水素Hとは?

水素は我々の生活でもっとも影響力のある元素であるといっても過言ではありません。たとえば、朝起きてトイレに行っても顔を洗うにしてもまず水を使うことによって生活がスタートします。水素単体というより水(H₂O)といった方がなじみが深いかもしれません。では、水素について詳しく以下でみていくことにしましょう。

1. 基本知識 

水素を英語にするとhydrogenで、hydro(水)+generate(生み出す・作り出す)という意味がある。          

陽子数は1で中性子数は0で、中性子が0なのは水素のみである。

他には質量数2の重水素(ジュウテリウム)と質量数3の三重水素(トリチウム)が存在する。同じ原子でも中性子が異なるために質量数が異なる核種を同位体という。

水素原子は地球表面に3番目に多く存在し(1番目が酸素、2番目がケイ素)、そのほとんどが海水中に存在している。

酸化数としては-1,0,+1の3つのいずれか。

「-1」はNaHやLiHで有機化合物を合成したいときなどに利用される。

「0」は水素H₂の単体である。

「+1」は主に非金属元素との化合物で, CH₄とかNH₃などといったなじみのある物質が多い。

特徴としては無色・無臭で、気体のなかでもっとも軽い。

2.  製法

鉄などの金属に希硫酸や塩酸を反応させる。

Fe + H₂SO₄ ➝ FeSO₄ + H₂

(ラボアジエは1671年に鉄を希硫酸に溶かすと、水素が発生することを発見した。)

工業的にはまず,ニッケル触媒を用いてメタンなどの炭化水素と水蒸気を高温で反応させる。次に銅触媒を用いて最初に生成した一酸化炭素と水蒸気と反応させ、水素のみを回収する。

CH₄+H₂O➝CO+3H₂

CO+H₂O➝CO₂+H₂

3. 用途

どのような場面で水素が利用されているのかここでは3つの例をあげる。

例1 マーガリン生成

トウモロコシ油から抽出できる液体油に水素を反応させると、液体油に含まれている炭素同士の二重結合に水素原子が付加反応する。これにより不飽和数が減少し、飽和脂肪酸の割合を増やすと、常温で固形化される(不飽和数がが減少すると融点は上昇する)。このような現象を硬化といい、そのような油脂を硬化油という。マーガリンはこの理論を利用して生成される。

例2 NMR (核磁気共鳴装置)

ある有機化合物を磁気のなかに置き、その化合物に含まれている水素原子がどの部分にあるのかを調べる分析装置。水素原子は結合する原子の電気陰性度など結合している原子に依存することが多く、この分析により有機化合物の構造のみでなく水素原子の電子状態を教えてくれる。これを応用して作られたのが、MRI(核磁気共鳴画像法)である。こちらは体内に含まれる水がどのように分布しているのかを調べることで体の臓器・骨を映像化している。

例3 太陽光

太陽光は、巨大なエネルギーをもっている。これは、水素の核融合反応によるものだ。ざっくりいうと太陽は水素の塊のようなものであり、質量数1の水素原子が4つあつまり、質量数4のヘリウム原子を1つ作り出そうとする。このような反応を核融合反応という。この核融合反応で生じたエネルギーが光となって、我々の住む地球に届いているというわけだ。次にその反応式を示す。

4×¹H➝1×⁴He + 26.2 MeV