金澤朋子について

去年の10月に卒業の発表があって、次々と浮かぶ感情や記憶達になんとか整理をつけるため、この長い文章を書き始めた。筆は進めど整理はつかず、断片的なメモが溜まっていくばかりで、そのまま卒コンの日を迎えた。

素晴らしいコンサートだった。ブログのコメントやDMで感動を伝えたら、もうすっかり透明な気持ちになっていて、それ以上なにかしようとは思わなかった。

続きは復帰のタイミングか何か、いつかまた何か大切な日がきたら書こうかと考えていた。

その「何か」がこんな形だとは思っていなかったけれど、今再び散らばってしまったものを拾い集めようとして、ぐるぐると回り続ける思考をなんとか捕まえようとして、新しい断片を付け加えている。

推し

ハロヲタになってから結構経つが、<推し>という言葉はなんとなく苦手だなぁとずっと思っていて、最近はあまり使っていない。

それでも他のオタクに会うとよく「誰推しなんですか?」と尋ねられるから、「カナトモです。」と答えて、「誰推しなんですか?」と返す。

氏名・年齢・性別・職業・住所・推し

自分に結び付けられた属性の一つみたいに言うけれど、好きになったあの日から今日までずっと、僕に推されようと推されまいと関係なく金澤朋子は存在した。そして他の誰かに言わなくたって僕は金澤朋子が好きだった。

ただ自分にとっての金澤朋子という存在がどんなものだったか振り返ってみると、やっぱりそういうのが一番分かりやすいのかもしれない。

出会い

前にヲタクになる直前のことを書いたことがあったけれど、Juice=Juiceを好きになった時点では特にこれといって好きなメンバーというのはいなかった。強いて言うなら『この世界は捨てたもんじゃない』という曲を聞いて、あーりーの歌声が素晴らしいなとか思っていた。

最初は『この世界は捨てたもんじゃない』のライブ映像ばっかり飽きずにみてたけど、ミュージックビデオもいくつか再生してみる。

『keep on 上昇志向!!』

これが一番新しい曲か。マイケル・ジャクソンのオマージュ?なんかよくわからないな。

『ロマンスの途中』

ベースがめっちゃかっこいいな。展開も面白いし、これはかなり好きだ。

『イジワルしないで 抱きしめてよ』

カッコよ!!おしゃれ!!好き!!あとは、あとは、

「私はローズクォーツ」

このフレーズが好き。この声が好きだ。艷やかに伸びる声。かなり癖のある声。耳を通りこして、脳に直接触れるかのような声。

そう思った瞬間から、今まで1/5に過ぎなかった声が急に浮き上がり誰よりも鮮明に聞こえてきた。

それが多分、本当の意味での朋子との出会いだった。

共通点

知らべてみればハロプロでほぼ唯一の同学年。誕生日も近いといえないこともない。兄妹が多くて、実家では拾った猫を飼っていて、溺愛しているがあまり懐かれていないのも一緒だ。

ちなみにこれ以上共通点をあげようとすると肺呼吸をするとか、真核生物であるとか、炭素を多く含むとかになってしまうのだが、もはやそんなことでも僕には十分だったのかもしれない。

にわかに親近感が湧きはじめ、僕はこの金澤朋子という人にどんどんのめり込んでいった。あとは1番可愛いかったのも大きい。

一つの時間

当時仙台にいてお金も全くなかった(今もない)ので、Juice=Juiceもハロプロも遥か彼方の存在で、Youtubeをみたり、ラジオを聞いたりするのが主なヲタク活動だった。

ラジコのアプリを入れて200g15円くらいのもやしを炒めながら、爆夜という番組を聞いていた。内容は正直ほとんど覚えていないけれど、暴君という触れ込みのわりに、とにかくハキハキ喋る礼儀正しい人だと思った。

そんなある日番組内で告知があり今度秋田でイベントをやるという。金澤朋子はMCを務めるらしい。チケットは単独ライブよりは安いものの、モヤシ50kg分くらいしたが、僕はJuice=Juiceが東北にくる!!と思うと居ても立ってもいられずに即購入し、チケットよりも高価な高速バスも予約した。

昼過ぎに乗ったバスが秋田の駅に到着したのはもう夕方だった。イベントの屋台がでて少しにぎやかだったが、そんなものには目もくれず、まっすぐ会場の公民館的な施設に向かう。

どういうわけか会場付近は建物の名前に反してにぎわいを欠いている。入り口の前に地元民らしきおばさんが一人立っているだけである。さらにおばさんは僕にこう話しかけた。

「今日ここで音楽のイベントやるんだけどチケットいらない?」

残念ながら既にチケットを購入した僕にはもやし50kgのほうが価値が高い。初めての遠征、初めてのJuice=Juiceのライブ。秋田はもう街中大騒ぎかもしれない。カーニバルかもしれない。そんな気持ちできたので、この落差にはめまいがする。が、開場時間も過ぎていたので急いでイベントが行われる多目的ホールへ向かった。

小さな体育館のような部屋のステージ前方には、地元民とは明らかに様子の違うカラフルなTシャツを身に纏った集団が既に陣取っていた。正直とてつもなく心細い。しかしここまで来て引き下がるわけにはいかない。カラフル集団は前方をがっちり固めていたが、東京から秋田は北海道より遠いので3、4列目くらいに入り込めた。

開演の時間になると真っ赤なドレスをきた金澤朋子が登場した。顔が小さい。足が長い。ウエストが異常に細い。顔がすごく濃い。これまで目にしたことのない種類の人間である。

ラジオと変わらずよどみなく台本を読みあげていて女子アナのようだったが、それにしては存在に圧がありすぎた。まだMCなのに鼓動がはやまっていくのを感じる。

Juice=Juiceのライブの前に、結成されたばかりで持ち歌のないアプガ(2)とそのメンバーの秋田出身の子が所属していたご当地アイドルがまず出てきた。

見様見真似でその道の方々と一緒に手を叩いたり、声を出したりしてみる。アイドルを生でみるのはこれが二回目だが、こんなに近いのは初めてだ。アプガ(2)の初々しい全力のダンスをみているとなんだか心が温まった。楽しい。

次はなぜかわからないが地元の秋田のラッパーが登場した。Juice=Juiceの曲名を入れたフリースタイルを披露してヲタクの心をがっちり掴むと、親に感謝系の熱い曲を繰り出す。真打登壇を待たずして異様な盛り上がりをみせる会場。訓練されたヲタク達に感動するラッパー。もう何をみにきたのかわからくなってきた僕。めっちゃ楽しい。

そしていよいよJuice=Juiceの出番だ。

急いでドンキで買ったキングブレードを点灯させる。金澤朋子さんのメンバーカラーは赤だ。赤の人、他にも結構いるな。隣の人に当たったりしたら気まずいと思って少し短いタイプを買ってみたが、どうにもみすぼらしくみえる。これじゃキングというよりプリンス、いや平民だ(その後5年間色んな現場に行く中でそんなものを振っているやつを見かけた記憶がない)。でもこれしか持ってないから仕方ない。

最初に流れたのは「イジワルしないで 抱きしめてよ」。毎日画面の向こうで観ていた人たちがそこにいるのがなんだか信じられなくて、不思議だったけれど、本当にみんな歌がうまくて、キラキラしていて、とにかくその空間にいられることが嬉しかった。

会場はラッパーのときからすごい熱量だったが、運動量も加わった。もう正直ついていけない。でも来てよかった。ここが世界で一番賑わってる場所だ。

金澤朋子さんは想像よりもずっと顔をくしゃくしゃにして笑い、自分のパート以外の時も口をぱくぱくさせて、楽しそうに踊っている。コールもわからず平民ブレードを必死にふりまわす僕。とても滑稽な様子だったろうけれど、何より幸せな時間だった。自分がどうみられるかとか、まわりのヲタクがどうだとか、全て忘れていた。Juice=Juiceがいて、朋子さんがいて、僕がいる。音楽の中ですべて一つだ。一つの空間、一つの時間。

帰り道、興奮がさめないうちに初めてのメールをラジオ日本に送った。

読まれなかった。

2020/10/18

若き在宅ガチ恋ヲタクの悩み

まさか自分がアイドルヲタクになるとは思ってはいなかった。握手会商法は大嫌いだったし、音楽は古いロックばかり聴いてきた。溺れるような恋愛もしたことないし、そこまで他の人間に執着はしないタイプだ。

しかし一度こちら側の人間になると、みんな必ずしも恋愛感情でヲタクをやっているわけではないことがわかった。純粋に元気をもらえる。純粋に音楽として素晴らしいものもある。夢に向かって努力する姿に心奪われる。ヲタクの数だけ好きの形があり、なかなか奥が深い世界である。

そしてそんな評論家ぶった態度すら長くは続かなかった。だんだん金澤朋子という4文字をみるだけでドキドキするようになってきた。写真をみるだけで胸が苦しくなる。ブログのコメントも、どう思われるだろうとかずっと考えちゃってあんまり書けない。佳林ちゃんのブログには頼まれなくても毎日コメントできるのに。

キモい。かなりキモい状況だ。キモ辛い。ヲタクに向いてるのか向いてないのか分からない。うっかり覗いた2chの個スレで2週間くらいメンブレしたりしたのでウルファーには向いていない。

キモいから自分の存在を知られたくない。でも近くで見たい。お話ししてみたい。何を喋れば良いかまったくわからない。握手会には行かないことにした。短期的には大きなマイナスだが、長期的にみれば顔を覚えられていない方が結婚できる可能性が上がる。あとお金がない。そう、それが全てだ。負けるのがわかっている土俵に上がってもしょうがない。

まだ今から頑張ればそこそこの社会的成功をおさめられるかもしれない。金持ちになれば話は変わるかもしれない。スポーツ選手にはあまり興味がなさそうでその界隈は安心だが、イケメンは普通に好きそうなので厳しい戦いにはなるだろう。卓偉でいけるなら身長はどうにかなるだろう。割と本気でそんなことも考え始める。

同時に自分に言い聞かせる。これはどう考えても運命なんかじゃない。朋子は可愛すぎるから、みんな好きになってしまう。好きにさせるプロだから。僕はその無数の客のうちの一人にしかすぎないのだ。本当の彼女のことなんて何もしらない。

だけど、本気(ガチ)で好きだ。

顔を覚えられたくないなんて思ってたのに、コンサートにいくとやっぱりこっちをみて欲しくなる。赤い帽子を買った。一応普段使いもできるようなやつ。これなら会場ですぐに朋子のヲタクだとわかるだろうか。

赤い服なんて似合わないから絶対買わなかったけど、赤いものばっかり目につくようになった。あのTシャツも赤い。あの靴も赤い。あの時計も赤い。赤が一番鮮やかに見える。あ、あの赤いパーカー可愛いな。買っちゃおうかな。

僕はヲタクレッドだ。

どんなにダサくても、赤ければ、少しだけ、朋子だ。

横浜アリーナ

この1ヶ月ずっと待ち侘びていた復帰に喜んだのもほんの束の間、結局金澤朋子は横浜アリーナで卒業することになった。

でも横アリで卒業コンサートができるアイドルなんてそうはいないから、これはきっとすごく幸せなんだと思う。

朋子にはただただ、ありがとうという気持ちしか湧いてこない。

武道館には何回も連れてってもらえたし、代々木にもいったし、ロッキンも見に行けた。Otodamaは酸欠で倒れそうだったな。三芳町役場までFSK買いに行ったり、チケット買いに行ったりしたな。ライブハウスでひしめき合って、ホールツアーでは双眼鏡を覗き込んだ。FCイベントでは毎回笑い転げていた。楽しかった。全部最高に楽しかった。

ハロヲタになってすぐに、ももちと℃-uteの舞美ちゃんが25歳でハロプロを去った。そういうものなのかと思っていた。最年長のゆかにゃの年齢から考えてJuice=Juiceがみれるのはせいぜいあと2年と少しだから、今のうちにできるだけみとかなきゃなんて考えていた。

だから4年半も見れて超ラッキーだ。220をやってる頃から知ってればなってずっと新規の気分だったけど、気がつけばJuice=Juiceの活動の半分は見てきた計算になる。ソロライブに1公演も入れなかったこと、ずっと後悔していたけれど、ソロはまた見れるかもしれない。病気のことはまだどうなるかわからない。心配だけれど、でも朋子はずっと芸能界にはいてくれるような気がしてる。

佳林ちゃんのように、Juice=Juiceでなくなっても僕は今までと何にも変わらず金澤朋子のヲタクでい続けるだろう。朋子の歌が好きだから。

横浜アリーナ、どんな景色なんだろうな。
最後はどうにか笑顔で見送りたいな。

ブログ

卒コンまで現場もないので、朋子のこれまでの過去ブログを全部読み返すことにした。2017年以前のものはほんの一部しかしらないし、自分がヲタクになってからも結構ブログチェックをサボりガチだったし。

2013年。ブログのテンションめっちゃ高いなぁ。そりゃこの時女子高生だもんな。俺もこの時は男子高校生か。

食べ物の話が多い。ラーメン、コンポタ、ピザまん、カリカリ梅。ほんと変わんないねぇ。

お父さんの誕生日、妹②、③の誕生日、兄者の誕生日、妹①の誕生日、お友達の誕生日。一緒にお出かけしたこと。一緒にゲームしたこと。些細な喧嘩。

きっと朋子にとっては、Juice=Juiceの活動と同じくらい、いやそれ以上に家族や友達が大切なんだろうな。

ずっと手の届く距離の世界を大切にここまできたんだろう。

学校の話も多い。中間テスト、体育の持久走、文化祭、パワポでの発表。

高校の卒業式。

この頃俺は何してたっけ。受験勉強に身が入らなくて、図書館で全然関係ない本ばっかり読んでたな。模試のたびに勉強してなさすぎて死にたくなってたなぁ。世界史だけは隣の席だったKさんにすごいって言ってもらいたくて頑張ってたなぁ。

あの頃から朋子はずっと頑張ってたんだな。

この頃からJuice=Juiceを知ってたら、握手会とかもたくさんいってたら、朋子と友達みたいに話せるようになってたかもしれない。

いやもし朋子が公務員になって、俺も大した挫折もせず大学出て、それなりの会社に入って、埼玉に配属されて、偶然出会ったりする世界線もありえたんだろうか。朋子の大切な、その小さな世界の中の住人になれる世界線はあったんだろうか。

ま、出会ったとしても美人すぎて声かけられないか。アイドルにならなきゃ、こんなみず知らずの女の子の人生を知ることなんて絶対なかっただろう。彼女が俺の人生なんて知る由もないように。

だからきっとこの世界が正解なんだ。

あぁもう全然先に進まないや。卒コンまでに間に合いそうにない。

2021/11/24



2022/5/17


2016/1/25 

金澤朋子が「子宮内膜症」であるということが、本日発表されました。
朋子にはどうする事も出来なく、そして治そうと頑張って治るものでもありません。

私たちも何もしてあげられません。
雑誌の取材の時に、いつもは一番率先して質問に答えていた朋子が今は辛いのだから、だったら私がやらなくちゃ。とか、
MCでもたくさん話さなくちゃ。とか、
そんな場面でだけ、
「助け合う」とかいう言葉を引き寄せてる感じがします。
助けられてるのかわかんないけど、
それしか出来ないから。

朋子は悪くなくて、
頑張れ朋子って心配するけど、
頑張ってどうこうできるものじゃないのです。

ただ、どうして今なんだろう。とか、
どうして朋子なんだろう。とか、
色々皆さんも思うことがあるかと思いますが、
朋子も一生懸命戦っているので、
今まで通りに、支えて見守って頂きたいです。

すごく久しぶりに家族で出かけた。行き先は千葉県にある某テーマーパーク。まぁ、ここまでいったらもうぼかす意味ないか。

東京ドイツ村だ。

母がネモフィラを見たいと言ったので、皆で車に乗り込んだ。天気を心配していたが、本日は晴天なり。窓を開けると気持ちの良い風が流れ込む。休日にしては道のりは順調で、目的地の近くまできた。田んぼのあぜに咲く赤い花が綺麗だ。母にあれはなんていう花だろうねと尋ねる。「花なんて咲いているのか」父がつぶやく。

父は色弱で緑と赤を見分けるのが難しい。赤い花は葉に紛れてしまうらしい。「赤だって教えてもらえればだんだん赤に見えてくる。目じゃなくて頭で見てるんだ。一度これが花でこれが葉っぱだとわかれば、ちゃんとそう見えてくる。でも分かっても綺麗だとは思えないんだ」。

僕は父にそっくりに生まれたが、色弱の遺伝子はX染色体にあるので僕には遺伝しなかった。父の見ている景色はぼくには見えない。父の話からどんなものが見えにくいかは知っている。知ってはいるが、実際どんな景色なのか、どう感じているのかはわからない。

父は色弱について話す時、いつもほんの少しだけ寂しそうだ。その孤独は、僕のたどり着くことができないところにある。

東京ドイツ村は全然東京でもドイツでも村でさえなかったけど、ネモフィラは見事だった。父は妹や母を花の中に立たせて、一生懸命写真を撮っていた。

青、濃い青、薄い青、白、水色、青、青、青

空を映したように咲き乱れるネモフィラの青に包まれる。父はファインダーをのぞいて、構図をしきりに気にしていた。

そういえばあのとき、青は綺麗に見えたかどうか聞けば良かった。

好きなところ

運も実力のうちというが、弱いヲタクなのであらゆるFCイベントの抽選でまだ1度も当たったことがない。でも、もし朋子のバースデーイベントで当選して、朋子の好きなところを聞かれたら、さっと答えられるようにシミュレーションしておかなくてはいけない。

誰かと被ったらやだな。

うーん何を言えば良いだろうか?

顔をくしゃくしゃにして笑うところ。口をパクパクさせるところ。シャイなのに目立ちたがり屋なところ。テンション上がってくるくる回り出すところ。気の許せる場所だと割と失言しがちなところ。予想外の出来事にすぐオロオロするところ。アイロンの温度。絶望的に似合わないツインテール。

怒られそうだな、、、、

食べ物の好み。僕とは全くあわないけど、可愛くて好き。

読書家なところ。僕も本は好きだけど、読んでるジャンルは全然違う。でも、知らない世界を教えてくれて好き。

コツコツと努力を積み重ねることができるところ。几帳面なところ。手を抜かないところ。僕とは正反対ですごく尊敬してる。

家族のことをとても大切にしているところ。

犬や猫が大好きなところ。

優しいところ。

どこまでも誠実なところ。

でも、やっぱり声が好きだな。
歌が好きだ。みんなそうか。

うーん何を言えば良いんだろうか?


何を言ったら、良かったんだろうか。

アドレナリン

恋愛の賞味期限は3年間だという話を耳にしたことがある人は多いだろう。恋愛ホルモンの分泌がそこでストップしてしまうのだ。

人が恋に落ちると、ドーパミン、アドレナリン(ノルアドレナリン)などのホルモンが脳内に分泌され、人は興奮状態に陥る。アドレナリンはストレスホルモンとも呼ばれる。

ストレスホルモンは肉体や精神に強い負荷がかかった際に分泌される。恐怖のドキドキを恋のトキメキと勘違いするという吊り橋効果は、吊り橋に対する恐怖で分泌されるアドレナリンが、恋愛の際にも分泌されることで説明できる。

3年が過ぎたら、強い興奮をひき起こして生殖活動を促すホルモンは、オキシトシンなどのより穏やかな愛着をもたらすホルモンに切り替わり、育児に適切な心理状態を導く。切り替わらなかったらそこで恋愛は終わりだ。

この3年という数字に根拠があるのか知らないから置いておくが、ガチ恋ヲタクの心理というのも、これと似たような心理学的過程を辿るのかもしれない。

5年ヲタクをやってきた。5年前と同じ熱量があるかと尋ねられたら、正直うんとは言い難い。でも、5年前よりも確実に朋子のことが好きだ。朋子の写真みただけで胸が苦しくなることは減ったけど、もっと暖かいものを感じている。

朋子が誰かと結婚したらきっと、とてもとても辛いけど、じゃあ結婚したいのかと言われると今は良くわからない。

また歌を聞けて、インスタやブログを更新して自撮りとか思ってることを載せてくれれば、それで十分幸せだと思うようになっていた。ずっとヲタクでも良かった。オキシトシンに満たされて生きていきたかった。

昨日からまた金澤朋子という文字をみるだけで心臓がバクバクするようになった。胃が締め付けられる。眠れない。アドレナリンに支配されている。

怖いんだ。朋子がいなくなってしまうのが怖い。僕の前から、僕の中から、朋子が消えてしまうのが怖い。

花や草に生まれたかった

大学1年の秋、男子校あがりの友人が初めてできた彼女に音速で振られたので慰めにいった。中身はヲタクでも見た目だけはアンニュイな空気を漂わせがちな男だったが、その日はさらに影が濃くなっていた。バーのカウンターで黄昏れる俳優のような佇まいでポンジュースを煽る。

なんも手につかないからまとめ見てたんだけどさ、今マジで「こんな思いをするのなら花や草に生まれたかった」って気分だわ。初めて死にたいと思った。失恋で死ぬやつなんて信じられなかった。今はわかる。でも、この1ヶ月まじですげぇ楽しかった。

ヲタクなので人生初の失恋という局面で引用される言葉もソースは2chである。死に際の走馬灯には弾幕でも貼られているかもな。薄情者の僕はふとそんなことも考えていたけれど、妙に印象に残ったそのフレーズはその後何度も頭をよぎった。

こんな思いをするなら花や草に生まれたかった。今、マジでそんな気分だ。なんでアイドルなんて好きになってしまったのか。いつか必ずこうなるのに。何回ライブに行っても、何枚CDを買っても、所詮どこまでいっても赤の他人なのに。

誰のことも気に留めず、誰の気にも留まらず、何にも言わずに咲いて散っていくだけの花に生まれれば良かったのに。

答え

潮の満ち引きのように辛い時間と大丈夫な時間が交互に入れ替わる。ようやく潮が引いてきた。今は大丈夫だ。

もう一度お知らせの文章を読み返す。卒業発表のブログや卒業コンサートのスピーチに比べると非常に簡素な25行の文章は、しかしあのスピーチと同じように、几帳面な朋子のバッグの中身のように、過不足なくきっちりと整えられている。

経緯の説明、結論、謝罪、感謝。書くべきことだけが書かれている。

答えはもう出ている。

芸能活動を引退する。

僕達はいつも答えしか知らない。

病気、活動や、将来への不安。きっとどれも本当だろうが、何が一番大きかったのだろうか。

思い通りにならない身体。思い描いていた未来。その隙間をゆっくりと、しかし確実に押し広げていく時間。朋子はどんな不安を感じていたのだろうか。どんな痛みと戦っていたのだろうか。岐路はどこにあったのだろうか。どれだけ想像を働かせても、その胸中にはたどり着けない。

だが答えはもう出ている。朋子の中では既に過去になっている。

またもう一度最初から読みかえす。僕らに向けられてはいるが、どこか内側に閉じた文章だ。

決断しなくてはいけない。ここで終わらせなければいけない。思いを断ち切らなければいけない。そう自分に言い聞かせているようにも感じられる。感情が漏れ出さないよう必死に隙間を塞いでいるように読める。

もしかすると僕は、僕達は、心の中で朋子をあまりに大きく、強く、美しくしすぎてしまっていたのかもしれない。この歪な世界の形に耐えかねて、美しいだけの書き割りの中に彼女達を住まわせようとしていたのかもしれない。

朋子と僕との共通点は年齢だけではなかった。大切なことをうちにしまい込み過ぎてしまうところ。誰かを傷つけたり、傷つくのを恐れて何も言えなくなってしまいがちなところ。

まだ迷いがあるのではないだろうか。本当にきっぱりと前を向けているのでだろうか。本当に決定的なことはここには書かれていないのではないか。約束を守れなかったのが一番辛いのは何より朋子自身だろう。そうだとするなら答えはもう一度変わりはしないだろうか。

だが何度読んでも文字は変わらない。

答え合わせの時間はない。

2014/6/20

なんだか時間はあっという間に
過ぎ去ってしまうし

周りの環境は日々目まぐるしく
変化しているし…

ふとした瞬間、
自分が置き去りにされているように
思えたりする。

人が多いところに行くと
自分の存在をとても小さく感じて
さみしくなったりもするんだけれど

LIVEやイベントで
沢山のJuice=Juice Familyの皆様の
笑顔を見ると

幸せだな って思うと同時に

金澤はもっとちゃんと前向いて
シャキッとしてなきゃダメだな。
って気づかされるのです。

いつもありがとです。☻

なんていうんでしょうかね、
うーんとね…

人生いろいろだなーって。

悩みのない人なんてきっといないし

みんなそれぞれ
何か抱えてるのだけれど
やっぱりどんなに悩んでても
落ち込んでても
しっかり地に足つけて
歩んでいかなきゃなのですよね。

地に足を

ずっとサボっていたブログへのコメントを再開したのは、去年の9月に活動休止が発表されてからだった。

毎日自分におきた些細な出来事や、必死に捻り出した励ましの言葉をコメント欄に書き込む。不安と心配は常に大きかったけれど、振り返ってみるとそうやって毎日朋子のことを考えて言葉を紡ぐ生活は、この5年間で一番幸せなものだったかもしれない。

卒業発表の後はたくさん素直な感情も言葉にしてくれた。それは僕にだけ向けられたものではないにせよ、ありがとうの言葉が何より嬉しかった。朋子のブログには毎日のように感謝ばかり書かれている。朋子は誠実で、心の温かい人だ。

卒業発表の前から、ことあるごとに朋子は前を向いて進むと言い続けてきた。それはくよくよしがちな自分を奮い立たせるためだったのかもしれない。しかし、朋子は言葉通り着実に前に進んできた。

僕の見てきたこの5年間は、朋子の選択の上に成り立っている。カラオケコンテストに応募した時、オーディションを受けた時、Juice=Juiceになった時、病気のことがわかった時。それだけではない。僕の知り得ない無数の分かれ道があった。凸凹な地面の上を、歪な世界の中を、迷いながら、戸惑いながらそれでも歩いてきた。その1歩1歩で作られた道の途中で僕は彼女に出会った。

たとえ方角が変われど、朋子はきっとこれまでと同じように、地に足をつけて歩いていけるだろう。

地に足をつける。アイドルらしからぬ言葉かもしれないけれど、それは金澤朋子という人の生き方を表すのに一番ぴったりな言葉に思える。

僕もまた、地に足をつけなければいけない。この地球しか、この世界しか僕にはないのだから。そしてこの世界の中にしか、朋子はいないのだから。

2022/5/21

ちゃんとしろ。自分に言い聞かせる。落ち込んでちゃいられない。こういう時こそなるべく普段通りでいよう。普段から元気はないので、さほど難しくはない。ただ、あまり食べ物が喉を通らない。

母が心配しておかゆを作ってくれた。昨日はそれも食べる気にならなかったが今朝はいけそうだ。

ずっと冷蔵庫の奥で眠っていた梅干しをのせる。
うわ、かなりしょっぱいな。あんまり好きじゃない。でも全部食べる。挑戦する2022だ。

そういえばすっかり忘れていたが昨日は妹の誕生日だった。佳林ちゃんの音楽劇の入金があるから、予算はあんまりないな。

最近ずっとMVを見てると言っていたグループのBlu-rayを買いにいく。CDショップに来るのも結構久しぶりだな。K-popのコーナーでっかいなぁ。どの子が推しなんだろうな。わかんないや。みんな可愛い。世の中にはびっくりするくらいたくさん可愛い子がいる。

無意識にハロプロのコーナーも探してしまう。

あった。めっちゃ狭い。アンジュルム、Juice=Juice、つばきファクトリー、BEYOOOOONDS、モーニング娘。'22。全てたった一段に全てまとめられている。Juice=JuiceのCDは、アルバム2枚しか置いてない。新しいアルバムには9人のJuice=Juice。前のアルバムには8人のJuice=Juice。朋子のいないJuice=Juiceと、いるJuice=Juice。

朋子のいる方を目立つところに置いてみる。発売日には色んな店にこうやってコーナーができていた。少し眺めてからCDをそっと元に戻す。

大丈夫。うん大丈夫だ。
やっぱり朋子が一番可愛い。

ジェケットに写っている朋子は23、いや22か。妹の歳の方が近いな。僕はもうしばらくしたら27になってしまう。ロックスターにはなれかったから、もう少し人生は続きそうだ。今からロックスターを目指してもいいのかもしれないが。

新しい目標。

ふと出てきた言葉の中身はまだふわふわと宙に浮かんでいる。

買いにきたはずのBlu-rayは置いていなかった。代わりに妹が好きなチョコレートケーキをいくつも買って帰る。雨が降ってきた。傘をさしてケーキが濡れないように袋を抱えこんで駅まで歩く。横にならないように慎重に歩く。今の僕の目標は、次のあの信号。

2013/11/6

小さい頃は、都会に出ると 自分が小さく見えて  
寂しく感じることもありました。

なんていうんだろう?
『私の存在を 誰かに知ってほしい!』
みたいな、不思議な感じです。

あれから数年?経った今、
金澤にとってのものの見え方・映り方は
とーーーってもかわったなぁ

いい成長の仕方をしているのかは
自分じゃよくわからないけれど…
心のあったかい人になりたいな

Good bye & Good luck

今日の空はすっきりとした青だ。

この青があなたにも見えるだろうか。

僕には確かに見える。

この青は確かにある。

消えない。

あの日河原でみつけた花も。

あなたの笑顔も。

ブログに書いた恥ずかしいコメントも。

あの日輝いた赤い光の海も。

最低な時間も、最高の瞬間も全部。

消えない。全部消えない。

たとえあなたが忘れても。

たとえ僕が忘れても。

全ては存在した。心配はいらない。

だから、今日は今日の空を見る。


今日のあなたの痛みが少しでも小さくなりますように。

今日のあなたの喜びが少しでも大きくなりますように。

どうかあなたの新しい希望が、あなたの大切な日常が守られますように。

Good bye & Good luck

ひとまずはさよならだ。

幸せを祈っているよ。


赤の他人より


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