邪神カオス到来。

憎かった。

誰からも愛され。自分の想いを貫く強さを持っているお前が憎かった。

だから、俺は勉強し。いい学校に入った。

なのに、なのに!

何故オマエには、愛する人がいる!

何故、お前には、親友がいる!

ナゼ、キサマニハ、アイスル人ヤアイシテクレルヒトガイル!?

全てを奪ってやる! 友も、愛する人も。貴様の信じたモノも!

「その願いを。叶えてやろう?」

 漆黒の鎧とマントを羽織った闇の皇帝が少年の心に声をかける。

「我が名は、カオス。この世界を破壊する。神である」

 シャラン・・・・・・。と腕輪がこすれ、音が闇夜に響く。

 異形な。黒き仮面と金色のラインが、神聖さを表していた。

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「龍戦記 ドラグーンソール 

第二期 十二の月と戦乙女編――邪神カオス 到来。混沌の破壊!―― 」

 犬飼豪(いぬかいつよし)と巽川龍介(たつみがわりゅうすけ)はとある道場に来ていた。

「おいっす! マスク兄貴!」

「来たか。豪! そして、龍介くんか」

「初めまして、巽川龍介です。田中スグルさん」

 龍介はぺこりと頭を下げて、180㎝もあるプロレスラーの体格をした男性。田中スグルに一礼した。

「初めまして、龍介くん。うわさは聞いているよ。そして、君たちがさらなる高みを目指していることも。

龍の戦士の気を感じているからね」

 スグルは、鞄を壁際に置きなさいと指をさして、促した。

「ゲッ。さすが、師匠。人間離れしている・・・。もう、人間世界からログアウトしたほうがいいんじゃないんですか?」

「あのな。豪。俺は、どんな人間なんだ?」

「えーと。小さい子が健全な意味で大好きで。はい、これ。亜衣ちゃんの写真ですがいります?」

 豪がサラッと物理精神攻撃を仕掛ける。

「おっ・・・おまえはー!? サラッと精神攻撃をするか!? 嫁に俺が殺されるぞ」

 豪が出した写真を強引に奪い取って、ビリビリに破り捨てる。

「おお―。精神力も強い強い。師匠の人間性がこれでわかる。

龍介。師匠はな? チビッ子のお世話好き。タイガーマスクとガチデやりあうくらい強く。熊を倒したり。キン肉マンの48の技を使いこなせる上に、古武術の技を体得している。超人ですよ」

「そんなにすごい人なんだ。というよりも、豪。

あとで、優香さんに伝えておくからね。亜衣ちゃんの写真を持っていったこと」

「ヤメテ! それしたら、俺のライフがゼロになるから! 俺達親友でしょ!?」

「親友といっても、俺の恋人に手を出すあほには容赦しません」

 そのやり取りを見て、スグルは、「ぐわっはははっ」と腹を抱えて笑った。

「君たちが仲がいいことはわかった。青春だな。それで、このバカ弟子から聞いたが、殺陣を学びたいんだって?」

「はい。ドラグーンソールとシルフを映像作品にするためにも、俺達自身の自力も鍛えないと! と思いました」

 スグルは腕を組んで、息をゆっくりと吐いた。

「ふむ。それはいいことだ。彼の有名なウルトラマンタロウのスーツアクターも元は格闘の経験もある。そして、ウルトラマンガイアのパワーアップ形態の人も筋肉を鍛え。格闘技を研究し。その技が「投げ鬼」と言わしめるほど。相手役の怪獣アクターを大けがを負わせてしまうほどのものもある。

 龍介君。格闘ーいや。武において、戦いにおいて大切なものは何か知っているかい?」

 スグルは、フッと目を優しく細めた。そして、彼が答えやすいように口調も穏やかに、目線も龍介の身長160㎝に合わせるように、腰をかがめた。

「それは、心・技・体でしょうか? 小さい頃に剣道を少し齧っていましたが。何故、心が先に来るのかは今もわかりません。教えてもらえますか?」

「うん。いいだろう。豪。紙と書くものを借りるぞ」

「へい! 兄貴」

 豪は、鞄からルーズリーフと筆記用具を出した。

 スグルは、紙に「「心」「優しさ」「意志」「慈愛」」と綺麗な字で書いた。

「いいかい? 心が含まれる漢字を思いつくままに書いてみた。共通するのは、「心」ーそれはいいかい?」

 龍介は、頷いて答えた。

「よろしい。最近のスポーツ選手やアスリートにメンタルケアやメンタル強化をする指導が多くいる。良くイメージトレーニングという言葉は聞いたことはあるかい? これは、元々はアポロ計画で「宇宙飛行士が一度も体験したことがない宇宙空間の訓練の1つ」として、創られたんだ。だから、心のチカラというモノは、その時代から重要視されていたんだ」

「師匠。イメトレの歴史がわかったのはいいんですが、なんで日本人の多くが「気合や根性」といった精神論を唱えるのが好きなのに、なんでメンタルケアとか強化方法に力入れないんですか?」

 豪が手をあげて、質問してきた。

「これは、俺の意見になるけど。彼らの言う気合や根性は「思考面」だ。つまり、頭の中に想像するだけで解決できるという空想に近いと思う。だが、スポーツ選手やアスリート達のメンタルケアと強化は「思考と身体を結びつけることで確実に強くなる」というものだ。パソコンで言えば、出鱈目なコードが、精神論。メンタル強化は、こういう仕組みで、こうなると筋書きがきちっと立てられて入力したら、動くコードとなっているんだ。少し、脱線したけど。話を戻そう」

  パンと手を叩いて、スグルは、紙を指した。

「心というのは、表層意識。深層意識。その二つの面がある。よく、人間の火事場のバカ力という表現がある。それは間違ってはいない。例えば、誰かを守りたいと心の底から純粋に思った時に、人は自分を制御している部分の弁を開放して、全力を出す。そのための訓練もある。というわけで、お前たち。プールは行ったことあるか?」

「はい。中学生までなら」

「俺も。師匠なんで、プール?」

 スグルはスマホを取り出して、妻に電話を掛けた。

「おお。おまえか。うん。頼みなんだが、確か門下生に桂優香って子がいたな? そうそう。で、彼氏くんが今いるんだが、合同訓練という名のあそ・・・いや! その。おまえを差し置いてというわけでなくてだな! その、だ。久しぶりにデートをお前としたいんだが、いいか? うんうん。・・・ありがとう」

 スマホの通話機能を切って、2人に顔を向けた。

「というわけで、明日プールに行くぞ!」

「おい、こらまて! そこのボケ師匠。なんで、独り身の俺が憎しみの炎を燃やす展開にしたいんだ?」

「えー? だったら、美奈子くんや彩香くん。それにリーシ君も誘えば、いいだろう?」

「ん? なんで、そこで、アイツらが出てくるんだよ? 俺はモテないぞ?」

 龍介は、豪の背後で頭を抱えていた。

(豪。君って、本当に、自分がモテモテハーレム状態になりつつあるのに、なんで気づかないの?! というよりも、プールということは、その水着姿のゆかさ・・・・)

 学校指定のスクール水着を連想して、赤面する龍介。

 はちきれんばかりの大きい胸を強調するライン。スクール水着の布地が艶やかに濡れ。

 黒い髪が肌に張り付く。

 彼の脳裏に、桂優香の水着姿が見えた。

「この格闘バカは、意外な所で聡くて、どーしてこういう時はダメなのだろうか。まあいい。

はっはっはっ。というわけで、朱美が師範だから何とかしてくれるだろうから、明日を楽しみにしたまえ!

簡単に、訓練内容は「心に水たまりをイメージして、その波を鎮める訓練だ」それを自宅でもできるようにしておくといいぞ!」

 一方その頃。居合道場にいた。桂優香と亜衣は、師範の朱美から話を聞いていた。

 道義姿に、肩までかかっているセミロングヘア。田中朱美28歳。

「というわけで、明日プールに行きます。もちろん、水着は用意してきてね」

「わかりました。先生」

「お姉ちゃん、水着はあるの?」

「ありますよ。それは、学校指定のスクール水着」

「それ、色々と危ないから禁止。色々と危ないから」

 亜衣が、溜息をついて姉の水着を選ぶ基準に頭を抱える。

「そう、ね。ええ。私もそれは辞めた方がいいんじゃないかなーと思う。うん。それに、優香さんの彼氏くん。巽川龍介君も参加することになっているから、ね? 女の子としては、奇麗な姿を見せたいでしょう?」

「それは、そうですが。その、ど、どうしても。水着を買わないとダメなんですか?」

「ダメです」

「ダメです」

 と先生と妹からダメ出しされる優香。

「というよりも、お姉ちゃん。恋人になったからと言って、あぐらかいていちゃだめだよ?? 考えてもみてよ?

もし、お姉ちゃんよりも魅力的な人が現れたとして、お兄ちゃんがふらふら―って引っかかってしまうこともあるんだよ?」

「うっ ソ、ソンナコトハナイト・・・だって、龍」

 優香は、あっちの世界で融合進化したことを口にしそうになった。まだ、ドラグーンソールの正体が龍介達であることは亜衣は知らない。

「りゅう?」

「龍介君は、ガンバって、なんとかしてみせる!」

 強引に力技で誘導する。

(ごめんなさい。亜衣。お姉ちゃんでも、こればかりはまだ言えない。あなたが隠れて、ドラグーンソールのイラストを描いたり、グッツを作ったりしているのを知っているけど。ごめんなさい)

  姉は、知っていた。妹が特撮ヒーローファンの道に、進んでいること。

 そして、いつか大人になったときに。

「困難を乗り越えるチカラ」に成れるように、そっと願った。

 深夜の巽川龍介の部屋で、狼が寝息を立てていた。それは、ルー・ガルーのセリアだった。

 彼女は賢狼だが、ここ数日。妙な夢を見る。

  それは、遠い遠い。自分の祖先が、龍戦士達と一緒に戦っていた映像を見ているようだった。

 その姿は、人間の衣服を纏い。盾と剣を携えた戦乙女。

 流れるようなブロンドの髪。

 青い瞳。

 月明かりに照らされたひと振りの剣を縦に切り裂き。敵を滅する。

 『目覚めなさい。あなたの本来の姿を。そして、大切な人を護り抜く力を』

  戦乙女の女性が、セリアに呼びかける。だが、声に出そうとしても。

 その声が届かない。

 フッと戦乙女が笑うと。セリアは汗をかいて、目を覚ます。

「あの夢は、一体? エッダの巫女が言っていた予言と関係があるのか?」

過去の世界に飛んで、ドラグーンソールの死というルートを回避した。

 半年前の出来事。だが、それと同時に不可解なことを気づいた。

「なぜ、あの時に。もう過去の世界でいるはずの私と出会わなかったのだ?」

 そう。本来ならば、セリアもいるはずだった。だが、いなかったのだ。

 世界の崩壊から逃げていたという記憶は、ある。

 しかし、何から逃げていたのか? 他の誰かといたのか?という記憶があやふやになっていた。

「もしかすると。私はー「戦乙女」か? 何を戯けたことを。だとしても、

 12の戦乙女の1人が何故、このような姿になっているのだ?」

 闇夜の中で、ひとりつぶやくが。セリアの求める答えは、なかった。

 翌日。市内の室内プールで犬飼豪。巽川龍介。桂優香。 優香の妹の小学生の桂亜衣。

 そして、リーシとセリアが待ち合わせていた。

「そういや、俺達でプールに行くのは初めてだな」

「そういえばそうだね。この間は、美奈子さんとカラオケに行ったし。カラオケに行くことで、感涙する美奈子さんを初めて見た気がする」

 荒川美奈子は、友達と一緒に遊んだ経験がなく。超能力である雷を操る能力によって、差別されていた。

交友経験がながかったのだ。

「まぁ。事情が事情だし、な」

 その時参加したのは、龍介と豪。優香。彩香のフルメンバーだった。

「で? 誘ったの?」

「んー。リーシにばれて、「あのペタン子にねぇ。ボッチはかわいそうだから誘って来なさい」という」

「女神がいた。女神がいたよ。ボッチの人生から脱却だよ美奈子さん」

 見た目がロリ…失礼。小学生姿のハイエルフのリーシが気を利かせて、誘ったのだ。

 「だーれーが、ボッチの人生から脱却よ? 龍介」

 振り返ると浮き輪と水着の入ったバッグと完全武装の美奈子がいた。

 傍から見れば、彼女が物凄く楽しみにしていたのがもろわかりである。

「ふむ。そうはいっても、完全武装じゃない?」

「ぐっ。あんたに言われたくないわ。リーシ」

「まぁ、イイじゃないかのう?」

 一同は笑って答えた。

「お姉ちゃん。早くいこ、いこ!」

「はいはい。亜衣ってば」

 姉妹ではなく。母と娘のような会話である。

「亜衣ちゃん。慌てて、ころばないようにね?」

「はーい♪ お父さん」

 その言葉を聞いた豪が呟く。

「もう、お前ら結婚しちまえー! 俺は1人なんだぞ! SAN値が減る!ETみたく。 豪、おうちかえるー!」

 がしっとリーシと美奈子が豪の両脇を掴み。

「逃がさないわよ」

「さあ。一緒に、(ボッチ)地獄にいこうか」

 昔の宇宙人を連行するような図柄で、豪は連行されていった。

 室内プールにて、田中スグル先生と朱美先生が待っていた。

「よくきたな。って、豪。なんで、お前は涙目に?」

「同情するなら、俺を強くしてください。師匠」

「ああ、うん。わかった。じゃあ、昨日も言ったが。水の中で自分の心音を聞く訓練をするぞ」

「これは、自分の内面に潜り込む。精神療法を利用した内観方法だから、迷った時や冷静になりたいときに、いつでもできる方法だから、覚えておくといいわよ」

 スグルと朱美が説明する。

「へー。私だったら、神経の方も意識して、電気が流れているとイメージするけど。こういうのもありね」

「お? 荒川さんもいける口か」

「舐められたら、やり返す! が生き方だったので」

 荒川美奈子さんじゅうろくさい。色々と苦労がある人である。

「そう。でも、孤独の先に闘いを求めすぎたら、何もなくなるわよ? おばさんのお節介だけどね」

 朱美は哀しそうな目で美奈子に言った。

「今は大丈夫ですよ。いいバカ(豪)がいますし」

「おい。人をけなすかほめるかどちらかにしてくれ」

「あんただから、いいのよ。さっ! 一緒にやりましょ! そのあとガチデやるわ」

「待て、お前が本気になると俺がー―というか俺に拒否権ないのか?!」

 美奈子に連行される豪。

「しょうがない。怪我した時の為に私がついていきますか」

 リーシが、美奈子と豪の後を追う。

「若いっていいわねぇー」

 朱美が懐かしそうに、微笑む。

 龍介。セリア。優香。亜衣は、水の中に潜って、自分の心音を聞いていた。

 外の音がどんどん小さくなり。自分の音に呑まれていく。

 それは、自分の体の癖を知る訓練。

 どこを一番使っているのか。どこが使っていないのか。そのアンバランスを整える方法である。

 体の声を聴くーそれは、武だけでなく。私生活にも必要な技能である。

「ぷはぁっ」

 4人は水面から飛び出して、顔を拭く。

「気持ちよかったー。お姉ちゃん、少しセリアと泳いでくるね」

「わかった。でも、気をつけてね? 人が多いから」

「はーい。いくよー! 競争だー」

「待て、それは待て、亜衣ー」

 2人は泳いで競争し始めた。2人を見て、龍介は思う。

「平和ですね。こんなことがずっと続けばいいのに」

 ドラグーンソールとして、戦いつづけた。彼の言葉には、何事もない日々の尊さを実感する。

「そうですね。私も。亜衣が大人になって、何事も平穏に過ごせたら、と思います」

 世間のニュースでは、不穏なニュースばかりで、失望と絶望という恐怖の鎖をあらゆる媒体を使ってしばりつけようとする。それは、「自分たちのいうことを聞かなければ、生きてはいけない」と言わんばかりに。

「だけど、そのためには、力の在処と僕たち自身の心の意思と位置を自答自問しなければいけないと思う。

誰かがしてくれるのを待っているだけでは、変わらない。そして、目に見えない存在や世界を知ることで

―人は競争原理という幻想から解き放たれるんじゃないかと思うんだ」

 龍介は、右手でプールの水を掬って、握りしめる。

「少しも変わっていないな。龍介」

 龍介の背中に声をかけてきた少年が近づいてきた。艶やかな長い黒髪を束ねており。異性からモテそうな甘い顔立ち。

「秋沢! 秋沢竜也なのか? 久しぶり」

「ああ。久しぶりだな。中学以来か」

 ニカっと竜也は笑って答えた。

「龍介君、この人は?」

「紹介がまだだったね。こちらは、俺の中学時代の同級生の秋沢竜也。頭がいい上に妖怪系の知識に詳しいんだ」

「よろしく」と秋沢は一礼する。

「そして、この女性は、俺の恋人の桂優香さんです」

「初めまして、桂優香です」

 秋沢はほんの一瞬だけ目を細めた。

「そうですか。では、お二人の邪魔をすると悪いので、俺は失礼します。それじゃ、またな」

 竜也は、そう言って、2人から離れていく。

「とても、紳士的な方ですね」

「でしょ? 自慢の友人なんだ」

えへんと胸を張る龍介。

「ですが。どこか、冷たい目を持っていますね」

「冷たい、目か。うん、一瞬だけとあったね。今度会った時に聞いてみようかな?」

 竜也は離れた場所で、水着のポケットから金色の腕輪を取り出して右腕に嵌めた。

「カオス。あれが、ターゲットだ。おまえの駒を使わせてもらうぞ」

 腕輪が怪しく紫色に輝き。声を発する。

「いいだろう。なら、このカプセルをプールに放り込めばいい。この世界のカメラでは認知されぬ。この中には、ラハブが入っている。その間に戦乙女を炙り出すぞ」

「ああ。壊してしまう。俺にはない。持っているものを持っているアイツの宝物を」

 腕輪から転送された。手のひらサイズのカプセルをプールに放り投げて、プールから出て行った。

 浴槽の中でカプセルが少しずつ溶けていき。

 ぬめりとした。海の魔物が暴れ出した。

  

 プールの中から現れた怪物に利用者はパニックに陥っていた。

「慌てないで! こちらから!」

「足元に注意してください!」

 スグルと朱美が避難誘導して、龍介たちがその補助に回った。

「リーシ。アイツのこと知っているか?」

 豪の問いにリーシが頷いて答えた。

「ラハブね。アイツは非常に厄介よ。

ラハブ―「混沌」を意味する。海竜。モーゼの海割りの時に妨害したと言われるモンスターで、神のいうことも聞くと言われているのよ。だけど、なぜここにいるのかは、わからない」

「となると。今変身できないのか」

 カードは全て、ロッカーの中に置いてきているのだ。そのため、変身するタイミングが彼らにはない。

「だけど、このままって訳にも行かないわね。……私が彩香に知らせるわ」

 美奈子が名乗りあげた。

「美奈子さん、どうやって?」

「私の能力を使って、天高く雷撃を放てば、信号弾がわりになるでしょ? この騒ぎをしっているはずだから。なんとかなるはず。その代わり、あんたたちが変身のカードを全部持ってくるってことになるけど」

「ふむ。実に面白い考えをするな。あい、わかりました。私が美奈子君のかわりに戦おう」

 その会話を聞いていた。スグルが割って入ってきた。

「し、師匠?! いや、でも。相手はバケモノですし」

「ばかもの。俺はそれ以上に怖い奴と戦ったことあるから、大丈夫だ。いいか、覚えておけ。バカ弟子。

やる前から、能力がどうのこうのではない!「やってみなくちゃわからないんだ!」

不可能を可能にするのが、ウルトラの心を持った俺達人間だ!」

 スグルは、水着のポケットから、現役時代に使っていた覆面を取り出した。

 それは、80年代から90年代の超人ブームの時に、ドジで間抜けで、弱気なレスラーが、火事場のバカ力で

 幾多の戦いを仲間とともに乗り越えた伝説の魂を受け継いだ証でもあった。

「獅子の魂を受け継いだ。レオマッスル! 心に愛がなければ、スーパーヒーローになれん!」

 海竜のラバブに、真っ向から立ち向かう。

 レオマッスルは気の鎧を纏い。鱗に覆われたからだを攻撃する。

 ラバブは、痛みを覚え。咆哮する。

「ふむ。なら、加減しなくてもよさそうだな」

 尾びれを掴み。50メートルもある巨体をそのまま外にぽいっとゴミを捨てるように投げた。

 ズダンっと巨体が地面に波打って暴れている。

「うそ。スグル師匠って、あんなにチートだったん?」

 豪は、スグルの強さに驚いた。

「それは、私の自慢の旦那様だから。まぁ、加護もついているから」

 朱美は、惚気るように自慢した。

「行きなさい。ここはあの人が時間を稼いでいるから 風の龍戦士ドラグーンシルフ」

「! なんで俺が、そうだと? 師匠だけしか知らないはずなのに」

「あなた達の事は、知っています。話は後で、詳しくします。さあ! 行きなさい」

 豪は、頷いて更衣室に走っていた。

 咢から放たれるご雨水ブレスは、アスファルトでできた床をハサミで切り裂くように、スーッと割っていく。

 レオマッスルは、己の両腕でそのブレスを叩き割る。

「フンッ こんなものか? 海割りをしたバケモノと聞いていたが。随分と大人しくなったものだな」

 大地を蹴り、飛翔し。海竜の眉間にエルボーを喰らわす。

 ラハブは、暴れ。建物を破壊し。その瓦礫が逃げ遅れた親子に襲い掛かる。

「しまった!」

 レオマッスルは、瞬時に親子を両脇に抱えて。助けだした。

「大丈夫ですか?」

「ありがとうございます」

「おじちゃんありがとー」

 レオマッスルは、微笑んで。背を向ける。

(やはり、バカ弟子の力が必要か。戦乙女の加護があって、逸脱人になれているが。

フィニッシュホールドが、怪物相手となると。この町にも被害が出る。倒すことに拘るのではなく。

守ることを重視する。―ささやかに生きている住民たちの幸せーを守るのが私達だ。)

 レオマッスルが再度構えると。赤と緑の影が、駆け抜けていく。

「遅すぎるぞ。ヒーロー!」

 にやっと、2人の龍戦士の姿を確認し。その背中を見守る。

「はあっ!」

 太陽の龍戦士のドラグーンソールと風の龍戦士ドラグーンシルフが同時に飛び蹴りをして、ラハブを蹴り飛ばす。

 巨体が、しなり。海竜は、敵をソールとシルフに移した。

「あれは・・・!」

「ドラグーンソールとシルフだぁ!」

 亜衣の目がキラキラと輝く。

「俺は、太陽の龍戦士! ドラグーンソール!」

「俺は、風の龍戦士! ドラグーンシルフ!」

 2人は天に手をかざして、十字を切る。

「地球の平和を乱す。化け物よ!」

「俺達が、いるかぎり。希望の未来を紡ぎ出す!」

 ギリッと両手を強く握りしめると。関節の節々から、煙が立ち込める。

「ソール!」「シルフ!」

「ダブルナックル!」

 ソールとシルフの拳から太陽と風の力を纏った拳がうち放たれる。

「一気に決めるぞ! ソール!」

「ああ。シルフ!」

 2人は、必殺技を放とうと構える。だが、黒い稲妻がラハブに落ち。姿がさらに狂暴な容姿へと変わった。

「なに?! 進化。した?!」

 ラハブは、咆えて背中から棘のミサイルを発射し。シルフとソールを攻撃する。

「ソールバード! ビルドアップ! ソールバードシールド」

 ドラグーンソールは、ソールバードを召喚し。盾に変形させて。攻撃を防ぐ。

「うぁあああああ」

 だが、2人はミサイルの爆発により吹き飛ばされてしまう。

「―無様だな。太陽の龍。風の龍よ」 

 ラハブの頭上に、闇色のマントを翻し。漆黒の鎧を纏った皇帝が浮いていた。

「おまえは・・・だれだ?」

「我が名は、カオス。 すべてのモノを闇から闇に葬り去るもの。戦乙女らに苦渋を飲まれた王よ」

 シャラン……と金の腕輪は鳴ると。黒い雷撃が周囲を走る。

「しゃらくさい! 変身! ドラグーンジュピター!」

 美奈子が変身して、黒い雷を殴り飛ばす。だが、カオスの力が強く。弾かれる。

「きゃっ!」

「おっと!」

 レオマッスルがジュピターをキャッチする。

「貴様がカオスか。おまえの目的は、この世界を闇にさせる気か?」

 レオマッスルが目的を訪ねる。

「そうだ。 階級支配を施し。すべての意思をその固定された世界のみで生きさせることだ」

 氷のような冷たい声で、カオスは自分の意思を述べた。

「ふざけるんじゃねぇ!」

 ドラグーンソールが、マスクの下から見える鮮血を拭い。立ち上がる。

「誰だって、幸せになる権利がある。心がある! 叶えたいささやかな夢がある! それをガチガチに固定された世界にして、何が面白い! それが、それが生命が生きることになるのか! 闘志と勇気を失くした世界で、

『大切なものを護る意思がうまれるものか!』 カオス!」

「だが、支配されることで。幸せと思うモノもいる。変わらなくてもいい。成長しないまま。考えないほうがいいという人間は多い。そう、未来に来るであろう脅威がわかっていながらも。惰眠を欲する豚のようになぁ」

 カオスの言葉には、人の根底にある「変化したくない心」を述べていた。それは、安全地帯に居たいという欲求。

何も変化しないままの方が「平和であるという幻に取りつかれた亡霊」―そのことに気づく人間は少なく。その亡霊から逃れようとする人を嗤い飛ばす周囲の人間がいる。

ならば、そのまま亡霊に抱かれたまま死んでいった方か「善」ではないか?

 闇の皇帝が、そそのかす。

その言葉にドラグーンシルフが否定する。

「そうした人もいるだろう。だが、人間には! 自分の心と頭で考え。もがき。足掻くことが、「生きる」ということ。命ある限り。己の輝きを伝播させていくことができる! その輝きが、言葉となり。多くの美術や文芸。創作に影響を与え。そして、誰かと心がつながることで1人じゃないと知る。困難を乗り越えられる力が生まれる!

それが、勇気が生まれる場所だ! たった一つの言葉でも。絶望から這い上がれる力となる」

「なら、これでもか!」

 黒い雷撃を三人の龍戦士達に浴びせた。そして、徐々に変身が解けていく。

「これは?!」

「貴様らのパワーアップする変身を封じた。これでも、変身できるというのか? 神龍帝になれず。 倒す術もなく。希望から絶望に変わるがいい」

 レオマッスルのとび膝蹴りが、カオスの顔面に当たりそうなるが、紙一重で交わされる。

「だが、心があるかぎり。私が希望の陽は消せはしない!」

 バサッとマントを広げて、カオスは宙に舞う。

「まぁいい。予想外の不可能を可能にする人間がいるが。見せてもらおうか。心のチカラとやらを」

 カオスはマントを靡かせて、消えて行った。

「どうする? このままじゃ、私達全滅よ?」

 ジュピターが2人を見る。

「チェンジアップも無理か。可能なのは、アレだけか」

 シルフが一枚のカードを取り出す。

「融合のカード……ジョグレスエヴォルドだね。だけど、アイツに効くかどうかは未知数だ。それでも、やろう!豪!」

「ああ! いくぜ!」

 融合のカードを2人は、セットして変身する。

「ドラグーンソール!」

「ドラグーンシルフ!」

 赤と緑の光が天に伸びて、交互に交わり。輪を作る。

「ジョグレスエヴォルド!」

 その輪の中に、ドラグーンソールとドラグーンシルフが溶け込み。

 武人の龍戦士に進化する。

「ドラグーンレゾン!」

 光の中から、ドラグーンレゾンが姿を現す。

「ドラグーンレゾン! 負けないで―!」

 亜衣が精いっぱいの声で応援する。

 その声に、彼は頷いて答える。そして、忘れないために、自分に問いかける。

(何のため、戦うのか。何のために強くなるのか。それは―背中に続く小さな命が、安心して未来を掴める世界にするためだ!)

 最強の力を封じられたとしても、龍介と豪の2人の力が1つになった。

 ドラグーンレゾンは、強い輝きを持った光の龍となる。

 拳を握りしめ、立ち上がる。

「いくぞ! ラハブ!」

 飛翔して、真っ向から飛び蹴りを浴びせる。

 だが、強靭な皮膚に覆われた敵を少しだけ怯ませただけだった。

 地面に着地し。右反転して、敵を視認する。

「豪! 龍介くん! 敵の外側が固すぎたとしても! 内部は鍛えられない!

ならば、衝撃を内部で爆発させる力を生み出せばいい!」

 レオマッスルが的確に助言する。

「師匠! わかった!」

「レゾン! このカードを!」

 セリアは一枚のカードを投げ渡した。

 パシッとレゾンは受け取る。

「これは?」

「私の力をカードにしたものだ! サイバーリンクス! 鎧となることができる」

 レゾンは頷いて、カードを武器に挿入する。

「サイバーリンクス!」

 セリアは、本来の姿である狼に変身し。データになり、レゾンの手足。胸のアーマーに変形した。

「ドラグーンレゾン・クロ―アームズ!」

 強化鎧となった。 

「いくぞ。ガイア・グラヴィティウェーブ!」

 両腕の真ん中に。紫色の光球を生み出し。ラハブの内部に向けて、投げ放つ。

 マイクロブラックホールを限定範囲で作り出し。対象となったラハブのみを吸収し。

 そのはざまで消滅させた。

 しかし、この技は、エネルギー消費が激しく。ドラグーンレゾンの変身時間が1分という。欠点があった。

「く・・・ちから、が・・・」

 変身が強制的に解除され、三人は倒れ込む。

「守る、と決めたんだ」

 セリアは覚醒する。戦乙女だった時の先祖の力を強引に引き出す。ほんの一瞬だけ、楯と剣を携えた。

 戦乙女―フェルギャに変身した。

「冥府より、我が家族を守り抜く楯となる力を。与えたまえ。授けたまえ」

 フェルギャは、戦乙女の原型であり。始まりの力でもあった。そのため、自分が家族と認めた相手を自分が死んでも守り抜くという守護の戦乙女なのだ。

「癒しの光来」

 剣を一振りして、龍介と豪の2人の体力を回復させた。

「もう、だいじょぅぶ・・・」

 フェルギャからセリアに戻り。パタリと倒れかけた処を朱美が抱き留めた。

「おつかれさま。そして、始まりましたね。十二月の戦乙女とカオスとの戦い。

 多次元世界から、支配するモノとそれを阻止するモノ。その鍵を握るのが、龍戦士達と戦乙女の力」

 スグルが、朱美の近くに立ち止まり。続きを紡ぐ。

「そのために、君は7年前に。私の元に来て、来るべき災厄に対しての指導を行っていた。搾取する別の脅威存在と戦うため。そして、人の可能性を引き出す遺伝子の覚醒を促すために」

 瓦礫の山となったプール施設を見て、スグルは握りこぶしを作る。

「私も戦おう。ひとりの人間として。この星に生きるものとして」

「ドラグーンソール―って、おじさん?」

 亜衣が走ってきて、その後ろにリーシと優香が駆け寄ってきた。

「ソールは、どうなったの?」

「大丈夫。ソールの仲間が救助したから、オジサンがきたときには、もう行ってしまったよ」

「そっかぁ・・・。お礼を言いたかったのになぁ」

 しょぼんと顔を俯かせる亜衣。

「大丈夫よ。亜衣」

「お姉ちゃん」

「だって、いつだって、近くにいるから。ね?」

 優香は、優しく微笑んで亜衣の頭を撫でた。

「いい? ヒーローは、皆の心にいるの。それは、とても大事な事。自分にとっての軸(ヒーロー)がないと。人は迷ってしまう。だから、自分にとってのヒーローは大事だということを忘れないでね」

 それは、心に自分が信じるモデリングを作ることで、生きる指針となる。

 怒り、憎しみ、悲しみに溺れそうになっても、自分が信じた。自分が憧れた。自分が尊敬した。

 そういった存在を心に住まわせることで、他人の思考から自分を守ることにもなる。

「うん。わかった。それよりも、お兄ちゃん達を運ばないと」

「それなら、私がやろう」

 スグル師匠がひょいと豪と龍介を担いだ。

「では、これにて解散。朱美、すまないが彼女たちを頼む」

「ええ」

 スグルは颯爽とその場から飛び立って行った。

翌日。

 亜衣を除いた。昨日のメンバーとドラグーンアクアの水野彩香がスグルの道場に集まっていた。

「詳しく話しておくために、集まってくれてありがとう。

 答えを言おう。カオスは、混沌の神だ。この世界での言語で言えばだ。

 彼の目的は、変化のない台本通りの世界だ。長くなるが、聞いてくれるかい?」

 12枚のカードを並べて、スグルは話す。

「12の戦乙女と多次元世界の存在を」

 ドラグーンソール第二期第1話 終わり

 あとがき

 やっと。やっとかけたぞー(*´▽`*)

 さて、ドラグーンソール第二期シリーズですが、色々とあり。

 「支配したがる人とその枠を超えたいと思う人」をベースにやっております。

 (ほぼ、現実世界の投影)

 今回は混沌。

 元ネタは、リメイク前のドラグーンソールの本篇であった。

「神殺しの竜神ヴリトラVS邪神ガタノゾーア」を再利用しております。

(本来、ジョグレスエヴォルドで、レゾンではなく。ヴリトラになる予定だったのは、神殺しの魔竜という。

存在を作り出すことで、合法的にぶっ倒す!という舞台装置でしたw 没にした理由は、鎧を纏ったお兄さんになってしまうから。をい)

下がそうなる姿の予定でした。

 平成ウルトラマンティガの最終回の敵ですね。そして、唯一倒せたのは人の光。

個人的な解釈ですが。子供=光だったのは、「未来の可能性を信じている」というメタファーだったのではないかと思います。それはなぜかと言えば、純粋無垢であること。

しかし、大人になるにつれて、色々と知ってしまうために「自分自身の可能性や世界の可能性に蓋をしてしまう」それが、世界にとって、正しい事と「大人」が思っているから。

 ご存知の人はいると思いますが、ウルトラマンダイナの映画では、ティガのテレビ最終回の時に子供だった人が

 大人となって、再度光となり。ティガを再臨させて、ダイナとともに戦うという話になっております。

 あの時のティガは、「光」=可能性を信じることができれば大人でも意識の壁を乗り越え。しがらみという柵を乗り越えられるのではないか?と言うのを表現したと私は解釈している。

その詳しい本編は、DVDを借りてこよう! アマゾンプライムやバンダイチャンネルでもみられるよ(をい!)

 さて、12月の戦乙女とカオス本編ですが。

 ・・・あと10人の戦乙女がきまっていないのです

投げ銭していただけると、喜びます(´っ・ω・)っ「創作関係に投資」(´っ・ω・)っ今さら編集できることを知る人・・・(天然すぎぃ)