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まさにそのことによって「書」いているのである - 井筒俊彦

簡単に言ってしまえば、人は存在するという、まさにそのことによって「書」いているのである。しかも、人がそのなかに生きている --- と自分で思っている --- 「世界」なるものも、実は、ぎっしり「書き込まれた」、エクリチュールの構成物である。どこまで遡っていっても決して始点(アルケー)に到達することのない、無始点の過去以来、およそどれほどの数の人がこの「書き込み」に参加してきたことか。無数の人によって、「書き込み」「書き出された」エクリチュールの共同世界の中に生きながら、我々自身もせっせと「書」いている。そんなところまで「書く」という語は拡張解釈せれているのである。

井筒俊彦
『意味の深みへ』

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