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令5・4・1施行 物権法改正         共有物の使用・管理・変更 改正

第4 共有物の使用・管理・変更 改正は要注意!

 改正内容について問題が作りやすいので、確認問題を用意しました。
条文解説の後に、適宜問題を解いてみてください。

1(共有物の使用)

249条 
第1項

各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。


👨👇持分を超える使用の対価の話
第2項
 
共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
👨👆共有者全員の合意又は持分の過半数の決定(管理に関して必要な持分の過半数による決定)がない場合は、自己の持分を超える使用は、法律上の原因がなく、不当な利得になるため。

確認問題1
ABCが共有する土地について、共有者間の合意もなく、持分の価格の過半数による決定がない状況で、Aが自己の判断で単独で甲土地を利用しているときは、Aが自己の持分を超える使用の対価をBCに対して支払うことになる。〇か✖か。


確認問題1の答え  〇
逆に、
ABCが共有する土地について、共有者間の合意または持分の価格の過半数による決定により、Aが単独で2年間甲土地を無償使用することになった場合は、権原に基づく占有であり、不当利得ではないから、Aが自己の持分を超える使用の対価をBCに対して支払う必要がない(249条2項)
(参考:松尾弘「物権法改正法を読む」P36)。


第3項 👨👇共有物の善管注意義務の話
共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。
👨👆共有者の1人Aが誤って共有物を損壊させた場合、他の共有者BCの持分との関係では、他人BCの物を損壊させたと同じ評価になるため、他の共有者BCは善管注意義務違反の債務不履行に基づく損害賠償請求を共有者Aに対してすることが可能となる(中間試案補足P16、中込改正物権法)。

2(共有物の変更)

251条
第1項
 
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
👨注目! 「軽微変更」を、共有者全員の同意が必要な「変更」から除外して、持分の過半数で決定できる「管理に関する事項」(改正民法252条1項)として扱うことにした
 例えば、(1戸建てが8軒に囲まれた)私道が未舗装となっていて、共有者の多数がアスファルト舗装したいが、少数の共有者がアスファルト舗装に反対している場合(中間試案補足P24)。
 確かに、砂利道をアスファルト舗装に変えるぐらいなら、道路の形・大きさが変わるわけではなく、道路の表面が変わるぐらいでたいして物理的な変更が生じるわけではないともいえそうですね。

第2項 
共有者が他の共有者を知ることができず
又はその所在を知ることができないときは、
裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる

👨👆「共有者が他の共有者を知ることができず」とは、不特定共有者と呼ばれ、例えば共有者が3人いるところ、共有者ABにおいて、他の共有者1人の氏名が分からず特定できない場合をさす(参照QAP69)。
また、「その所在を知ることができない」とは、所在不明共有者と呼ばれ、例えば共有者がABC3人いるところ、共有者ABにおいて、他の共有者Cの
住所・居所が分からない場合をさす(参照QAP69~70)。
つまり、居場所がわからないということ
まとめると、一部の共有者が誰かがわからない場合か、居場所がわからない場合で、その一部の共有者と話し合いができない状況にある場合、共有者の請求により、裁判によって、不特定共有者や所在不明共有者を除いた他の共有者の同意を得て、共有物の変更ができるようになるということ。
【覚え方】人物不明か、所在不明で、裁判によって変更行為が可能となる

確認問題2
 ABCが共有する土地について、軽微ではない変更行為をすることについてCが賛否を明らかにしないときは、その他の共有者AB全員の決定で変更をする旨の裁判を得ることはできない。〇か✖か。

確認問題2の答え 〇 
 軽微ではない変更行為は、物理的な変化が大きすぎるため、沈黙している共有者の意見を無視して裁判で決めてしまうのは、適当ではないということ。この点は、後述する「管理行為」では、賛否を明らかにしない共有者がいる場合、裁判により管理行為ができるようになる仕組みがあるので要注意!
(参考:部会資料51・P10、松尾弘「物権法改正法を読む」P46)


3(共有物の管理)
252条

第1項
共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任
及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする
👨👆末尾太字部分の例としては、ABCの共有地が、BC(持分の過半数)の決定によりAが2年間無償使用することを決定し、実際にAが共有地の
使用を始め、2年間の使用期間が満了したため
あらためてBC(持分の過半数)の決定により、共有地をXに賃貸することを決定した場合、Aが引き続き共有地を使用したいと希望しても、Aは共有地の明渡義務を負い、
Xが賃借できるようになる(松尾弘「物権法改正法を読む」P36)。
このように共有物の使用方法を管理行為として更新ができるということ。
さらに、最後の1文は、法改正前の判例の謎を解き明かすことになった。
どういうことか?
 かつて判例(最判昭和41年5月19日)は、共有不動産を現に使用する共有者に対し、他の共有者が、共有不動産の明渡しを請求するためには、「明渡を求める理由を主張し立証しなければならない」としてきたが、どのような事情があれば「明渡を求める理由」になりうるのかがよくわからなかった。
 そこで、『改正民法252条1項後段により、各共有者は、現に共有物を使用する共有者が共有者の持分の価格に従った過半数の同意によらずに使用していることさえ主張立証すれば、あるいは持分価格の過半数による決定があったことを主張立証して請求さえすれば、共有物の明渡しを請求することができるものと解される』(『 』は松尾弘「物権法改正法を読む」P35、中込改正物権法P43)。そして、この『 持分価格の過半数による決定があったこと』とは、「実際に共有物を使用している者とは別の者が共有物を独占的に使用することを定めることができ、その定めにより独占的に使用することが認められた共有者は、従前共有物を使用していた者に対し、引き渡しを求めることができる」(中間試案補足P7、中込改正物権法P43)ことを意味ししていると解される。


第2項
裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、
その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判
をすることができる。

 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき
👨👆【出題が予想される箇所】知識の混乱が起きそうなところ 要注意
ABCが共有する土地について、軽微でない「変更行為」をすることについてCが賛否を明らかにしないときは、その他の共有者AB全員の決定で変更をする旨の裁判を得ることはできない(251条2項)のと混同(参考:部会資料51・P10、松尾弘「物権法改正法を読む」P46)

確認問題3 以下の問に答え。ABCDEの持分は各5分の1とする。
A、B、C、D、E共有 の砂利道につき、A・Bがアスファルト舗装をすることについて他の共有者CDEに事前に賛否を明らかにすべき旨を催告したが、D・Eは賛否を明らかにせず、Cは反対した場合には、裁判所の決定を得た上で、AとBは、アスファルト舗装をすることができない。〇か✖か。


確認問題3の答え  ✖
「A、B、C、D、E共有(持分各5分の1) の砂利道につき、A・Bがアスファルト舗装をすること(軽微変更=管理)について他の共有者に事前催告をしたが、D・Eは賛否を明らかにせず、Cは反対した場合には、裁判所の決 定を得た上で、AとBは、アスファルト舗装をすることができる(A、B、Cの持分の過半数である3分の2の決定)」
「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(法務省)から引用。

第3項
前二項の規定による決定が
共有者間の決定に基づいて共有物を使用する  共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない
👨👆
どういう場面の話なのか?
例えば、共有者ABCの持分の過半数により、共有者の1人Cが2年間使用することに決定したが、1年経過後、つまり使用期間2年間の途中で共有者ABCの持分の過半数でCが単独で使用できない使用方法に変更する決定に基づき、他の共有者がCに明渡請求をした場合、原則、Cは共有不動産を明け渡さなければならない。
 しかし、ここでCが251条3項の「特別の影響」(例えば、ABC共有地につき、Cが共有地を30年使用できることで共有者間で決定があり、共有地上に建物を建てて暮らしていたが、1年後に、AB(持分の過半数)の賛成によって、Cが土地を使用できる期間を5年とする変更を行った場合は特別の影響と評価されうる事情であり、その特別の影響がある事情を主張立証すれば当初持分の過半数で決定された使用方法の範囲内で返還を拒むことができる
また、共有建物を店舗として使用する目的でCに使用させることを共有者間で決定し、店舗として利用し生計を立てていたが、その後共有者間で店舗利用ではなく住居目的の利用に使用方法が変更になった場合も、特別の影響と評価される場合がありえるので、利用目的を変更するにはCの承諾が必要となる:(参考:部会資料40P3~4、松尾弘「物権法改正法を読む」P36~7、改正物権法中込P47)。

第4項
 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。

 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年

 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年

 建物の賃借権等 三年

 動産の賃借権等 六箇月
👨👆短期賃貸借の設定(602条)は、共有者全員の合意によらなくても、管理権限の範囲内で可能な行為として、持分の過半数の決定できるとしたもの。「借地借家法の適用のある賃借権の設定は、約定された期間内での終了が確保されないため、基本的に共有者全員の同意がなければ無効」となりうる一方、「一時使用目的(借地借家法25、40)や存続期間が3年以内の定期建物賃貸借(借地借家法38Ⅰ)については、持分の過半数の決定に より可能であるが、契約において、更新がないことなど所定の期間内に賃貸借が終了することを明確にする工夫が必要。」(「 」は、「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(法務省)から引用。

確認問題4
 A、B、C、D、E共有の土地につき、必要な調査を尽くしてもC、D、Eの 所在が不明である場合には、裁判所の決定を得た上で、AとBは、第三者に対し、建物所有目的で土地を賃貸するには、A・Bの全員 同意が必要である。〇か✖か。

確認問題4の答え

「A、B、C、D、E共有の土地につき、必要な調査を尽くしてもC、D、Eの 所在が不明である場合には、裁判所の決定を得た上で、AとBは、第三者に 対し、建物所有目的で土地を賃貸すること(変更)ができる(A・Bの全員 同意)。」
「借地借家法の適用のある賃借権の設定は、約定された期間内での終了が確保されないため、基本的に共有者全員の同意がなければ無効」となるため。「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(法務省)から引用。



確認問題5

A、B、C、D、E共有(持分各5分の1)の建物につき、必要な調査 を尽くしてもD、Eの所在が不明である場合には、裁判所の決定を得た上で、
AとBは、第三者に対し、持分の過半数の決定で、賃借期間3年以下の
定期建物賃貸借をすることができる。

確認問題5の答え 〇
「A、B、C、D、E共有(持分各5分の1)の建物につき、必要な調査 を尽くしてもD、Eの所在が不明である場合には、裁判所の決定を得た上で、 AとBは、第三者に対し、賃借期間3年以下の定期建物賃貸借をすること
(管理)ができる(A、B、Cの持分の過半数である3分の2の決定)。」「 」は、「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(法務省)から引用。


第5項
各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
👨👆
従来からある各共有者は保存行為を単独でできるという規定を維持。


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