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Re-crumpling / リクランプリング

長らく、私が作っている紙などのシワに着色し平面上に跡形を残す作品群の呼び名について考えていた。
「シワ」という単語には、「衣服のシワ」「眉間のシワ」といった何やらネガティブなイメージが伴う。
またシワ自体は、包む・丸める…という行為の結果であって、私が残したいものは、そのシワが形成される原因となった行為であり、シワが形成されるプロセスなのである。

「花の跡形」
花屋の包み紙に残る花束の跡形を描いた作品。
花屋の店員の「包む」という行為や、
私が「花を持ち帰る」行為を記録したシワに着色を施すことで
それらの行為やそれに伴う感覚や感情を
長く留めることを意図した作品。

今回、私の個人的恩師に、この手法に自分なりの名前を付けてみてはどうか、と勧められ、自分の作っているものや、その過程について再考してみた。

紙や布などを「丸める」、または何かを「包む」という行為の結果、生じたシワというイレギュラーで立体的や形を、スプレー塗装により写し取り、それを平面に再構成する。
平面に再構成されることで、本来「立体」であるシワ自体は三次元的な形を失うが、平面上にあたかも凹凸が存在しているかのような錯視を生じさせる図像となり、「包んだ」「丸めた」という行為が永久に形を留めることになる。

そして思索の結果、これを[re-crumpling]と呼ぶのが一番しっくりくると思った。
「crumpling」とは、一枚の紙などの二次元物を無秩序に変形させて三次元の構造に変化させること、簡単に言えば紙をクシャクシャに丸めることを指す。なので、[re-crumpling]とは「もう一度クシャクシャにする」ということになる。
三次元の世界でクシャクシャにした素材を、二次元の世界でもう一度、今度は半永久的にクシャクシャにする。

そんなわけで、作品の制作過程について尋ねられたとき、今までは「シワのついた紙にスプレーで光と影を描いて伸ばしています」と説明していたけれど、これからは「リクランプリングという手法です」と答えてみようと思う。
「何ですか、それ?」と聞かれて、結局は同じ説明をすることになるのだとは思うけれど…。

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