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まず僕は壊す

高校生の時、どハマりしていたのはTHE YELLOW MONKEY。4月27日の東京ドームライブに行こうと決めた理由は覚えていない。多分、東京が生活圏になって干支一回り以上したけど、大きなライブ会場というものの経験がないなあと思い立ったのと、ヴォーカルの吉井さんのがん告白で距離が少し戻ったのかもしれない。

高校を卒業して、一瞬就職したけど挫折して、専門学校に入り直して右往左往している間に、イエローモンキーは活動休止してしまった。

専門学校を出てから就職してあれやこれやしていたら、いつのまにか東京で働いていて、私と同い歳のタレントさんと吉井さんが再婚したのを、スポーツ紙の一面で知ったあたりからあまり記憶にない。結婚したら新聞に載るロックスターになったんだなあという感慨の末、心の押し入れに過去に好きだったものとして落ち着いてしまった。

活動休止後の20代前半から最近まで、GO!GO!7188とか新潟のご当地アイドルとかよく聴くようになって、男性アーティストにハマることがとんと減った。全くないわけじゃないけど、あまり性別を気にしなくなった。そしたら結果的に女性が増えた。今更カッコいい男の人にキャーキャーするには気後れする。この世の不条理に抗う女性や女の子たちを見て共感するほうに自然にシフトしていった。

そうそう、なぜ距離が戻ったか。吉井さんがプライベートで聴いていた楽曲を集めたプレイリストがApple music内にあって、そのなかにあったカネコアヤノさんの楽曲にハマったのだ。私よりずっと若いのに懐かしい感じ。懐かしいけどボキャブラリーは最近なのが面白い。昭和歌謡をリスペクトしている吉井さんらしいと思った。

イエローモンキーはパッと見かっこいい。でも実はそんなにわかりやすいかっこよさでもない。咀嚼大変。ガチ勢に叱られるかもしれないけど、めちゃくちゃ言葉を選んでいるつもりだけど、結構不器用で泥くさいところがある。そこがいい。汚いキレイがとてもたまらない。

吉井さんが抱えるコンプレックスを包容し続ける3人。この4人は本当に唯一無二な存在で、バンドは絶妙なバランス感覚で成り立っている。そこがいい。

演奏中ドラムから動けないアニーの前で、右肩にヒーセ、左肩にエマを抱え中心でふやけたように笑うロビン。東京ドームの大きなモニターに4人が一緒に収まるようにパフォーマンスしている。なんてこった。なんて未来だ、ここは。

東京ドームの2階席の後ろから数えた方が早い席で、こんな没入感を味わうことになるとは。再結成時、なにかの動画を観た私はこんなことを思っていた。「50歳過ぎて、セ◯クスセ◯クス言ってる人たちを、30歳過ぎた私はどう応援すればいいのか…」

華丸大吉のネタで「我々ももうおじさんですからね、若い人たちに混じって合コンネタとかやれんのです」みたいな(かなり意訳)心境に陥っていたんだけど、東京ドームの片隅で私は

「これはこれ、それはそれ。でいいんだな」。

楽しかったので、家に帰ってからWOWOWのPPVに申し込んで、ライブのアーカイブを観ながら酒飲んで猫を撫でて、ファンクラブに入った。

次があるならもっと近くで、好きだった楽曲をもっと聴きたい。天国旅行とか花吹雪とか。空の青と本当の気持ちとか。FOR SEASONSとか。いっぱいある。カナリアもNAIも。

吉井さんも死に近づいて、当人もメンバーも心境に変化があったようだ。私も両親が既に鬼籍に入っている。私も変わった。

もしもいま、私の身近にいる人たちと何かしらの縁があって出会っているのだとしたら、好きなアーティストたちもハマるべくしてハマっているのなら、また身近な人たちやこの4人と出会えるのだろうか。

ああもし来世があるのなら、オシャレスーツが似合う長身男性になりたい。そうだ、私のハマるものって大体いつも「私がなりたいもの」だ。

大昔、こんな言葉はなかった。「推しは推せるうちに推せ!」。きっと推しきれなかったと後悔したり、全く応援してなかったのに解散や活動休止した途端に「好きだった」と言い出す人に怒りを覚えたりしてきた先人たちの心の叫びが詰まっている、と勝手に思っている。

そんなわけで、推していきましょう。私の人生もこれからが本編なのかもしれない。

あとね。高校生時点の感情に比べて、彼らに対して明らかに変わった感情は「ヒーセがかわいい」。大人になった。楽しかったので、きょうもこれからアーカイブを観る。いい時代になった。

普段語るときは「吉井さん」と言うけど、ライブ中に掛け声するなら「ロビン!」なんですわ。かなり遅れてMOTHER2をプレイした時も、4人のメインキャラを彼らの名前にしたものよ。ああ懐かしい。懐かしい。

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