! 私達で助けましょう! お兄ちゃんを!」

 ルティアが強い意志を持った瞳を輝かせ。訴える。「愛する人を自分の手で助けたい」と。

 それは、破壊龍としての本能を超えた。慈愛。黒は全てを覆い尽くす。だが、黒い光の中に勇気と愛が加われば、悲劇を破壊する。守護者の剣となる。

「うん! がんばろう!」

 

 ミレディは、胸を抑えつけて苦しんでいた。

「なぜ? 何故オマエが、私を蝕もうとする。邪竜よ!」

 鏡に闇色の凶悪な竜神が牙をむき嗤っていた。

「決まっている。貴様との契約を結んだ時に、オマエの命を。そして、この世界を喰らう為よ。

ならば、この世界で太陽龍の力をルインの生贄にし。我が復活する為の道筋よ。一週目で、ドラグーンソールがルティアとルインの融合を自身のコアを使い。『マトリックスノヴァ』を放ち。

我の野望を食い止めた。だが、龍戦士としての力を封印された奴らは虫けら同然」

 鏡の向うから、剣のような三つの爪がズルリと現れる。

「既に、オマエはこちら側にいるんだ。ミレディ。世界を敵に回し。一人の男の為に自身の命を捧げ。我と契約した時点で、もう。戻れない。人間だった貴様には、な」

 鏡の向うから紫色の邪悪な竜が片腕をミレディの腹部を貫く。

邪悪な気が爪先から、ミレディの内部を蝕み。内蔵。神経。脳。リンパ。血液。あらゆるものを書き換える。それは、相手の心や意思を無視した侵略。そこには、想いやりもない。相手を虫けらのように、踏みつけ。肉体は家畜のように飼育し。支配する。邪悪な竜を太陽の龍戦士ドラグーンソール達が、数千年前に封印した敵であった。

「これでいい。このエッダの巫女の記憶も。力も。太陽の龍戦士のカードも我が手にある。

あとは、行動するのみ」

  紫と黒の邪悪な竜―邪竜エングルフェスが、復活した。

「ふ、ふふはははっ! 神龍帝の力を失い。守るものも守れぬ無力さを!

侵略するぞ。この世界も! 進みゆく世界も! すべて、破壊する!

そう、邪悪な存在としての役割を果たすのみよ!」

 エングルフェスは、白髪と黒髪が混ざった長い髪を揺らし。鏡を気で割った。ひび割れた鏡は、彼の心を表しているようだった。

「さて、行くか」

 エングルフェスが、瞬間移動で動力室に現れ。ドラグ―ソールのカードが収められたコアに手をかざして、機動させる

「動け! 破滅の竜「ルイン」よ!」

 戦艦が、機械でできた竜。破滅の竜ルインへと変貌していく。

 巨大な手足。感情のない目。獰猛な牙。それらは全て、破滅へといざなう。

全長666メートルもの巨大な機械竜が咆哮を轟かせ。破壊活動を開始する。

 それは、ユグドラシルに生きる。すべての生命。今日生まれた命の存在さえも否定し。その未来を破壊する。悪が誕生した。

 豪達は、すぐに避難誘導する部隊とルインの進行を止める部隊に分かれるために、表に出た。

「くそ! あと一日待てないのか!? せっかちな野郎は、モテないぞ!

まっ。あちらさん側も余裕がないか。行くぜ! みんな」

 豪がリーダーとなり、士気を高める。

そこに、この世界の龍戦士達から連絡が入る。

「まて、豪。おまえたちの作戦に私達も加わろう」

「全ての命を守ることが私達の使命。ならば、避難誘導は私達も手伝おう」

「生きる時代は違えど。同じ「龍戦士」だ。行こう。私達の魂を持った友よ」

「愛する人を助けるために、全力を尽くしましょう」

 ドラグーンソール・ドラグーンシルフ・ドラグーンジュピター・ドラグーンアクアの四人が、豪達が龍介の救出に専念できるように、裏方を名乗り出た。

「シルフさん! だけど、この世界の歴史を変えることに!?」

 豪が懸念していることを簡潔に伝える。

 このまま、自分たちが龍介を助け。ルインを破壊することで時間の流れがかわってしまうのではないかと。

「確かに、な。俺達の存在は、そういったものを護る立場にある。だが、俺達の意志は「この世界に生きる命を。奪うモノから守ること」なら、俺達の存在が明日消えるとしても、その先の未来で、豪達という存在がいることで希望がある」

 ジュピターが続けて言う。

「強き力は、扱うモノの心次第で悪にも善にもなる。だが、弱いことを知り。強きものに挑む強さを君たちは持っている」

「ジュピター・・・」

 美奈子は、自分の変身元である。雷の龍戦士の言葉を受け止める。

「美奈子。君は、自分の力を最初は嫌っていた。強さに固執しなければ生き残れないと。だけど、今は違う。その力は、今は大切な人を守るために、自分よりも強い相手に立ち向かう勇気と信念が宿っている。君なら、大丈夫」

 師としての言葉を投げかける。

「彩香。あなたは、聡明で。そして、想いやりのある子です。何よりも命の尊さを知っています。ソールがルティアの父なら、私が母のようなもの。

慈しむ心を。暴れている裏を読み取りなさい。それが、あなたの進化になります」

「アクア。ありがとう。いつも、一緒にいてくれて」

 彩香は、目を細め。アクアの言葉を受け入れる。

「君たちが来たことで、時間の流れは大きく変わった。だが、私達の成すことは変わらない。心配することは、わかる。なら、その尻拭いを俺達がやる。

すすめ! 未来を行く。挑戦者たちよ!」

 太陽の龍戦士。ドラグーンソールが全員の心を後押しする言葉を送った。

「はい!」

 優香が、その言葉を受け止める。

「ルティアよ」

「はい。ソール!」

「君が覚醒する時はもうすぐだ。君の背中に誰を乗せたいのかを思い浮かぶといい。君は破壊竜から、皇帝竜になれる。彼らとの出会いで、「深化と進化を重ねる」ことができた。破壊する力は、心の在り方で守る力にもなれる」

 ドラグーンソールは優しく、語りかける。

「君たちなら、できる。どんなに険しい路であろうと。夜明けが見えない闇夜であろうと、自分自身の心にある光を。太陽を燃やし。輝かせる陽になれる」

 ドラグーンソールは、太陽の欠片を全員に与える。

「ありがとう。ドラグーンソール。俺達が、必ず! この世界と俺達の未来を! 二つの力で紡いで見せる」

 豪が全員を代表して答えた。そして、大きく息を吸って、天に向かって大声を出す。

「いくぞ! みんなァ! 変身だああああああ!!」

 気合いを入れて、戦いに挑む。

「ドラグーンジュピター!」

「ドラグーンアクア!」

 美奈子がドラグーンジュピターに。彩香がドラグーンアクアに変身する。

「ドラグーンシルフ。チェンジアップ! ドラグーンシルフ・ハリケーンモード!」

 アクアとシルフの二台のバイクに跨る。

「いくぞ? お嬢」

 セリアは、大きな狼のルーガル―へと変身し。優香を背中に乗せた。

「うん。よろしくお願いします!」

「どうやら、私達が先に行くようだな。手を置くぞ」

 シュティールンクの右手が優香の左肩に置かれると。三人はフッと一瞬のうちに消えた。



  龍介は、檻の中でゾクリと嫌な気配を感じた。それは、地震が起きたような嫌な空気。

「これ、は? 俺の処刑は明日のはず!? だけど、これをしたということは・・・!」

 ゆっくりと立ち上がり、鉄格子をガチャガチャと動かす。

「ダメか。なら、力を借りるよ。ルティア。シュティールンク」

 ゆっくりと呼吸をして、瞳を閉じる。瞼の裏に、もう1人の最強の龍戦士「ドラグーンシュティールンク」の姿を思い浮かべる。

「変身! ドラグーンノワール!」

 黒き破壊龍の力をその身にまとい。壊す力を守る意思を乗せて戦う。

 黒と銀色の破壊の力を宿した戦士が誕生した。

「ふんっ!」

 目の前の鉄格子を蹴り破り。檻から脱出する。

「ひゃー。シュティールンクの力ってこんなに凄いのか。体全体の力を自由に動かせるんだな。そして、ありがとう。力を貸してくれて」

 そう思っていると。目の前に、優香を乗せたセリアが現れた。

「あ、あるじー!?」

「りゅ、龍介くん?!」

「はえ?! なんで、2人が!? というかどうやって?!」

『それは、お前に渡したカードのおかげだ』

 頭の中でシュティールンクの声が聞こえた。

「シュティールンク? 頭の中から声が」

『私のカードを使って、変身した時。私が瞬時にお前のところに行く仕組みになっている。何かあったときの110番通報みたいなもんだ。だが、事情はわかった。動力室に行くぞ。言葉は、優香にも聞こえているから大丈夫だ』

「優香さん、聞こえる?」

「はい。行くんですよね? カードを取り返しに」

 ドラグーンノワールは頷いて答えた。

「セリア。目的地まで俺が先導する。優香さんを頼んだよ」

「任せておけ。賢狼の名にかけてな。いくぞ!」

 4人は、複雑な通路を突き進む。そして、機械兵が彼らの道をふさぐ。

「ソールバード! ツイン!」

 赤と黒のソールバードを召喚して、二刀流の剣に変形させる。

「ブレイズ・ライザー!」

 2つの剣を一振りして、通路を塞いでいた。30もの敵を殲滅させる。

「あ、あれだけの敵を一瞬で」

「私ができることを」

 優香は龍魂剣を口元に寄せて、音を奏でた。

 それは優しき調べ。奏でるのは、愛する人を守りたいという思い。

 その音色は、白と白銀。月の様なやさしさがすべてを包む。

 戦艦の近くでは、ドラグーンシルフとリーシが砲弾を全て叩き落としていた。

その後ろでは、ワルキューレの白い翼を宿したシロと黒い翼のクロ。その二人を相手に、アクアとジュピターが戦っていた。

「先日の時と違って、変身妨害の対策ができていたのね?」

「だが、私達には勝てない。何故なら、戦乙女として生まれている私達と借り物であるお前たちでは勝てない」

 速さと力の戦乙女が2人の龍戦士に襲い掛かる。ジョグレスエヴォルドしていない2人だ。

ジョグレスエヴォルドすれば、対等に戦える。だが、その隙を彼女たちは与えない。

「冗談じゃない! あたしたちは、いつ。だれが勝てないって決めた! あたしたちが生きたい! 恋をしたい! 好きな人を愛したい! 日常をそんなささやかな日常を望んでいる子らがいる! そういったのを守るのが力を持った人の使命でしょうが!」

 ジュピターは自身に高圧電流を流して、シロの速さに対抗して攻防を繰り広げられる。

「あんたらがやっているのは、理不尽な災害と同じようなもんよ!なんのためのー」

 バッと飛び前転踵落としをシロに繰り出した。

「力だって―の!」

「そう。あなた達の言っていることは一部正しい事は認めます。「アクアの力」は借り物です。ですが、彼女の魂を。力を。あなた達に汚されるものではない! あたしたちは、龍戦士の魂を受け継いでいる戦士であり。人間です!」

 クロの力を受け流し。カウンターの掌底を打ち込む。

「力がただ強ければいいというわけではありません! 心なき。考えることを放棄した力は、災厄にしかならない!」

「クッ。少しはやるようだな。だが、神龍帝にもなれないお前たちが私達を倒せると!」

「おい。俺の仲間を侮辱するのは、やめてもらおうか?」

  ドラ―グーンシルフが怒りの風を吹き荒らす。

「神龍帝になれない? 違うな。そんな肩書でしかランクが見えないのは、自分が弱いっていっているようなもんだ。そんなに、その肩書が見たいってのなら、見せてやる!」

 ドラグーンシルフが咆哮を轟かせ。彼を中心に暴風が吹き荒れる。

深緑の鎧。友の為に己の力を使う。暴風の龍戦士。それは、大切に思う人を傷つけられたことの怒りを示す風。その名は――!

「スピリットエヴォルド!! ドラグーンディオ・テンペスタ! これがお前たちが見たがっていた神龍帝だ」

 変身進化が完了すると、エメラルド色の翼が輝く。

 眼を見開くと。シロとクロの動きが止まる。いや、動けないのだ。

 彼の背後に見える。緑の色をした神風の龍の影を。龍の眼に射止められた彼女らは、抗う術がない。

「声が出せねぇか。俺の仲間を侮辱したその言葉を、俺の風が切り裂く。

 スラッシュウィンド」

  五本の指先から風の車輪を展開して、瞬時に投げる。それと当時に、空高く飛翔する。

腰から二丁の拳銃を取り出し。ターゲットを絞る。

「ターゲットロック。ダブルバルサ―!」

 拳銃の弾丸が尽きるまでする。

「くっ!」

「二段攻撃か!?」

 ワルキューレの2人は盾を構えて、攻撃を防ぐ。だが、盾がガラスように砕け散る。

「なっ!?」

「バカな! この世界で最高の金属だぞ!?」

 シロとクロが動揺している間に、ディオテンペスタは、2人に合図を送る。

「いくわよ!ジュピター」

「ええ! アクア!」

 ジュピターとアクアが合体し。

青色と黄色の気が交じりあい、光のリングを作る。

「ジョグレスエヴォルド!」

 大人の女性らしい体つきに、右側が青色。左側が黄色のストレートロングの髪。

 両目は、黄色く。口元を隠す藍色のマスクに、青を下地にした黄色い稲妻のようなラインが走る。背中には、天使のような翼が生える。

「ドラグーンファイレス!」

 両手の中指に金色の指輪が輝く。

「しまった! 合体を許した!」

「あなた! 最初からこれを狙っていたのね!」

 シロとクロがディオテンペスタの目的を知る。ディオテンペスタがにやっと笑みを作る。

「さぁ、てな。だが、ここからが本当の戦いだ!いくぞ! ファインレス!」

「ええ! ライジングスマッシャー!」

 轟雷の力を両腕にまとい。クロにインファイトを挑む。

 雷の落ちたような音が、拳を打ち出すたびに響く。

「貴様! 完全に扱えるのか!?」

「ええ! そして、これがこの時代と私達が生きる時代が繋いだ技!」

 ガッと大地を強く踏みしめ。右掌を上に。左手で右ひじを打ち上げた。その掌はクロの顎にヒットし、脳震盪を起こす。

「ライジング・インパルス!」

 体の水分を電気の通り道にし、体全体を超電磁砲とさせた。強大な銃弾。

「アクア・サンダーブラスト!」

 バタフライのように腕を回して、両手で三角形を作るように相手の心臓にめがけて打ち込む! 衝撃だけは、どんなに体を鍛えていても。鋼鉄の鎧に身を守っていても。

二つの龍の意志が宿った攻撃の前には意味がない。

 ファインレスは、大きく後方宙返りを連続で飛んで距離を取り。止めを刺す。

「いくわよ! これが、私達四人の力! 水と雷の怒りを知りなさい!」

 両腕に雷を帯電させ、水の球を作り上げる。水の球を天に向かって放り投げる。

「天技・ダイナマイトシュート!」

 そのまま水の球に向かって、オーバーヘッドキック! 

 クロが残った力で、その技を打ち砕こうと拳を突き出す。だが、先ほどの攻撃で、脳が揺さぶられ、視覚情報と身体情報に齟齬が生まれ、拳がするりと滑り落ちる。

「あああああああ!」

 クロは、ファインレスのダイナマイトシュートによって、倒された。

「命よ! 天に還れ!」

 十字を切って、ファインレスは背を向ける。

 ディオ・テンペスタは、二つの銃を変形させて、1つの巨大な銃にさせ。右腕に合体させた。

「まどろっこしいのは、なしだ。こいつで決める! あんたにとっての、最大の技を見せろ。それが、戦うモノの礼儀だ。ここで強いってのはわかる。なら、その強さに俺の全てを持ってやる。それが俺のやり方だ」

「時代遅れな。戦う相手に礼儀を持つなど。それこそ不要。昨日襲った私達を恨み。壊すことをすればいい。それが、私達の正義だ」

 瞬時に、ゼロ加速し。真っ向からシロはぶつかっていく。

 ディオ・テンペスタは、その銃を武器にして、彼女の刃を受け止める。

 そして、知る。

―――あまりに真っすぐで、純白な思考なのだと―――

 一撃に込められているのが、ただひたすらに。強く。自分が信じるモノの為に。

「天空の白光」

 超えた斬撃をディオテンペスタに浴びせる。

「ドラゴン・インパクトォ!」

 銃をパイルバンカーのようにして、シロの剣と腹部を打ち抜く。

 戦乙女の技と暴風の神龍帝の一撃が衝突する。

 シロは、膝を崩して倒れ込む。

 ―ああ。

こんなにも、バカすぎる異世界の人間と日常を過ごせたら―

と夢を最後に願う。

 争いもなく。たわいのない痴話げんかしたりと。

そんな彼女にとっての非日常を。

憧れた。

「…シロ」

 ディオテンペスタは、マスクを取って素顔を晒した。その目には、薄っすらと涙が見えていた。

「気にするな。…異世界の人間。おまえたちは、護るものを護るために戦っているんだ。過去の存在となった。この世界を、千年後も笑いあえる未来を・・・たの、む」

 シロは、最後に犬飼剛という少年の心を守り。この世界の未来を託した。

「何のための、力なんだろうな? 理由を知らずに、ただ敵を倒すだけでいいのか」

 リーシが近づいて、彼の肩に手を置いた。

「豪。大丈夫よ」

「リーシ」

「例え、世界中の人があんたを悪人と非難しようと。豪。あなたは、私達の守り手でもあり。私達があなたの力になるから。ずっと傍にいるから。ひとりだと思い込まないで」

 リーシが優しい笑顔で、彼に言葉を贈る。それは、偽りのない想い。ずっと傍にいるからわかるのだ。どんなに強い存在に変身したとしても心の中にある優しさはかわらないのだと。だから、その優しさを守るために、リーシはハイエルフとしての知識と技術を使って、時空間を超えてきたのだ。たった一人の犬飼豪という人間の為に。

「そうよ。私達もいる。豪、しっかりしなさい」

 ファインレスは、豪の右肩をポンと優しく叩いた。

「……ああ。そうだな。まだ、龍介を助けていない。そして、るーちゃんたちの世界を助けるために俺達が、がんばらないとな」

 豪は、涙にぬれた声を噛み殺しながら、マスクを被る。

「心ある者同士の戦いは、痛いさ。だけど、多くの人の未来やささやかな幸せを奪ってはいけない。だから行くんだ。俺達は」

 豪は風を受けて、立ち上がる。そして、三人が見据えた先には、巨大な機械の竜。8つの触手を伸ばした破滅の竜ルインが待ち受けていた。

「待ってろよ! 生きてろよ! 龍介!」

 動力室に通じる路を駆ける。クラウスは、急いでいた。何が起きたのかと。

そして、機械兵が自分を王と認識せずに攻撃を仕掛けてきたので、破壊しながら突き進む。

「くそっ 何が起きたというんだ!」

「クラウスさん!」

 クラウスは、龍介の声を聞き。彼の方を振り向いた。

「龍介か! そして、その姿と。後ろの子は?」

「ドラグーンノワール。ドラグーンソールみたいに変身したと思ってください。そして、後ろにいるのは、俺の恋人です。

クラウスさん。もしかして、動力室に?」

「ああ。動力室で何か起きたのは確かだ。ミレディの部屋に行ってみたが、ミレディの姿もない。ここまで、来るのに百体もの機械兵を倒してきた。既に私が王であることさえも認識していない。暴走した兵器と言ってもいい。リュウスケ」

 クラウスが真剣な眼差しを向けて、頭を下げる。

「私の愛する人を助けてほしい。私自身の野望やプライドなど、この世界でたった一人だけ愛した人のためならば捨ててもいい。頼むっ」

 クラウスは、自身の野望やプライドをかなぐり捨てて、龍介に頼み込む。

敵である自分が無茶なこと言っていることはわかっている。

「貴様っ! わかっているのか! 我らの世界を破壊する為に活動してきておいて! 主様に頼むなど、虫のいいことだと!」

 セリアは、自分の世界を壊している元凶に対して非難の声をあげる。

「セリア!」と龍介は一喝する。

 彼はほんの数日だが、この世界に生きる人たちの事を思った。生きる世界は違えど。ささやかに生きている人達がいることはどの世界も同じだった。

大事にしないといけないのは、「何を守りたいのか? そして、何のためにその力を使うのか?という意味を自身に持つことだ」そのことを龍介は心の底から理解した。

だからこそ、護るのだ。

「君の怒りはもっともだ。だけど、彼の力が届かない場所で、愛する人が苦しんでいるかもしれない時に、助けられないもどかしさは俺にはわかる。だから、ここは俺のやりたいようにやらせてくれ。わがままで、ごめんね」

「う、うむぅ。わかった。主様がそういうのなら、な」

 龍介は、優しく。セリアの頭をなでた。

「クラウスさん。あなたの事情はわかりました。その代わり、この世界に人と幻獣たちが共存できる未来を作ってください。これが、俺からの頼みです」

 クラウスは頭をあげて、頷いた。

「わかった。信頼の証として、これを」

 宝石が埋め込まれた短剣をクラウスは差し出した。

「これは、王族の長が持つ。王の証のようなものだ。君との約束を裏切らないための証だ」

「わかりました。行きましょう!」

 短剣を腰に携えて、動力室に乗り込む。

 動力室には、深い紫色した禍々しき魔竜女性が立っていた。

「みれ、でぃ?」

 クラウスは、愛する人の名前を言った。

「違うな。我が名は邪竜エングルフェス。この女が、一週目で滅んだ世界で貴様の野望を叶え命を助けるという契約の元。この女の命をもらい受けているのさ」

 二本の角。茶色の長い髪。薄っすらとした口紅の端から見える牙。真っ赤な目。それは、彼女が人間ではないということを示していた。

「エングルフェス…! お前は、ソールに封印されたはずじゃないのか!?」

「くははははは。あはははははっ。そうか、貴様ら異世界から来たものは知らないのだったな。

いいだろう? すべてを話してやろう。一週目の時に、この破滅の竜。ルインは私を復活させるための舞台装置であり。そのエネルギーとして、破壊龍のルティアを使う。そこまではうまくいったさ。だが、忌々しき。太陽の龍戦士ドラグーンソールが自らのコアを使い。シュテ―ルンクという破壊龍を作り出すことで、小娘を救い出した。そして、吸血鬼の女王フェリスが住民を異世界に逃げるためにカードを作っていたことも知り。思いついたのさ。この女の浅ましき、愚かな愛という感情を利用し。そこの男を復活させてやるという話を持ち出して、洗脳させたのよ。そうフェリスを含めた組織が「ユニオン」である。我の駒となる為の兵隊よ」

 のどの奥からくくくっと邪悪な笑みを浮かべ。エングルフェスはさらに続ける。

「滑稽よのう。人間というものは、愛や憎しみ。信頼や失望。そういったモノに脆く。弱い。そして、そのような心のすきを我が喰らう。そう、そのおかげで太陽龍のカードをエネルギーコアとしてあそこにあるのだからな!」

 結晶体の中に、ドラグーンソールのカードが閉じ込められており。上下の管からエネルギーが吸われている。

「もはや、貴様らにはどうにもできない!」

 エンゲルフェスが高笑いする。だが、黒い風が吹き荒れる。

 ドラグーンノワールの手甲の爪が彼女の←肩を斬り。そのままドラグーンソールのカードが閉じ込められている結晶体に瞬間移動した。

「貴様の好きにはさせん! 邪竜エンゲルフェス!」

 両腕の手甲で結晶体を破壊し。ドラグーンソールのカードを手にする。

「変身! ドラグーンソール!」

 太陽の炎を纏った太陽の龍戦士。ドラグーンソールが現れた。

「この世界の平和を乱す。化け物め! このドラグーンソールと」

「ドラグーンノワールが」

「許さない!」

 赤と黒の龍戦士が啖呵を切る。

「ドラグーンソールバーニングバースト!」

 炎の翼をはやしたドラグーンソールが、エンゲルフェスに戦いを挑む。

 両者の手と足の攻防が一進一退で繰り広げられる。

「エンゲルフェス! ミレディさんの肉体を開放しろ!」

「ふん、無駄なこと! 既に融合しているのだ。そして、このルインの真の姿。「ドラグーンキラー」を覚醒させる」

 エンゲルフェスはどろっと床に溶け込んで、消えて行った。

そして、艦内が大きく揺れ動く。

「脱出するぞ! 私につかまれ!」

 ドラグーンノワールが声をあげて、周囲に言った。ソール達は、ドラグーンノワールに掴まり、瞬間転移で、外に脱出した。

そして、知る。巨大な機械竜が、透明な紫色の羽を大きく広げ。雄たけびをあげているのを。8つの触手が無造作に動き回る。

「これが、ノルン!?」

「いや、これはノルンじゃない。ドラグーンキラー。奴は君たちドラグナーのデータをすべて持っている。言わば、龍戦士達を倒す為の兵器だ。もはや、なにも」

 クラウスは絶望の声をあげる。

「違うな。まだ、終わりじゃない。お兄ちゃん。私と合体して」

 ドラグーンノワールがそう申し出た。

「ノワール!?」

「全ての時間の流れが、変わった。なら、いずれ私は消えるだろう。時間の整合性を保つために。そして、ドラグーンソールカイゼルになるには、最後のカード。私の全エネルギーと魂をあなたに捧げる。果てしない、未来への情熱と夢への希望をすべて君に賭けよう

 ドラグーンノワールは、一本の大剣「ソールブレイズ」に変化した。

「龍介君。お願い。もう一人の私の願いを。あなたと一緒に戦いたいです」

「優香さん。わかった。行こう。これは、「俺達の戦いだ」

 ドラグーンソールは、ソールバードのカード二枚ソールブレイズに挿入し。剣を天空に向ける。

「一千年の眠りから目覚めよ! 太陽の神龍帝! 破壊龍ドラグーンノワールの力と太陽龍ドラグーンソールの力を今。1つに融合する! スピリット・エヴォルドネオ!!」

 天空の太陽から、巨大な九頭竜が現れ。飛来する。九頭竜がドラグーンソールの体に入ると。

竜の頭部を意匠した紅の鎧の戦士が誕生する。

「超越し、覇王の神龍! ドラグーンソールカイゼル!」

 マスクの奥に、紫色の眼光が敵を射抜く。

「龍介!」

 深緑の鎧を纏った暴風の神龍帝ドラグーンディオテンペスタが駆け付けた。

「豪!」

「無事だったか! 俺達も強くなった。で、どうすればいい? 俺達のリーダーはお前だ」

 風と太陽の神龍帝が敵を見据える。

「俺は、ミレディさんを助けたい。クラウスさんの願いでもある。だから、無茶ことに付き合ってほしい。豪!」

「そういうことか。いいぜ!」

 親友の2人に、言葉はいらない。なら、友が望む最良の未来を勝ち取るのが、彼の役割だ。

 2人の神龍帝が真っ向から突っ込んでいく。

 触手の上を疾走して、襲い掛かる残りの6つの攻撃を払いのける。

「二天龍の水雷!」

 ドラグーンファインレスが、水と雷の龍を両腕から放ち。触手を破壊する。

「援護は任せて! すべてを終わらせるために!」

 破壊した触手が再生していく。

「再生もあるのか。なら、ドラゴン・インパクト! シュート!」

 二丁の銃を一つにして、一撃必殺の技を連射する。

「行け! カイゼル!」

「ああ! ありがとう! 俺達の邪魔をするな! 龍翔斬!」

 大剣が一閃煌めくと、火炎の龍が触手を焼き尽す。

「ァAAAAAAAAAAAあっ! オノレぇ 我の邪魔をするか!? 千年前のように、貴様ら陽の存在が我を否定し。亡きものにするかぁ!」

 触手が再生し。竜の頭部となり。熱波光線を解き放つ。

「ライトニング・リフレクト!」

 リーシがバリアを張って、熱波光線を空へと逃がす。

「邪竜エンゲルフェス! あなたは、やり方を間違っている! 何故、こうまでして世界を憎むの!? あなたは、かつてソールと競った盟友だった炎龍だったじゃない!?」

 リーシは、過去の歴史を調べ。たどり着いた。そう。風。炎。雷。水。とあるはずだった。

何故、太陽龍だけが四つの中に入っていたのか。それは、炎の龍戦士の候補生だった。

ソールとエンゲルフェスが袂を分かれたという過去。

「そこまで、知っていたか。ハイエルフのリーシよ。そうだ。我は、太陽龍の盟友であった。だが、この世界に満ちている。小さな悪意・憎しみ・恨みとったいったモノをいくら我らが介入し、解決したとしても永遠と続くものだ。だから、こそ。我は決めたのだ。

世界にある悪意・憎しみ・恨みといったモノの枷を全て我に集め。我を殺すことにより。世界を救えるとな。だが、あのバカどもが否定し。倒すことをせずに封印したのだ。先送りにしかならん。ならば、我を放っておけばどうなるかと。二度目の復活を成した」

 ディオテンペスタとソールカイゼルは、空に舞う。

「なら、なぜ! 親友たちと戦う必要あるんだよ?! ばかやろーっ」

 ディオテンペスタは、友を思いやるエンゲルフェスの心に怒った。何故、そんなことを!

「犬飼豪よ。貴様ならわかるはずだ。己の道が間違いに進んでいる。ならば、誰に止められたいのかを。そして、その先にあるともに見据えた未来を成すための生贄になろうとする気持ちも、そこには、種族を超えたモノがあるのだ。例え、己の命がなくなろうとも、な」

 ディオテンペスタは、ぎりっと唇を強くかみしめた。わかるのだ。荒んでいた時に、止めてくれた存在が龍介だったことを。暴力でしか、自分を語れなかったときに、小さな体で真っ向から止めてきたことを。だからこそ、わかるのだ。

「そうか。なら、あなたも救って見せる。ルティア! 優香さん! 力を貸してください!」

 ソールカイゼルが、天に向かって叫ぶ。

 ルティアは、戦いの奥にある哀しみを知った。元は友であった邪竜エンゲルフェス。だが、平和を願い。それを実現するために自らが「悪」となった。そんなことは悲しすぎる。

「そんなの、ないよ…!」

「だが、今だからこそ。救える…!」

 ドラグーンソールが、ルティアの小さな両肩に手を置いた。

「ソール!?」

「俺が願ったのは、みんなが笑いあえる未来だ。誰かが犠牲になった上での未来など俺はいらん! だからこそ、あの少年に賭けたのだ。果てしない情熱と愛と勇気を持った彼に。

巽川龍介に」

 ソールの言葉にルティアは想う。「誰を背中に乗せたいか」それは、龍介と優香の2人だった。

「ソール。あなたが私に注いでくれた愛を。守ってくれた龍戦士達の想いを力にします」

 温かな光がルティアの体を包み込む。それは、進化の光。大地と海と空から光が集まり。彼女に力を与える。

「進化―皇帝竜インペリアル・ネロ!」

 鉄の鎧と金色のラインが入った。蒼い巨大な竜。身長は300メートル。鉄の巨神竜。

「いってきます! お父さん」

 音速を超えた速度で、戦地に向かう。

「お父さん、ね。なら、私はお母さんになるのかしら?」

 ドラグーンアクアがクスリと笑って言った。

「どうだろうな。守りは、大丈夫か?」

「ええ。万全」

「なら、俺達も行こう。アイツを迎えにいく」

 

 鉄の鎧を纏った破壊龍ルティアが飛翔してきた。

 ソールカイゼルは、その背中に飛び乗った。

「お姉ちゃん!」

「ええ! 変身! ドラグーンノルン!」

 龍魂剣から月の蒼い光が桂優香の全身を包み。黒髪は白銀に。藍色のリボンが髪に結わえられる。白金の鎧を纏った女性らしい肢体を持った。月光の龍戦士ドラグーンノルンが誕生した。

「ムーン・リフレクション」

 短剣を振るうと。光の環がいくつもできて、エンゲルフェスの体を拘束する。

「龍介君! ソールブレイズと龍魂剣を重ねてください!」

「わかった!」

 二つの剣を重ねると。太陽と月が1つになり。神龍帝を超えた存在に進化する。

「ドラグーンソールカイゼル!」

「ドラグーンノルン!」

「融合進化!」

 

 太陽と月が重なり。2人の力が1つになり。光の波紋が波打つ。そして、白いマントに。皇帝のような赤を主体とした鎧。銀のラインが入った淵。

それは、慈愛と強さを併せ持った。超越した龍騎士の存在だった。

「ドラグーンオメガ!」

 濁りのない未来を信ずる希望の瞳。

「この戦いに、終止符を打つ! 最後の竜騎士。いくよ!ルティア!」

 鉄の皇帝竜が頷く。

 破滅の竜ルインの背中から、数千のミサイルが放たれた。

「ソールブレード!」

 左手から太陽の剣を振りかざし。襲い掛かる数千のミサイルを横一線に薙ぎ払う。

 たったひと振りで全てのミサイルが破壊された。

「ノルンセイバー」

 右手の短剣から光線を放ち。触手を再生不可能な領域まで破壊する。

「オメガインフォース・ゼロ」

 ドラグーンオメガは、ルインの攻撃展開を全て先読みし。ルティアに伝える。

 ルティアは、その意図を読み。攻撃を掻い潜り。背後に回った。

 ルイン―邪竜エンゲルフェスは恐れた。

 人と龍戦士。そして破壊龍の力が1つなったときに、すべての戦いに終止符を打つ。

存在が生まれるなど、これまでになかった。そして、同時にわかったことがある。

――彼らは、必死なのだ。敵であるエンゲルフェスとエッダの巫女ミレディを救おうと。

――あまりに、純粋で、真っすぐ過ぎた思いは、太陽のように眩しく。月のようなやさしさだった。

ディオ・テンペスタとファインレスが陽動し。オメガを勝利への道へと導く。

「いけぇーーーーーーーーー!」

「あなた達なら届く!」

 

 ドラグーンオメガはルティアの背中から飛び降り。ルインの頭部へと落ちる。

「いくぞ! 月と太陽の力を一つに! ソールノルンカリバー!!」

 両手の剣を十字に斬り。1つの大剣と成して、ミレディとエンゲルフェスに分離させる。

「出力最大っ!」

 全力全開の一撃に願いを込めて、ドラグーンオメガは戦う。

「千年後も笑いあえる未来を作るために、だから! 手を伸ばして! 幸せになることをあきらめないで! エンゲルフェスさん! ミレディさん!」

 2人の伸びた手を、ドラグーンオメガが掴む。

 ルティアが三人を回収して、地上に戻る。

 ミレディの元にクラウスが駆け寄る。

「ミレディ!」

「くらう、すさま?」

 クラウスは言葉にせず。彼女を抱きしめた。

 愛する人がいる。それだけで、それだけで。自分の野望など捨ててもいいと思えるのだ。

『グギャアアアあゝ』

 頭脳を失った破滅の竜ルインは、ぼろぼろと朽ち果てていく中、最後の悪あがきをする。

「この世界は、私が守る!

インペリアル・ネロ。モードチェンジ!ファイターモード!」

 竜闘士形態になったインペリアル・ネロ―ルティアは、必殺の消滅火球を放つ。

「フォトン・レーザー!」

 両掌から強力な火炎球を投げ放ち。破滅の竜ルインを完全消滅させる。

「これで、すべてが終わった。この世界の過去軸は修正された」

「そうだな。よくやった。ルティア」

 ドラグーンソールをはじめとする。ドラグーンアクア。シルフ。ジュピターが、戦い終わった場に集まった。

「住民たちは全て、俺達が守った。そして……久しぶりだな。エンゲルフェス」

 ドラグーンソールは、角の生えた女性ーエンゲルフェスに近づいて、彼女の目線に合わせた。

「ソール。おまえの後継者は、大ばか者だな」

「ああ。大ばか者だ。――誰かがババ抜きのババにならなくていい世界を。誰もがお腹いっぱいに笑いあえる未来を。ここにいる俺達が種族の垣根を超えて作ろう。そのために、エンゲルフェス。君の力が必要だ」

 ソールは、優しく微笑んでそっと手をさし伸ばした。

「一度は、この世界を滅ぼした。我にまた手を…? 手ひどい女だぞ」

「過ちに気づいたら、またやり直す。その過ちを正せるのは、その重みを知っているものの言葉が一番だ。だからこそ、必要なんだ」

「お主。一千年前から天然的にサラッと口説くな。まぁいい。色恋沙汰は後にしとくかの」

 チラとアクアの方を見ると。ソールの背中で「しー、しー!」と人差し指を立てて口にしないでくれとジェスチャーを送る。

「だが、やることがある。未来に返さねばな」

 ドラグーンオメガ。ドラグーンディオテンペスタ。ドラグーンファインレスが揃う。

 セリアとリーシが、駆けつける。

「ありがとう。未来の龍戦士達よ。お主らの勇気と未来への意志。そして、そこ抜けたお人よしが掴んだ未来だ。だからこそ。最初で最後の我の力を使おう。憎しみを―未来を変えるための力に、そして、その可能性を信じることに」

 空間に対して、手刀で円を切ると。異空間に通じるゲートができた。

「これは、おぬしたちが通ってきたエネルギーゲートのようなものだ。この空間が閉じれば、もう。我らと会うことはなかろう」

 エンゲルフェスがゲートを作ったと同時に。彼女の体が粒子の光となっていく。

「! エンゲルフェス!」

「アクアよ。お主ならわかるだろう? 強大なエネルギーを放つには、体を構成する分子と原子を利用する事。そして、この傷ついたユグドラシルの大地を再生するには、我1つの力であれば容易い。ならば、悪は悪として、最後の役目。大地再生と未来への帰投をせねばな」

「そんな・・・!? どうにも、ならないのかよ!」

「龍介達が、あなたを助けたのに? 何も、できないの?」

 ディオ・テンペスタとファインレスが、次々に問いかける。

「ふふ。本当にお人よしばかりじゃな。よいか? 救うのは誰かを物理的に助けるだけじゃない。やり直すチャンスを与えてくれることも「救う」ことにもなる。こうした幸せを思い出させたことが何よりも救いじゃ」

 エンゲルフェスが、優しく諭すように言った。

 救いというのは、誰かを助けるという肉体面の方に向いてしまう。だが、それだけでなく。精神面の救いも必要なのだ。そして、肉体と精神面を救ってくれた龍介達は、誰にもできない偉業を成し遂げたのだと。優しく目を細めて、彼らを見た。

 それは、母親が、子供に対して、教えるようだった。

「クラウス、ミレディよ。そのまま末永く。暮らすが良い。あとは、我らがなんとかしよう。これでも、太陽龍の候補であったからのう。お主らが歩む道は険しいかもしれん。だが、誰かがいる。誰かが愛している。誰かが信じている。それがあれば、人間というモノは傷ついていてもまた立ち上がる勇気が生まれる。それこそが勇気が生まれる場所じゃ」

 エンゲルフェスは、この世界の人間代表の2人に言った。

「ルティアよ。大きくなったな。少し、小さい姿になってくれぬか?」

「はい」

 ルティアは人間の少女になって、彼女の前に立った。そして、エンゲルフェスは優しく抱きしめた。ルティアにだけ聞こえるように小さく言った。

「幸せになりなさい。我が娘―ルティア」

「―――っ かぁさま」

  ルティアは瞳に涙が溢れ。この人が、自分の母親だとわかった。

「本当に、最初で最後の抱擁で、ごめんね。でも、あなたと共に。我はこの世界にあるから」

「うん・・・! うんっ まもる、から。ごれがら、龍戦士として、母様が愛した世界を守るがら…っ ぜんぜん。ざみじく、ない、から!」

 涙声に濡れた精一杯の強がりを母親に見せて、安心させようとするルティア。

 母として、最期までいたい。だが、世界を傷つけた代償を自分が払わねば。娘に行くかもしれない。だからこそ、護るために。彼女は逝くのだ。

「ソール。これからも、娘を頼む」

「ああ。おまえの娘だ。きっと、イイ女になる。俺達が、全身全霊を持って導く。そして、俺達の魂を受け継いでいる彼らがいる」

 エンゲルフェスとソールは、変身の限界で、変身が解けた。龍介。優香。豪。美奈子。彩香の五人を見る。

「俺達では何もできないんですか? 何もっ!?」

 龍介は、再度。問いかける。ルティアの母を助けられないのか、と。

 ドラグーンソールは一度瞼を閉じてから、見開いて答えた。

「覚醒したばかりの君たちでは、まだできないだろう。君たちの想いを俺達が引き受ける」

 太陽の龍戦士が、風の龍戦士。水の龍戦士。雷の龍戦士の顏を見て、不敵に笑う。

「準備は、いいか?」と。それは、彼らの覚悟を問うモノであった。

「俺達が力を合わせて、少しは軽減させることができる。行くぞ、皆。覚醒進化!」

「おう!」「待たせ過ぎよ!」

 ソール。シルフ。アクア。ジュピターの四人が覚醒進化し。本家本元の力を行使する。太陽の神龍帝ドラグーンソールカイゼル。暴風の神龍帝ドラグーンディオ・テンペスタ。大海の神龍帝ドラグーンマーキュリー。轟雷の神龍帝ドラグーンライジング。四つの龍戦士が神龍帝となり。天空に大きな球体を作りだす。

「マトリックスノヴァ・フォース!」

 赤・緑・青・黄色のエネルギー光線が1つとなり。エンゲルフェスに注がれていく。

 光の粒子に変わっていく速度が遅くなっていき。彼女の崩壊は収まった。

「ソール!? これは?!」

「決まっているだろう? 俺達が話し合って決めたんだ。俺たちの仲間である炎龍帝を助けるために、各々で持っているマトリックスノヴァを平等に出し合えば、救えるかもしれないってな。で。その賭けに勝った」

 ディオ・テンペスタが代わりに答えた。

「私達は、進化していく。彩香たちと出会ったことにより。神龍帝になれた。だから、未来の可能性を引き寄せることができた」

「というわけで。おまえの罪滅ぼしも、俺達も手伝うわけだ。働いてもらうぞー。秘書としてな。なぁ? 命の審判者 ソール」

 マーキュリーとライジングが理由を答える。

「そういうわけだ。過ちに気づいたのなら、過ちを正していけばいい。俺達も背負うさ。エンゲルフェス。帰ろう。俺達の日常に、そして、誰もがお腹いっぱいに笑いあえる未来を作るために、そのために、君の力が必要だ」

それは、生きる世界に理想を持ち続けられるように、ちっぽけな願いを守りたいという純粋な想いが起こした。奇跡だった。

「……っ 馬鹿者! これでは、我のカッコがつかぬではないかっ」

 涙にぬれた笑顔で、エンゲルフェスは、ソールカイゼルが差し出した手を握り締めた。

 神龍帝になった龍戦士達は、通常の戦士形態に戻り。優しく笑みを浮かべた。

 それは、今度は助けられたという喜びと。1つの母娘を救えたという真実だった。

「ドラグーンソール! あなたは、本当に。俺のヒーローです!」

 龍介は歓喜が極まり。涙声で、言った。

「泣くな。君たちから教えられたんだ。俺達は、君たちから、言葉に表せないほどのモノをしてもらった。だから、この奇跡を起こすことができた。ほんの一瞬だけの神龍帝だが、仲間を救えるのなら、その力を俺達は惜しまない。ありがとう。もう一人のヒーロー」

 ソールは、左手で親指を立てて、サムシングポーズを取った。それは、英雄にだけ送られるサインだ。

「そして、この世界での出来事が解決したため。君たちの時間軸とは別の世界が構築される。君たちの世界に、少し影響が出るだろう。だが、私達がいたこと。君たちが戦ったことは、消えはしない。龍介。君たちが勇気を出した未来だ」

 ドラグーンソールと龍介が握手した。

「クラウスさん。短い間でしたが、ありがとうございました」

「いや、君たちには敵わない。それから、私からもありがとう。ミレディを助けてくれたことに感謝する。未来から来た戦士達。そして、君が持ってきた曲を心に刻んで、世界を変えていくさ。妻と一緒にな」

 ミレディがカッー赤面して、おろおろする。だが、コホンと咳払いして調子を取り戻した。

「私からも、お礼を言いましょう。ありがとう。そして、予言よ。「かつての友が、悪神に魂を売り。暴虐の限りを尽くす。12ノ戦乙女が立ち塞がり。絶望の門をを試す。12の試練を超えた時、時空を超えた皇帝竜が助けに来る」―いつか、逢いましょう。そして、クラウス様。プロポーズするなら、後でじっくりとお願いします。」

 ミレディは、エッダの巫女として、予言を彼らに伝えた。これから起こる戦い。そして、最後の部分はクラウス最大の戦い。

「大丈夫さ。俺達だけじゃないさ。リーシ」

「ええ。私はいつだってついていくから」

「フン。スパーリングしてあげるわ。いつかみたく」

「ええ。楽しみにしているわ。胸がペタン子の美奈子さん」

 美奈子とリーシの間に、火花が散る。

「無駄に脂肪が胸に回った姿になっただけの年増さんに言われたくないですね」

「向こうに戻ったら、全力で相手しますよ? 胸も小さい分。感情の容量も小さい美奈子さん」

「望むところよ! やったろうじゃん!」

「お前ら、帰ったら、カラオケに行く予定だろうが」

 豪が仲裁に入る。

「え!? マジ! ヤタっ 初カラオケだー! 今まで友達と行ったことなかったから」

 美奈子は大喜びした。その発言にホロリとする豪は、思い出に残るようなカラオケ交流会にしようと決意する。

「はぁ。そうだったわね。それじゃ、帰りましょう。フェリスさんに、お世話になりましたとお伝えください」

 彩香は丁寧に頭を下げてお礼を言った。

「お姉ちゃん」

 ルティアは、優香に近づいて、小さく耳打ちした。

「お姉ちゃん。絶対に、お兄ちゃんのお嫁さんになってね? 約束だよ?」

「……う、うん。がん、ばる」

 優香は、ボンと瞬間的に赤面して、か細い声で答えた。

「それじゃ、帰ろうかのう。それじゃ、主様」

「そうだね。セリア。それじゃ、みんな、さよなら!」

 龍介達はゲートを通って元の世界に戻っていた。

 

 こうして、龍介達の過去の世界での冒険と戦いは終わった。

 それは、長くも。短い。線香花火のような思い出だった。

 彼らは、それでも前に進むだろう。

 絆でつなぐ、未来。

 そして、渡さない。描いた夢を

 熱く焦がした想いと。

 ひたむきな願いを翼に変えて、

 未来へと飛んでいくだろう

 龍介達に向けて、龍戦士達がメッセージを青空に書く。

Run in to the future - 未来を駆け抜けろ―

澄み渡る青空に、メッセージを残し。大地は、再生されていった。

少しずつ、戻っていくだろう。そして、歩んでいくのだろう。

―みんなが、お腹いっぱいに笑いあえる未来にするために―

彼らの軌跡が、未来への奇跡になることを彼らは願う。

龍戦記ドラグーンソール 終了

あとがき

ニチアサ対抗シリーズ 龍戦記ドラグーンソールをお読みいただきましてありがとうございました。

作者のレミーです。

さて、このニチアサ対抗シリーズ。ドラグーンソールですが、元々は好きなマンガ

「雷星伝ジュピターO.A.」というモノに影響を受けて、俺達の戦いはこれからだ!で終わってしまったので、「なら、自分でこれを敬意を込めたオリジナル物を作る!」

と2010年に書き書きしておりました。そして、諸事情によりノーパソが壊れデータがどこかに消えた。

ところが、今年の一月にデータを保存したディスクを見つけ。試しに開いて、生きていたので。

んじゃ、ツイッターで公開してみようか!と供養の意味も込めて投げてみました。

そして、フォローしている人から「ニチアサだ!」と評価をいただき。

「ニチアサ対抗シリーズ」と勝手に、昭和のノリでやっております。

そして、子づくり発言も、当時のままです。

一時期、エンティさんに掲載していましたが、データが9割消えたので。描き直しておりました。

officeWordExcel2016永続のソフトも買う余裕もないので

openofficeで書いております。

office365の更新制の付属ノーパソを買ってしまうという

ミス(-_-;) 創作用のパソナのに・・・。

なんでパッケージ版がないのでしょうか。それかコンビニ払いだけでも対応を・・・;;

kindlefireでオープンオフィスのワード版をいれましたが、英語で「アカウントありますか?」とローゼンメイデンのねじを巻きますか?巻きませんか?というモノのようです。

英文読めない私!

さて、ラストの話のネタ晴らし。

本来は、優香さんが十字架プラス鎖の貼り付けで人質にされ。ルティアと龍介。ドラグーンノワールが力を合わせて、ドラグーンソールカイゼルとなり。ウルトラマンガイアスプリームヴァージョンのように、破滅の竜ルインを投げて、投げて、投げて、投げまくりの投げ鬼技を繰り広げてから、九頭竜招来で止めを刺す予定でした。

ですが、急遽。ノリと勢いで、ドラグーンソールのカードを動力源とし。そして、近年のウルトラ作品で、ウルトラマンXに外れなし!と言われる作品に感化され。

EDのユナイトの歌詞のテーマに沿ったものになりました。

作中で、龍介の夢は何か?という問いかけのシーンは実際にあった私の出来事をそのまま使っております。

 

一旦。ドラグーンソールのお話は終わりにします。

色々とやることが多すぎる私(゚Д゚;)

別のお話で、カクヨムかなろうで学生時代に書いていたラノベをリテイクしようと思います。

どちらがいいのかわかりませんが(;´・ω・)

あとは、noteでは、発達障害の子供のケアと解決案を提示する。小説のようなものを展開する予定です。

それでは、失礼します。最後までお読みになり、ありがとうございました。<(_ _)>

レミーより

投げ銭していただけると、喜びます(´っ・ω・)っ「創作関係に投資」(´っ・ω・)っ今さら編集できることを知る人・・・(天然すぎぃ)