日常について考えること

 noteをはじめてまとまった文章をはじめて投稿。この原稿は、ある雑誌に掲載するエッセーを頼まれ、書いた原稿を訂正加筆したものです。
あまり上手な文章とは言えませんが、したためてみました。

 この原稿を書いているきょう、すでに桜の満開はピークを過ぎ、見応えのある風格のある景色が各地で堪能できた。いまは八重桜が見ごたえでもある。北の方へ向かえば、まだまだ桜は十分堪能できるかもしれないが…。自宅の裏山では鶯が鳴き、ベランダに出れば雲雀のさえずりもきこえてくる。本格的な春の到来を感じさせる朝である。日本の春ってほんとうにいい季節だなと実感する。
駅では真新しいスーツに身を包んだ若者達が、電車に飲み込まれていく。何気ない、変わらない4月の風景だが、当たり前の日常を過ごすことがどれだけ大事か、大切か実感をされている方も多いのではないだろうか。
4月も半ばを過ぎ、日によっては夏を思わせるような日も訪れるようになった。

   新型コロナ感染症が流行して以降、これまでの「日常」がすっかり遠いものとなってしまった。第6波は山を越えたものの下げ止まり感があり、第7波の兆候もすでにあらわれ始めている。
いつまで続くともわからないウイルスとのたたかいはまさに持久戦。経済が持ちこたえられるよう、特に体力が十分に備わっていない小規模事業者への実態に見合った支援の強化は、とりわけ重要である。トリクルダウンに凝り固まった経済の仕組みを見直すときが来ている。

 新型コロナ感染症は少なくない人々に価値観の変化をもたらしている。先日乗り合わせたタクシーの運転手の男性は、デパート業界からの転身だと話していた。小売業界の先行きに不安を感じ、親の介護を理由に転職したとのこと。転職してよかったと話していた。通勤や一日中屋内で過ごすストレス、急な呼出しに応じなければならないストレスなどから解放されたと。車中ではあるが、窓を開ければ自然の風を感じ、四季折々の風景が感じられる。「生きている心地がする」と楽しそうに話している運転手さんがとても印象的だった。

私は、夕方、ちらちらとあちこちに明かりが点きはじめ、空がグラデーションに染まりはじめるあのひとときが大好きである。「くたびれた」まちの感じが、なんとも心を和ませてくれる。そういう話で運転手さんと共感しあい、楽しいひと時を過ごした。これもまた、何気ない日常のヒトコマである。その男性は、私と同世代。80代の親の介護をしているそうである。   

    同じ時期にたまたま話をした別の男性は、70代。90代半ばの親の介護をしているとのことだった。家事を一手に引き受けていた母親が他界したため、男所帯となり一気に日常が崩れた、とその方は話していた。

 日常って何だろう、日常ってどういうことなんだろう、といろいろ考えてしまうことが近頃多くなった。何気ない日常だが、絶妙なバランスの上に成り立っているのが日常なのではないか、とも考えてしまう。ちょっとした変化で、そのバランスが崩れてしまう。そう考えると、日常が私たちにとっていかに感謝すべきものであるか、大切に過ごさなければならない日々だと感じざるをえない。

 世界に目を転じると、ウクライナ情勢は戦争の凄惨な姿を私たちに日々伝えている。

幸せな日常が、一瞬にして隣国の一人の為政者によって奪われてしまったのである。どんな人間であろうとも、どんな権力者であろうとも、他人のしかも他の国で暮らす人々の幸せを奪う権利などないはず。力を持っているからこそ、その力は民の幸せのために使うのが力を持つ人の責任である。

武器の力で彩り豊かなまちの風景が一瞬にして灰色の世界へと変わってしまった。あるのは血で染まった赤い色だけである。まさに、現代のジェノサイドである。許しがたい暴挙である。

日本国憲法の前文には「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」と書かれている。こういう憲法を持つのが日本なのである。日本の為政者にはこの崇高な理念を胸に刻んで、「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去」するために世界に働きかけてもらいたいと切に思う。人々の日常をまもるのが政治の大事な役割であることを忘れてはならない。
国や地方問わず、議員になることが最終目的のようになっている人が多すぎる、と感じることの多い昨今。身を切る改革などと叫んでは世間の喝采を浴び…ているかのようにも見えるが、切るべきは…言うまでもないだろう。
あらためるべきは、まずはポピュリズムそして新自由主義。だけではないがまずはアクセルにブレーキを。


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