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スローな思考

わたしは頭の回転が速くないからディベートとかディスカッションみたいなことがあまり得意ではありません。とっさの起点や発想力は才能を持った人には遠く及ばないと常々残念に思う。だから、普段しゃべる時はなるべくゆっくり喋ります。メールで回答をするときは一回保存ボックスにいれて、落ち着いてからもう一度読み返して添削をしてから送信します。そうすることで、思考は補強され単純な視点はより複眼的な視野を持つようになります。そんな気がします。

いきなりですけど、はじきの法則ってありますよね。

距離 = 速さ x 時間

同じ距離を進むとき、速い車なら短時間で目的地につくけれど、遅い自転車で同じ距離をかせごうと思ったら、より長い「時間」がかかる。わかりやすい計算式です。

どうしてこんな話をしたかというと、はじきの法則って似たようなことが実は「思考」にもあてはまるんじゃないかとこのところよく思ったりするんです。

なんとなく、こんな感じ。

思慮深さ = 頭の回転の速さ x 考える時間

つまり、思慮深さが足りない分を、頭の回転の遅いわたしみたいな人間が補強するには「考える時間を増やす」しかないんじゃないか。ゆっくり時間をかけて考えたり、スローな時間軸で会話をする、そうすることでより深い意思疎通ができたり、そこからより複眼的な発想が生まれたりする。そういうコミュニケーションの手段があってもいいんじゃないか。

今の社会をみると長い時間軸で語られるものはどんどんなくなっていますね。市場のプロダクトやファッションは数ヶ月毎にアップデートされるし、わたしたちの仕事の評価もそれと連動するように四半期で結果がでるものが求められる。昔の企業の基礎研究部門なんかは、2、30年そこいらで結果がでるような研究には手を出すななんて言われていたようですが、最近は4、5年ですら結果を出すための期間としては長すぎる。

テレビやスマホの生活はこれに拍車をかけていて、即座に答えが導き出せるものが好まれます。会話は細切れになり、スマホで呼びかけたらすぐさま既読がつき、数秒後には短い回答が返ってくる。数分で理解できる動画が流行って、わかりやすく理解できてわかりやすく論破できるほどほどの理屈がもてはやされる。

即答できたり即座に結果を出せることが評価され、ゆっくりと時間を使うことはもはや高度に発展した社会では無駄・浪費だと認識されるようになると「考える時間」は更にどんどん短くなっていく。

考える時間を短縮するということは、つまりはその代償としてわたしたちは思慮深さを失っているのではないか。わたしたちはそういった生活習慣のなかで、はからずもどんどん浅知恵しかもたないサル化しているのかもしれない。

遅いことは浪費ではなく、むしろ思慮を深めてくれる心強い実りなんです。スローな生活をすること、ゆっくりとした時間軸のなかで会話をすること、時間を豊富に使うことでわたしたちは思慮の「距離」をかせぐことができる。より能力の高い知性をもった高みを目指すにはそれが一番確実な方法なのではないかと思うのです。それだけでわたしたちの思考はいまよりずっと視野が広がり知恵は深くなる。。。そんなことを思っています。

りなる

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