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2023年の初夢


夫がこの世界にさよならをして、3週間も経とうとするのに、私の身体は、まるで地球が逆回転してしまっているのではないかと思えるくらい、時間と空間の感覚が麻痺している。
小さなことでも、手順が思い出せない。何をどこにしまったのかも思い出せない。今日が何曜日でいつなのかもわからない。
虚無感、喪失感。言葉にすれば、そういうこと?心の整理はどうやらつかないから、思い出すままに。

2022年大晦日。
夫のお気に入りの新宿御苑の森からの風が吹き抜ける部屋で看取るため、24時間体制で夫のそばに居始めて何日が経ったのだろう。
大晦日の夜は、除夜の鐘をききながら、よく頑張ったね!と夫に感謝し、私は湯船で身体を温め、少しだけ眠る。
この10日あまりは危篤状態の夫のことはごく親しい人だけに伝えていたのだけど、初日の出の光に包まれていたら、お正月を迎えられたことのお祝いとともに、感謝の気持ちをFACEBOOKに投稿して夫のことを伝えようと、迷っていた心が動いた。
高野孝子さんが新潟から上越新幹線に飛び乗って新米を抱えて駆けつけてくれた。
夫もどことなく嬉しそうで、穏やかだった。
その日の夜、夢を見た。穏やかに寝ている夫に、「天河に行こう」と声をかけ、気がついたら天河にいた。夫は、何事もなかったかのように起き上がったので、「わあ、よかった!元気になったね!!お詣りしましょう」と声をかける。夫はいつもの紺色のジャケットを着ていて、体つきも逞しくしっかりしていて、嬉しそうだった。娘と3人で写真と撮ろうとそばに居た方に写真をお願いした。夫を真ん中に、左右に私と娘が並んだ。
そしたら写真を撮ってくれる女性が、「お二人、もっと近づいて」という。
いや、夫が真ん中にいるから、近づけませんよと笑いながら、ぎゅうぎゅうと夫を押しながら、「あ、もしかしてこの人には夫が見えていないのかも。」と心によぎったとたん、目が覚めた。
涙がこぼれて止まらない。元気な夫に会えたこと。娘の成長を嬉しそうにしていた夫。
夫が旅立ったのは、その日の午後でした。

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