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図書館でもらってきた本

図書館ではたまに傷がついた本だとか、あまり読まれなくなった重複している本なんかを不定期に地域の人たちに無料で提供しているようです。ふらりと図書館に寄ったら、呉善花さんの書籍が廃棄品として置かれていたのをみつけて思わずもらってきてしまったw

『日本の曖昧力』ー 融合する文化が世界を動かす。著者が教鞭を取る大学での講義をまとめて書籍化したもの。さまざまな事例や著者の体験を元に日本の文化がどれだけ他国と異様なほど異なっているのか、そしてそれが人の心にどう美しく映るのかを教えてくれる。たまにでてくる日本人学生や海外留学生との授業中の会話が良いスパイスになっていてまた面白い。

呉善花(オ・ソンファ)さんって、日本文化を研究している韓国人の評論家なんですが、十数年前に『日本が嫌いな日本人へ』という本を読んで以来、わたしはずっとファンです。わたしは学生のころから日本が嫌いで嫌いで嫌いで(3回言ったw)しかたなくて、国外に逃げたwwwわけなのですが、数年後に振り返ってみると自分の美意識が日本に寄っていると感じることがものすごくたくさんあったんです。バッキンガム宮殿みたいな西洋的な左右対称の絢爛豪華な装飾よりも、法隆寺の剥き出しの木組みに自然の生命力を感じるし、左右非対称の伽藍の絶妙な配置にこそバランスの妙を感じてしまう。芸術だけでなく習慣や働き方、そういったあらゆる面で、"西洋と日本は違う" のではなくって、むしろ日本が際立って特殊なんだってことを言語化し気づかせてくれた。そして、「それでいいのだ」と認めてくれたのが呉善花さんでした。それで救われたような気がしました。ですから、わたしにとって恩人のような人です(←それは言い過ぎか?w)いずれにせよ、グローバルスタンダードにそぐわない特異性だけを目の敵に嫌悪していたのが若かりしころのわたしだったのだと思う。。。

日本人って自然の音(鳥の声、虫の音、木々のざわめき)を言語脳で聞いていて、西洋人にとってのノイズを、文字通り言葉として聞いている。これはどうやら世界でも日本とポリネシアの一部の部族だけなのだといった話を聞いたことがある(『日本が嫌いな日本人へ』でも紹介されていた)。こういった背景からか、日本人の多くは自然だけでなくそこから創られる物にも魂が宿ると考えているし、呉善花さんが国内の多くの職人さんにインタービューをすると、例えば刀鍛冶であれば「鉄は生きている」とかw 決まってみんなそんな話をするのだそう。わたしたち日本人からすると、あぁ、その感覚なんとなくだけどわかる気がする。授業では更に「みんなの前にある机にも日本人の学生は魂が宿るって感じているはずだよ」なんて話をする。すると、中国人留学生からは「物に魂が宿るなんて言うのは人間のエゴです」みたいな返答があったりwww そんな素直な留学生の感性や授業中のやりとりもまた面白い。

近代的な西洋文化や工業技術は現代社会に豊かさをもたらしてくれたけど、その一方で伝統的な精神文化だったり自然生命をないがしろにもしてしまった。その結果、わたしたちの住む環境は行き詰まりを見せ危機的状況になってしまっているようだ。そんな今だからこそ、改めて日本の特異性を知ってほしいし、その特異性こそが凝り固まった世界を打破するキッカケになるのではないか、そんな期待が込められていた。

りなる




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