龍戦記ドラグーンソール 十二月の戦乙女編 最終回

「幸せになることをあきらめないで!」 

 セイントプリンセスの2人は、海辺に見える巨人を目視する。
「キューちゃん!」
 巨人が待ちに近づくたびに、波が高くなり、港を襲い掛かる。
「街が!」
「―氷よ! 風を! 波を凍らせよ! 北極の嵐!」
 リーシが魔法で波を凍りつかせる。ルーガル―のセリアが戦乙女のフルギャに変身して、シールドを投げる。
「絶壁の盾!」
 無限の盾で波を防ぐ。
「ここは、あたしたちが」
「護り抜く!」

 アイとヒナは、手を重ねて、握り。真っすぐに向かっていく。
 絶対のヒーローがいる。
 その信頼が、勇気をくれる。
 2人は、風よりも早く。
 そのままカオスの体内に侵入する。

 混沌。それは、善も悪も混ざり合い。
 誰かを殺めても、生かしても。良しとされる世界だった。

「これ、は」
「カオスの、記憶? 凶化されるのは、その人の負の感情が
あふれ出ていた。つまり、カオスの感情を制御する為だった」
「亜衣。急ぎましょう。カオスに抵抗している光がまだあります」
「わかった! お願い。ルティアさん」
 亜衣達は、心臓へと移動した。
 そこに、黒い髪を生やし。獣のような眼をした男性が立っていた。
「ほう、来たか。だが、遅かったな。キューの力はゼロだ」
 カオスの手には、最後にキューちゃんと一緒に戦ったときに、
 リボンの切れ端が、存在していた。
「あ・・・あああ・・・」
 亜衣は、涙にぬれる。
 間に合わなかったのだと。
 親友を助けることができなかったのだと。
 亜衣の意識がゆらぎ、ルティアとの変身が溶けてしまう。。
「しまった!」
 カオスは、ルティアの手足を拘束し、壁に貼り付けた。
「これで終わりだ。桂亜衣!」
 剣を抜き。刃を振るい落とす。しかし、カオスはもだえ苦しんだ。
「え? どうして」
 カオスの体から、スライムみたいな生物がコロンと吐きだされた。
「亜衣を・・・まもる」
 キューちゃんがよろよろと、立ち上がり。亜衣を守ろうと柱になる。
「キューちゃん・・・! キューちゃん!!」
 亜衣は彼を抱きしめた。
「ばかな。力はもう。ないはず!」
「愚かなるものよ。カオス」
 ルティアが静かに言った。
「心あるものは、「力がゼロになろうと立ち上がる」そう。愛するものがいるから、強大な敵に勝てるのだ!」
「キューちゃん。あなたが、カオスと同一な存在だというのは知ったよ。
でもね? 私にとって、桂亜衣にとっての親友は世界でたったひとりなんだよ?だから、幸せになることをあきらめないで!」
 亜衣の涙が、キューちゃんに零れ落ちる。
「亜衣。力を貸して、ボク独りじゃできなくても。2人なら、未来は届く」
「うん!」
 手を重ねて、無言で変身する。
 青と桃色のデザインのドレスを身にまとい。金色の翼を生やす。
 杖には、星と三日月と太陽を重ねた。水晶。

「プリンセスアイ・フューチャーモード!」
「私は、小学生だし、なにもわかんなんよ! だけど、言えるのはただ一つ。
 誰かを犠牲にした幸せは、もう終わりにしよう!
 不器用でも。きれいごとでも! 一筋の想いを一緒に紡ぎたい!
 だから、私達が変えてみせる! あなたも、幸せになる道を探そう!」
「うん! 亜衣ちゃん!私も、幸せになることをあきらめない。
 辛いことだってあるし、愚痴になることだってある。
 でも「命の儚さは有能になるためじゃない。私が田中ひなである為に生きるんだ!」
 2人して、カオスに立ち向かう。
 肉弾戦で、交差する。
「ぬぅん! 犠牲を終わらせるだと!? 誰かが誰かの犠牲になっている。
それを終わらせるというのか」
「そうだよ! 私達は、誰だって、進化の光はあるんだよ。それを支配者が「かすめ取って奪わせた」それに気づくことで、取り戻せるんだよ」
「終わらせるには、環境と許容する空間。そして、機械の力を借りること。それまで居た人を奪われてもいいというのか?」
「それは、すり替えだよ! 本当に大事なのは、自分の魂で決めて、昇華させること!そして、気づいたことがあります。
あなたは、「指摘して、替えてほしかったんでしょう?」この多くの未来を」
 アイは杖で、カオスの剣を払い落す。
 アイの言葉は、真っすぐで、偽りがなく。カオスは避けられなかった。
「ああ。ああ。そうだとも、我は、破滅もし。命が眩しかった。しかし、この力は滅び。人生が衣服にあるなら、
人生の前半が表のようにきらびやかで。後半は裏を返り。縫い目を知る。そう、物語も表と裏がある。
だが、もうすぐ終わらせよう。世界を」
 剣に暗黒の力が戻る。己の信じたことが間違いではないというために。

「そうはさせない。インペリアルドラグーン! 究極進化! モードチェンジ! ファイターモード!」
 ルティアは皇帝竜の力を解放し。黒い龍の鎧をまとった。闘士。インペリアルドラグーンへと進化した。
「インペリアル・ガントレット!」
 爪のある手甲でぶん殴る。
「ここでは、不利だ。外に出る!」
 紅の翼を広げて、インペリアルドラグーンは、外への道へと作るために。両手を突き合わせた。
「インペリアル・スターブレイカー!」
「亜衣ちゃん! ひなちゃん! 撤退だ!」
 2人は、頷いて、穴があいた場所から外へと逃げる。
 3人は、空に舞い。巨人を見下ろした。
「亜衣ちゃん! ひなちゃん!」
 ドラグーンオメガとドラグーンマグナが追い付いた。
「キューちゃんは?」
「はい。助けられました!」
「なら、あとは、カオスをどう救うかだな」
「お兄ちゃん!」
「るーちゃん。亜衣ちゃんとひなをまもってくれてありがとう。そして、初めまして。きゅーちゃん。よく、がんばったね。偉いよ。たった独りで、抗っていた。その勇気を僕達は知っている。だから、今度は僕たちが君の想いに答える番だ」
切っ先をカオスに向けるが、剣を消した。
「何をするというのだ? ・・・まさか!」
「そうだ。お前にとっての天敵。バスターになる」
 ガントレットを召喚し。マグナとの合体をする。
「ドラグーンオメガ」
「ドラグーンマグナ」
「超越融合ー越神龍・・・ドラグーンバスターパラディンモード」
 白の聖騎士の姿になり。白銀のマントを靡かせる。
 胸にVの青いラインが走る。
「俺を倒すというのか?! 倒せば、キューちゃんは失われるぞ?!」
「そのために、俺がいるんだ。神龍剣! 「絶」・「転生」!」
 ドラグーンバスターパラディンモードは、金色の剣を奮い。
 眼で、カオスとキュウーちゃんをつないでいる。エネルギーラインを断ち切り。
 刃で、キューちゃんとカオスは別存在であるということを刻み付け。
 「転生」させた。
「バカな! 世界と記憶に関しての書き換えができたのか?!」
「そうだ。ドラグーンソールは、命の審判。なら、別の側面からすれば、生死の力を司る。コインの裏側だ。だが、それだけでは届かない。なら、すべての神龍帝の力を1つにすれば。奇跡を起こせる!」
 ソール達の力を一つにする。それは、一つの可能性を引き出す答えでもあった。

「さあ。これが、俺たちの最後の戦いだ。カオス。真向勝負!」
「良いだろう。なら、今度こそ、打ち倒す!」
「亜衣ちゃん、ひなちゃん。言いたいことはあるだろうけど、ここは、俺たちに任せてくれないか?」
「わかりました」
「ルティア! 君の力を使う!」
「わかった」
 ルティアは皇帝竜の剣に変形し。剣を奮う。
「いくぞ!」
「ああ!」
 数キロもある巨大な大剣がバスターに襲い掛かる。
 だが、剣を滑らせ、軸を変えて、払う。
 空を踏み込み。剣の裏を走る。
 天空が鳴り響き雷がとどろく。
「! お姉ちゃん!」
 雷がドラグーンバスターパラディンモードに襲い掛かる。
「波動剣。ー雷光、切りー!」
 雷を引き裂き、その刃は、雲を切り開き。青空をみせた。
「水よ! かの敵を捕らえよ! アクアフォールド!」
 海面から、水の柱が月上がり、巨人のカオスを拘束する。
カオスの生命維持である本能が叫ぶ。
 「死にたくはない」「言葉のいらない会話をしたい」と矛盾した。
 生死の概念が生まれてきた。
「この一刀を持って、お前を切る! 太陽風! 三日月切り!」
「ケイオス・リーパー!」
 太陽風の勢いを纏った。三日月の剣の軌跡と混沌の刃が衝突する。
「お兄ちゃん!」
「大丈夫! だが、このままでは。るーちゃん! 黒い手甲になれる?」
「はい。なれます。-まさか。マトリスクを放つのですか?」
「ああ。俺たちの最後の武器は「魂の拳」だ。スグル師匠から受け継いだ大和突きに乗せる! 師匠の研鑽にたどり着くのは、時間がかかる。だが、それでも!
「足りないのなら、その分。戦いの中で進化すればいい!」それだけだ!」
 豪の魂が熱く燃え上がる。
 それに呼応するようにドラグーンバスターの気力があがっていく。
「わかりました。ガントレッドに移行します」
「お兄ちゃん! 私達も!」
「力になります!」
 亜衣とヒナが左右に並び立った。
「ありがとう。三人とも。この闘いの終わりを君たちで。予定変更!
 浸透系を応用して、ひなちゃんと亜衣ちゃんにエネルギー受け渡す!」
「ひなちゃん。手をつなごう。2人でなら、友達だから、きっと乗り越えられる」
「亜衣ちゃん。うん。友達だから、この哀しい闘いを終わらせられる」
 ぎゅっと二人の手が重なり。握りしめ。お互いの存在と熱を感じ合う。
「キューちゃん! お願い!」
「がってんしょうち! 亜衣の願いを護り抜く!」
 キューちゃんが変身ブレスから声を出す。
「全ての龍戦士と12の戦乙女の力を一つに!」
 ドラグーンバスターパラディンモードは黒い手甲をはめて、腕を胸の前でエックスの形にする。左右の腕を前に回し。左腕を立てに構えて、その後ろを右腕で線を横に引く。
「マトリクス! 波動砲!」
 両腕から、マトリクスのエネルギーを纏った波動砲を左右前にいる。
 亜衣とヒナの背中に当てた。
「セイントオーバー! プリズムウェーブ!」
 亜衣の右腕とヒナの左腕から優しき桜色のプリズムの光が放たれる。
「これは!」
 カオスは、とっさにケイオススピニングタイフーンを放った。
 だが、邪悪な紫色の光が徐々に浄化されていく。
「この光は、浄化の光だ。カオス! お前を、君を救いたいと願った亜衣とヒナ。そして、その願いを叶えようと支えている大人たちの力だ!
 がんじがらめの、出口のないと思っていた運命を
 救うやさしさの光だ! その想いを願いを優しさと慈しむ心の力が
 運命を書き換える!」
「運命を書き換えるだと? バカな、技の中に傷を癒すことはあっても、修復、昇華など。
この世界には存在していないはず。・・・!! 桂亜衣か! ゆるぎない。純粋な想い!」
 カオスは、キューちゃんとの会話で、答えに至る。
 そう、亜衣が戦ってきたことは「敵を倒す為じゃない」その先にある「救う」というということだ。
 
 亜衣は、膝が崩れそうになる。
 
 最初は、あこがれだった。いつか、憧れのヒーローに助けてもらったお礼を言うために、その背中を追いかけていた。
だけど、友達を助けたくて、力を得た。
 戦いの中で、相手が攻撃の裏にある。哀しみを言えないことに、気付いた。
だから、だから、だから、「倒す為じゃない、癒せる。救える力を求めたんだ」その想いが、今。奇跡の大輪の華となる。

「わたしは、あきらめないことをあきらめない! 苦しまないと生きていけないという世界を・・・・・・私達の想いで、変えていくんだー!!」
「そうだ。ボクは、ボクであるために、亜衣となら。その先にだって行ける。独りじゃない! 命の在り方が違っても、交わることができる!」
「間違うことだってある。だけど、それを失くすことはできないかもしれない。だけど、その間違いを誰かがして、最初にその間違えを直すほうほうを
真っ先に教えて、歩いていく。そして、誰よりも先に許したい。それが、新しい生き方。友達に誇れる。田中ひな!」
「私達は! 生き抜くことをあきらめない! 幸せになることも! 絶対に!」
 亜衣とヒナの声が重なり。最後の力を出す。
「よくがんばった」
「最後のひとおしは、私達が」
 スグルと朱美がヒナと亜衣の肩に手を置いて、エネルギーを流す。
「亜衣ちゃん。かつて、私の尊敬する師匠はいった。「心に愛がなければ、スーパーヒーローになれない」と。
 ただ力を奮うだけでは、相手の魂まで届かない。相手の魂まで響き。救うことを。癒すことをできるのが
 超人なのだと。私は教わった。大丈夫。君の想いを届ける為に、私も手伝おう」
「ええ。この人の言う通り。最後に勝つのは「愛」-それでも届かせようとする慈愛」
 戦乙女の最強神ーディースである朱美が羽衣をひなにかけて、そっと肩を寄せた。
「あなた達は、人と戦乙女の新しい未来。行きなさい。ひな! 亜衣!」
「これが、私達の全力!全開!」
「ヒペカリム! マトリスクセイントオーバードライブ!」

 その技の名はー「哀しみは終わり。希望の光が包む」
 
幾重にも雪の華のようなきらびやかな光がカオスを包み込む。
「ぬおおおおおおお! 我が、我が。光となる・・・! これが、やすらぎ。これが、いやし・・・ああ・・・命のあるモノの思いやる心が、どんな兵器よりも。強く。美しく・・・。希望をしんじられるのか・・・」
「カオス。これから先のことは、良い事も悪い事も。君自身の力と、出会う人の縁によって、変えられる。オメガブレード!」
 白銀の剣を召喚し。ドラグーンバスターパラディンモードは、カオスの死と生命の生まれ変わりを施した。
 カオスは、光の粒子となって、消えていった。

 亜衣とヒナたちは、港に降り立ち、無事を確認した。
 そこに、シグルーンと竜也も待っていた。
「竜也」
「すべて終わったな。そして、すまない。俺の過ちがここまで拡大させてしまった。
 だから、龍介。ここで、お前の最強形態と今の俺の変身で、決闘を申し込む」
「竜也さま?!」
「シグルーン。俺たちの人生はこれからも続くだろう。だが、これは俺なりの禊でもある。
 互いにほぼ傷だらけだ。いけるか?」
 ドラグーンバスターパラディンモードを解除して、龍介が頷く。
「わかった。決着をつけよう!」
「ちょっ?! 龍介くん?!」
「優香。やらせてあげなよ。これで、1つの終わりになるんだ。あたしたちは一切手出しはしない」
「彩ちゃん?!」
「まぁ。男のケンカって、ある意味単純で片づけやすいのよねぇ」
「美奈子。炊きつけるな。あとは、何とかするから、全力でやれ」
「あわわわ」
「セリア、あんたが一番落ち着きなさい。一応、家族でしょうが? 大丈夫。2人の治療は死なない寸前ならなんとかできるから」
「リーシ・・・あんたが一番怖いわ」
 
 龍介と竜也は、間合いを詰めて、ゆっくりと歩いて、変身する。
 1つは、超越形態である。 
 「ドラグーンソール・エクシード」
 もう1つは、かつて、絶望し。暗黒に落ちた不死鳥が、再び希望の羽を広げる。
 「フェニックス・ホープ」

 相反する。心と積み上げてきた人の時間。それは、交わらないことが多い。
 しかし、拳を握り。互いに高めてきた拳は、時に過ちを。時に赦しを。
 そして、未来へと行く「道ータオー」となる。
「いくぞ!」
 2人の掛け声で、拳が交差する。
 離れていた分の時間と距離を埋めるように、言葉のない会話を重ねていく。
 許せない悪があった。
 だが、「憎むだけでは、倒せても。平和を維持できない」と知った。
 それでも、歩み続ける。
 
 半歩と半円で、互いの陣地を取り合うように、攻防を重ねる。

 陰と陽。
 「不死鳥の技は、撃を研鑽したことにより、相手を屠る」
 「太陽の龍戦士の技は、受け身を研鑽したことにより、相手の技を活かして、風と水のように流れていく。
 流体と流転により、相手の力を利用する」
 どちらが優れているかではない。

 そう、人の心にも。自然にも陰と陽がある。光と影がある。美しい面と醜い面がある。
 光の中に闇があり。闇の中に光がある。
 
 そして、暗黒に飲み込まれないようにするために循環するのが、「心の平穏」でもある。
 「おまえも、色々と経験したんだな。龍介」
 「ああ。色々とね。救いたくても、救えなかった命もあった。それでも。僕たちは前に進む」
 「忘れるためじゃない。その分も掌に載せて、ポケットに詰め込んで。歩いていく」
  龍介は頷く。
 「そうだ。そして、今は、目の前にいる最強の友と戦いたい」
 「ああ。俺もだ。いつだってお前は、存在するだけで元気にしてくれた。今のおまえは昔を超えた。なら、敬意を込めて
 俺も全力で戦う。独りの男としても!」

 2人は、間合いを取って、一撃必殺の技を構える。
 「なら、最初で最後の全力で、あなたを超えよう。そうじゃなきゃ。男が廃る!」
 「駆け引きすれば、勝つことはできる。だが。それじゃあ、敬意を込めた相手を下に見たことになる。
 ならば、俺も馬鹿正直に真っ向から迎え撃つ! そうじゃなきゃ、俺は俺になれない!」
「俺は、俺になるためにこの世界に来たんだ! 他の誰かになるためじゃない!」

 2人の体から、炎が吹き上がる。
 渇いた叫びが、咆哮する。
「ドラグーンソール・エクシード! マトリクス・ノヴァ!」
「フェニックス・ホープ! フェニックス・スパルタン!」
 フェニックス・スパルタンー左腕にブーメランの羽を投げ。
 相手との間合い詰め込み。ライフルの残弾を全て討ち果たす。
 捨て身の技でもある。
 
 対する。
 マトリスク・ノヴァは、先代のドラグーンソールが命と引き換えに相手を倒すという
 絶秘技だ、
 だが、今は違う。命を賭してやる技ではなく。
 勇気と必ず生きて帰るという信念を心と体。
 左右の両手に乗せて、解き放つ。待つ人を悲しませない。
 嵐の中で煌めく技に進化したのだ。

「竜也さま!」
「龍介くん!」

 愛する女性が、名前を呼ぶ。
 2人は、光の渦の中で笑みを浮かべる。

 -あなたがいるから、俺は、歩き続けられる。
 だから、二度と迷わない。

「鳳凰!掌底!」
 破壊されるライフル。砕け散る破片を捨て、己の掌底をうち放つ。
「俺は、シグルーンと死ぬまで、一緒に歩き続ける。その強さと勇気をもらったのだ!」
 双方の鎧が砕け散り、互いの死力を尽くした。
 この闘いは、勝敗で語るものではない。

 この闘いは

 [自分の隣に歩いてくれる存在を知り。愛を告げ。明日へといく。
 旅路への門出でもあったのだから]

「竜也、君は、強いよ。だけど、僕は、この力を使った時の最初の技を!
僕は、それで答える!」
 先代のドラグーンソールの必殺技を解除し。右腕にその力を籠める。
 

 それは、龍介が初めて、ドラグーンソールに変身した時の技だった。
 死の恐怖と好きな人から嫌われてもいいから、護りたいと思った純粋な想い。
「ソール! ナックル!」
 基本の技。そう。一番簡単な技だ。だが、最初の技は、「好きな人を守ると決めた決意の技。魂の技」-その技は、龍魂の拳(りゅうごんのけん)となった。
双方に衝撃波が轟き。倒れた。

 満身創痍だった。

 しかし、龍介はふらつきながらも立ち上がろうとする。

「頭を、垂れるな。震える膝に、力を入れろ。それが、挑戦者としての、れいぎ、だ」
「ああ・・・。その通りだ・・・!」
 竜也もゆっくりと立ち上がるが、膝が崩れる。


「そこまで! 勝者。ドラグーンソール・エクシード! 禊の断拳。これを持って終了とします!」
 ディースの朱美が決着がついたことを告げる。

 その日のうちに、応急手当をリーシの手によって施され、病院に運び込まれ。竜也と龍介はシグルーンと優香にこっぴどく叱られた。
 
 病室にて、2人は語る。
「龍介、俺は、高校卒業後したら、海外に行く。イギリスで福祉の全般を学んで、日本に持ち帰る。海を越えて、技法を学んでくるさ。それまでの間。この国を頼む」
「・・・わかった。竜也。君たちがいつ戻ってきてもいいように。尽力する」
「亜衣ちゃんたちのような子が希望を持つことができる未来を、俺たちの世代で作る。これから、頼むぜ。親友」
「ああ。わかったよ。相棒。その時を超えても。友達だから」
 2人は握手を交わして、未来を話した。

 エピローグ

 亜衣とキュウちゃんは、久しぶりに再会し、寝室で話していた。
「亜衣。僕は、外の世界に行ってみようと思う」
「え? どうして?! キューちゃんとやっと会えたのに?!」
「僕は、過去に色々とやらかした。だけど、同じように苦しんでいる存在もいると思う。だから、過ちを犯したことがある僕が、誰よりも先にその存在をゆるせるようにしたいんだ。大丈夫。すぐに帰ってこれるようにワープしてくるから」
「キューちゃん、そこだけしっかりしている。わかった。でも、その時は私もついていって、手伝うからね?」
「亜衣・・・。ありがとう。僕は、君と友達になれたことが幸せだよ」

 キューちゃんと亜衣は手を握り合って、夜を話し更けた。

 それは、遠い遠い世界と近づいた命の交わり。

「キューちゃん、君が想いを大事にしてきたことは、絶対に間違いじゃないよ」

 間違いじゃない、君が信じていた未来。

 惑星の軌道みたいに流れる時の中で、重なり。離れていくかもしれない。

 それでも、友達だから、信じられるものもあると分かったのだから。


ー終わり


 あとがき。

 龍戦記ドラグーンソール。十二月の戦乙女編を最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。

 今回の話を持って、龍戦記ドラグーンソールは終わりになります。

 何やかんやで10年前に書いていた作品がここまで書くとは思いませんでした。

 振り返ってみると、一番人気があったのは「桂亜衣」ちゃんが出る回。

…(´・ω・)癒しを求めているんだね。
(そこステイ)

 ドラグーンソールは、今までの変身ヒーローの路線ですと。
「倒して終わる」というのが定番でしたが。

じゃあ、反対に「どうやって、敵を含めて救う展開にできないのか?」と
追い続けて今があります。

そして、創作の中で影響を受けたのは、メルクストーリア。
スマホゲームが原作ですか、倒すのではなく。治癒。
という新しい仕組みによって、救われた敵が多いと思います。

 亜衣ちゃんという存在が、新たな舞台を作ってくれました(´っ・ω・)っ「感謝」

 恋関係の話は、龍介方面は、結婚するまで彩香と優香のバトル。
(´・ω・`)正妻の強さを持つ優香さん。

 対するフラグ建築一級の豪くんは・・・どうしたものか(´・ω・`)美奈子。圧倒的に不利である。(おい)
(´・ω・`)ここまで、フラグ建築一級になるとは、作者も知らなかったんだ・・・。
(´・ω・`)戦乙女にモテまくる・・・そして、美奈子にエビ固め。腕十字のロックを喰らう豪くん・・・。(書いてて、そのまま終わらせたくないと思いも)

しかし、新たな作品を掲載する為に、このお話は終了するのです。

色々と最後まで完走できたので良かったと思います。

 以下没ネタ。

 北欧神話のロキ襲来で、再度闘う。
 カオスでの戦いで力を使い果たした龍介達に代わり、シグルーンと竜也が倒す。
(´・ω・`)これが、2人の初めての共同作業・・・(物騒すぎるぞ)

 必殺技の没ネタ。

 パラディンモードで、オメガとマグナの武器を合わせた。
 「マックスキャノン」
 簡単な破壊力は、宇宙戦艦ヤマトの波動砲と同じくらいです。
 違うのは、人間サイズまで凝縮されていることです。
 
 
 名残惜しいですが、このお話は、これで終わりです。
 ありがとうございました。




投げ銭していただけると、喜びます(´っ・ω・)っ「創作関係に投資」(´っ・ω・)っ今さら編集できることを知る人・・・(天然すぎぃ)