龍戦記ドラグーンソール 十二月の戦乙女編 「2人は、セイントプリンセス! 亜衣、涙の誓い。」

龍戦記ドラグーンソール 十二月の戦乙女編

「2人は、セイントプリンセス! 亜衣、涙の誓い。」

戦乙女編

 戦乙女編

 涙の誓い

 涙

 涙は、誰かの為に流す涙が。きれいだと言われている。
 涙。後悔の意味か。

 未来を護るための誓いの意味なるかは、流した人の心の在り方にある。

 シグルーンは、竜也の部屋の前に立っていた。
 深緑の瞳には、哀しみの決意が秘められている。

 「どんなに、後ろ指をさされようとも。あなたを。救って見せる。もう一度、もう一度だけ。「人間」だったあなたとの日々を重ねていきたいから」
 涙の誓いを。彼女は、秘めた願いを。己の剣に託す。

 そして、龍介達が暮らす。上倉病院に、剣先を向ける。
 病院の一室に、逃亡だった強盗犯が、意識不明の重体で眠っていた。
「A・・・K・・・。青い、リボン」
 寝言で、自分を通報した小学生のイニシャルと青いリボンを呟いていた。
 休んでいた公園で、顔を見られ、警察に通報したと知り。
 車で逃げ、天狗の石碑にぶつかり。
 恨んでいた。これまでの人生を。
 通報した少女を。

 シグルーンは、その恨みを利用し。黒いマントの怪人を創りだした。
 上倉病院の屋上で、黒いマントの怪人が産声をあげる。
「A・・・K・・・。青いリボンは、呪われる」
 それは、桂亜衣が小学校を風邪で休んでいた時に起きた事件の始まりだった。

 桂亜衣は、バスに揺られていた。
「キューちゃん。絶対に、先生や皆にばれないようにね?」
「合点承知の助! 万事解決ゾロ。というくらいに安心して。そう、泥船に乗るように」
「うん、最後のは、沈むからね? カチカチ山の童話だよね?」
「そうかぁ。ふむ?「お笑い」という感じをやってみたんだけど、難しい?」
 キューちゃんは、腕時計タイプで文字盤で顔をしかめる。
「それよりも。亜衣。体調大丈夫?」
「うん、風邪も。お兄ちゃんが来てからスッと引いちゃって。こう、チャージ200%
スターライトぉ…フォイヤー!みたいな感じに」
「うん。このフォームに取り入れよう。亜衣。最後のフォームは、麒麟。騎士の様な姿で、槍を主に使うヨ」
「最終変身。カッコいい! ドラグーンソールのカイゼルといえば、キューちゃん
 あの動画の声、龍介お兄ちゃん?」
 亜衣は、友人からもらった。ドラグーンソールのネットでのバトル動画を見ていた。闘っている声が、亜衣の姉。桂優香の恋人である龍介にそっくりだったのだ。
 そのため、キューちゃんに音声の解析をしてもらったのだ。
「ああ。うん。思った通り。一致したよ。でも、亜衣。たぶん、言わないのは、
「亜衣を護るため」だからだよ。カオスが何かを探しているのもわかっているから。
だから、今は、控えめに」
(ひなちゃんは、知っているけど。さて、どうしたものか。僕の秘密もそろそろ打ち明けたい所だけど。一応。時間が来たら開封されるメールをしかけておこう)
 バスを降りると、田中ひなと合流する。
「おはよう。ひなちゃーん!」
「あ、おはようございまひゅ! か、かみました~~」
 ひなは、元気よく挨拶を返そうとしたら、舌を噛んでしまう。
「大丈夫?」
「ひたいれすぅ~」
 2人は学校に歩いていく。すると、先に。複数のパトカーが停まっていた。
 紅く光るサイレン。
 警察の衣服を着た人が、玄関前に立って、何かを調べていた。
「あれ、なに?」
 亜衣は、いつもと違う空気に戸惑ってしまう。
「おはよう。亜衣。ひな」
「如月先生」
 担任の如月はるかが2人に声をかけてきた。
「先生、いったい。これって?」
「昨夜。何者かが、窓ガラスを割ったみたいだ。足跡も家庭科室まで伸びていたが。盗まれたものは何もなかった。
 それともう1つ。安全の為、臨時休校となるから、二時間だけ、学校にいてほしい。集団下校の準備もしないとならん。先に教室に行ってくれ」
 如月はるかは、2人を見送り。家庭科室に行った。
「そこにいるんだろう? 戦乙女」
 はるかは、鏡の中にいる戦乙女に声をかけた。
「なぜ、ここにいるとおわかりに?」
「うちの生徒が、こそこそとしているのがわかっているからな。危なくないとわかっていれば、あえて見逃すさ。子供の成長に、小さな秘密は必要なモノだ。
本題に入る。あなたの力で、もう1つ調べてほしいことがある。
A.Kのイニシャルがある子供が連続で、黒マントの怪人に襲われている。
先週の写生イベントに行ってから、続いている。子供たちの安全をまもるために
力を貸してほしい」
「・・・わかりました。その代わり、あなたの体をお借りします」
「あたしの体を?」
「ええ。憑依に近いものです。私の場合は、三姉妹の力を1つにしております。
なので、ガサツな姉の力と相性がいいあなたがいいと」
「まっ、あたしは、男が寄り付かないからな。いいだろう。憑依するとどうなる?」
「力の扱い方が変わりますね。「速さ」「混合」「剛力」の3つにタイプチェンジします。見た目がかわずに、目の色だけを変化させます。周囲の人間に気づかないように」
「わかった。あたしは、受け入れる。生徒を守るために」
 はるかの左腕に腕輪が嵌められる。
「恐らく、この事件に。あの子たちが関わってくるでしょう。いざという時にあなたに憑依します」
「わかった。手間をかけるが。頼む」
 家庭科室を後にすると、校長先生に呼び止められた。
「如月先生。昨日も他校で、襲われたみたいだ」
「なんですって? それで、なにかわかったことは?」
「青いリボンは、呪われるー。それを言って、襲われた子は怖がっているそうです。しかし、なぜ、青いリボンとイニシャルだけを?」
 はるかは、少し考えた。恐らく。何かしらの情報が断片化されて、「犯人が知っている情報を怪談話のように拡散していけば、犯人のことを知っている誰かに届くはず」と。
「校長先生。今回の一件は、私自身も調べてみてみますが。よろしいですね?」
「あ。ああ。君は、赴任前の学校でこういったことに対してのスペシャリストと聞いているから、任せます」
「今回の話は、不審者情報の警戒だけを。犯人が捜しているのまでは、広まらないようにお願いします。ですが、人の口に戸を立てられません。
遅かれ早かれ、他の学校や塾などで、耳にするでしょう」
 現代社会は、情報の流出が早い。たとえば、特撮ヒーローの作品の今後の展開や商品販売のカタログなどがネットで探せばすぐに見つかる。
 それと同じように情報のその先を見据えた。戦い方が必要になる。
 だから、はるかは、「情報が漏れてしまう」ことを前提に、対処する。
「だが、問題は、「子供たちが周囲の大人まで危険視してしまうこと」これだけは、なんとしても避けないといけません」
「そうですね。本来。地域の大人が護らないといけなかった。しかし、
経済を回すために、仕事に就くために。生活を維持するために仕事にまい進したことにより、私達大人は、他所の子を偏見なく見る目を失ってしまった。
そのツケが社会全体に回ってきたのでしょう・・・。とはいえ、緊急に職員会議を設けます」
「わかりました。では、失礼します」

 教室に行くと。はるかは、最近の事件のことを話した。
「先生。この事件は、いつ終わるのでしょうか?」
「わからないな。だが、先生たちも全力でなんとかする。そこは安心してくれ。
当分の間は、登下校は集団か親御さんとの同行となるかもしれない」
「えー? なんでこの年齢になってまで、かーちゃんと一緒に行かなきゃなんねーの?」
「克己。気持ちはわからんでもないが。親にとっては、子供は宝物なんだ。
例えば、お前が大事にしているカードゲームのレアカードを見知らぬ相手に破かれたら、嫌だろう?」
「うん。いやだ。絶対に許さねぇ。と思う」
「そう。それと同じように思っているんだ。だから、親の気持ちを汲んでほしい。
皆も気をつけてな」
「はーい」
 その中で、加藤藍子は、浮かない顔をしていた。
「加藤?」
 相良菜月は、表情が曇っている藍子を気にかけていた。
 休憩時間に、悪ガキガールズが集まっていた。
「と、とりあえず、お父さんに連絡すればいいんでしょうか?!」
 田中ひなが、ピーと泣きそうな顔で聞いてくる。
「それは、違うと思うなぁ。ひなちゃん、スグル先生や朱美先生はすぐにすっ飛んできそうな気がする」
 亜衣ちゃんは、よしよしとひなの頭を撫でる。
「でも、そのマントって、誰を探しているんだろ?」
「それなんだけどな。先週。美術の写生会あったろ? そこに、逃走していた殺人犯が、ベンチにいてな。加藤が偶然見つけたから、あたしも協力して、警察に知らせたんだよ」
「ぴ?!」
 ひなが聞いて、涙目になる。
「えー?! そんなことあったの!?」
「ああ。だけど。今はこっちでも今情報を集めている。こういうのは、ネットに転がっているからね」
「じゃあ、今回の事件って。それ関係?」
「かもしれない。島崎、なんか見つかったか?」
「いやーさ? 怪人ピエロとか。黒マントとごっちゃになっているのが、現状だね。ちと休憩」
 島崎優がふーと背伸びして、息を吐く。
「ともかく、あたしらと加藤藍子で帰ろうさ。「A.K」のイニシャルは、亜衣と藍子の二人だけだし」
「というわけで、行ってみよう。加藤さーん」
「あ。はい。なんですか?」
「加藤さん、一緒に帰ろ? 集団下校だし。途中まで送るよ」
「でも、桂さんに迷惑が」
「大丈夫、このアホの子は、何も考えていないから」
「そうだ。フォローしているこちらを考えていないから」
 優と菜月がうんうんと頷いて答える。
「2人とも、亜衣ちゃんを攻撃している・・・」
 ぴぇとひなが小声ていう。
「ひどいなぁ。みんなして、私がアホの子じゃない?」
「「いやいや、あざといアホの子でしょ?」」
 優と菜月が、一緒に突っ込む。
「ある意味、女たらしだし・・・キラーだし」
 元の姿がヒュドラのひなが、異種族キラーとして、亜衣を認識している。
(うんうん。亜衣は、ある意味異種族キラーの子)
 キューちゃんがテレパシーで亜衣に伝える。
(キューちゃんも、ひどい。加藤さんを和ませるためとわかっているけど、ひどい)
「う、うん。亜衣ちゃんたちと、いってもいい?」
「もちろん。うちらは大歓迎」
 亜衣達は裏で、最初のミッションをクリアしたことを確認する。
「それじゃ、集団で帰ろう」
「あ、そだ。お姉ちゃんにも。メールしとかなきゃ。ひなちゃんはスグル先生と朱美先生に連絡しとかなきゃでしょ?」
「そうでした。すぐにでもしてきます。それと、少し、亜衣ちゃん腕時計借りますね」
 亜衣は、ギクゥ。と硬直する。キューちゃんが亜衣の心に話しかけてきた。
『亜衣、亜衣。ひなは大丈夫。僕の正体をこっそりと話しておいたから』
(キューちゃん!? なにしてくれてるのー!? ああ。でも、スグル先生だから、オカルト系にも精通しているから。いいか。
 皆にはばれないようにね?)
『ガッテン承知! ユーゴー! アイゴー! ヒアウィーゴー!』
 亜衣は、この言葉をどこで覚えたのか?とキューちゃんの学習能力に驚きを隠せない。
「はい。気をつけてね? キューちゃんをお願いね?」
 亜衣は最後の部分を小さく耳打ちした。
 ひなは頷いて、廊下にでていった。
「キューちゃんさん。今回の犯人って、カオス関連ですか?」
『そのまえに。僕の話に合わせてくれてありがとう。ひな。それに関して言えば、マントの怪人のことだよね?
 マントの怪人は、日本だと昔から色々な形で昭和期に怪異として残っている。
 僕も調べているけど。怨念系の線が強い。カオス関連とは無関係かもしれない。
 例えば、今さっき。怪人ピエロの話がでていたけど。海外でピエロの衣装を着た殺人犯が実在した。
 その思念が、人が増えるたび。情報を見聞きし。感染し。世界中に広がれば。
 その存在は脅威と認識される。「異端」というのは、創りだされるんだよ』
「つまり、今回のマントの怪人も何らかの原因で「創りだされた存在」ということですか?」
『うん。ただ、詳細がわからないから、亜衣を変身させられない。あまりに危険すぎる。いざとなったら、ボクが人間体となって、
おとりになるよ。その時は、亜衣を。亜衣だけを守って』
「キューちゃんさん、それはダメだよ? 亜衣は、絶対にあなたも助けるのを望んでいる。亜衣の憧れているヒーロー。ドラグーンソールは、
敵であったとき、私を救ってくれたんだよ。亜衣は、そのヒーローに追いつきたい。その人に恥ずかしくない生き方をしたい。
だから、キューちゃんさん。自分も助かる方法を実現しよう」
 ひなは、ヒュドラとして、闘った時のことを話した。
 倒すだけなら、歴戦の戦士。ドラグーンソールはできた。しかし、敵の命を救うということは、あまりできないのが現実だ。
 なぜなら、あらゆる敵を倒すのが「正しい」と思い込んでいるのが多い。
 彼らは、「敵の命を救う」というもう一つの可能性を引き出し。世界の軸に干渉したのだ。
『ひな・・・・・・。ありがとう。そうだ。昔、僕を封印していた戦乙女の力を解析して、作ったオーロラ色に輝く石をあげるよ。
 たぶん、これで、ひなも変身できるはず』
 ひなは、受け取った石がきらっと輝いた。
 
 下校時に、真昼の太陽がアスファルトを焼く。
「あちぃ・・・。なんで、夏終わったばかりなのに、暑いん? 地球の反抗期?」
「異常気象」
 今年の夏は、猛暑を超え。災害級の酷暑である。
 身体が地面から近い人ほど、暑さを感じやすく。脱水も起きやすい。
「はるか先生のお陰で、エアコン導入も早ければ秋にくるし。
 水分補給もOKとなったから一番いい」
 はるか先生が、教育委員会やそれ関係に肉体言語という会話で、認めさせたという。
 暴力という名の交渉である。
「藍子ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫。亜衣ちゃん」
 亜衣は、遅れて歩いている加藤藍子に歩幅を合わせて、歩いている。
 その時、前を歩いていた島崎優。 相良菜月。田中ひなが足を止めた。
 視線を前に向けると。黒い紳士服と白い仮面をかぶった怪人がマントをなびかせていた。黒いマントが風に翻り。強い、憎しみを亜衣達に向けていた。
 その中で、藍子の青いリボンに目を向けていた。
「青いリボンは、呪われる。青いリボンは、呪われる。・・・おまえか、オレを警察に通報したのは・・・? おまえかあああああ!」
 黒マントの怪人が叫び。鎌を出した。
 藍子は、顔を青ざめて、怯えきっていた。
「逃げろ! みんな!!」
 菜月が大声で、叫び。彼女たちは走り出した。
 目の前にいるモノは、「人間」ではない。そう直感が訴えかける。
 黒マントの怪人は跳躍して、彼女たちの頭上を飛び越えて、退路を塞いだ。
「うそでしょぉ?! フツー塀ぐらいの高さを助走なしで飛ぶなんてありえない!?」
 優が目を丸くして驚いた。
 しかし、それと同時に子供の足では、逃げ切れないということを思い知らされた。黒マントが、子供たちの中から「青いリボン」をしている藍子に狙いを定めて手を伸ばす。
その時、空中から、ラジコンの飛行機が急降下して、黒マントの後頭部に直撃した。
「おい! 早くこっちに来い! 振り返らずに来い!」
 クラスの悪ガキ男子である克己が、亜衣達に声をかけた。
 みんなは、克己たちの方に走って行った。
「克己くん、なんで?!」
「黒マントの怪人をひと目見ようと、ラジコンに仕込んだカメラで探してて。
って、そんなことよりも! 防犯ブザー! ついでに、これでもくらいな!」
 克己は、防犯ブザーのピンを抜いて、追ってくる黒マントに向けて投げ飛ばした。
 耳に痛みが起きるくらいの爆音が住宅街に響く!
「よし! あとは、こいつもおまけだ! 菜月特性。発煙筒ロケット花火!」
 菜月は、怯んでいる隙に、ランドセルから花火とマッチを取り出した。アスファルトで、マッチを擦り。導火線に火をつけた。
 そのまま空に、パァンと運動会の銃声と同じ音と煙が舞った。
 黒マントは、目を光らせて、鎌の柄で菜月と克己を薙ぎ払った。
「ぐあ」
「くっ」
「克己くん! 菜月ちゃん!」
 亜衣は2人の名前を叫ぶ。
「A.K・・・! 青いリボンは呪われる・・・! 呪われる!」
 亜衣達を鎌で襲いかかる。
 そのときだった。
 白いオートバイに乗った女性が黒マントに体当たりした。
「あたしの生徒に手を出すんじゃねぇ!」
「はるか先生!」
 亜衣達は、目を輝かせた。
 はるかは、目で状況を確認した。そして、ゆっくりと拳を握りしめて、怒った。
「てめぇを、地獄に送る」
 目の色が黒から銀色に変わり。戦乙女の力を体に宿す。
 黒マントが鎌を奮うと。はるかは両腕で受け止めて、その柄を掴み。膝を使って、武器を破壊する。
 その隙をついて、相手の左足を踏み。腹部に重い右ストレートを叩きこむ。
「ぐっぅ!」
「立ちな。まだ、終わりじゃねえ」
 マントの襟首をつかんで、電信柱に黒マントの怪人をぶつける。
はるかは、十代の時。スケバンを張っており、その時のラフファイトを遠慮なく。敵にやる。
 自身の生徒に危害を加えるモノに、問答無用。遠慮無用である。
「ぬ、おおおおおおおおおお」
 黒マントは、奇声をあげて塀の上に立ち。胸部の骨が左右に割れて、むき出しになる。そこから赤い光を放ち。高熱玉をはるかにめがけて発射する。
「先生!」
 亜衣達は、声をあげる。
「大丈夫だ。心配するな」
 はるかは腕を組んで、上半身をカードした。煙と同時に、黒マントは逃げたのだ。
「それよりも、お前たち。けがはないか? 克己。菜月。優。亜衣。ひな。藍子」
「俺は何とか大丈夫。てて・・・、それよりも。先生はなんでここに?」
「発煙筒を見てな。お前たちが何かやっているだろうとアタリをつけていたんだ。
だが、黒マントと対峙してみて、わかったが。「普通の人間が相手するには危険すぎるな。それはそうと、お前たちの対処法は正しかったぞ」
 はるかは、1人1人の頭を撫でた。藍子の頭に手を伸ばそうとした時。
 彼女は、先ほど。黒マントの怪人が手を伸ばしてきたことを想い出して、身体が拒否反応を出してしまう。
「いやっ!」
「藍子?」
「・・・っ ごめんなさい!」
 藍子は、振り返らずに走っていく。
「藍子ちゃん!?」
『亜衣。ストップ! 追いかけちゃだめだ。今のあの子は、さっきの出来事が強すぎている』
「どういうこと?」
『あの子は、色々と強い体験を重なっていて、心が不安感が強くなりすぎている。僕らみたいに、心構えができていない。それに、子供の脳は、強い衝撃を受ける出来事が多ければ、脳は萎縮してしまう場合

もある。今は、そっとしておくしかない』
「キューちゃん・・・。ねぇ、友達なのに、何もできないのは――つらすぎるよ」
 亜衣は、素直に気持ちを漏らす。
「お前たちは、気をつけて帰れ。それと、桂。田中は、少し残ってくれないか? 一番遠いだろう」
「そうですね。わかりました。あたしが責任を持って、連行しますので」
「菜月、いや、ナツキチ・・・。なんで、俺が絡む時にそう、強力な言葉使うん??」
 克己が聞いてきた。
「決まっている。お前には、前科がある。男子トイレのドアを蹴破って、上級生にケンカを売買したりという」
「やめてぇ! 若気の至りだから! というよりも、トイレで乱闘して、ライダーキックしたら、トイレの窓割って、落ちかけたことも秘密に・・・あ」
「そうか。赴任前のことは知らなかったが、そうなると今後チェックしていくから、楽しみにしておけ。克己」
 はるか先生が、ニッコリと克己を見る。克己は、先ほどのはるかの戦闘を見て、ケンカを売ってはいけない人間と同時に。
「この人は、全身全霊を持って、命を賭けて、自分たちを守ってくれる大人だ」と心底から、尊敬しているから、反抗心はない。
 秘密をわざと漏らしたのも。この場を和ませるためだった。
「お手柔らかに、お願いしまする。はるか大明神様」
「誰が、大明神だ。誰が。気をつけていけ」
 優。菜月。克己の三人は、帰っていく。数十メートル離れた所で、はるかは2人に向き合う。
「知っているかもしれないが、あたしは、家庭科室にいた戦乙女を憑依させている。だから、今回は間に合った。
 ひな。亜衣。さっきの怪人は警察では対応できない部類だ。ドラグーンソールが相手にならないといけないくらいの敵―と覚えてほしい」
「戦乙女さん!? それから、どうして、ドラグーンソール?? 知り合いなの!?」
「亜衣ちゃん、目の色わかっている。そして、先生。黒マントの怪人は、一体だれを?」
「戦乙女は、ずっと昔。ドラグーンソールと一緒に戦った仲間だ。だから、知り合いだ。そして、黒マントの怪人はイニシャルが「A.K」そして、青いリボンをしている子を襲っていた」
「じゃあ、藍子ちゃんが狙われたのは、その条件に合っていたから?」
「おそらくそうだろう。しかし、黒マントが「探している子供」なのかは、あたしでもわからない。確証はない。
 だから、お前たちには話した。ひなのお父さんは、そっち方面で詳しいからな。亜衣。ひな。お前たちが、藍子に一番近くにいる。あたしの手が届かない
事態になったとき、最後の切り札は、お前たちだ。その腕輪もだからな?」
「せ、せんせい。いつから??」
 亜衣はギクリと聞き返した。
「ひなが転校してきた時から、気付いていたぞ? 教師を甘くみては困る。腕輪? のなまえは」
「キューです。亜衣のセンセイ」
「そうか。よろしくな。あたしは如月はるか。この子らの先生だ。キュー。この子たちを頼むぞ」
 はるかは、キューを信頼の目で見つめる。
「はい」
 はるかに連れられ、ひなの自宅近くで、別れた。
「キューちゃん。どうしたら、藍子ちゃんを助けられるかな?」
『亜衣。人は、怯えたままだと。踏み出すことができなくなる。大人もそう。
 だから、必要なんだよ。闘うための勇気。現代の教育に触れてわかったけど。
 この国は周囲と同じー工場で作られる機械の部品の規格に合わせたモノばかり作られている。
 その名残は、太平洋戦争の時代からのもの』
「どういうこと? それに、戦争ってなに?」
『亜衣には、知らないと思うけど。今の日本は、海外の国と仲良くしているけど。昔は、攻めいったりもしたんだよ。
 血で血を洗う。そう、倒すか倒さないかという二つしかない。そんな時代が。硝煙の匂い。銃火器の音。
 飛行機の爆音。その振動で揺れる窓ガラス。そうした。コワイ体験が昔あったんだよ。
 亜衣で言えば、ひいひいおばあちゃんくらいの人しか知らない。だけど、その体験を口にできない人もいる。
 なぜなら、言葉にするというのは、もう一度。その体験を重ねるということになるんだよ』
 
 亜衣は、知らなかった。日本の昔にそういったことがあったこと。そして、その体験を伝えることがどれだけ重い事なのかを。
 藍子の恐怖体験を聞くというのは、彼女にもう一度その体験を重ねるということ。
 それを無自覚にやってしまうと彼女の心が傷ついてしまうということをキューちゃんは伝えているのだ。
「どうしたら、いいの? このままじゃ、藍子ちゃん。また狙われちゃう!」
『方法はある。狙いは、リボンとA.kのイニシャル。つまり、彼が思うターゲットだと誤認識させればいい。
 亜衣、リボンを藍子ちゃんから借りられる?』
「え? うん。なんとかしてみるけど。・・・まさか」
『うん。ボクが囮になる。注意をそらすだけなら、それでいい。あとは、どうやって、誘い出すか』
「キューちゃん。キューちゃんだけを戦わせない。私も戦うから」
 亜衣は、1人にしないとキューに約束した。

 藍子は、布団を被って怯えていた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」
 通報した自分が悪いと思い込んでいた。
 正しいことをした。それが間違っていた。
 こんなに怖い思いをするなら、誰かに任せればよかったと思った。
「相良さんや克己くんが、ケガをしたのもわたしのせい。あの時、通報しなかったら、こんなことになんてならなかった」
 藍子は、精神的に追い詰められていた。
 だから、自責の念に苦しめられ。自分自身を痛めつけてしまう思考に行き着いてしまう。
 目をつぶるたびに、黒マントの怪人が手を伸ばして襲ってくる場面が思い出される。呼吸が荒くなり、過呼吸状態になってしまう。
「だれか、だれか、助けて」
 藍子の心は、押しつぶされそうになっていた。

「なあ、俺らで、アイツをやっつけね?」
 克己が突拍子もなく。言い放った。
「はあ?! アンタ、あの怪人と対峙して、おかしくなったの!?」
「ばっきゃろー。藍子が怯えていただろ? 俺らでもやるんだって。
 はるか先生がいつでもいるわけじゃねえだろ? なら、俺らでもできる
方法をやるんだよ」
 島崎優が、頭大丈夫?とかわいそうな目で見る。
「まぁ。克己のバカが珍しく良いこと言っているから、どうするかだな。
 やるとしても、どうするんだ?」
「なつき、ブービートラップって知っているよな?」
「ああ。ゲリラ戦でよくやる手法だし。・・・なるほど。
 町をよく知っているという認知の錯覚を利用して、罠に陥れるのか」
「そゆことー! なら、一番知っている場所と言えば? 俺らの学校だろ?
 俺らが一番よく行く場所だし。トラップしかけるなら、そこがいい」
「なら、そこを決戦の場所とするか。だが、相手は常識外。となると、人が当たり前の動作をするのを利用して、古典的な方法でやるか。ひもでな」
「おっ、いいね? それなら、学校に持ち込んでも文句ないだろうし」
「蛍光塗料も塗っておけば、暗闇でもわかる」
「悪魔、悪魔がここにおるぅ」
 優は、菜月と克己の悪だくみが怖かった。
 
 如月はるかは、バイクに乗って、町の外れにある秘跡前に立っていた。
「黒天狗岩。人に害をなした天狗が地獄に送ったとされる冥府への道。
 そして、ここに強盗犯が、逃走の際に、自損事故を起こして、病院に搬送された。・・・間違いない。ここか。だとしたら、黒マントの正体は。怨念を利用したこいつということになる」
はるかは、スマホを確認すると。来ることを知る。
「もし、台風が来たら、避難所になる。だとしたら、奴が狙うとしたら。
状況を作るだろう。となると、だ。基本的に災害があった場合に、避難所になるのは、学校になる。となればー決戦は台風が来た日」
 少し強い風が、はるかの髪をなでる。

 翌日、台風が明日来るというニュースを知り。
 授業中に暴風雨に見舞われた。
「あちゃー。このままだと帰れないね」
「どうするんですか? このまま家に帰れないと。学校にお泊り展開に」
「ひなちゃん。するどい。そう。学校は避難所になっているから、お泊りすることになるんだよ」
「でも、なんで、避難所に?」
「ふっふっぅーっ! 教えますよー!」
 亜衣とひなの疑問に優が答える。
「学校が避難所になっている理由は、三つあります。ひとぉつ! 誰もが知っている場所で、地域住民が多くは入れるから。ふたっつ! いざとなったら給食室の調理施設で料理できるから。みぃっつ! 自衛

隊などの災害救助物資の拠点になる! というよりも。災害が起きた時。誰もが知っている場所に避難して会うというのが一番重要なのよ。何故かって、言うと。会う場所の共通認識がないと迷子になって、死

んでしまう可能性があるん」
「さらに言えば、だ。学校は公的施設という認識があって、場所もどこにあるかもわかる。社会科の授業で、地図を開けば、どこの地区に学校があるかなんてわかるだろ? 基本的に学校は済んでいる地域か

ら近いとこに設置されているんだ」
 菜月が、補足説明をする。
「へぇ。そうなんだぁ」
「お二人ともすごいです」
「だけど、問題もいくつかある。ここ数年の地位法自治体の財政難や少子化の影響で、学校の統合配合が行われたり。廃校になったりする。そのため、学区が広がって、避難所にたどり着くことが難しくなる場

合もある。また、学校の老朽化や暖房器具の設置。体育館の耐震性の問題もある。中越地震が起きた例をあげると、体育館の天井が落ちてきたという事例もある。元々、学校の耐震性も昭和期の基準で建

てられたものが多いから、現代の一般家庭のような一軒家みたいな耐震性のある建築ではない。建て替えればいいというのもあるが、その費用も。新築している時にどこで授業をうけるのか?という課題もあ

る」
「あ、そっか。学校の建築技術も昔の耐震性を基準にしているから、今みたいな酷暑や地震なんかに耐えるという前提で作られていないんだね」
 亜衣がいうように。現代の建築と昔の建築では、技術水準も違う。
 しかし、昔の木造建築の中には、明治、大正、昭和、平成と生き抜いた建物も現存する。例えば、屋敷の中には「とらのすづくり」という天井と屋根の空間支える創りが存在している。その建物は、大正初期か

ら平成25年まで現存していた。
大きな地震には、耐えられたが、何回も体験すると崩壊する危険性があった。
だが、その事実を踏まえて、考えると。昔の技術の中には「震災を乗り越えら得るものも含まれている」という知識が込められているのがわかる。
「そういうことだ。だが、課題はそれだけじゃない。学校は即席の司令塔としての本部を設置できる。会議室や視聴科室。本部の設置にはもってこいだ。しかし、災害が起きた時に。情報のやり取りを正しく行え

るか?が、難しい。災害が起きた時、だれもが不安になる。その不安に押しつぶされないように行動することができるか。人の口から語られた情報に嘘が混じっていないのか。それも見極めることも必要になる

。情報の寸断は、生命線に関わる。だから、ラジオが聞ける機器も必要になる。一見して、役に立たないと思うモノにも。非常時に役に立つものもある」
 菜月は、小声でみんなに話しかける。
「藍子の様子はどうだ?」
「まだ怯えているみたいな感じがするね」
「ですが、またあの黒マントが出てくる可能性も」
「あ、それなら、黒マントはリボンと「A.K」のイニシャル狙っているんだよね?」
「うん」
「私が囮になるよ」
「はああああああ?!」
 悪ガキガールズが驚いた。
「いや、待て。待て。確かにリターンマッチを仕掛ける話を克己としたが。ちょっと待て、亜衣。
確かに、アイツの狙いは「A.K」のイニシャルを持っていることとリボンだが。そうか、桂亜衣。加藤藍子。
ローマ字に表せば、イニシャルは「A.K」になる。だが、危険すぎるぞ?」
「確かにね。でも、友達が怖がっているのを放っておけないよ。私達が先に始めた。だから、私達で解決したい。
最後まで、闘いたいの」
 亜衣の強い目に周囲は、息をのむ。
「わ、私も最後まで戦いまひゅ!・・・した、かみました・・・」
 ひなは、最後の部分で思いっきり舌を噛んでしまい。涙目になる。
 優がひなの頭を撫でる。
「わかった。じゃ、戦乙女に相談しに行こう。相手がどこから来そうな場所を狙い。逃走ルートを確保する」
「ちょっと待って、それじゃ。今借りてくるね」
「こら、亜衣ー! バレルバレル!」
 あえて空気を読まない亜衣は、藍子の所に行って、ごみを捨てに行こうと誘う。
「亜衣ちゃん。昨日は、ごめんなさい」
「いいって、いいって。だって、怖かったんでしょ? 誰だってこわいよ」
「でも、皆は、立ち向かったりしてた。私だけ。私だけ、逃げて、なにもできなくて」
「私もね。最初、何もできなかったよ? 藍子ちゃんは、ドラグーンソールって特撮番組知っている? そのヒーローは実在して、何度も私もお姉ちゃんも助けてくれたんだ。
私もいつか、あんなヒーローみたいに誰かを助けられるようになりたいって思った。でも、いつも怖がって、逃げて、待っていた。だけど、だけどね?
人は誰だって、誰かを助けたいと思った時からヒーローなんだよ。それがわかって、勇気が湧いてきた。だから。私は、理不尽な運命に真っ向からあらがいたい。捻じ伏せたいんだよ」
 亜衣は、闘う目をしていた。自分たちに降りかかってくる理不尽という名の敵。それと戦い捻じ伏せるという。荒唐無稽な戦い。
 しかし、彼女は、思う。誰かの言葉が誰かにとっての生きる為のロザリオとなるのなら。
 自分の思いを。友達に伝えなくて、いつ伝えるのだと。
「亜衣ちゃん。・・・・・・亜衣ちゃん。リボンをどうするの?」
「私が、藍子ちゃんの囮になるよ。大丈夫。安全策もとってあるから」
「でも! それでも! 亜衣ちゃんが危ないよ!」
「あははは・・・・。本当に心配ばかりかけられる。でも、大丈夫。私には、絶対無敵のお守りがあるから。はるか先生から貰った石でね。
少なくとも、時間は稼げると思う。もし、うまく逃げられたら、スグル先生に連絡して。私達は、藍子ちゃんの優しさを信じているから」
「亜衣ちゃん・・・・・・」
 亜衣は、藍子の髪から青いリボンを優しく取り。自分の髪の左側に結わえる。
「これなら、大丈夫。あとは、私達に任せて」
 藍子の胸がチクリと痛む。

 一方その頃。悪ガキガールズは、家庭科室の戦乙女に相談していた。
『なるほど。黒マントが来る方向を視てほしい。と。ですが、子供だけでは、身が重すぎ・・・。すみません。
 これは、あなた達の意地と友達を護りたいという想いを踏みにじることになりますね。
 わかりました。天候を考慮して、暴風雨になります。なので、できる限り体育館ではなく。こちらの校舎内で決着をつけるようにした方がいいでしょう』
「スクルドさん。台風だけなら、はるか先生がいるから大丈夫なんじゃ?」
 優が、昨日の黄金の拳でラフファイトをしたはるかを思い出す。
『残念ながら、近隣の河川が増水し。土嚢を用意しないと間に合わない事態になると。数時間後にわかります。なので、被害を最小限にするためにも
「退路」を確保できるようにしたうえで、作戦を立てていきます。まず。アイツは確実にやってきます。ですので、学校の二階部分。一部だけ灯りをつけて
誘うようにしてください。二階なら、上、下の階に誘導することができます』
「なら、カラーのペンライトで上か下かと囮役に見せればいいわけだな。となると、階段の灯りを消して、ひもで引っ掛ける。あとはビー玉か」
「でも、それだけじゃダメ押しに?」
「いや、はるか先生が来るまで、時間を稼げればいい。アイツの狙いは「A.K」のイニシャルと青いリボンだ。なら、その情報を最大限に利用して。
 プールにまで誘導する」
 ひなは、話を聞いていて、いざとなったら、正体がばれてもいい。異形の力を使ってでも菜月や優を守ると決めた。
 亜衣だけを戦わせはしない。そう誓った。だから、もう一人の戦乙女として、人を超えた力を奮う。
「念のため、発煙筒を使う。これを使えば、はるか先生が迷わずに来れるはずだ」
「ねぇ。菜月。あんた、本当に何者なの?」
「親がサバゲ―から自衛隊に入り。防犯グッツを販売するという家庭なのだが? 普通ではないのか?」
「フツーじゃない。普通じゃない・・・。いや、ふつー? あれ? まぁいいか。迷惑かけてないし。うん」
 優は深く考えるのを辞めた。
「スクルドさん、はるか先生が来るとしたら、どれくらい時間がかかりますか?」
『早くて、30分という所でしょう。戦っているあなた達にとっては、ほんの5分であっても。長く感じられます。
 できる限り、生きることをあきらめないでください。健闘を祈ります。私の方でも、できることをやります』

・対決黒マント

 夜。体育館に布団を敷いて、児童は寝る支度をする。
「とりあえず。この台風が通り過ぎるまで、ここにいてくれ」
「先生」
 はるかは、不安がっている生徒を見て、笑顔で答える。
「大丈夫だ。あたしがいる」
「はるか先生!」
 校長先生が駆け寄ってきた。
「すまないが、至急。学校近くの河川が増水し始めて、土嚢の追加を頼みたい。職員が総出で行う。職員室に私と教頭が残り。例の人物には警戒しておく」
「わかりました。緊急事態がありましたら、こちらに戻りますので。そういうわけだから、みんな。校長先生と教頭先生の言うことを聞くんだ。大丈夫。
 先生たちは、君たちを守るから」
 はるかは、生徒たちにそういい残して、出ていった。暗くなった体育館。職員室には、校長と教頭が、学校の正門と後門の方を見張っていた。
 吹き荒れる風。窓を叩きつける雨。
 電信柱の上から、黒マントの怪人が様子を見ていた。
「青いリボンは、呪われる」
 暴風にマントが靡き。黒マントの怪人が、復讐する為に動く。
 暴風を突き抜け。暗闇の小学校に入り込む。
 そして、体育館に続く廊下の前にたどり着くと。轟雷の音に紛れて窓ガラスを割り。侵入する。人は、自然の爆音に警戒してしまう。
 その音に紛れて、悪意を持って物を壊す音に気づかない。
「・・・・・・!」
 藍子は、ゾクリと悪寒を感じ。布団を被った。
 本能は、自分を護るために。怯えていた。
 だけど、だけど。
 心が痛かった。

「これで、いいの?」
 主語は抜けている。だけど、問いかけるのは「自分に」である。
 殺されるかもしれない。
 それでも、戦うと決めた。
 敗けっぱなしじゃ悔しいから、泣いても。すり傷を負っても。
 立ち上がろうとする友達がいる。

「黒マント! あなたが探している「A.K」は、私よ! 桂亜衣! さあ! 追ってきなさい!」
 黒マントの背中に、青いリボンをつけた。桂亜衣が、大声で呼ぶ。
 その声は、体育館の出入り口の扉越しに、藍子の耳まで届く。
「A.K・・・・・・・!」
 黒マントは、復讐の相手を見つけ。体育館の入り口に目もくれず。亜衣に視線を固定し。追いかけ始める。
 亜衣は、階段を駆けあがり。二階へと行く。
 階段の上の階に、ペンライトで。二回灯りをつけては消して。おびき出していることを菜月たちに伝える。

 亜衣が、二階の階段を上りきり、空いている理科室の前を通過する。
 ピンと糸を切り。理科室の中で、ピタゴラスイッチのように、試験管がドミノになり。
 実験道具が、びっくりドッキリメカのように、バトンをつなげていく。そして、ペットボドルの上をカットして、中につめられたビー玉の山。
 それを目指して、カウントを刻む。
 黒マントが数秒遅れて、理科室の前を通過しようとした時。
 理科室の扉から、雪崩のように、ビー玉が流れてきた。
「!?」
 黒マントは、踏みだそうとした瞬間をビー玉に足を取られて、転んでしまう。
 顔面を前のめりに、廊下に叩きつけてしまう。
「よし!」
 亜衣は、小さくガッツポーズをして、挑発する。
 亜衣は、できるだけ、煽りに煽って、黒マントを藍子から放そうとする。
「準備はいいか?」
「ガッテン! 亜衣が、命貼ってん! ここで、あたしらまで命はらにゃあ、友達がすたるってもんよ!」
 トラップ班の克己とひなにもペンライトで伝える。
「いくぜ。ひなちゃん」
「は、はい! がんばりましゅ!」
「お、おう。あがらないようにな? うん」
  二階の廊下の一部にだけ電灯をつけて、亜衣達を誘導する。
「負けるもんか。絶対に、負けるもんか!」
 亜衣は、声を出しながら廊下を走る。角を曲がろうとしたその時。
 背後にいる黒マントが言葉をつぶやいた。
「天は、地に。地は天に、逆転する」
 そういうと。校舎がぐるんと逆さまになり。廊下が天井に。天井は廊下の床に逆転する。
「きゃっ!」
「わっ?!」
「ぴっ?!」
 亜衣。克己。ひなの三人は、逆さまになった天井に叩きつけられた。
「きゅぅ」と克己は気絶する。
「青いリボンは呪われる・・・!」
 黒マントは鎌を背中から取り出し。ゆっくりと亜衣に近づいてくる。
 亜衣は克己が気絶していることを確認し。変身する。
『亜衣! 変身だ!』
「うん。キューちゃん! いくよ」
 亜衣は、キューちゃんの言葉に答える。
「1.2.3-! ユニコーンフォーム!」
 亜衣は青を基調した。ドレス衣装に身を纏い。魔装少女アイへと変身した。
「魔装少女アイ! 全力全開!」
 アイは、拳で黒マントに殴りかかる。
「こっんのーーーー!」
 強引に一本背負いを行い。廊下の窓から外に放り出す。
 黒マントは、上下逆転の術を解除し。世界を戻した。
「クっ・・・」
「逃がさないんだから!」
 廊下の窓の縁に足をかけて、一気に飛び出す。
「たあああああああ」
 拳と足技で、黒マントを校庭の中央に進めていく。
 アイの攻撃が追い詰めて、黒マントを敗北に導いていく。
 しかしー黒マントは鎌を空に放り投げ。アイの視線を誘導した。
 ほんの一瞬のスキを狙い。アイの首を両手でつかむ。
「しまった!」
「青いリボンは、呪われる。お前が、お前がおれを通報したから、こうなったんだ!」
「なら、あなたは・・・っ 指名手配犯?!」
 ミシミシと骨がきしむ。

「亜衣ちゃん!?」
 藍子は、気になって、体育館の陰から攻防を見守っていた。
 変身して戦っている友達。しかし、自分の足が震えて、声も乾いてしまう。
 こわいのだ。犯人が襲い掛かってくるかもしれないということと友達を失ってしまうかもしれないという未来。
 同じく。三回の廊下の窓から、田中ひなが窓枠を強く握りしめていた。
「亜衣、ちゃん・・・!」
 初めて、友達になってくれた人間の女の子。元は異界のバケモノの自分に手を差し伸べてくれた。大切な人。今力を解放すれば、助けることはできるかもしれない。でも、正体を知られ、亜衣に嫌われてし

まうかもしれないという怖さが、心と体の熱を奪っていく。
 アイの声が小さくなっていき。ひなは覚悟を決める。
「助けるんだ・・・! 私の友達を! 切り拓く刃は、知! 変身! ヴァルキリー」
 ひなは三回の廊下の窓から飛び降りて、黒いアイドル衣装に身を纏い。黒い天使の羽を広げる。黒き衣装は、世界に干渉するという罪を犯す証。
世界を護るためじゃなく。たった独りの友達を助けるためだけに力を奮う。
黒いポニーテールが風になびく。
「待ちなさい! 知の黒き風! セイントプリンセス 黒雛! ここに参上!」
「ひな、ちゃん?」
「亜衣ちゃんを、放しなさーい!」
 グッと弓のように足に力を込めて、大地を蹴ると。100メートルくらい離れていた。
 校庭の中央に跳躍する。
「え? うそ? わ。わっ! 止まりませーん!」
 バタバタと手足を動かして、勢いを殺そうとするが、止まらず。黒雛の膝が、
 黒マントのあごを蹴り上げてしまう。
「ぐおお」
 その瞬間を狙い。アイは黒マントの腹部を蹴って、脱出する。
「けほ、けほ」
「亜衣、大丈夫?!」
「大丈夫。きゅーちゃん、それよりも。ひな、ちゃん?」
「は、はい。亜衣ちゃん、大丈夫ですか? そして、ごめんなさい。今まで、
 こういった力を持っていたことを隠していて・・・・・・」
「ううん。言いたくなかったんでしょ? 今は、ひなちゃんが来てくれただけでうれしいよ。だから、三人で困難を超えよう」
「うん!」
「亜衣、ひなの変身はボクタチの最上位のフォーム。通称プリンセスフォーム。
 今朝考えた変身をやるよ!」
「わかった。貫くは、勇気。届く希望。たどり着くのは、愛の姫。プリンセスフォーム!」
 亜衣はキューちゃんの力を借りて、四つの聖獣の力を一つにして、涼しげな青色とやさしい天使の羽を大きくした。愛のセイントプリンセスに変身する。
「亜衣ちゃん」
「ひなちゃん」
 2人は、お互いの手をつないで、敵を見据える。
「私達の友達に手を出すのは、許さない!」
 2人は、左右に分かれて、黒マントの怪人を攻撃する。
 叩きこまれる掌底。足。体の柔らかさを活かして、攻撃を避ける。
「はっ!」2人の拳が、腹部に打ち込まれる。
 黒マントは、仮面を外して、大声で叫んだ。
「あああああああああああ」
 黒い衣服が破け、緑色の皮膚を顕し。丸太のような手足。巨木のような体。赤い髪は、ひれのように動く。
 それは、異形者なるもの。人が怪異の総称として「鬼」と呼ぶもの。
 業火を口からは吐きだし。アイと黒雛に襲い掛かる。
「プリンセス・ダイアモンド!」
 黒雛は、両手に雪の結晶のようなシールドを展開する。
「プリンセス・サファイア!」
 アイもシールドを展開し。攻撃を防ぐ。
「くっ! 熱い!」
「おまえたちがいなければ、俺はあいつを殺せた。そうすれば、俺は無事に生きられたのだ!」
「それはちがう! そんなことしても、あなたは、自分の心にいる子供の自分を傷つけているだけ!」
「そして、そのことに気づかないまま生きることは、何をしても、虚しい事だけ」
「だから、自分自身が最後まで味方である強さを持たなきゃいけない! それが、人が持つ、強さの本質!」
 亜衣とひなの声が重なり、嵐の中で思いを叫ぶ。
「だまれぇ! 我を救うには、誰かを犠牲にしなくてはならない! だからこそ、あの少女を生贄するのだ!」
「このっ、わからずやがー!」 
 アイは、空高く飛び。落下しながらキックする。
「誰かを犠牲にして生きるという。変なルールを作った奴をぶっ倒しなさい! というよりも、ルールを壊せ!
 私なんかよりも、長い生きしてるのに、なんで気付けないのよ! 下手に空気を読み過ぎて、迷っているじゃない!」
 黒マントの怪物は、胸のあばら骨を左右にバックリとむき出しにして。
火球を地面に落とした。
 台風による大雨と火球が混ざり合い。水蒸気が校庭を埋め尽くした。
「! どこに?!」
「亜衣ちゃん。気をつけて! 背中合わせになろう」」
 アイと黒雛は、背中合わせになり。警戒する。
 上の方で、わずかに空気が動いたのを黒雛が感じた。
「上!」
「遅いわ! 小娘ども!」
 鬼の剛腕が大地を叩き。その破片が、2人の視界を奪う。
 片腕で、ハエを払うように振るい。少女二人を薙ぎ飛ばした。
 鬼となった黒マントの怪人は、鋭い目を隠れて様子を見ていた藍子に集中する。
「見つけたぞ。お前が、俺を通報した子か」
「あ・・・。あ・・・」
 藍子は、逃げようと体を動かすが。目を見てから、身体が言うことを聞かない。
「藍子ちゃん。にげて」
 アイの声が藍子に響く。
 藍子は、目をぎゅっとつぶり。勇気を出した。
「わたしの、わたしの! 友達をこれ以上傷つけないで!」
 藍子は両眼で相手を見上げ。立ち向かった。
 守ってくれた友達のために。
 そして、その勇気に答える為に。
「その通りだ。よく言った!」
 如月はるかがレインコートを脱ぎ捨て、渾身の拳で鬼を殴った。
「はるか先生!?」
 三人は、びっくりした声をあげた。
「待たせたな。そして、よくがんばった。貴様の正体は既に見破っている。
 天狗塚に封印されていた。黒天狗! お前は、昔。この地に災害をまき散らし。
徳の高い僧侶によって、封印されていた。しかし、先日のことだ。
 犯罪を犯した逃走したときに、自損事故を起こし。その偶然によって、お前の封印は解けた。そして、今現在も意識不明のまま入院措置を受けている犯罪者の思念によって、加藤藍子を探し出すために、ト

レードマークの「青いリボン」イニシャルが「A.K」の子供たちを手あたり次第襲って、恐怖心をあおり、お前の食料とした!」
「貴様。なぜ、女教師の癖にここまで知っている?!」
「フン。かわいい生徒を守るためなら、拳をふるう教師さ」
 雷鳴が轟き。レインコートを脱ぎ捨てる。
 ズボンのすそが泥で汚れていた。全力で、生徒を守るために走ってきた。
「藍子。お前犠牲になろうとしても。こいつは、自分だけ助かろうとする。人間にだって、善悪を持っている。
 だけどな。お前たちみたいに、傷ついても。誰かを助けたいという。心の勇気とやさしさは、遠い未来の希望になる!
 それだけは、絶対に忘れるな」
「先生・・・・・・」
 藍子が涙目で、はるかを見上げる。
「亜衣ちゃん、全力で行ける?」
「うん・・・・・・! 藍子ちゃんの勇気をもらったから、いけるよ。ひなちゃん!」
 黒雛とアイがゆっくりと立ち上がる。
 校舎の廊下の窓から、菜月。優。克己が声援を送る。
「がんばれー! アイー!」
「負けるんじゃないわよ! 黒雛!」
「変身ヒーローみたく、敵をぶちかませ!」
 黒雛とアイは、校舎から応援している友達をみて、尽きかけていた力が湧いてくるのを感じた。
『今だ! 亜衣! ひな! 四つの聖獣の力と戦乙女の力を1つに! オーロラ・キューショナー!を2人で、手をつないではなつんだ!』
 キューちゃんが、亜衣とひなに必殺技を授ける。
「光の戦士! セイントプリンセス・アイ!」
「光の戦士! セイントプリンセス・黒雛!」
 2人は、握手して左右の手をつなぎ合わせた。
 アイは左手を。黒雛は右手を天に向けて、エネルギーを集める。
「セイントプリンセスの美しき魂と!」
「セイントプリンセスの真っすぐな勇気が!」
「優しさの光を世界に広げる未来を紡ぐ! オーロラ・キューショナ―!」
 2人の掌が鬼に向けられ、螺旋の光をつむぎ。敵を包み込む。
「あああああ!」
 そして、妖気が黒から白い光のシャボン玉へと変わっていく。
「おれは・・・・おれは・・・」
「もう、やすんでいいよ。憎しみの悪い夢は、もう。終わるから」
 アイは、ゆっくりと歩み寄り。鬼の手の甲をなでた。
「哀しみも。怒りも。つらさも。誰かが、言葉にしてくれる。だから、もう。ゆっくりやすもう?」
 鬼は、涙を流した。
 初めから、悪ではなかったこと。
 立場や世界の流れで悪になってしまったこと。
 そして、「世界がそう望むのなら、演じてやろう」とやけになってしまったこと。

 そうして、『世界に、存在はするが。独りぼっちになってしまったこと』がつらかった。
 人間の女の子が、そう声をかけてくれたことが、憎しみも怒りもすべてを超えた「癒し」を鬼は感じたのだ。
「あり、がとう・・・」
 鬼は、黒天狗へと姿が戻り、光の柱となって、天に霧散していった。

 それと同時に、病院で入院していた犯罪者は意識が戻り。目じりから涙を流していた。

 はるかが2人に近づいてきた。
「よくやったな。そして、スグルさん。最後まで見守っていただいて、ありがとうございました」
「ひなー!」
「ちょっ?! おとーさん!?」
 木の陰から田中スグルが飛び出してきた。
「よかったーよかったー」
 涙を流して、スグルはひなを力いっぱい抱きしめた。
「先生。どうして、師匠がここに?」
「ああ。それはな? この暴風の中バイクで走るのは危険だから。スグル先生の車を出してもらったんだ。何とか間に合ったがな。雛が変身するところから見ていたが、よく耐えていたよ」
「ひなが、変身ヒロインに。しかも癒し技を」
「おとうさん、そこ?」
 ひなはスグルの頭を優しくなでた。

 その上空で、堕ちた戦乙女シグルーンと始祖の戦乙女ディースである朱美が対峙していた。

「お姉さま」
「やはり、あなただったのですね。シグルーン。なぜ、カオスの味方をするのですか?」
「愛する人を、救う為。ただ、それだけす」
「そう。ならば、私も愛する人を。我が子を護るために、あなたにとっての悪となりましょう」
「お姉さま・・・! 戦乙女最強と言われる。あなたの敬意を無駄にはしません。ですが、事を成した時には、私の命を差し出す覚悟です。
それが、私のできるやりかたです」

『オーロラ・チェンジクロス!』

 シグルーンと朱美は、鎧をまとった戦乙女に変身した。
 原初の死神と言われる。戦乙女のディースである朱美。
 戦乙女の裏切り者と言われ、カオスに味方するシグルーン。

 槍と剣を交えて、闘う。

 空を舞台に赤と黒の力が交差する。
「なるほど。紅蓮の獅子王に、力の一部を明け渡したのですね。事故で子供をかばい。膝の機能を失った人の力を戻す為だけに。愚かです。以前のあなたなら、
この世界の人間に力を与えなかったはず」
「ええ。以前はそうだった。この世界の問題は、この世界の住民が解決するのが正しいと。ですが、失いつつある。「心のエネルギーを見過ごすことは、わたしにはできなかった」
 ただ、それだけです。だから、あなたも、闘うのでしょう? 愛する人を救うという。涙の誓いの為に」
 カァン・・・・・・! と金属音が響く。
 高速で戦い続ける戦乙女が瞳を交わらせる。
「タイム・ロック」
 シグルーンとディースの2人以外の時間が停止した。
 シグルーンは、急降下してアイを抱きかかえた。
「! シグルーン!?」
「動かないでください!」
「え!? え!? なに。どうゆうこと?!」
 亜衣がびっくりして、周囲を見渡す。
「!? バカな。人間が、時間を止められている空間の中で動けている!? 戦乙女と龍戦士以外はありえないはず」
「亜衣! 大丈夫?! 必ず、助けるから!」
「朱美先生?! え!? え!?」
 ディースが亜衣を助ける為に急接近する。
「動くな! お姉さま! 亜衣がどうなってもいいの?!」
 シグルーンは手刀を亜衣の首筋に添える。
 ディースは、急停止し。シグルーンを睨む。
「そう。そのまま。・・・お願い。あなたも動かないで・・・・・」
 シグルーンは亜衣に囁いた。
 キューちゃんは、亜衣の戦闘能力を鑑みて、シグルーンには勝てないと知る。
 だからこそ、この機会を逃したくなかった。
(亜衣。ごめんね。アイを守るには、ボクが囮になる。ひな。君が言ったことを破って、ごめんね。
 亜衣を守る。だから、カオスの狙いである僕を。囮にする!)
 キューちゃんは、その隙を狙い。ディースに声をかける。
「朱美さん! 亜衣を、亜衣だけは絶対に守って! 亜衣・・・今まで、本当に、ありがとう。そして、さようなら・・・・世界で一番の友達」
「キューちゃん?!」
 キューちゃんは、ブレスレットから亜衣と同じ容姿の人間の姿に変身し。シグルーンの腕を強引に解いた。
「キューちゃーん!!」
 亜衣は、シグルーンの腕から解放され、空に放り出された。
 ディースは、亜衣を空中で抱きかかえた。

「亜衣! メールを見て! そこに、頼るべき人と、僕の正体が書かれている。僕は、僕は、何があっても君が生きる世界と亜衣を守る!」
「強制封印!」
 シグルーンは、鎖でキューちゃんの体を縛り上げ、ペンダントに封じ込めた。
「これで、カオスの復活は遂げられる。・・・お姉さま、その後に、いかなる処罰は受けます。それでは、ごめん・・・!」
 シグルーンは、ディースの腕の中で、友達を必死になって助けようと腕を伸ばしている亜衣を見て、心が痛んだ。
「いや・・・いやだよ・・・! きゅーちゃーん!!!!」
 時間が停止されたのを解除され。雲が動く中で、シグルーンは風を切る。
「絶対、絶対に、助けるから! キューちゃん!」
 亜衣は、涙にぬれた声で。キューちゃんに伝える。

 それは、少女が流した。涙の誓いだった。

あとがき

 久しぶりの人は久しぶりです。レミーさんです。生きております。(´っ・ω・)っ「求職先が見つからぬぅうう」「見つけるぞぉ(ノ・ω・)ノオオオォォォ-」

 というわけで、なぜか人気があるキャラ「桂亜衣ちゃん」の変身回。

 レミーさんの作品の多くは、主人公。メインヒロインよりサブキャラが光るという謎の法則があります。(;´・ω・)なんで??と毎回思います。

 そして、今回終わりへの道筋として、シグルーンさん。亜衣ちゃんとひなちゃんの戦い後にキューちゃんをかっさらうという・・・。

 (´っ・ω・)っ…書いてて、シグルーンさん子供泣かして、どうするん??と。
 (そのために事がすべて終わった後に、戦乙女の中で最強のディースお姉さまに色々とやられるという伏線を?)

 そして、知らない人もいると思いますので。

 ディースってなによ?!

 ■ディースは、戦乙女の原型。

  北欧神話にでてくる。戦乙女。今回のシリーズの第一話でできた「フルギャ」も、北欧神話の古いバージョンにおける。戦乙女の原型です。
  ディースも戦乙女の原型だったり、ご先祖様的な立ち位置でいるので、レミーさんの作品においては「古代種」的な立ち位置で、最強枠に。

 戦乙女も、設定によっては、8人だったり、12人だったりとします。

 7人の場合もありますが、虹の色を見立てているんじゃないか??とも考えております。

 12人は12月という風にも。

 ■覚醒せよ。みんな大好きサンダーブレスターのはるか先生。

 如月はるか先生のステゴロシーンは、第一期目の龍介が暴走する時に使おうかと思っていたネタですが・・・。
 (´っ・ω・)っ「んじゃ、戦乙女の力を宿した。元ヤンキ―の先生にラフファイトさせようぜ? 生徒を守るためなら鬼となる」

 と脳内BGMでウルトラマンオーブのサンダーブレスターを流しておりました。

 ・・・作中で人間枠で1、2を争うくらいに強い人に。
 そして、そのおかげで恋人ができないという理不尽さも。(をい)

 
 (´っ・ω・)っ今回の黒雛ちゃんは、2人はプリキュア(初代)を強くインスパイアしております。
 
 最終回に向けて、魔法少女組とニチアサの仮面ライダー枠の合流も・・・。

 (´っ・ω・)っ・・・ちょいまった。ニチアサの戦隊以外すべて出そろうのではないか。

 ( ゚Д゚)ノリトイキオイで作っていたら、こうなりました。
 
 それから、重大なことに気づきました。

『あ、拉致られた豪くんの展開どうしよう? これ書き終わるまで、すっかり忘れていた』

…(´・ω・)豪くん。生きて。

 豪:さくしゃーーーー!!

 

投げ銭していただけると、喜びます(´っ・ω・)っ「創作関係に投資」(´っ・ω・)っ今さら編集できることを知る人・・・(天然すぎぃ)